2014年度 日本オセアニア学会関西地区例会

2014年11月15日(土)、国立民族学博物館において、2014年度日本オセアニア学会関西地区例会が開催された。今回の例会では来日中であったオレゴン大学のフィッツパトリック氏にもご発表いただけることとなり、学会員2名を含む計3名による英語発表が行われた。発表に続いて、各コメンテーターによるコメント、フロアからの質疑が寄せられ、活発な議論が展開された。発表者、発表題目、コメンテーターは下記の通りである。

発表者:Scott M. Fitzpatrick (University of Oregon) 
発表題目:Life and Death at the Chelechol ra Orrak Rockshelter : 3000 Years of Occupation in Palau, Micronesia
コメンテーター:印東道子(国立民族学博物館)

発表者:飯田晶子(東京大学) 
発表題目: Environmental Impacts on the Babeldaob Island of Palau under Japanese Administration
コメンテーター:遠藤央(京都文教大学)

発表者:石村智(奈良文化財研究所) 
発表題目:Cultural Heritage under Threat of Negative Impact from Climate Change: Cases in Tuvalu and Kiribati
コメンテーター:野嶋洋子(アジア太平洋無形文化遺産研究センター)

 フィッツパトリック氏の発表では、パラオのオラック島における発掘調査から、そこで発見された今から3000-1700年前の埋葬人骨、また動物骨や共伴した人工遺物についての報告がなされ、それらが示すパラオの人口と社会の変化についての考察が展開された。続いて飯田氏は、日本統治時代のパラオ、バベルダオブ島の農地開拓とボーキサイト採掘などの開発によって、原生熱帯雨林の伐採や土壌浸食という、環境への長期的かつ重大な影響が生じた点を指摘した。また土地利用や植生に基づく詳細なデータから、伝統的集落の景観分析についての報告もあった。石村氏の発表では、ツバルとキリバスの事例から、気候変化による負の影響は、土地や景観といった有形文化遺産だけでなく、伝統的農業や食物などの無形文化遺産にも及ぶことが報告され、こうした影響を総合的な見地から考察することの必要性が指摘された。

コメントおよびディスカッションでは、考古学や都市工学など多様なアプローチから提示されたデータについて、より詳細な質疑が行われただけではなく、歴史的、文化的視点からの分野横断的なコメントもなされ、包括的かつ濃密な議論を行うことができた。

(関西地区例会幹事 比嘉夏子)


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