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2021年度の関東地区研究例会を以下の通り実施した。
【開催日時】2022年2月11日(金・祝)13時30分~17時15分
【開催方法】ウェブ会議システム(Zoom)を用いたオンライン開催
【プログラム】
13:30~14:30 研究発表 小谷真吾(千葉大学)
「リゾームはニューギニアのモノ:ボサビの生業「システム」の考察」
14:30~14:45 コメント 田所聖志(東洋大学)
14:45~15:15 全体での討論
15:30~16:30 研究発表 佐本英規(筑波大学)
「竹製パンパイプを「音楽のように」組み立てる:ソロモン諸島アレアレからのぞむ音楽のグローバリゼーション」
16:30~16:45 コメント 石村智(東京文化財研究所)
16:45~17:15 全体での討論
17:15 閉会
本年度の関東地区研究例会では、2021年に単著を刊行された会員2名を発表者として招待し、新刊紹介も兼ねた研究発表をしていただいた。
小谷真吾会員は2021年8月に刊行した『自給自足の生態学:ボサビの人びとのオートポイエーシス』(京都大学学術出版会)の内容をもとに、ニューギニ ア
高地周縁におけるエコシステム・生業システム・社会システムの複雑なかかわりあいについて、現地の情景を伝える多数の写真を交えながら発表した。コメン
テーターの田所聖志会員は、小谷会員が長年にわたり蓄積してきた調査データの豊かさに触れながら本書の意義を述べるとともに、現代の気候変動と人口動態を
視野に入れることで更なる発展の可能性があることを指摘した。
佐本英規会員は2021年2月に出版した『森の中のレコーディング・スタジオ:混淆する民族音楽と周縁からのグローバリゼーション』(昭和堂)の内容に も
とづき、ソロモン諸島アレアレにおける竹製バンパイプを用いた演奏を事例に、グローバル化のなかの民族音楽をとらえる視点について発表した。コメンテー
ターの石村智会員は、無形文化遺産をめぐる様々な議論と突き合わせながら、佐本会員が「間に合わせの録音スタジオ」と呼ぶ演奏とレコーディングの形態につ
いて、その特色と意義を指摘した。
合計23名の参加のもと、いずれの発表の際にもフロアを交えた活発な質疑応答が行われ、本研究例会は盛況のうちに終わった。
関西地区研究例会幹事 平野智佳子
2021年度の関西地区研究例会を以下の通り実施した。
【開催日時】2022年2月12日(土)13時00分~17時15分
【開催方法】ウェブ会議システム(Zoom)を用いたオンライン開催
【プログラム】
13:00~14:00 発表者:大竹碧(京都大学) 「再定住地をつくりかえる:米国が残した都市設計と対峙するイバイ島の人々」 14:00~14:15
コメンテーター: 棚橋訓(お茶の水女子大学)
14:15~15:00 全体での討論
15:15~16:15 発表者:木村彩音(神戸大学) 「異人の祖先、海の向こうの故地:日系トレス海峡諸島民を事例に」
16:15~16:30 コメンテーター: 山内由理子(東京外国語大学)
16:30~17:15 全体での討論
17:15 閉会
本年度の関西地区研究例会では、大学院博士後期課程に在籍する若手の会員2名を発表者として招待し、長期フィールドワークの成果をふまえた研究発表をし
ていただいた。
大竹碧会員は、マーシャル諸島共和国イバイ島における再定住地の景観形成の歴史過程を提示し、そこに暮らす住民が再定住地の景観といかに対峙しているかに
ついて、人々の生活の中の感情や記憶に着目しながら発表した。コメンテーターの棚橋訓会員は、ミクロネシア研究の人類学の関与の過程やクワジェリン環礁を
めぐる重層的な歴史叙述の遍在、当該地域における複数のネットワーキングの再編成の問題について指摘した。
木村彩音会員は、トレス海峡諸島の木曜島の事例から、日本人の祖先を持つトレス海峡諸島民が、日本人祖先に対する慰霊行為としての盆儀礼を現地の文脈で
いかに解釈しているのかについて、儀礼の場で示される祖先の名誉と威信に着目しながら発表した。コメンテーターの山内由理子会員は、木曜島周辺の歴史にお
ける日本人の位置づけや「ニッケイ」というカテゴリーの問題、当該地域における一族の名誉や威信のあり様について指摘した。
関西地区研究例会の参加者は合計30名であった。質疑応答の際には、フロアからも多くの質問、コメントがあり、発表者とのあいだで活発な討論が行われ
た。いずれの研究発表でも、発表者の今後の研究を展開しうるような充実した議論が行われ、本研究例会は盛況のうちに終わった。
小谷真吾(著) 『自給自足の生態学――ボサビの人びとのオートポイエーシス』 (京都大学学術出版会、2021年8月)
本書は、パプアニューギニアの「ハイランド・フリンジ」に居住するボサビの人びとの環境適応について、主に生業生態と人口動態に着目し、なるべく平易な 用語を用いて散文的に記述することを目指した書である。記述の枠組みとして、生態人類学という学問分野が成立して以来人びとの暮らしを理解するために用い られてきたシステムアプローチを本書でも援用する。ただし、システムという概念にかんする近年の議論の変容を放置することなく、ローカルな事例研究の一つ に終わらないよう理論の検討も試みた。事例研究の積み重ねこそ生態人類学の強みとも言えるが、今一度システム概念をとらえなおしながら、事例を世に問うこ との意義を考察した。本書の構成は、以下のとおり10章構成である。
第1章 ボサビの人びとに出会う
第2章 ロングハウスに住まう
第3章 バナナを栽培する
第4章 サゴを打つ
第5章 イヌと移動する
第6章 ブタを購う
第7章 共に食べる
第8章 人を数える
第9章 システムを想像する
第10章 マルチシステムズ
ボサビの人びとに会うためには近代的な移動手段を用いることはできず、またその地域には電気、水道等のインフラストラクチャーも存在しない。日常生活に
工業製品が用いられることはほとんどなく、購入食品を消費することもめったにない、いわゆる自給自足の暮らしを送る人びとである。古典的な生態人類学にお
いて、そのような状況は「閉じた」システムとしてシステムアプローチの格好の検証の場となってきた。本書でも、そのような状況における生業生態と人口動態
を記述し、他者理解のためにシステムアプローチが依然有効であることを示していく。
熱帯多雨林という植物相、オセアニア区という動物相、人口密度1/km2以下という条件の下、バナナを栽培し、サゴデンプンを精製し、多様な動植物を採り、ブタを飼養す
る。それぞれの生業が互いに連関してボサビの人びとの日常を構成している。また、個々の生存が容易ではない環境の中、人びとは互いに関係しあいながら成長
し産み育て、集団が再生産されていく。システムが閉じていようが開いていようが、生業を理解すること、人口動態を理解することは、生身の身体がどのように
存在するのかについて、最も直接的な情報であることに変わりはない。本書では、各章において生業、人口動態、それらにかかわる社会システムと動植物につい
て詳細に論じた。
現在の地球上で「自給自足」の暮らしを送る人びとは非常に限られている。生態人類学という学問分野が成立した1960
年代から筆者が人類学を学び始めた1980
年代まで、そのような状況にある人びとに対する記述は、例えば「狩猟採集民」や「焼畑農耕民」の事例として一定の普遍性をもって世に受け入れられた。しかし、21
世紀に入った現在、ボサビのような人びとの暮らしは、グローバルな状況において周縁化された、特殊な事例として等閑視されつつある。グローバルな状況との
かかわりも記述しながら、周縁の人びとの生活を理解することの意義を改めて示していくことも本書の目的である。
「閉じた」システムが存在しないのは確かであろう。しかし、「開ききった」世界システムにおいて生活すると信じている我々が、「あまり開いていない」周縁化されたシステム
において日常を送る人びとを知ることの意味を本書では追究した。システムの境界はどのように生成されるのか、「閉じる」「開く」という運動がどのように記
述され得るのか、「開いた」システムにおいて人びとはどのように存在し、あるいは存在できなくなるのか。生態人類学が用いてきた定量化・図像化という方
法、つまり脱文脈化された数値によって記述する方法を本書でも採用し、それらの問いを考察した。
システム論の精緻化は生態学を中心に行われ、そのパラダイムをもとに生態人類学は世界の多様性を記述してきた。「閉じた」「開いた」システムにかんする
分析方法も生態人類学において盛んに論じられてきた。システムの動態を扱う上でのレジリエンスの概念は、今や生態学を越えてあらゆる学問分野に浸透しつつ
ある。一方で、社会科学、人文科学におけるシステム論の展開、例えばルーマンのオートポイエーシス、ハラウェイのサイボーグの議論は生態人類学においてあ
まり検討されていない。これらの議論を全く無視して「生態学的」人類学として個別のシステムを分析し続けることは、同じシステム論という視角を用いて世界
を見ているかもしれない人びととの対話を放棄してしまうことになる。本書では、特にルーマンにおけるシステム論の展開をボサビの人びとの記述に用いること
ができるのかを批判的に検討しながら、生態人類学においてシステムアプローチをとる意義を再考した。
(小谷真吾)
佐本英規(著) 『森の中のレコーディング・スタジオ――混淆する民族音楽と周縁からのグローバリゼーション』(昭和堂、2021年2月)
本書は、著者が筑波大学大学院に提出した博士学位論文「メラネシア在来音楽をめぐる出会いと媒介の文化人類学的研究——グローバル化時代のソロモン諸島マライタ島南部アレ アレにおける竹製パンパイプ合奏を事例として」(2018年3月、筑波大学)に大幅な加筆修正を加え、単著として再構成したものである。本書の構成は下記 の通りとなっている。
【第1部 グローバリゼーションと音楽的媒介】
第1章 メラネシアの島々と音楽のグローバリゼーション
第2章 アレアレの竹製パンパイプと媒介する行為としての音楽
【第2部 「混淆した生活」とアレアレの竹製パンパイプ】
第3章 今日のアレアレにおける「混淆した生活」
第4章 伸縮する竹と音楽の模倣
第5章 竹製パンパイプと強運
【第3部 竹製パンパイプと音楽のグローバリゼーション】
第6章 森の中の即製レコーディング・スタジオ
第7章 舞台の上の竹製パンパイプ
第8章 混淆する音楽と周縁からのグローバリゼーション
音楽のグローバル化に関する文化人類学的研究は、産業化された音楽と各地の在来音楽とが接触し、互いに影響をおよぼしあう「グローバルな出会い」が、現
代世界における音楽をめぐる知識や習慣を条件づけていることを明らかにしてきた。ただし、そうした研究の多くは、「異文化間における出会い」という出来事
それ自体というよりも、その結果としての作品やパフォーマンスへと焦点をあてる傾向がある。一方、音楽が実際に演奏され聴取される出来事は、異なる関心を
もつ多くの人々――演奏者や聴衆、プロデューサーやエンジニア、評論家や仲買人など――と、それらの人々が依拠し利用する様々な道具や技術、制度の参与に
よってはじめて実現されるものである。音楽をめぐる「グローバルな出会い」という出来事それ自体の様相を詳らかにするためには、そうした人々や物、技術や
制度をめぐる具体的な接触のあり方に焦点をあてる必要がある。本書は、こうした観点から、メラネシア島嶼部に位置するソロモン諸島マライタ島の一隅におい
て実践される在来音楽のグローバルな展開を事例とし、音楽をめぐる「出会い」の様相について論じるものである。
ソロモン諸島国マライタ島南部アレアレ地域において用いられる在来楽器である竹製パンパイプは、1970
年代に文化人類学・民族音楽学の集約的調査研究の対象となり、独自の音楽理論の存在を実証された代表的メラネシア在来音楽である。グローバル化時代の竹製パンパイプに関し
ては、1990
年代以降、後続の研究者によってソロモン諸島国内外における動向が報告されている。国内では、旧来の儀礼祭宴の衰退に伴い、都市部での観光ショーやイベントの余興として演
じられるようになり、海外のポピュラー音楽の諸要素を取り入れ新たなスタイルが成立した。国外では、1970 年代収録の学術的録音が、1990
年代欧米のポピュラー音楽作品の素材として簒奪的に流用された一方、2000
年代には新たなスタイルの演奏による録音作品や舞台上演が「ワールドミュージック」の商品として消費されるようになった。著者が調査対象とした演奏集団ポイアラトは、
1990 年代初頭からソロモン諸島の首都ホニアラを拠点として観光ショーなどで演奏をおこない、2000
年代半ば以降は海外で催される国際的な音楽イベントに多数出演するなど、活発な活動をおこなってきたグループである。
本書の目的は、グローバル化時代の音楽を通した文化的出会いのあり方を、メラネシアの一隅で実践される在来音楽の事例を通して、「現地の側」から捉え直すことにある。例え
ば著者は、2013 年10 月にアレアレの熱帯雨林に設けられた即製のスタジオで行われたCD
アルバムのレコーディングに際して観察された参与者の多様な音楽的行為に焦点をあてる。そこでは、竹製パンパイプについての演奏者の捉え方と、物理的な音響についてのエン
ジニアの捉え方、さらに、商品としての音楽作品についてのプロデューサーの捉え方の差異が顕在化しつつ、三者三様の制作行為は部分的に重なってもいた。竹
製パンパイプはスタジオの一部分に組み込まれ、音響機器は竹製パンパイプの演奏に利用され、竹製パンパイプとスタジオはCD
アルバムをめぐる物語の構成要素になり、CD
アルバムは竹製パンパイプの効力をグローバルな音楽産業へと拡張する。それぞれの制作行為において焦点化される物が部分的に重なり合い、三者の異なる発想は調停され、レ
コーディングという出来事は、ずれをはらみつつひとつの出来事として共有されていた。
竹製パンパイプが置かれた今日的な状況は、一面においては在来音楽がグローバルな音楽産業の要求する商品として作り直される状況として理解することができる。他方、それは
産業化された音楽が竹製パンパイプの制作プロセスを通じてアレアレの人々によって在来音楽へと組み込まれていく逆転した状況である。音楽をめぐる「グロー
バルな出会い」のあり方は、音楽産業の従事者と在来音楽の担い手の非対称な関係に還元することによっては捉えられない一面をはらんでいる。本書では、そう
した音楽をめぐる出会いと媒介こそが、グローバル化時代にあって異なる者同士が出会い、互いの差異を認識し、ずれをはらみながらもひとつの出来事を共有す
ることを、一時的に実現する可能性を示唆していると論じた。
(佐本英規)
日本オセアニア学会Newsletter131号1~22頁に掲載されました山本真鳥・倉田誠(2021)の論文の注2に誤りがありましたので以下のように訂正いたしま
す。
頁 項目 正 誤
1 注2 1997年 1998年
2021年度日本オセアニア学会賞選考委員会
1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2020年1月1日から 2021年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、E-mailアドレス)を 明記するものとする。
4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名を明記する。 雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、出版年を明記 する。この場合も、著書または論文を日本オセアニア学会事務局に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が必要であ ると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は 2021年11月1日から2022年1月14日まで(必着)とする。
6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外に
E-mail でも受け付けることとする。
(日本オセアニア学会事務局)
〒110-8713 東京都台東区上野公園13-43
東京文化財研究所 無形文化遺産部 音声映像記録研究室(石村行)
TEL 03-5809-0428 FAX 03-3823-4854
E-mail:secretary[アットマーク]jsos.net
7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
8. 2022年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内に PCO へ投稿することが望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願
いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。
日本オセアニア学会賞規定
第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状等)
受賞者には賞状等を授与する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。
附則
本規定の改定は令和2年7月31日より施行する。
第39回研究大会・総会事務局 長島怜央
第39回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。前回大会と同様に、新型コロナ感染症対策として、研究大会・総会はオンライン
(Zoom)上で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。申し込みの締め切りは、2022年2月4日(金)となっております。
※以下に記す情報は現時点での予定であり、今後変更される可能性がありますので、次回サーキュラーにもご注意ください。
【日時】
2022年3月17日(木)9:30~12:10、13:10~18:00
(理事会および評議会:研究大会日の1~2週間前に別途Web会議で開催予定)
※17日(木)9:00 よりZoom上に入室できるように設定します。
【会場】(Zoom上で開催)
参加者宛には、大会の前日までにZoomのURLを登録されたメールアドレス宛に送付する予定です。
【研究大会・総会スケジュール】
3月17日(木)
9:30~9:40 会長挨拶
9:40~12:10 一般発表
13:10~14:30 総会・学会賞表彰等
15:00~18:00 一般発表
【参加費】
有職者・無給者(大学院生、学生等)ともに無料
【参加・発表申し込み】
研究大会・総会について、氏名、所属、研究発表の有無、発表される場合には「発表題目」などを、学会HP内の参加申込用フォームにご記入ください。申し込
みの締め切りは、2022年2月4日(金)です。
また、フォームがご利用できない場合は、ご氏名と連絡先を明記の上、Eメールで必要事項を大会・総会事務局にお知らせください。
※研究発表の時間は、演題数にもよりますが、質疑応答を入れて30
分程度を予定しています。また、Zoom上で発表を行うことになります。当日の方法等については追って連絡いたします。
【問い合わせ先(事務局)】
東京成徳大学国際学部 長島怜央
〒114-0033 東京都北区十条台1-7-13
E-mail: oceaniataikai39[atmark]gmail.com
関西地区例会幹事 平野智佳子
今年度の関西地区例会では大竹碧会員と木村彩音会員をお迎えし、お二人のご研究の最新の展開についてお話しいただきます。
今年度の関西地区例会は、対面・オンラインのハイブリッド形式で開催する予定です。日程と参加申し込みの方法は下記の通りです。万障お繰り合わせの上ご参
加くださいますようお願い申し上げます。
日時:2022年2月12日(土)13:00~17:15
会場:国立民族学博物館 大演習室/オンライン開催(新型コロナウイルス感染状況に応じて変更の可能性あり)
*ご参加の方は、対面・オンラインいずれの場合も以下のURLより事前登録をお願いいたします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScnoQlpbV2lTZf_a82pIyWQKHto2Z9wgp9nVpWgbqcxBXP-tg/viewform?usp=pp_url
*参加者の皆様には、前日までにZoomのURLをお知らせいたします。なお、ご参加の受付は2022年2月10日(木)23時59分までとさせて頂きま
す。
プログラム:
【発表1】
13:00~14:00 発表者:大竹碧(京都大学)
「再定住地を作り替える:マーシャル諸島共和国イバイ島における都市の生成」(仮題)
14:00~14:15 コメンテーター: 棚橋訓(お茶の水女子大学)
14:15~15:00 全体での討論
【発表2】
15:15~16:15 発表者:木村彩音(神戸大学)
「異人の祖先、海の向こうの故地―日系トレス海峡民を事例に」(仮題)
16:15~16:30 コメンテーター: 山内由理子(東京外国語大学)
16:30~17:15 全体での討論
◆懇親会については追ってご案内します。
問い合わせ先:
平野智佳子 hiranochiアットマークgmail.com (”アットマーク”を"@"に変えて下さい)
関東地区研究例会幹事 河野正治
2021年は『生態人類学は挑む』シリーズや若手研究者の学位論文の書籍化など、日本オセアニア学会員による単著の出版が相次いだ年でもありました。今年
度の関東地区研究例会では、2021年に『自給自足の生態学:ボサビの人びとのオートポイエーシス』(京都大学学術出版会)を刊行された小谷真吾会員と、
同じく2021年に『森の中のレコーディング・スタジオ:混淆する民族音楽と周縁からのグローバリゼーション』(昭和堂)を刊行された佐本英規会員をお迎
えし、新刊紹介を兼ねたご発表をしていただく予定です。
日程や参加申し込みの方法は下記の通りです。多くの方のご参加をお待ちしております。
開催日程:2022年2月11日(金・祝)13時30分~17時15分
開催方法:ウェブ会議システム(Zoom)によるオンライン型開催
※ 参加ご希望の方は2月10日(木)18時00分までに以下の参加登録フォームよりお申し込みください。当日までにZoomのリンクをお知らせします。
参加登録フォーム:https://forms.gle/oSfETLSL7TTRVbWy7
プログラム(仮):
【発表1】
13:30~14:30 研究発表:小谷真吾(千葉大学)
14:30~14:45 コメント:田所聖志(東洋大学)
14:45~15:15 全体での討論
【発表2】
15:30~16:30 研究発表:佐本英規(筑波大学)
16:30~16:45 コメント:石村智(東京文化財研究所)
16:45~17:15 全体での討論
※
発表題目やオンライン懇親会の開催有無も含めて調整中です。プログラムが確定次第、メーリングリストにてご案内させていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
問い合わせ先:
河野正治 m_kawanoアットマークtmu.ac.jp (”アットマーク”を"@"に変えて下さい)
2021年3月18日(水)、第38回日本オセアニア学会総会がオンラインで開催されました(幹事校:東海大学)。議事は、以下の通りです。
1. 会長の承認について
中澤港氏が新会長となることが承認されました。
2. 理事・評議員・幹事・会計監査の分担について
理事・評議員・幹事・会計監査の分担が以下のように承認されました。
<理事> 石村智(庶務)、飯高伸五(情報化)、小林誠(会計)、里見龍樹(研究集会)、深山直子(渉外・モノグラフ)、田所聖志(NL)、山口徹
(PCO)
<評議員> 梅崎昌裕、石森大知、小野林太郎、深川宏樹、福井栄二郎、古澤拓郎、渡辺 文
<幹事> 平野智佳子(関西例会)、河野正治(関東例会)、栗田博之(会長補佐)、小谷真吾(情報化)、塚原高広(PCO)
<会計監査> 桑原牧子、馬場淳
3. 2020年度決算
・ 2020年度決算(2020年3月1日~2021年2月28日)について、倉田誠会計担当理事より報告があり、承認されました。
・ 会計監査の田所聖志会員と山口徹会員により適正に処理されていることが確認されました。
4. 2020年度事業報告
下記の事業報告があり審議され、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.36の刊行(56 pages.:論文3本)
・NEWSLETTER no.127、128、129の刊行(論文3本、報告2本、新刊紹介3本)
・研究例会の実施
関東地区 2021年2月21日 オンライン開催(早稲田大学) 発表2本
関西地区 2021年1月9日 オンライン開催(兵庫県立大学) 発表2本
・第38回研究大会・総会の実施
2021年3月18日 オンライン開催(幹事校:東海大学)
・JCASA等の活動
・石川榮吉賞の選考
・第20回日本オセアニア学会賞の選考
・第18回評議員選挙の実施
5. 2021年度事業計画
下記の事業計画が審議の結果、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.37の刊行
・NEWSLETTER no.130、131、132の刊行
・モノグラフの募集
・関西地区・関東地区研究例会の実施
・第39回研究大会・総会の実施
・JCASA等の活動
・石川榮吉賞の選考
・第21回日本オセアニア学会賞の募集
6. 2021年度予算案(別紙参照)
2021年度予算(2021年3月1日~2022年2月28日)について、倉田誠会計担当理事より説明があり、承認されました。
報告事項
1. 石川榮吉賞について
受賞者:山本真鳥会員
2. 第20回日本オセアニア学会賞について
受賞者:大津留香織会員
受賞作品:『関係修復の人類学』
3. その他
・日本学術会議問題で理事会声明の発出
・同人文・社会科学系学協会共同声明に賛同学協会として会長名で連名
・次回の研究大会・総会(事務局:長島怜央会員)
1) 受賞者: 山本真鳥 会員
2) 推薦理由
山本真鳥氏は、ポリネシアのことに西サモアでの長期のフィールドワークから文化人類学的な調査をはじめ、その後、オセアニア各地において幅広く調査研究
を行っている。伝統的政治システム、社会変化、移民、芸術など多彩なトピックを扱っているが、とくに交換システムなどに関する経 済人類学的研究は、『儀礼
としての経済―サモア社会の贈与・権力・セクシュアリティ』(山本泰との共著、弘文堂、1996年)、『グローバル化する互酬性―拡大するサモア世界と首
長制』(弘文堂、2018年)など、芸術関係は『Art and Identity in the Pacific: Festival of
Pacific Arts』(JCAS Area Studies Research Reports
no.9.、2016年)、の著作・編著に結実して高く評価されている。それ以外にも人類学・オセアニア地域研究に関わる数多くの編著を刊行している。またオセアニアに関
する人類学の古典ともなっている主要な研究書の翻訳・紹介を通じて、日本におけるオセアニア研究の発展と裾野を広げることに大きく貢献した。翻訳書には、
『サモアの思春期』(マーガレット・ミード著、畑中幸子と共訳、蒼樹書房、1976年)、『歴史の島々』(マーシャル・サーリンズ著、法政大学出版局、
1993年)などがある。
本学会での活動としては、2015年から2019年にかけて2期4年間会長を務めたほか、理事・評議員などの役職を長年にわたって歴任した。会長在任中
には、沖縄で第35回研究大会・総会とあわせて、日本オセアニア学会創立40周年記念公開シンポジウムを開催することで、日本におけるオセアニア研究のプ
レゼンスを高めることに一方ならぬ貢献を行った。以上のように、オセアニア研究の振興に多大なる寄与を果たしてきたこと、くわえて、長年にわたり日本オセ
アニア学会の発展に貢献してきたことから、山本氏を石川榮吉賞受賞者として推薦することに決定した。
石川榮吉賞を受賞して
山本 真鳥
この度は、日本オセアニア学会の創始者石川榮吉先生のお名前を冠した賞をいただきまして、誠にありがとうございました。石川先生
は私が博士課程に進学した 頃非常勤で教えにおいでになられまして、それが最初の出会いです。いろいろとアドバイスや励ましのおことばをいただきました。
私がオセアニア研究を始めたのは学部生の時で、そのときには東南アジアなど、さまざまなエスニック集団が交錯しているところを授業で学んだりするうち、こ
んなところを研究するのはしんどそうだ、島は境界が明確なので研究しやすいのではないか、と考えたことがきっかけです。ただ、実際にそのために楽に研究で
きたかというと、そう簡単ではありません。卒論にはトンガ王国の社会構造に焦点を当て、その後サモアの首長制を研究しようと、修 士論文の後、イーストウェ
ストセンターを経てサモアでフィールドワークをする段取りとなりました。しかし、首長の何たるかを知ろうと村の首長会議で参与観察をしていても、アピア市
の役所で働くエリートの若者に首長称号への関心について訊ねてみても、首長位の継承の話や、地域の紛争解決の話などを集めてみても、つかみ所がなく手探り
状態でした。やがて儀礼交換に活路を見いだしその調査を始めたのは最後の2~3か月です。儀礼交換の研究を短期的なフィールドワークで本格的に行ったの
は、ハワイから帰国後のことでした。
オセアニア研究をされている指導教官がおられなかったということがあり、オセアニア学会を通じて親しくなった5歳前後の先輩や仲間たちに支えられたこ と、
そして、彼らと民博での共同研究会などで顔合わせをするといったことは、私の研究に大きな影響があったと思います。学会と民博によって研究者としての私は
育てられたように思いますし、そのような我々を見守ってくださる石川先生の姿がありました。
恩返しというわけではありませんが、私が学会に対して大きな貢献をしたと思うのは、Man and Culture in
Oceaniaの編集を印東先生から引き継いだことです。お手伝いをするところから、主幹となりやがて役割を引き継いでいくまで、合わせて10年ほども関わっていたように
思います。ただ労働提供というばかりでなく、編集の仕事は私にとってはとても重要な修行となりました。査読という作業を通じて、論文が確実によくなるとこ
ろを目の当たりにして、得るところは大きかったと思っています。
私自身の研究は、儀礼交換から、太平洋系移民、そしてその本国社会への影響というように広がって行きました。さらに太平洋芸術祭やパシフィカ・フェスティ
バル、ニュージーランドのオセアニア系アーティストの研究という具合です。大学も本年をもって定年退職となりますが、研究では現役のつもりでおりますの
で、何卒よろしくお願い申し上げます。
最後に石川先生によって設立され、学兄方のご努力で育てられてきた学会の、今後の発展と皆様方の研究の一層の展開を祈念いたします。
1) 受賞者: 大津留香織 会員
対象著作: 『関係修復の人類学』成文堂、2020年
2) 選考理由
大津留香織著『関係修復の人類学』はRestorative
Justice(一般に「修復的司法」と呼ばれるが、著者は含意を広げてRJと略記する)について、ヴァヌアツの二地域で実施した調査にもとづき、独自の議論を展開して、
RJを斬新かつ深い視点で提起することに成功している。すなわち、土地紛争、宣教師の死、交通事故という問題に、当事者たちがどのように相互行為をつうじ
て和解を成り立たせていくかを詳細に考察し、その過程で人間に備わる共感能力および共感によって作りつづけられる物語がいかに決定的な働きを果たすのかを
説得力ある形で提示するのである。毀損した関係を人間が修復する姿が、国家司法の枠組を越える普遍性を意識して堂々と論じられており、そこでは法学、社会
学、犯罪学、心理学、そして何より人類学の議論を横断し繋ぐ力量が十分に発揮されている。各分野での参照文献の量や基本概念の理解に物足りなさは残るが、
オセアニア研究の可能性をみごとに広げる著作として、第20回日本オセアニア学会賞にふさわしいと判断する。
第20回(2020年度)日本オセアニア学会賞選考委員会
2021年度日本オセアニア学会賞選考委員会
1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、
2020年1月1日から2021年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のも
のに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、
E-mailアドレス)を明記するものとする。
4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書ま
たは論文名を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者
名)、出版社、出版年を明記する。この場合も、著書または論文を日本オセアニア学会事務局に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理す
る。なお、推薦理由が必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は 2021年11月1日から2022年1月14日まで(必着)とする。
6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外に
E-mail でも受け付けることとする。
(日本オセアニア学会事務局)
〒110-8713 東京都台東区上野公園13-43
東京文化財研究所 無形文化遺産部 音声映像記録研究室(石村行)
TEL 03-5809-0428 FAX 03-3823-4854
E-mail:secretary[アットマーク]jsos.net
7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
8. 2022年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内に PCO へ投稿することが望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。
日本オセアニア学会賞規定
第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状等)
受賞者には賞状等を授与する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。
附則
本規定の改定は令和2年7月31日より施行する。
馬場 淳・平田晶子・森 昭子・小西公大(編)
『萌える人類学者』
(東京外国語大学出版会、2021年3月)
本書は、これまで日本オセアニア学会の発展に寄与してきた栗田博之氏の退職(2020年3月)を記念して編まれたエッセイ集である。もちろん、昨今の出 版
事情から、栗田氏へのオマージュは「裏の顔」であり、文化人類学の魅力を伝える一般書、また文化人類学を学びはじめた学部生向けの準教科書というのが「表
の顔」である。しかし「裏の顔」は、そこかしこに見てとれることだろう。
まず、「あとがき」で述べられているように、執筆陣は、特別ゲストを除けば、栗田氏の勤務先であった東京外国語大学の関係者で組織されている。次に、今 と
なっては「古めかしく」感じられるかもしれない「萌え」をタイトルに据えているのも、編者たちが栗田氏の言動から感受した直観的な印象によるものである。
さらに、第3部で萌える人類学者の代表的人物として取り上げられているのが、ほかならぬ栗田氏なのである。
ここで強調しておきたいのは、第3部以外の章も栗田氏へのオマージュをそこはかとなく表明しているという点だ。確かに、各章が対象とする地域は世界各地 に
および(カナダ、キューバ、ツバル、オーストラリア、パプアニューギニア、インドネシア、日本、ラオス、タイ、インド、ケニア、ガーナ、コートディヴォ
ワールなど)、そのテーマ=萌えの対象も、先住民の文化復興、芸能(パフォーミングアーツ)、名前、島、歌姫の声音、日本食、布(機織り)など、多岐にわ
たる。この拡散的・遠心的なエッセイ群は、しかし、栗田氏の業績に必ず言及することでつながりあう。それによって、栗田氏の業績が異なる文脈(地域とテー
マ)のもとでいかなる「糧」となるかを示唆しつつ、伏線として「裏の顔」の輪郭が与えられていくのである。
さて、この栗田氏への潜在的な求心性を孕みつつ、「萌え」というテーマのもとで自由につづられた12本のエッセイ(序章と終章を除く)は、本書において 3
つのパートに分けられている。第1部「共鳴する萌え」は、フィールドの人々の萌えと執筆者の萌えの共鳴を主題にするエッセイ群、第2部「内旋する萌え」は
人類学者の一方的な萌えやその内省を主題とするエッセイ群である。それに対して、第3部「人類学への萌え」は栗田氏のエッセイやインタヴュー、日常的発言
を検討することで、「萌える人類学者」像を具体的に提示しようという試みである。
以上のように、本書はオセアニアに特化した書物ではない。ただ本書の性格に鑑みれば、ここでオセアニアに関わるエッセイくらいは紹介しておいても場違い で
はないだろう。なお以下の章解説は、序章の「本書の構成」と重複するところがあることをお断りしておく。
第1部には、ツバルに関する小林誠氏のエッセイ「島に萌える――ツバルにおける気候変動、科学、キリスト教」(第4章)がおさめられている。小林氏は、 気
候変動により「沈む島」であることに萌える島外の人々と、キリスト教を信仰し島は沈まないと考える島民との狭間で、人類学者としての葛藤を吐露する。そし
て人々の多様な萌えが交差する環礁と自らの萌えを振り返り、沈むと主張することもそれを否定することも政治性を伴うと指摘しつつ、「沈む島」を「武器」に
ツバルが注目を集めるほうが、援助を呼び込み、島を守ることに繋がるだろうと結ぶ。
第2部には、山内由理子氏と槌谷智子氏のエッセイがおさめられている。まず、山内氏は「西オーストラリアの町の日本食に萌える――ブルームの日本人移民
の過去と現在」(第5章)と題して、ブルームの日本食について論じる。読者は、日本食のグローバル化をめぐる話だと早合点するかもしれないが、残念ながら
その期待はすぐに裏切られてしまう。というのも、その田舎町では、今となっては、日本人コミュニティも日本食レストランもなく、「真の」日本食など期待で
きないからである。それでもなお山内氏は、ときおり人々の語りに表れる「真の」日本食にこだわる。注目すべきは、山内氏が食の真正性を、当事者性や伝統的
食材の使用、原初的な味の再現ではなく、歴史的につみあげられた社会関係や相互行為のなかから生成してくるものとしてとらえなおした点である。このエッセ
イは、食が自他の境界確定や(真珠貝採取業や日本人移民を含む)歴史的社会的関係をみる窓口であることを端的に示しつつ、食の真正性そのものの見方を転換
させてくれるだろう。
次に、槌谷氏は「出会いに萌える――パプアニューギニアでのフィールドワーク」(第8章)と題して、フォイ族でのフィールドワークをはじめた当時のみず み
ずしい驚きや発見をあたたかいタッチでつづっている。現地の人々や海外の人類学者との「出会い」から、それまで学んできた人類学的な知識(ケガレ、邪術、
霊など)が具体的な血肉を得、生きた世界として立ち現れていくプロセスが丁寧に記述されている。これまで槌谷氏がさまざまなところで発表してきたフォイの
民族誌の「はじまり」がここにある。
第3部では、上述したように、萌える人類学者の代表的人物として、栗田氏が全面的に登場し、本書のもつ「表」と「裏」のバランスが揺れ動く。栗田氏が 「表
の顔」を考慮して本書に寄稿=再録したのは、1985年に『理想』誌に発表した「ボンジュール・トーテミスム」(第9章)である。皆川勤氏は、『図書新
聞』(3503号、2021年7月10日)における本書の書評にて、この「ボンジュール・トーテミスム」を引いたうえで「栗田博之は、わたしにとって未知
の人類学者だが、このような刺激的な文章にもっと早く知りたかったと感じた」と述べている。
また、第3部の特徴は、学会でも稀有な論客と言われる栗田氏の発言を収集・採録している点である。平田晶子氏による「ボンジュール・トーテミスム」の解 題
(第10章)には研究室でのインタヴューが掲載されており、論文などでは表出しない栗田氏の思考の一端をうかがうことができるだろう。第12章「萌える人
類学者の教え」は、栗田氏の人柄と業績を簡単に紹介したうえで、その日常的発言を拾い集め、解説を加えるかたちをとっている。具体的には、導入部の「シュ
ナイダーを見習え!」(馬場淳)にはじまり、超フェミニスト(平田晶子氏)、子育てと性(森昭子氏)、先住民史観(工藤多香子氏)、そして特別ゲストの山
本真鳥氏による旅行者と人類学者の違いが、検討されている。
「裏の顔」がクレッシェンド的に頭をもたげる展開のなかで、何が表で裏なのか――ここまでくると、その区分はかなり曖昧であ る。栗田氏へのオマージュは
「萌える人類学者」像の輪郭を描くこととパラレルであるが、「あとがき」でも述べられているように、そのオマージュを差し引いても、各エッセイが準教科書
的でありながら専門的にも読み応えのあるエスノグラフィになっていることは言うまでもない。いずれにせよ、いくつかの仕掛けが詰まった本書を広く紹介して
いただけたら望外の喜びである。
(馬場 淳)
井原泰雄・梅﨑昌裕・米田 穣(編)
『人間の本質にせまる科学――自然人類学の挑戦』
(東京大学出版会、2021年3月)
オセアニアの人々の特徴を明らかにする学問のひとつとして自然人類学は重要な役割を果たしてきた。本書は、東京大学教養学部の1、2年生向けのオムニバ
ス講義「人間の本質にせまる科学」に基づいており、自然人類学の最新の知見を分かりやすく紹介した内容となっている。
東京大学の学部講義に基づく書籍として、これまでも数々の名著が生みだされてきた。『知の技法』や『東京大学のアルバート・アイラー』、比較的最近では
『科学の技法』等がある。書籍に結実したという点で、これらの基となった講義の評判も高かったと思われる。そして、本書の出発点であるオムニバス講義「人
間の本質にせまる科学」もやはり、講義期間中、大いに盛り上がったそうである。
編者のお一人から伺ったところ、2020年度はテレビ会議システムを使ったオンライン講義形式で行われたという。受講者は学部1、2年生を中心に500
人以上に上った。毎回、チャットによる質問を受け付けていたが、あまりにも質問が多いため、質問内容を整理して講師に伝えるTAが必須であったそうであ
る。また、質問内容には本質的な疑問も含まれるなど、受講者が熱心に受講していた様子が伺えたという。自然人類学は、高等学校までに学ぶ教科に含まれない
ため、一般に、学部1、2年生にはなじみのない学問分野である。こうしたなか、学部学生の知的関心を喚起したという点は特筆すべきであろう。
現代の自然人類学は、近年になって発展した科学的手法を取り入れて日々進展しており、また、さまざまな学問分野が参入するようになっている。こうした現
況を反映し、本書が紹介する学問分野も、次の通り多岐にわたる。霊長類学、形質人類学、進化人類学、進化生物学、人類遺伝学、進化遺伝学、古代ゲノム学、
運動学・生体力学、人類生態学、人口学、数理生物学、考古学、文化人類学。
本書は、多岐にわたる自然人類学の研究テーマを、人類進化、ゲノム科学、生理機能と環境適応、文化と人間に分け、全体として4部構成とし、「はじめに」
のほか15章とコラム7編を収録する。本稿では、各章とコラムのタイトル、および各執筆者のみ以下に紹介し、最後に、文化人類学者である筆者の視点から若
干の感想を記したい。
本書の目次・構成
はじめに――自然人類学を学ぶ意義と魅力
(長谷川壽一)
Ⅰ 人類進化の歩み
第1章 ヒト以外の霊長類の行動と社会――ヒトを相対化する
(中村美知夫)
コラム 霊長類の子育て
(齋藤慈子)
第2章 猿人とはどんな人類だったのか――最古の人類
(河野礼子)
コラム 人類化石の発見,いかに
(諏訪 元)
第3章 ホモ属の「繁栄」――人類史の視点から
(海部陽介)
第4章 旧人ネアンデルタールの盛衰――現生人類との交代劇
(近藤 修)
コラム 旧人と新人の文化
(西秋良宏)
Ⅱ ヒトのゲノム科学
第5章 アジア人・日本人の遺伝的多様性――ゲノム情報から推定するヒトの移住と混血の過程
(大橋 順)
コラム HLAと日本人の形成
(徳永勝士)
第6章 全ゲノムシークエンスによる人類遺伝学――ヒトゲノムの変異と多様性
(藤本明洋)
第7章 自然選択によるヒトの進化――形質多様性と遺伝的多様性
(中山一大)
第8章 縄文人のゲノム解読――古代ゲノム学による人類の進化
(太田博樹)
コラム 霊長類の遺伝
(石田貴文)
Ⅲ 生きているヒト
第9章 ヒトはなぜ直立二足歩行を獲得したのか――身体構造と運動機能の進化
(荻原直道)
第10章 なぜヒトは多様な色覚をもつのか――霊長類の色覚由来から考える
(河村正二)
第11章 ヒトの環境適応能――生理的適応現象とその多様性
(西村貴孝)
第12章 生存にかかわる腸内細菌――ホモ・サピエンスの適応能
(梅﨑昌裕)
コラム 人口からみるヒト
(大塚柳太郎)
Ⅳ 文化と人間――文理の境界領域
第13章 言語の起源と進化――その特殊性と進化の背景
(井原泰雄)
第14章 考古学と自然人類学――縄文時代・弥生時代の生業を考える
(米田 穣)
第15章 人種と人種差別――文化人類学と自然人類学の対話から
(竹沢泰子)
コラム 人新世:ヒトが地球を変える時代
(渡辺知保)
筆者は、文化人類学を専門としてパプアニューギニアで現地調査を行ってきた。本書を手にして思うことは、こうした自然人類学の研究領域について、文化人
類学者がもっと関心や関与を深めることで、より学問的な発展が促されるのではないだろうかということである。
例えば、第12章で人類生態学者の梅﨑は、人類史における人類の環境適応について概説した上で、タンパク質摂取量が少ない環境で生活してきたパプア
ニューギニア高地人がタンパク質欠乏症状を示さない現象には、彼らの腸内細菌叢が寄与している可能性があると指摘している(pp.198-203)。こう
した研究は、人間の食生活を扱っている。どのような食事をとっているのか、どのような食事をとってはいけないのか。こうした事柄によって形作られる食生活
は、数多くの文化人類学者が指摘してきたとおり、文化的な価値観が大きく関与する(e.g. 大貫
1995)。そうした意味で、食生活と関連する研究に文化的な価値観に関心を払ってきた文化人類学者が参与することによって、なんらかの学問的な発展が生じる可能性もあ
る。実際に、生物人類学と文化人類学との共同の意義もすでに提唱されている(e.g. Parkin and Ulijaszek eds. 2007)。
こうした点を特に感じたのは、本書の第4部「Ⅳ 文化と人間――文理の境界領域」である。ここでは、言語、生業形態、食料生産、人種の概念が扱われる。
これらは、文化人類学が長い間あつかってきた研究テーマである。こうしたテーマの研究が自然人類学の側ではどのように行われているのか知ることは、文化人
類学を学ぶ者にとってもためになると思われる。なお、第15章の執筆者である竹沢は文化人類学者であるが、この章は、人種という概念について考える際に自
然人類学の知見への目配りが極めて重要であることがよく分かる内容となっている。文化人類学者が自然人類学に関心をもつことの有効性が明確に示されている
といえよう。
最後のコラムにおいて、人類生態学者の渡辺は人新世(Anthropocene)の概念を取り上げている。人新世という概念について、近年、文化人類学
でも触れられることが増えてきた。人新世とは、地質年代のひとつとして提唱されている概念であり、もともと地質学者や大気科学者が提案したものである。人
類の活動が地球環境を変化させるという点が、人新世の特徴である。人新世について、渡辺は以下のように述べている。
人新世を出現させた現生人類は、人間の本質からもっとも離れてしまったのだろうか。それとももっとも本質に近づいたと考えるべきだろうか。もし、化石人
類の中に人新世をもたらすヒントが見つかるならば、人新世は、数百万年を経て人間の本質が開花した時代ということになるのかもしれない。(p.252)
人類史という点を意識しながら文化人類学は、「人間とは何か」という問いに答えようとしてきた。そうであるならば、進化と適応についてより深く考えてき
た自然人類学の知見を吸収することで、文化人類学の側からも、渡辺の提起するような「人間の本質」に関する問いにより接近できるのではないかと思われる。
本書の一読をおすすめしたい。
<参照文献>
Parkin, David J. and Ulijaszek, Stanley J. (eds)
2007 Holistic Anthropology: Emergence and Convergence. Berghahn Books.
菊地成孔・大谷能生
2005 『東京大学のアルバート・アイラー――東大ジャズ講義録』メディア総合研究所。
小林康夫・船曳建夫
1994 『知の技法――東京大学教養学部「基礎演習」テキスト』東京大学出版会。
大貫恵美子
1995 『コメの人類学――日本人の自己認識』岩波書店。
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構初年次教育部門・増田建・坂口菊恵
2017 『科学の技法――東京大学「初年次ゼミナール理科」』東京大学出版会。
(田所聖志)
日本オセアニア学会会長 中澤 港
2021年度の研究大会・総会につきましては、新型コロナウイルス感染症の状況をみながら、長島怜央会員(東京成徳大学)のもと準備を進めております。開
催場所や開催方法などの詳細につきましては追ってホームページ、メーリングリスト等でお知らせします。また地区例会につきましても、各地区担当の理事や幹
事のもと準備を進めておりますので、詳細については決まり次第、ホームページ、メーリングリスト等でご連絡いたします。
新入会員
東平福美(東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻日本語教室)
所属変更
塚原高広(名寄市立大学保健福祉学部)
佐本英規(筑波大学人文社会系)
田所聖志(東洋大学社会学部)
第38回研究大会・総会事務局 黒崎岳大
第38回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回は、新型コロナ感染症対策の中で、研究大会・総会はオンライン
(ZOOM)上で開催いたします。
【日時】
2021年3月18日(木)9:00~13:05、13:50~18:00
(理事会及び評議員会は、3月10日の10時から11時(理事会)、11時から12時(評議員会)にオンラインで開催予定)
※18 日(木)8:45 よりZOOM上に入室できるように設定します。
【会場】(ZOOM上で開催)
参加者宛には大会の前日までに抄録とともに、ZOOMのURLをメーリングリストで送付する予定です。
【研究大会・総会スケジュール】
3月18日(木)
08:45~ ZOOMへの入場開始
09:00~09:10 開会挨拶
09:10~10:25 一般発表:第1セッション・座長 倉光ミナ子(お茶の水女子大学)
09:10~09:35 A 石村智(東京文化財研究所):ポリネシアにおける社会階層化と人口・環境との関連
09:35~10:00 B 山本真鳥(法政大学):オセアニア植民地時代における非白人移住者(1)
10:00~10:25 C 矢野涼子(神戸大学大学院):明治・大正期日本がみたサモア諸島
10:30~11:45 一般発表:第2セッション・座長 小林誠(東京経済大学)
10:30~10:55 D 深山直子(東京都立大学):NZマオリによるラーフイの宣言――コロナ警戒下での先住的環境思想の「拡大」
10:55~11:20 E 大島崇彰(東京都立大学大学院):オセアニアの嗜好品カヴァを再考する――文化/物質の対立を超えた議論に向けて-
11:20~11:45 F 山口優輔(京都大学大学院):気候変動の影響を受ける小島嶼の暮らし――ソロモン諸島国テモツ州における事例研究
11:45~13:05 総会・学会賞表彰等
[休憩 13:05~13:50]
13:50~15:05 一般発表:第3セッション・座長 石村智(東京文化財研究所)
13:50~14:15 G 山口徹(慶應義塾大学):北部クック諸島プカプカ環礁の初期居住期を再考する
14:15~14:40 H 棚橋訓(お茶の水女子大学): 墓が拓く、墓が結ぶ――クック諸島プカプカ環礁のislandscape
14:40~15:05 I 島崎達也(慶應義塾大学大学院):マリアナ諸島における網代圧痕土器の諸問題
15:10~16:25 一般発表:第4セッション・座長 馬場淳(和光大学)
15:10~15:35 J 木村彩音(神戸大学大学院):出自を付与する――トレス海峡諸島民の伝統的養子縁組から
15:35~16:00 K 片岡真輝(アジア経済研究所/カンタベリー大学):フィジーにおける記憶の政治利用と集合的記憶が民族関係に及ぼす影響
16:00~16:25 L 丹羽典生(国立民族学博物館):埋葬形式の標準化――19世紀後半以降におけるフィジーの葬送の変容
16:30~17:50 ミニシンポジウム:海外研修航海から考える大学教育と人的交流の可能性:オセアニア地域訪問での事例を中心に
司会・モデレーター・黒崎岳大(東海大学)
報告(1)・千葉雅史(東海大学)
報告(2)・笹川昇(東海大学)
報告(3)・黒崎岳大
ディスカッサント:大江一平(東海大学)
【参加費】
有職者・無給者(大学院生、学生等)ともに無料
【参加の問い合わせ】
参加および発表申込はすでに締め切っております。参加にご関心がある方は下記の事務局までお問い合わせください。
関東地区研究例会幹事 里見龍樹
2020年度の関東地区例会を、Zoomを用いたオンライン形式で以下の通り開催した。
【日時】2021年2月21日(日) 14:00~17:30
【発表者】紺屋あかり会員(明治学院大学)、浅井優一会員(東京農工大学)
【コメンテーター】橋爪太作会員(早稲田大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)
【プログラム】
14:00~14:50 第1発表 紺屋あかり会員
「パラオにみることばの物象化と海の底の石」
14:50~15:10 コメンテーター2人によるコメント
15:10~15:40 質疑応答
15:50~16:40 第2発表 浅井優一会員
「外来王を巡るプラグマティクス:現代フィジーにおける神話の語りと儀礼の秩序」
16:40~17:00 コメンテーター2人によるコメント
17:00~17:30 質疑応答
本年度の関東地区例会は、オセアニア地域における言語の社会的生とでも呼ぶべき主題について先鋭的な研究を行っている会員2名を発表者に迎えて開催した。
紺屋あかり会員は、パラオにおける詠唱などの言語実践を「ことばの物象化」という概念によって統一的にとらえ、植民地化以前/以後における「ことばの物
象化」の歴史的変容と持続性について考察した。「ことばそれ自体」の存在性に迫ろうとする精妙で斬新な議論に対し、オセアニア各地の事例を念頭にいくつも
の質問が寄せられた。
浅井優一会員は、現代フィジーにおける土地、集団と文書の関係性を事例に、サーリンズからトーマスを経てストラザーンに至るオセアニア人類学の理論的展
開を、ヤコブソンやシルヴァステインの言語理論を参照して大局的に把握しようとする議論を提示した。広範な理論的射程をもつこの議論に対し、人類学の理論
的現状を踏まえて意見交換が行われた。
発表を受け、合計20名の参加者によって活発な討論が繰り広げられ、例会は盛況のうちに終わった。また、終了後にはオンラインでの懇親会も行われた。
関西地区研究例会幹事 深川宏樹
2020年度の関西地区研究例会を、以下のとおりオンラインにて開催した。
【日時】2021年1月9日(土)
【会場】オンライン開催(Webex Meetings)
【プログラム】
13:00〜14:00 発表者:土井冬樹(神戸大学)
「二文化主義の実践:ニュージーランド警察が踊る先住民マオリの踊り」
14:00〜14:15 コメンテーター: 深山直子(東京都立大学)
14:15〜15:00 全体での討論
15:15〜16:15 発表者:矢野涼子(神戸大学)
「第二次マウ運動におけるサモアの現地住民による嘆願——人々の多様性と統合・対外地域との結びつき」
16:15〜16:30 コメンテーター: 飯高伸五(高知県立大学)
16:30〜17:15 全体での討論
本年度の関西地区例会は、個人発表2名、それにたいするコメンテーター2名で開催した。土井冬樹会員の個人発表では、人類学における「文化の盗用」をめ
ぐる議論が理論的に整理され、そこからニュージーランド・マオリの文化保護と二分化主義の現状に対する批判的検討がなされた。そのうえで、現在のニュー
ジーランドの警察学校で踊られるハカの先進的な事例の分析から、文化の排他的な所有権の主張ではなく、文化の神聖性と真正性の維持という観点から、マオリ
の人々が、警察によるハカの実践を許容していることが論じられた。土井会員の発表にたいして深山直子氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がお
こなわれた。つぎに、矢野涼子会員の個人発表では、サモアにおける第二次マウ運動の事例が取り上げられ、運動における嘆願書を中心とする豊富な歴史資料か
ら、サモアの現地住民(ネイティブ・混血・外国人永住者など)が誰に対し、いかなる目的や不平をもって運動に参加したのかが、主導者以外の多様な人々を含
めた視点から、多角的に考察された。そこから、マウ運動において「現地住民」と一括されがちな人々の内的多様性とその統合の機制や、海外地域との結びつき
が明らかにされ、さらにマウ運動とイギリス帝国の崩壊の動きとの関連性にまで議論は発展した。矢野会員の発表にたいして飯高伸五氏からのコメントがなさ
れ、引き続き全体での討論がおこなわれた。合計27名の参加者のもと、本例会は盛会のうちに終わった。
梅﨑昌裕・風間計博(編)『オセアニアで学ぶ人類学』(昭和堂、2020年12月)
本書は、昭和堂の「〇〇で学ぶ文化人類学」シリーズの一冊であり、序章でも述べられているように、〇〇(地域名)を知ることと人類学を知ることがパラレルになるような相互
構成的特徴をもつ。オセアニア地域ならびに人類学に関心のある一般読者を想定した本書は、同時にこの学問領域を学ぼうとする大学生向けの教科書でもある。
近年の文化人類学においては、個別地域から乖離した研究動向が見受けられる。一方、元来の人類学は、個別地域におけるフィールドワークと切り離せない知的
営為であった。したがって、この学問は、歴史的に構築されてきた人々の生活を抜きにして成立しえなかった。本書は、そうした人類学の原点をあらためて見直
す意識をもって編まれている。
他のシリーズと比較したとき、まず本書のタイトルが<文化人類学>ではなく、広く<人類学>と銘打っている点にお気づきだろう。実際、本書には、文化人類
学だけではなく、自然人類学、生態人類学、考古学などの研究成果が盛り込まれている。これは、海洋世界であるオセアニアと、その特異な環境に生きる人間を
総体的に理解しようという本書のコンセプトを反映したものである。また、各章の執筆者は、いずれも日本オセアニア学会という学際的なアカデミーで育った
「現役の」研究者である。思い出話ではなく、オセアニアの調査地で収集したデータにもとづくフレッシュな論考を集めるように心がけた。
「はじめに」と「この本をおもしろく読むための方法――あとがきに代えて」を除くと、本書の構成は、以下のとおりになっている。
序章 オセアニアを知り、人類学を学ぶ
第1章 人類史(1)―発掘からよみとくオセアニア移住史と海洋適応
第2章 人類史(2)―ゲノムに刻まれたオセアニアにおける人類の歴史
第3章 環境―オセアニアにおける植物利用の民族学
第4章 生業―パプアニューギニアの「焼かない焼畑」
第5章 医療―パプアニューギニアではどのように治療が選ばれるのか
第6章 婚姻―夫と妻、そしてXがつむぐマヌスの結婚生活
第7章 家族・親族―人工の島々に住まうマライタ島の人々
第8章 政治―ポーンペイの首長制と民主主義
第9章 経済―贈与交換のニューギニア、あるいは人と物の溶け合うところ
第10章 宗教―メラネシアの世界観とキリスト教
第11章 芸術―オセアニアの芸術と工芸の交差点
第12章 身体―イレズミからみるポリネシア社会の歴史
第13章 先住民―ニュージーランド・マオリの政治と日常
第14章 植民地―ヨーロッパ諸社会による支配と先住民フィジー人の自律
第15章 観光―オセアニア・イメージの消費
第16章 文化遺産―ナンマトル遺跡の保全と活用
第17章 資源開発―パプアニューギニア高地の天然ガス
第18章 環境問題―ツバルの気候と社会の変化
以上のように、縦軸として広義の人類学という専門分野を、横軸として個別テーマを交差させた本書がカバーする範囲は、幅広い。初学者を想定して人類学の
古典的なテーマを踏襲しつつ、オセアニアが直面している現代的な問題を取り上げている。オセアニア地域ならびに人類学について少しでも関心をもつ読者に、
本書を広く紹介していただけたら幸いである。
(編者)
新入会員
奥田梨絵(神戸大学大学院国際協力研究科博士前期課程)
山口優輔(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士過程)
所属変更
大津留香織(台南応用科技大学デザイン学部漫画学科)
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。
寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
印東道子
私が最も尊敬していた石川栄吉先生のお名前を冠した賞をいただけるのは正に夢のようであり、とても光栄です。石川先生が企画された一般向けの「南太平洋
研究講座」を受講したのが、私が「オセアニア」という研究分野と出会ったきっかけでした。1972年当時、東京女子大学の史学科2年生だった私にとって、
石川先生をはじめ、青柳真智子、石毛直道、牛島巌、島五郎、杉本尚次、藪内芳彦など、オセアニア研究の最前線で研究されていた多様な専門分野の諸先生方の
お話を身近に聞くことができる夢のような1年でした。この講座をきっかけに、ミクロネシアのチュークでの発掘調査に参加したことでフィールドワークの魅力
にとりつかれ、考古学を中心としたオセアニア研究を続けることになりました。石川先生は正に私自身の進むべき道を見つけるきっかけをつくって下さった恩人
です。
その後、私は1982年からニュージーランドのオタゴ大学大学院へ留学し、ヤップ島で行った土器技術に関する民族考古学調査をもとに学位論文を作成する
日々を送っていました。ほぼ完成したころに、石川先生から突然お手紙をいただき、帰国することになりました。石川先生は環太平洋文化研究を柱とした国際文
化学部を新設する北海道東海大学の専任教員として私を推薦して下さり、研究者としての道を拓いて下さったのです。
1988年に札幌の北海道東海大学で教育・研究生活を始めてからは、学会活動を通して少しでも恩返しができればと思い、当時の学会誌Man and
Culture in
Oceania(大塚柳太郎編集長)の編集をお手伝いしましたが、学会誌の編集をいかにより良く進めるかなど、さまざまな点で勉強になることばかりでした。1994年から
は編集長を任されましたが、補助金もなかった当時はすべて手弁当でした。まだインターネットは使えずに、海外の査読者との連絡は郵送で行うために時間が掛
かりました。文章の割付などは大変複雑なTeXを使って編集し、表のTeX作業は須田一弘さんに手伝っていただき、DTP印刷した版下を印刷所に送ってよ
うやく編集終了でした。学会誌を海外からも注目される国際学術誌に育てたいと頑張った中で、もっとも貢献できたと自負しているのは、誌名をPeople
and Culture in Oceaniaに変更することを提案し(Newsletter 58)、実行できたことです。
オセアニア学会設立15周年および30周年には、それぞれ記念の論集刊行の際に編者としてお手伝いしましたが、確実にオセアニア学会の会員の層が厚くな
り、石川先生が播いた種が結実しつつあることをひしひしと感じました。またその間、設立20周年に際しては「南太平洋のフロンティア」と題した国際シンポ
ジウムの企画をお手伝いし、P. ベルウッド、P. カーチ、J.
デヴィッドソンという一線級のオセアニア考古学者を招待することも出来ました。シンポジウムのすぐあとに行われた学会の研究大会にも参加した彼・彼女らが、通例の温泉での
学会を堪能していたことを今でも鮮明に記憶しています。
石川先生はもういらっしゃいませんが、石川先生が創設された「日本オセアニア学会」が今後も益々発展し、素晴らしい学会に育つことを心から念じ続けてい
ます。
2020年度日本オセアニア学会賞選考委員会
1.
本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2019年1月1日から
2020年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3.
自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mail
アドレス)を明記するものとする。
4.
他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名
を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、
出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が
必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は2020年11月1日から2021年1月15日まで(必着)とする。
6.
送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けるこ
ととする。
(日本オセアニア学会事務局)
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
丹羽典生研究室 宛て
TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
8. 2021年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。
第 1 条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の
振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第 2 条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第 3 条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を
公にした個人。但し、刊行時において原則として満 40 歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度 1 名とする。
第 4 条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した 5 名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第 5 条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第 6 条(賞状等)
受賞者には賞状等を授与する
附則
この規定は平成 13 年 4 月 1 日より施行する。
本規定の改定は令和 2 年 7 月 31 日より施行する。
第38回研究大会・総会事務局 黒崎岳大
第38回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回は、新型コロナ感染症対策の中で、研究大会・総会はオンライン( ZOOM
)上で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。参加および発表エントリーにつきましては、学会ホームページの参加フォームをご利
用の上、 2021年2月5日(金)までにお知らせください。
【日時】
2021年3月18日(木) 10:00~12:40、13:10~18:00
(理事会および評議会:研究大会日の1~2週間前に別途テレビ会議で開催予定)
※18日(木)9:30よりZOOM上に入室できるように設定します。
【会場】
ZOOM上で開催:参加者宛には大会の前日までにZOOMのURLをメーリングリストで送付する予定です。
【研究大会・総会スケジュール】
3月18日(木)
10:00~10:10 会長挨拶
10:10~12:40 一般発表
13:10~14:30 総会・学会賞表彰等・学会賞受賞者講演
15:00~18:00 一般発表
【参加費】
有職者・無給者(大学院生、学生等)ともに無料
【参加・発表申し込み】
参加フォームに沿って、参加・発表についてご記入ください
。発表される場合には、「発表題目」の記入が必要です。なおフォームをご利用いただけない場合は、ご氏名と連絡先を明記の上、メールで必要事項を大会・総会事務局にお知ら
せください。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて20〜25分程度を予定しています。。
関東地区研究例会幹事 里見龍樹
今年度の関東地区例会では、オセアニア言語人類学の分野で精力的な研究を展開されている紺屋あかり会員と浅井優一会員をお迎えし、お二人のご研究の最新の
展開についてお話しいただきます。
今年度の関東地区例会は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、オンライン会議システムZoomを用いて開催いたします。日程と参加申し込みの方法
は下記の通りです。万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお願い申し上げます。
日時:2021年2月21日(日) 14:00~17:30
参加申し込み:2月19日(金)までに、参加ご希望の旨をjsos.kanto2020[at]gmail.comまでメールでご連絡ください([at]
を@に変えてください)。当日までにZoomへの参加方法をお伝えします。
発表者:紺屋あかり会員(明治学院大学)、浅井優一会員(東京農工大学)
コメンテーター:橋爪太作会員(早稲田大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)
プログラム
14:00~14:50 第1発表 紺屋あかり会員
「パラオにみることばの物象化と海の底の石」(仮題)
14:50~15:10 コメンテーター2人によるコメント
15:10~15:40 質疑応答
休憩(10分)
15:50~16:40 第2発表 浅井優一会員
「外来王を巡るプラグマティクス:現代フィジーにおける神話の語りと儀礼の秩序」(仮題)
16:40~17:00 コメンテーター2人によるコメント
17:00~17:30 質疑応答
※プログラムに変更が生じる可能性があります。
※例会終了後、Zoom上で懇親会を行います。飲み物をご用意ください。
お問い合わせ:ryuju.satomi[at]waseda.jp([at]を@に変えてください)
関西地区研究例会幹事 深川宏樹
2020年度の関西地区例会を以下のとおり開催します。どうぞみなさまお誘い合わせのうえ、ご参加いただけますようよろしくお願いいたします。
◆日時:2021年1月9日(土)13:00~17:15
◆会場:オンライン開催(Webex Meetingsを使用)
*ご参加の方は、以下のメールアドレスより、ご参加の旨をお知らせくださいますようお願いいたします。メール返信にて、オンライン開催のアドレス等をお知
らせいたします。
kansaireikai2020アットマークgmail.com (‟アットマーク”を"@"に変えて下さい)
*なお、ご参加の受付は、関西地区例会当日の1月9日(土)12時までとさせて頂きます。
◆プログラム
【発表1】
13:00~14:00 発表者:土井冬樹(神戸大学)
「二文化主義の実践――ニュージーランド警察が踊る先住民マオリの踊り」
14:00~14:15 コメンテーター: 深山直子(東京都立大学)
14:15~15:00 全体での討論
【発表2】
15:15~16:15 発表者:矢野涼子(神戸大学)
「第二次マウ運動におけるサモアの現地住民による嘆願――人々の多様性と統合・対外地域との結びつき」
16:15~16:30 コメンテーター: 飯高伸五(高知県立大学)
16:30~17:15 全体での討論
◆研究会終了後、オンラインで懇親会を開催します。こちらもぜひご参加ください。(ご参加の方は、お手元にお飲み物等をご用意ください)。
◆問い合わせ先
深川宏樹 hirokifukagawa13アットマークgmail.com
(‟アットマーク”を"@"に変えて下さい)
【新刊紹介】
秋道智彌・印東道子(編)
『ヒトはなぜ海を越えたのか――オセアニア考古学の挑戦』
(雄山閣、2020年3月)
海を越えたヒトの研究
「人はなぜ海を越えたのか」と題する書を2020年3月に雄山閣から刊行した。本書の表題にある「渡海」の要因について、かつて小山修三は、大阪の国立
民族学博物館(以下、民博)で開催された「海人の世界」と題するシンポジウムで、渡海にはプッシュ要因とプル要因のある点を指摘した(小山 1998)。
戦争・食料不足・火山噴火・疫病の蔓延などは島外に脱出するプッシュ要因である。新天地のもつ様々な魅力や極楽浄土・不老不死の妙薬の探検などはプル要因
である。最近では、エルニーニョやENSOなどの気象変化による風向きの変化が移動を誘発したとする説がある(Anderson et al.
2006)。もちろん、ある地域や島から周囲に島が見える場合もあれば、見えなくとも海鳥の飛来、木の葉や木の実、流木、軽石などの漂流物によって、見えない海の向こうに
陸地を想定する場合もあったであろう。2つの要因論に加えて、嵐などで舟が流され、漂流(=ドリフト)の結果、新天地を発見・到達した場合もある。もちろ
ん、途中で沈没、餓死などで命を落とした人びとも数知れない。海を越えることは危険を伴う反面、未知の世界を目指す冒険心と希望があったであろう。
渡海の動機付けの問題以上に、これまでに島と島、島とサンゴ礁をつなぐ「海の道」は目には見えないが、オセアニア中に張り巡らされている。もちろん、ハイ
ウェイにも似た道や、暗礁と高い波で進入禁止となる地点が無数にある。風、波、魚、海鳥、クジラ、流木、木の実など、「海の道」にはさまざまな事象がとも
なう。昼間と夜間でも、海の様子は異なるし、太陽、月、星なども「海の道」をたどる上で重要な標識となった。オセアニア中に拡散したオーストロネシア語族
の人びとの拡散の歴史を考古学、人類学、言語学、民族生物学などを重要な方法として紐解くことは、「海の道」を明らかにすることにほかならない。この作業
は魅力あるテーマであり、今後も継承されることはまちがいない。
本書の構成
本書は戦後のオセアニア研究に従事してきた執筆者から構成されている。その道標となり、本書を刊行する大きな動機付けとなったのは、ハワイのビショップ
博物館に所属し、長年、オセアニア考古学のパイオニア的存在として偉大な業績を残したタテオ・シノト、つまり篠遠喜彦氏(1924~2017)がこの世を
去られたことであった(篠遠がポリネシア考古学に残した足跡がいかに大きかったかは P.
Kirch(2018)に詳しく紹介されている)。2019年4月29日、京都の梅棹忠夫邸で開催されたシンポジウムにおいて、最後に編者の一人である秋道が、「篠遠先生
に捧げる書を出したい」と宣言したことに端を発する。
執筆者は30代の若手から70代を越える研究者まで幅広い。分野も考古学を中心に、海洋人類学、自然人類学、言語学、民族植物学、カヌー研究、世界文化
遺産写真家など多彩な広がりをもっている。
本書は5章からなる。第1章はポリネシアへの拡散モデル、第2章はオセアニアにおける移住史とそのモデル、第3章は航海とカヌー、第4章はポリネシアの
文化複合とアジアとのつながり、第5章はオセアニアの文化遺産と考古学の貢献にわけて論を展開した。各章は論文とコラムをあわせて3~5篇から構成されて
いる。引用・参考とした論文・単行本にはオセアニア研究であることを踏まえれば、日本語のみならず英米・ドイツ・フランス語の引用が数多く含まれており、
それらを集積したものは、現在におけるオセアニア研究を展望する最新情報となった。
研究の時間軸は旧石器時代からオセアニアへの人類拡散を経て、現代における文化遺産の保全活動にいたるまで数万年間を対象としている。地域としては台湾か
ら東南アジア、オセアニア全域におよび、世界でもっとも広い範囲に拡散したオーストロネシア語族の研究にふさわしく広大である。以下、考古学的な研究の
エッセンスについて触れ、つぎに周辺の人類学、言語学、文化遺産学などの重要な知見について紹介したい。
本書においてもっとも提起したいのは、「海の道」をたどった人びとの生きざまについて時代を超えて探ることである。「海の道」を考古学資料のみで復元す
るのは簡単ではないが、異分野の研究を融合して移動の背景も理解することで、「海の道」への複合的なアプローチが可能になることを示したかった。以下で
は、章ごとにその内容を紹介してゆく。
考古学からみたオセアニアの「海の道」
ポリネシアへの人類の拡散の歴史については、言語や神話などから探られた時期もあるが、実際に過去のポリネシア人が食べたり使ったりした残滓や道具類を
掘り出して研究する考古学の説得力は強い。ハワイで途中下船したままポリネシア考古学にとりつかれ、一生を捧げることになったのが篠遠喜彦であった。第1
章では、ポリネシアにおける考古学研究の歴史を篠遠の貢献と共に見て行く(後藤明)。1950年代のハワイ考古学は、地上のマラエなどの石造構造物が主要
な研究対照となっていたが、年代測定法を取り入れ、出土する貝製の釣り針の型式が時間とともに変化する様子を初めて明らかにしたのが篠遠であった(丸山清
志)。また、K.エモリーと共に提唱したポリネシア全域への拡散モデルは、ながらく考古学以外のポリネシア研究者にも「オーソドックス・シナリオ」として
広く使用されてきた(野嶋洋子)。
第2章では、篠遠以降の拡散モデルが紹介されている。まず、ポリネシア人の祖集団と考えられる集団の存在が、メラネシアから西ポリネシアにかけて分布し
たラピタ土器が発掘されて明らかになるにつれ、ポリネシアに拡散するまでの動きが明らかになってきた(石村智)。しかし、発掘件数が増えるにつれ、大量の
年代測定値が報告され、拡散年代も古くなる傾向にあった。中には本当に人間活動に伴われた年代なのかが疑われるような年代も含まれるようになっていた。そ
のため、1993年に、それまで報告されていたオセアニアの先史遺跡の年代全てを見直す研究が行われ(Spriggs and Anderson
1993)、人間の移住年代が大幅に新しくなった島もあった。また、それに伴って、篠遠らが提唱していた人間の移動モデルも変更された(印東道子)。他方、オセアニアの人
びとが通過した東南アジア島嶼部は、島に居住するのに重要な動植物類を入手した地域であり、更新世代から人間が海を越えて移動していた(小野林太郎)。コ
ラムでは、ヴァヌアツで見つかった縄文土器について紹介されている。これは、フランス人考古学者J・ガランジェが出版したヴァヌアツでの発掘報告書に、数
点の縄文土器の写真が含まれていたことから、本当に縄文土器が出土するのかどうか、篠遠が行った調査の様子とその顛末が、発掘参加者によって紹介されてい
る(藍野裕之)。
モノ・言語・知識からさぐる「海の道」
考古学の遺物や遺跡と文化遺産としての保存など以外に、カヌー・漁具・栽培作物・家畜などのモノ、各地域の言語、海を越える知識としての航海術に関する
考察やアジアとのつながりを第3章と第4章で展開した。
まず、復元されたダブルカヌー「ホクレア」によるハワイからタヒチへの復元航海の実態(後藤明)やオセアニアに広く分布するアウトリガーカヌーの構造や
機能についての詳細な分析を記述した(須藤健一)。カヌー、帆、櫂などの操船にちなむ語彙について比較言語学的な考察を加え(菊澤律子)、釣り針に関して
は更新世のものから各地で多様に分化した様子がコラムで紹介されている(小野林太郎)
オセアニアの人々がアジア起源であることは知られており(片山一道)、同じくアジア起源のブタ・ニワトリ・イヌなどの家畜とタロイモ・ヤムイモ・バナナ
パンノキなどの栽培植物の語彙については、民族植物学と比較言語学での蓄積がある(Barrau 1958,
1961)。サツマイモは中南米起源であり、オセアニア世界にもたらされた経緯はYenによる3極説がある(Yen
1974)。最近の知見については秋道がまとめている(秋道 2018)。さらに、海岸部に生育する可食可能な野生種子(カンラン・モモタマナ・ククイ・タイヘイヨウグル
ミ・サガリバナ・ゴバンノアシ)のオセアニア祖語などについても今後、比較研究を進める可能性を示唆した(秋道智彌)。植物のみならず、アジアから持ち込
まれた植物類のオセアニアにおける移住史の議論では、「高い島」と「低い島」における居住地の選択が重要とされてきた。水の利用可能性とともにイモ類の栽
培技術(風間計博)、さらにポリネシアにおける汽水域やタロイモ畑での蓄養池(ロコ・イア)技術の開発(秋道 2016)など、王権と儀礼・供物の供給な
ど、考察すべき課題がまだまだある。これら、動植物に関する遺伝研究も進んでおり、単に存在の有無を追うだけでは見えなかった島嶼間のコンタクトの状況
を、動植物の移動という視点から見ることが可能になってきている(印東道子)。また、石斧と貝斧という同じ機能を持った道具をとりあげることによって、分
布が重なる島の存在を社会的背景と結びつける意義も紹介された(山極海嗣)。
第5章では、オセアニアの文化遺産とその復元活動を早くから行っていた篠遠の活動を振り返り(林徹)、オセアニアで登録された世界文化遺産や、現在登録
を目指している暫定的な登録遺産も紹介された(石村智)。ハワイにおける脱植民地運動にはビショップ博物館の考古学調査が深くかかわっており、ホクレア号
の復元や、篠遠がタヒチで発掘したダブルカヌーなども多様な形で運動に影響を与えた(大林順子)。ポリネシア文化の特徴の一つに、マラエとよばれる石を敷
き詰めた神聖な空間があるが、それらの復元に篠遠がかかわっていた例としてクック諸島のラロトンガ島(山口徹)と、タヒチで実際に復元にかかわった様子
(飯田裕子)などがコラムで紹介されている。
なお、本書の出版時期は、折しも、新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延が日本で発生する直前に当たった。日本は島国であり、今では空路・航路
を通じて海外から多くのヒトが入国する。オセアニア世界でコロナ禍の状況はどうであったのか。2020年3月、フランスのパリに滞在していたタヒチ人の女
性が帰国後、陽性が判明したのが最初の例であるが、その後、感染の拡大はヨーロッパ、米国、ブラジル、インドなどとくらべてわずかである。コロナ禍の影響
で、オセアニアへの観光客や外来の訪問者がいち早く徹底的に制限されたこと、島であることにより外界の影響から海によって隔離されていることが幸いした。
ただし、新型コロナウイルスにかぎらず、オセアニア世界では外界から疫病がもたらされた歴史は移住初期の時代からあった。
これらの問題は今後のオセアニア研究でもぜひとも取り組むべき研究課題である。秋道は『疫病と海』と題する書の編集にあたっており、2021年3月に刊
行予定である(秋道・角南 印刷中)。
文献
秋道智彌 2016. 『越境するコモンズ――資源共有の思想をまなぶ』臨川書店。
秋道智彌
2018. 「海のエスノネットワーク論と海民――異文化交流の担い手は誰か」小野林太郎・長津一史・印東道子編『海民の移動誌』昭和堂、38-65頁。
秋道智彌・角南篤編 (印刷中) 『疫病と海』(海とヒトの関係学4)西日本出版社。
印東道子 2017. 『島に住む人類――オセアニアの楽園創世記』臨川書店。
小山修三 1998. 「石器時代の海人――山立て航海と推測航海」秋道智彌編『海人の世界』同文舘、21-46頁。
篠遠喜彦・荒俣宏 1994. 『楽園考古学』平凡社。
Anderson, A., J. Chappell, M. Gagan and R. Grove 2006. “Prehistoric
maritime migration in the Pacific islands: A hypothesis of ENSO forcing.”
The Holocene 16(1): 1-6.
Barrau, J. 1958. Subsistence Agriculture in Melanesia. Bernice P. Bishop
Museum Bulletin 219. Bernice P. Bishop Museum Press.
―――― 1961. Subsistence Agriculture in Polynesia and Micronesia. Bernice P.
Bishop Museum Bulletin 223. Bernice P. Bishop Museum Press.
Kirch, P. 2018. “Yoshihiko H. Sinoto (1924-2017) and his contributions to
Polynesian archaeology.” Asian Perspectives 57(2): 325-336.
Spriggs, M., and A. Anderson. 1993. “Late colonization of East Polynesia.”
Antiquity 67 (255): 200-217.
Yen, Douglas 1974. The Sweet Potato in Oceania: An Essay in Ethnobotany.
Bernice P. Bishop Museum Bulletin 236. Bernice P. Bishop Museum Press.
(編者)
【新刊紹介】
Okamura, Toru & Kai, Masumi (Eds.)
Indigenous Language Acquisition, Maintenance, and Loss
and Current Language Policies
(IGI Global US、2020年8月)
本書は、世界の危機言語の現状を、フィールドワークをもとに記述するものである。第I部は欧米およびアフリカ、第II部はオーストラリアおよびオセアニ
ア、第III部はアジアの危機言語を対象とした。本稿では特に第II部の研究論文を中心に紹介したい。分析に関しては、言語学的・社会言語学的視座から、
当該言語社会の姿を描くことを試みた。
本書の構成は、以下のとおり3部12章である。
序論
第I部 Americas, Europe, and Africa
第1章 How the Perceived Language Status of Brunca Resource Allocation in
Costa
Rica: Policy vs. Reality
第2章 Critical Language Pedagogy in Scotland: The Case of Gaelic Medium
Education
第3章 Language Endangerment in Africa
第Ⅱ部 Australia and the Pacific
第4章 Australian Aboriginal Languages: Their Decline and Revitalisation
第5章 Preserving the Nauruan Language and Pidgin English in Nauru
第6章 Acquisition and Maintenance of the Indigenous Chamorro Language in
the
Youngest Generation in Guam
第7章 A Discourse Analytic Approach to Practices of Hawaiian Language
Revitalization in the Mass Media: Style, Bivalency, and Metapragmatic
Commentary
第8章 Persons and Address Terms in Melanesia: A Contrastive Study
第Ⅲ部 Asia
第9章 Selective Language Maintenance in Multilingual Malaysia
第10章 Language Shift and Maintenance in Uttarakhand, a Hilly State of
India
第11章 The Origin and History of the Extinct Contact-Induced Language,
Matagi
第12章 Raising Awareness of Language Minorities in Japan: Teaching About
the Ainu,
Okinawans, and Nikkei-jin
本書全体のキーワードは、「言語保持」、「言語衰退」、「言語接触」、「言語政策」、「言語復興」の五つである。
オセアニア地域を研究対象とした言語学の研究は多岐にわたるが、とりわけ言語の消滅および保持の研究は有意義なものと考える。この地域は多様な言語的世界
を形成している。これらの地域では、多くの在来言語が危機に瀕している。その一方で新たに誕生する言語もある。これらの言語が危機に瀕する要因を考察する
ことが本書の核心部分である。同時にそれは地球規模的な課題であり、早急にその解決のためのモデルを構築する必要がある。そのためにはまず、オセアニア地
域における言語の衰退に関するメカニズムを解明し、それが世界の他の地域で話されている危機言語の保持にも貢献する理論か検討する必要がある。
オーストラリアおよびオセアニア島嶼地域における危機言語について概観しているのは第Ⅱ部(第4章、第5章、第6章、第7章、第8章)である。まず、オー
ストラリアの危機言語について、著者は長年のフィールドワークを基に、その実態を述べ、特にオーストラリア原住民語の能格という文法現象を、言語類型論的
に考察し、その文法現象が世界の他の地域にも散見されるとしながらも、それは日本語にはない特性で、大変貴重だとする。能格型格組織とは、他動詞の目的語
と自動詞の主語が同じ格で示され、他方、他動詞の主語が別の格で示される文法現象をいう。このような特性を有する言語を、著者はオーストラリアばかりでな
く世界の財産として位置づけるべきとする。そのための正書法は、ヨーロッパ的なものでは決して実態を反映しないので、著者自ら具体的な提案をしている。
次にナウル共和国で話されている、ナウル語およびピジン英語に関する論考を取り上げたい。著者は、居住環境が崩れなければ、どんなに社会で排他されよう
が、言語は衰退しないと主張している。そして、居住環境が崩れる社会があるとすれば、そこには必ず、当該言語話者に対して、政治的・経済的・社会的・制度
的な圧力が過去に存在したとする。
三つ目に、グアム島のチャモロ語に言及したい。著者は近年、チャモロ語の話者が減少していることを歴史的・社会的背景に触れながら、その実態を述べ、特に
若い世代で顕著な傾向が見られるとした。582名分のアンケート調査資料を集め、その結果、80. 4%
がチャモロ語を「理解する」と回答したものの、実際にチャモロ語を「とても上手に話す」と回答した者は4.5%に過ぎなかったと報告した。チャモロ語を母語として獲得した
者は2.6%、「定期的にチャモロ語を使用している」と回答した者が9.8%しかいないことを明らかにした。当該言語社会は、チャモロ語から英語への言語
シフトが進行していると結論づけた。
四つ目に、ハワイ語の例を紹介する。著者は、ハワイ語ラジオ番組から、10の抜粋のやりとりを分析することで、危機言語としてのハワイ語を再活性化しよう
という共同体の姿を報告した。こうした価値観を共有・再確認する場として当該番組が社会的に機能するとともに、共同体の結束を維持・強化していたと結論づ
けた。
五つ目に、メラネシア地域の諸言語を取り上げる。著者は、ニューギニアおよびバヌアツの六つの言語を対象に、人称代名詞と呼びかけ表現の文法的・社会言語
学的特徴を調査している。特に親族関係語彙と呼びかけ表現および人称代名詞の用法とその動詞屈折を研究対象としている。社会的関係とその文法特性の間にい
くつか規則があることを明らかにしている。一方、クレオール語ではこうした抽象性が単純化されているとした。
第I部(第1章、第2章、第3章)では、コスタリカのブランカ語、スコットランドのゲール語、アフリカの諸言語の現状が、第Ⅲ部(第9章、第10章、第
11章、第12章)では、マレーシア、インド、日本の現状が報告されている。このうち、日本国内に関しては、マタギ語、アイヌ語、沖縄語、日系ブラジル人
のことばに触れている。
言語の衰退には様々なファクターが存在することが上記の報告と分析からわかるが、言語が衰退する過程に関するモデル提示について、新たな可能性を示すもの
であると、本書は結論付けた。
(岡村徹)
新入会員
酒井萌乃(神戸大学大学院保健学研究科博士後期課程)
天野紗緒里(名古屋大学大学院人文学研究科博士後期課程)
所属変更
河野正治(東京都立大学人文社会学部)
寄贈図書
梅﨑昌裕・風間計博(編) 『オセアニアで学ぶ人類学』昭和堂、2020年12月。
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
日本オセアニア学会会長 柄木田康之
2019年度の日本オセアニア学会第37回研究大会・総会は、新型コロナウイルスの拡大防止の観点から、中止といたしました。理事会・評議員会で審議い
たしまして、それに代わってオンラインでの臨時総会開催を決定しました。会員の集合する対面式ではなく、以下の手順で行います。
・臨時総会の期日を7月20日から7月31日といたします。
・期日が始まりましたら、通常会員向けのメーリングリストにて、臨時総会関係資料をお送りいたします。
・あわせて、日本オセアニア学会のホームページにて臨時総会のための窓口を開設して、みなさまのご意見を受け付けいたします。
・特段のご意見がなかった場合は、承認とさせていただきます。
・ご意見が出た場合は、理事会でお諮りしたうえで必要があれば対応を通常会員向けメーリングリストで配信するか、どのように対応したのか議事録に記載いた
します。
・臨時総会では、石川榮吉賞及び日本オセアニア学会賞の授与式は開催いたしません。賞状等は会長や理事が受賞者にお渡し、その様子を学会ホームページにて
お知らせします。
今回は、新型コロナ対策の関係で通常とは異なる開催方法となっております。みなさまのご協力を賜りたく、お願い申し上げる次第であります。
1) 受賞者: 印東道子 会員(国立民族学博物館・名誉教授)
2) 推薦理由
印東道子氏は、1970年代よりミクロネシア・ヤップ諸島を中心に考古学的な調査を開始した。そのなかでは、とくにヤップにおける土器研究への進展に寄
与した。1990年代からはミクロネシア・ファイス島での発掘により、離島に位置するサンゴ島でも2000年間におよぶ豊かな生業や、海を越えた活発な交
易・接触があったことを実証した。これは、人類史の解明に対する大きな成果として特筆できる。またオセアニア全域に関する人類史や考古学的研究の成果を紹
介する多くの研究書・一般書の編集・刊行を通じて、日本におけるオセアニア研究の発展と裾野を広げることに大きく貢献した。代表作には、日本語で公刊され
た書籍に限定しても、単著として『オセアニア-暮らしの考古学』(朝日新聞社、2002年)、『島に住む人類-オセアニアの楽園創世記』(臨川書店、
2017年)、編著として『人類の移動誌』(臨川書店、2013年)など多数ある。
氏の本学会での活動としては、2013年から2015年にかけて1期2年間会長を務めたほか、理事・評議員などの役職を長年にわたって歴任した。ことに
国内外のオセアニア関係の学術誌の編集に長期にわたり関わることで、日本のオセアニア研究を世界に発信するとともに、編集担当理事を編集長(1994年か
ら1998年)及び編集委員として(1991年から2001年、2009年から2013年)、長年務めることで日本オセアニア学会の機関誌を国際的なもの
に高めることに一方ならぬ貢献を行った。
以上のように、オセアニア研究の振興に多大なる寄与を果たしてきたこと、くわえて、長年にわたり日本オセアニア学会の発展に貢献してきたことから、印東
氏を石川榮吉賞受賞者として推薦することを決定した。
*授与式及び授賞スピーチは、通例、日本オセアニア学会総会にて開催されますが、2020年度臨時総会は新型コロナ感染症の拡大防止の観点から対面式で行
われません。それに伴い、授与式及び授賞スピーチも行いません。賞状等につきましては、事務局より別途お渡しさせていただきます。その際の写真等は、おっ
てホームページ等に掲載することを検討しております。
1) 受賞者: 河野正治 会員
対象著作: 『権威と礼節――現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』風響社、2019年
2) 選考理由
河野正治著『権威と礼節:現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』(単著、単行本、風響社)は、ミクロネシア地域のポーンペイ島社会
における首長制の現在に関して、人類学的な調査にもとづいた記述と分析を展開する力作である。ポスト植民地時代を生きる島民たちが、伝統的権威体制と近代
国家体制の関係をいかに作りだすのか、首長国と近代国家の諸水準において身分階層秩序を生きる実践知をいかに形成しつつあるのかに関して、説得力のある議
論を提示することに成功している。このことは相互行為を中心にして厚みのある記述と考察が重ねられた成果であり、著者の入念な観察と思考の産物である。現
代オセアニアの民族誌として、人類学のみならず関連諸分野に広く紹介されるべき著作である。
第19回(2019年度)日本オセアニア学会賞選考委員会
*授与式は、通例、日本オセアニア学会総会にて開催されますが、2020年度臨時総会は新型コロナ感染症の拡大防止の観点から対面式で行われません。それ
に伴い、授与式も行いません。賞状及び副賞につきましては、事務局より別途お渡しさせていただきます。その際の写真等は、おってホームページ等に掲載する
ことを検討しております。
2020年度日本オセアニア学会賞選考委員会
1.
本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2019年1月1日から
2020年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3.
自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mail
アドレス)を明記するものとする。
4.
他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名
を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、
出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が
必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は2020年11月1日から2021年1月15日まで(必着)とする。
6.
送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けるこ
ととする。
(日本オセアニア学会事務局)
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
丹羽典生研究室 宛て
TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
8. 2021年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。
本規定は臨時総会にて審議中です。同賞の規定につきましては、臨時総会の終了後(2020年8月1日以降)に学会ホームページをご参照ください。
日本オセアニア学会会長 柄木田康之
2020年度の研究大会・総会及び地区例会につきましては、テレビ会議を利用した形での開催を検討しております。研究大会・総会は東海大学を幹事校として
黒崎岳大会員のもと、地区例会は各地区担当の理事や幹事のもと準備を進めております。詳細につきましては決まり次第、ホームページやメーリングリストにて
ご連絡いたします。
新入会員
相沢友紀(広島大学大学院国際協力研究科博士課程後期)
片岡真輝(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
谷口ジョイ(静岡理工科大学情報学部)
所属変更
石森大知(法政大学国際文化学部)
紺屋あかり(明治学院大学国際学部)
長島怜央(平安女学院大学国際観光学部)
行木 敬(関西国際大学現代社会学部)
根岸 洋(国際教養大学国際教養学部)
橋爪太作(早稲田大学人間科学学術院)
藤枝絢子(京都精華大学人文学部)
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
関東地区研究例会幹事 里見龍樹
2019年度の関東地区例会を、以下の通り東京医科大学にて開催した。
【日時】2020年1月5日(日) 14:00~17:30
【場所】東京医科大学西新宿キャンパス
【発表者】橋爪太作会員(東京大学)、佐本英規会員(広島大学)
【コメンテーター】浅井優一会員(東京農工大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)
【プログラム】
14:00~14:50 第1発表 橋爪太作会員
「土地と自己をめぐるコスモポリティクス:ソロモン諸島マライタ島北部における木材伐採の現場から」
14:50~15:20 コメンテーター2人によるコメント
15:20~15:40 質疑応答
15:50~16:40 第2発表 佐本英規会員
「歓待としての共住:ソロモン諸島マライタ島南部におけるポスト・マーシナ・ルール時代の集落をめぐって」
16:40~17:10 コメンテーター2人によるコメント
17:10~17:30 質疑応答
本年度の関東地区例会は、いずれもソロモン諸島マライタ島を調査地とする若手会員2名を発表者に迎えて開催した。
橋爪太作会員は、マライタ島北部のファタレカ地域から、商業的森林伐採によって内陸部の土地が新たに居住可能な空間として開かれる中で、土地所有関係や
集団的アイデンティティの再定義がなされている状況を報告した。橋爪会員の報告はまた、しばしば「存在論的転回」と呼ばれる、「自然/文化」の境界をめぐ
る近年の人類学的議論に対して民族誌的な応答を試みるものでもあった。
また佐本英規会員は、20世紀の歴史的展開の中で複数の親族集団が混在することになったマライタ島南部アレアレの集落における共住の様態とそこにともなう
社会的緊張について考察した。この報告は同時に、メラネシア社会における来訪者や他者性の主題について問題提起するものでもあった。
発表を受け、合計23名の参加者によって活発な討論が繰り広げられ、例会は盛況のうちに終わった。
関西地区研究例会幹事 深川宏樹
2019年度の関西地区研究例会を、以下のとおり京都大学にて開催した。
【日時】2020年1月11日(土)
【会場】京都大学 吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1207教室
【プログラム】
14:30~15:00 発表者:前川真裕子(京都産業大学)
「土着の自然に関わること、植民地主義を考えること:ヨーロッパ系オーストラリア人たちの事例から」
15:00~15:15 コメンテーター:風間計博(京都大学)
15:15~16:00 全体での討論
16:15~17:15 発表者:深川宏樹(兵庫県立大学)
「死に至る言葉――ニューギニア高地の伝記的な生における諸物の因果と「言語身体」」
17:15~17:30 コメンテーター:藤井真一
(日本学術振興会特別研究員PD/国立民族学博物館)
17:30~18:15 全体での討論
本年度の関西地区例会は、個人発表2名、それにたいするコメンテーター2名で開催した。前川真裕子会員の個人発表では、現在のオーストラリアで、ヨー
ロッパ系オーストラリア人が「ネイティブ・プランツ」と呼称する植物を養苗・栽培する実践について説明がなされたうえで、いわゆる移民国家において、マ
ジョリティにあたるホワイト・オーストラリアンがいかに国土の「土着の自然」との関係を結び直し、自らのナショナル・アイデンティティを(再)構築しよう
と試みているかが論じられた。前川会員の発表にたいして風間計博氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がおこなわれた。つぎに深川宏樹会員の個
人発表では、パプアニューギニア高地において血縁者を死に至らしめるとされる、「死に際の言葉」の呪詛の事例が取り上げられ、人類学のサブスタンス研究の
理論枠組みを援用しながら、「言葉の物質性」という主題についてとりわけ在地の人間観・身体観との関連から議論がなされたうえで、ニューギニア高地の呪詛
の言葉をその身体的効果と諸個人の「伝記的な生」から捉える分析視角から、高地民たちが展開する社会生活と身体と言語の関係について民族誌的に考察され
た。深川会員の発表にたいして藤井真一氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がおこなわれた。合計12名の参加者のもと、本例会は盛会のうちに
終わった。
日本オセアニア学会会長
柄木田康之
標記のことについて、2月25日付けで内閣に設置されている新型コロナウイルス感染症対策本部から、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が公表されま
した。それを受け、日本オセアニア学会理事会においては、研究大会事務局とも協議の上、感染拡大防止の観点から、第37回研究大会・総会は中止とする方針
を決定いたしました。
なお、総会に関しましては、時期を見て臨時総会の形で開催することを検討しております。詳細が決まりましたら、おってご連絡させていただきます。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
以下の「第37回日本オセアニア学会研究大会・総会のお知らせ」はNo.125発行時点のものであり、2020/2/27にお知らせしたように中止の判 断がなされました。(2020/3/5追記)
第37回研究大会・総会事務局 深田淳太郎
第37回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。参加および発表エントリーにつ
きましては、学会ホームページの参加申し込みフォーム(https://meeting.jsos.net/apply.html)をご利用の上、
2020年 1月31日(金)までにお知らせください。
◆日時
2020 年 3 月 18日(水)14:00 〜 19日(木)12:00 (予定)
(理事会 18日(水)11:00〜12:00、評議員会 18日(水)12:00〜13:00)
*一般参加者の方は 18日(水)12:30 より受付を開始いたします。
◆会場
鳥羽温泉郷 戸田屋
〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽1丁目24-26
TEL:0599-25-2500(代表)
Website: https://www.todaya.co.jp/
◆交通
◇自動車でお越しの場合(ホテルに無料駐車場があります)
伊勢自動車道「伊勢IC」から、伊勢二見鳥羽ライン(無料)を経て鳥羽市街
◇電車でお越しの場合
名古屋から鳥羽駅まで近鉄特急で約90分、JR快速みえで約100分
大阪から鳥羽駅まで近鉄特急で約120分
京都から鳥羽駅まで近鉄特急で約140分
鳥羽駅から会場までは徒歩3分
詳細はホテルウェブサイトよりご確認ください(https://www.todaya.co.jp/access/)
◆大会参加費
◇有給者(定年等の退職者及び学術振興会特別研究員等も含む)
19,000円(参加費・懇親会費・宿泊費込)
◇無給者(大学院生、学生等)
12,000 円(参加費・懇親会費・宿泊費込)
・大会のみ参加の場合の参加費は有給者6,000円、無給者4,000円となります。懇親会参加費や宿泊費は含まれません。
・大会参加費は当日に会場受付で徴収いたします。
・領収書を大会参加費と宿泊費と分けて発行する必要がある方は、その旨を参加申込フォームでお知らせください。
・申込期限を過ぎた場合、宿の手配ができない可能性があること、また、直前のキャンセルはキャンセル料を徴収することを予めご了承ください。
・宿泊は和室を複数人で相部屋使用していただく予定です。
◆参加・発表申し込み
研究大会に参加される方は、出張依頼書の有無、研究発表の可否、発表される場合には「発表題目」と「使用機器」について参加申込フォームにご記入くださ
い。また、フォームをご利用いただけない場合は、ご氏名と連絡先を明記の上、メールで必要事項を大会・総会事務局にお知らせください。発表時間は演題数に
もよりますが、質疑応答を入れて 20〜25 分程度を予定しています。
第37回研究大会・総会事務局
三重大学人文学部 深田淳太郎
〒514-8507 三重県津市栗真町屋町1577
2019年度日本オセアニア学会賞選考委員会
(日本オセアニア学会事務局)
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
丹羽典生研究室 宛て
TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
日本オセアニア学会賞規定
- 第1条(目的)
- 日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
- 第2条(資格)
- 日本オセアニア学会員であること。
- 第3条(対象)
- オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満 の者とする。
- 2 賞の授与は各年度1名とする。
- 第4条(選出方法)
- 賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
- 2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
- 第5条(賞の授与)
- 賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
- 第6条(賞状・報奨金)
- 受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
- 附則
- この規定は平成13年4月1日より施行する。
関東地区研究例会幹事 里見龍樹
今年度の関東地区研究例会では、ソロモン諸島マライタ島を調査地とする若手研究者、橋爪太作会員と佐本英規会員をお迎えし、お二人のご研究の最新の展開に
ついてお話しいただきます。
下記の日程で開催いたしますので、万障お繰り合わせの上、ご参集くださいますようお願い申し上げます。
日時:2020年1月5日(日) 14:00~17:30
場所:東京医科大学西新宿キャンパス(東京医科大学病院と同じ敷地)
教育研究棟(自主自学館)3F会議室B
最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線「西新宿駅」より徒歩3分
発表者:橋爪太作会員(東京大学)、佐本英規会員(広島大学)
コメンテーター:浅井優一会員(東京農工大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)
プログラム
14:00~14:50 第1発表 橋爪太作会員
「土地と自己をめぐるコスモポリティクス:ソロモン諸島マライタ島北部における木材伐採の現場から」(仮題)
14:50~15:20 コメンテーター2人によるコメント
15:20~15:40 質疑応答
休憩(10分)
15:50~16:40 第2発表 佐本英規会員
「歓待としての共住:ソロモン諸島マライタ島南部におけるポスト・マーシナ・ルール時代の集落をめぐって」(仮題)
16:40~17:10 コメンテーター2人によるコメント
17:10~17:30 質疑応答
※例会終了後、懇親会を行います。
問い合わせ先:里見龍樹
関西地区研究例会幹事 深川宏樹
2019年度の関西地区例会を以下のとおり開催いたします。
どうぞみなさまお誘い合わせのうえ、ご参加いただけますようよろしくお願いいたします。
◆日時:2020年1月11日(土)14:00~18:15
◆会場:京都大学 吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1207教室
◆プログラム
【発表1】
14:00~15:00 発表者:前川真裕子(京都産業大学)
「土着の自然に関わること、植民地主義を考えること―ヨーロッパ系オーストラリア人たちの事例から(仮)」
15:00~15:15 コメンテーター:風間計博(京都大学)
15:15~16:00 全体での討論
【発表2】
16:15~17:15 発表者:深川宏樹(兵庫県立大学)
「死に至る言葉―ニューギニア高地の伝記的な生における諸物の因果と「言語身体」」
17:15~17:30 コメンテーター:藤井真一
(日本学術振興会特別研究員PD/国立民族学博物館)
17:30~18:15 全体での討論
◆研究会終了後、懇親会を開催します。こちらもぜひご参加ください。
◆問い合わせ先:深川宏樹
McGuire, Kelly R., Hildebrandt, William R., Young, D. Craig, Colligan, Kaely, Harold, Laura, At the vanishing point : environment and prehistoric land use in the Black Rock Desert. (Anthropological papers of the American Museum of Natural History, no.103)
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
2019 年 3 月 25 日(月)、第 36 回日本オセアニア学会会場(首都大学東京南大沢キャンパス)において、同学会総会が開催されました。議事は、以下の通りです。
こちらをご覧ください。
2019年度日本オセアニア学会賞選考委員会
(日本オセアニア学会事務局)
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
丹羽典生研究室 宛て
TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
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日本オセアニア学会賞規定
- 第1条(目的)
- 日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
- 第2条(資格)
- 日本オセアニア学会員であること。
- 第3条(対象)
- オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満 の者とする。
- 2 賞の授与は各年度1名とする。
- 第4条(選出方法)
- 賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
- 2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
- 第5条(賞の授与)
- 賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
- 第6条(賞状・報奨金)
- 受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
- 附則
- この規定は平成13年4月1日より施行する。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
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- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
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編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
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ミクロネシア連邦ポーンペイ島では、最高首長を頂点とする身分階層秩序が今も保たれている。その秩序は、成人島民の大半が持つ位階称号とそれに見合
う振る舞いによって維持・創出されてきた。本書は、ポスト植民地時代を迎えた同島において伝統的権威と身分階層秩序がいかに存立しているのかを、延べ
25 ヶ月間にわたるフィールドワーク(2009 年 5 月~2012 年 12
月)の成果から描く民族誌である。ポーンペイ島についてはこれまでも数々の研究が蓄積されてきたが、日本人の人類学者による民族誌の刊行は、本書が戦後初となる。今日にお
けるポーンペイ島の社会生活の一端を知っていただくうえでも、ぜひ本書を一読していただけると幸いである。
本書は、序論に続き、二部構成の 7
つの章、結論から構成される。序論では、1990年代以降の先行研究が(1)西洋由来の統治体制との歴史的葛藤の産物としてポスト植民地時代の首長制を位置づける流れと、
(2)儀礼や祭宴の場における人びとの相互行為を通して身分階層秩序のリアリティが構築される過程を明らかにする流れに大別されることを指摘する。本
書ではこうした動向を踏まえ、これまで必ずしも結びつけられてこなかった 2
つの研究潮流を架橋する視座のもとで、ポスト植民地時代の同島の社会条件下において首長制にもとづく身分階層秩序がいかに維持・創出されているのかを、島民たちの権威と名
誉にかかわる相互行為に焦点を合わせて解明することを目的とする。
第Ⅰ部「ポスト植民地時代における位階称号と礼節の技法」(第 1~3
章)では、まず、諸外国による統治から現代にいたる社会変容を跡づけ、島民たちの社会的な地位と活動が多元化するにつれて、首長制の位置づけも政府やキリスト教会との関係
のなかで相対化されてきたことを指摘する。そのうえで、今日における首長制の儀礼実践として「村の祭宴」や政府の式典、外国の要人を招待した「太平洋
諸島伝統的指導者評議会」などの場面を取り上げ、さまざまな礼節の行為がそれぞれの場の秩序を構成する様子を詳細に描く。事例分析ではとりわけ、祭宴
や行事の場における礼節の行為を通して個々の島民に与えられる評価が、位階称号の論理から零れ落ちる多様な人格評価を含むことに注目する。第Ⅰ部で
は、それらの事例をもとに、身分と「名誉」の価値を対応づける形式的な作法ではなく、さまざまな地位や評価を持つ人びとに対して状況即応的に「名誉を
認める」という承認実践としての礼節の行為にこそ、多元的な価値基準を生きるポーンペイ島民独自の実践論理が認められると論じる。
第Ⅱ部「首長の権威と祭宴のポリティクス」(第 4~7
章)では、首長を中心とする社会集団の想像や実現に向けた集団的営為という観点から、ポーンペイ島における首長制の今日的な動態を描き出す。その際、首長制にかかわる
3
つの社会集団(親族、村、首長国)を順に取り上げる。そして、貨幣経済の浸透やキリスト教会の活動などを視野に入れながら、島民たちがさまざまなかたちで首長制の実践に関
与する過程を検討する。これらの章では、首長に対するパンノキの実とヤムイモの初物献上、1 年に 1
度の「村の祭宴」と「礼の祭宴」、最高首長の招待を伴う葬式の祭宴といった場面に焦点を当てて、島民たちが首長の権威や自らのアイデンティティをめぐって交渉したり、葛藤
を抱えたりする様子を描く。第Ⅱ部では、これらの事例をもとに、首長の振る舞いや共同体のあり方をめぐる関係性の動態を明らかにするとともに、変容す
る島社会とせめぎあう規範概念の様相について考察している。
結論では、ポスト植民地時代の首長制を相互行為の次元から捉える本書の試みが、従来の伝統的権威論に対してどのような理論的貢献を果たしうるのかを明
らかにする。さらに、首長の権威と島民の礼節を動的に描き出す本書の記述によって、本書のタイトルにも冠した「権威と礼節」の関係をいかに考えなおす
ことができるのかについても論じている。
なお、本書の幾つかの章は、著者自身がこれまでに日本オセアニア学会で発表してきた研究成果にもとづく(第 3 章は PCO 第 31
号に掲載された論文を、第 6 章は関東地区例会の発表資料を、第 7 章は NEWS LETTER 第 101
号に掲載された論文を、それぞれ大幅に加筆・修正している)。本書につながる研究の過程で貴重なコメントやご意見を下さった学会員の皆さまに、この場を借りてあらためて御
礼申し上げたい。
(著者)
本書は、著者が九州大学文学部に提出した博士論文に基づくもので、2017 年 11
月に本学会関東地区研究例会で、その一部を報告した。2018 年 4
月に日本学術振興会の科研費(研究成果公開促進費「学術図書」)の交付による助成を受け、出版が可能となった。全体の構成は、以下のとおりである。
第Ⅰ部 研究の基本概念
第1章 「移動」と「開発」
第2章 「場所」
第3章 「地誌」と「フィールドワーク」
第Ⅱ部 パプアニューギニアの場所の物語
第4章 パプアニューギニア地誌の再構築
第5章 高地周縁部、ミアンミンの人びとと場所
第6章 ポートモレスビーの都市空間とセトルメント
第7章 ラガムガ・セトルメントとチンブー人移住者の場所第8章 ブラックウォーターの人びとと場所
第Ⅲ部 フィールドワークと場所構築
第9章 フィールドワークから開発実践へ――ラガムガ・セトルメントでの実践
第10章 開発的介入から場所構築へ――ブラックウォーター、クラインビット村で
の実践
終章 場所・フィールドワーク・動態地誌
この本の「売り」は次の 4 つである。
第 1
に、空間的な多様性である。本書では、パプアニューギニアの人々を「動く人々」(「移動」を旨とする人々)と捉え、都市と農村にまたがる多様な場所(高地周縁部ミアンミ
ン、首都ポートモレスビーの移住者集落、セピック川南部支流域ブラックウォーター)の物語を提示している。それを通じて明らかにしようとしたのは、
個々の場所の生成過程とともに、それらを重ね合わせることで表出するパプアニューギニアという社会の現在像である。とりわけ修論以来継続してきた、
ポートモレスビーの移住者集落(セトルメント)の調査研究(6、7 章)は、海外の研究者によっても、その分析方法を含め、未踏の領域である。
第 2 に、時間的な継続性である。私は 1979 年 12 月にパプアニューギニア大学交換留学生としてはじめてこの地を踏んで以来、2018
年 8 月まで、ほぼ毎年(時には年に2
回)パプアニューギニアを訪ね、フィールドワークを続けてきた。その中で向き合い続けてきたのは、広義の「開発」(よりよき生の実現)を求める人々の実践と、場所の変化
(あるいは変わらなさ)、そしてそれらをめぐる人々の葛藤だった。
第 3
に、パプアニューギニアでの調査研究の知見を貫く枠組みとして、「場所」論を提起したことである。私の定義する「場所」とは、空間的な近接性によって生まれた人と人、人と
事物、事物と事物の間の関係性の束であり、ミクロレベルで生成するものである。それはマクロレベルの関係性で領域性をともなう「地域」とは異なる。パ
プアニューギニア社会の特質は、人々の営みが、系譜や民族/地域集団といった固定的な関係性を常に組み替える「場所」的な実践(吉岡政徳の言う「多配
列的志向」に近い)に基づくところにある。
第 4
に、参与観察的フィールドワークのいわば「越境」として、広義の開発実践を位置づけ、調査研究と開発実践を結び付けようとしたことである。具体的には、JICA専門家とし
てのセトルメントへの政策転換を念頭に置いた国会議員や首都政府との交渉を含む実践(9
章)であり、ブラックウォーターでの「場所の知」への承認を通じたその持続可能性を模索する実践(10
章)である。こうした実践は、これまで研究者にとっては、好んで描かれてこなかった。しかし「北」世界と「南」世界の間に存在する経済格差と表象をめぐる権力の非対称の中
で、調査研究が前者にだけ知を蓄積してしまうとすれば、それは知的収奪に他ならない。求められるのは、自らの調査研究の成果を対象社会に還していくこ
とだが、それは容易なことではない。第Ⅲ部に記したのは、それをめぐる私の試行錯誤の過程である。
調査研究者にとって、フィールドワークの第一義的な目的は、対象のよりよい理解に到達することであり、開発実践者のように「地域を変える」ことにはな
い。フィールドワーカーが調査対象にコミットしすぎることは「オーバーラポール」として批判されもする。しかし、フィールドワークを通じて私が出会っ
たパプアニューギニアの人々は、辺境の村でも、都市の掘立小屋集落でも、自らと自らの場所を更新し、よりよき生の実現(すなわち「開発」)を求めよう
とする人々だった。それが様々な構造的要因によって実現されない現実に葛藤を抱えることを感得したならば、そのジレンマをただ冷静に記述するだけが、
調査研究者の仕事であるとは私は思わない。むしろ長期にわたるフィールドワークで得た知見と理解の延長線上に、その葛藤と向き合い、その現実を変えて
いくための可能性を共に模索することも、調査研究者の(調査研究者にしかなし得ない)仕事ではないか。それは、フィールドワーカーが、フィールドとい
う場所に生まれたかかわりを引き受け、調査対象となる人々自身の「開発」過程に積極的に参与することに他ならない。言葉を換えればそれは、調査研究者
が真の意味でフィールドという「場所」を構築する一員となるということでもある。
この書は 40
年間の私の調査研究の集大成であるが、決してアカデミックな研究として、学界や専門家にだけ発信することを目的としたものではない。むしろ一般の学生や読者に広く読んでほ
しいと期待している。私の考える「動態地誌」とは、グローバル化時代に、遠く離れた他者を「他者化」するのではなく、共感的に理解し、同時代を共に生
きる者として蘇らせるような地理的想像力を喚起する研究である。本書がそのようなものとして、多くの人に受け入れられ、相互批判を含む議論を喚起する
ものとなればうれしく思う。
(筆者)
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フランスに植民化され、フランス語を公用語・共通語とするニューカレドニアには、28もの土着の言語、現在ではカナクと呼ばれる先住民メラネシア人 の言語が存在する。大角はその中で、消滅危機にある二つの少数言語、ティンリン語とネク語というこれまで未踏の研究領域を、前者を1980年代に、後 者を2000年代に調査した。両言語は主島グランドテール西側の内陸に点在するカナクの居住村である2-3のトリビュに限定され、話すことができる者 も年配者の間にしかいない。著書は、こうした話者から言語調査しながら、カナクのトリビュの人々の間で生活したフィールド・ワークの日々を綴ったもの である。
大角は、未知の言語探求において、その言語で表される概念世界を理解することは難解だが、言語と思考の関係性や人間の認知能力についての新たな発見 に出会えることにフィールド言語学の醍醐味はあると語っている(160-161頁)。本書は、そうした探求結果としての言語学的発見や記述は随所に登 場するが、専門書ではない。インフォーマット探しや話者との試行錯誤のやり取り、トリビュでの家族の暮らし振り、人々の関係性や振舞い、これらと如何 に言語や文化が具体的に繋がっているかの会得など、フィールド・ワーカーとして体験した奮闘記である。他者との交換のないフィールド・ワークがないな らば、発見のないフィールドはなく(江戸2015: 615)、人々の概念世界を理解し、発見に出会う行為は、言語学のみならず、文化人類学を始め、その他の分野においても共通する醍醐味である。この意味でも、読み易く面白 く、一読をお勧めしたい。
著者は、昔の記憶の糸をたぐり寄せながら時系列的に書き起こした(280頁)としているが、昔の記憶を、何故これ程までに、詳細にヴィヴィドに書き 起こすことが可能なのであろうか。それは「民族誌的現在」の語りにあろう。フィールド・ワーカーにとって、ローカルな人々と共有した時間と空間は、特 別な意味を放つ。調査を終え、後に書き続けることによって、筆者としての「語る主体」は、その時点のフィールドに再節合され、そこでの人々との交換か ら生まれた交感が蘇り、共有された時空は非時間的な「民族誌的現在」として再現されるからである。これまで大角が調査結果から表した研究書が「客観的 実践」ならば、フィールドでのこの体験記は「主観的実践」と云えようが、当著は、客観的実践と主観的実践の間で間主観的に揺れ動きながら、フィールド で格闘する彼女の姿を映している(江戸2015:26)。それは、フィールド・ワーカーなら誰しもが経験することであろう。
(江戸淳子)
本書は、著者が総合研究大学院大学(国立民族学博物館)に提出した博士論文に基づくもので、2017年11月に本学会関東地区研究例会で草稿の一部 を発表している。本年4月に学振の助成を受け刊行となった。全体の構成は以下のとおりである。
第1章 序論――ファイン・マットをめぐる言説と経済 第2章 サモア社会の概観と成り立ち 第3章 交換システムの基本構造――ファイン・マットと親族間の儀礼交換 第4章 交換財の変容――市場経済への対応と新しい財の取り込み方 第5章 移民と本国社会――サモア移民のトランスナショナリズム 第6章 儀礼交換と称号システム―西サモアにおける首長称号保持者間の役割分化 第7章 ファイン・マットの行方――ファイン・マット復興運動と儀礼交換 第8章 結論
半分程度は、すでに書いてきた論文を大幅に書き直したもので、また半分程度は書き下ろしとなっている。
地縁関係と血縁関係が複雑に錯綜した首長制に基づくサモア社会は、首長間にランキングの差異はあるものの、競覇的な社会関係が存在していた。近代化 と現金経済に巻き込まれることにより、その勢いはますます強いものとなっており、それが表出する儀礼交換――女財と男財の交換を基調とする――におい ては、女財であるファイン・マットに加えて、現金や缶詰、コーンビーフなどの新しい財が男財として取り込まれるようになっていた。
サモア独立国(旧西サモア)は、第二次大戦後に多くの移民を海外に送り出し、彼らの送金で国家経済も本国の拡大家族の生活も成り立ってきた。移民し た息子や娘は定期的送金を行うこともあったが、キョウダイ、オジオバなどとの間では、親族集団のアイデンティティに関わる儀礼交換に伴う送金が専らに 行われていた。そうした「移民の貢献」に対し、サモアからは国境をまたいで首長称号名の授与、伝統財としてのファイン・マットの持ち出し・贈与が行わ れるようになった。
また、それらの儀礼交換に必要なファイン・マットは、本国でも移民社会でも、互酬的交換や市場交換によって調達されるようになり、現金を引き出すも のとして需要は高まり、ファイン・マットそのものの品質の粗悪化を招いたといえる。かつては1枚製作するのに半年から1年を要したのが、1990年頃 には3日ほどで製作されるようになっていた。さらにまた、移民社会では儀礼交換を行い、ファイン・マットのやりとりを行うことが、サモア人としてのア イデンティティとなり、盛んに儀礼交換が行われ、そのために本国では稀少なファイン・マットが移民社会ではだぶつくほどであった。
一方、首長称号名について、親族集団内でのさまざまな事情で同名の首長称号が複数名に授与される習慣(称号分割)はかつてより存在していた。称号分 割は選挙にも関連して独立(1962年)後に盛んに行われるようになった。首長称号名保持者のみが選挙・被選挙権をもつという制度は1990年の制度 改正まで続いていたのである。称号分割を通じて、首長称号名は海外移民にも数多く贈られている。サモア人として大変名誉あるものであるが、同時に親族 集団をもり立てる義務も負い、送金が期待されていることは言うまでもない。
1990年代になると、かつての良質のファイン・マットを取り戻そうという運動が生じ、政府は女性の現金獲得手段としてこれを奨励する活動を始め、 ファイン・マット生産には新たな局面が生じている。政府のこの動きは、ファイン・マットの市場を作り出したが、たいそう高価なものなので、現在ではま だごく少数の金持ちが、特別な儀礼のために購入して保持するものに過ぎず、儀礼交換に登場することは少ない。
ファイン・マットが市場に登場するようになって久しく、政府の奨励する精巧で高価なものが市場経済に送り込む目的で製作されていることは、ファイ ン・マットの商品化を加速化している。しかし、そもそもファイン・マットが市場で取引されているのは、儀礼交換に用いられるためであることに注目する 必要がある。高価なものが購買されて、衣装箱の底に貴重品としてしまわれていても、それは骨董品ではなく、しかるべきときにしかるべき人に贈られるた めである。互酬的贈与交換こそが、ファイン・マットの商品的価値を生んでいるのであり、互酬性は未だこの社会では重要である。海外からの送金も同様に 互酬性に基づいているのである。
かなり堅い学術書として高価なので、購入をためらう方は多いと思うが、是非図書館で購入をお願いしたい。
(著者)
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日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
2018年3月22日(木)、第35回日本オセアニア学会研究大会会場(沖縄美ら海水族館イベントホール)において、同学会総会が開催されました。議事は、 以下の通りです。
こちらをご覧 ください。
2018年度日本オセアニア学会賞選考委員会
(日本オセアニア学会事務局)
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日本オセアニア学会賞規定
- 第1条(目的)
- 日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
- 第2条(資格)
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- 第3条(対象)
- オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満の者 とする。
- 2 賞の授与は各年度1名とする。
- 第4条(選出方法)
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- 第5条(賞の授与)
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- この規定は平成13年4月1日より施行する。
会長 山本真鳥
今年はもう東京は梅雨明けだそうで、暑い夏が既に始まっているようです。蒸し暑いさなかではありますが、会員の皆様におかれましては、ご清祥のことと存じ上 げます。
さて、本年の学会創設40周年記念行事及び研究大会で沖縄においでの会員には、既にご承知いただいていると思いますが、今後の研究大会のあり方についてお知 らせ申し上げます。
これまで、学会規則等で決められていたわけではないのですが、研究大会は温泉地で開催するという前例が積み重ねられてきました。この合宿型の研究大会は、 我々のような小さな学会には、親睦を深めるという意味で多いに利がありました。ここで培 われたオセアニア研究者の仲間意識は並大抵のものではなく、強い絆で結ばれて今日に至っております。
その意味では大変残念なのですが、温泉地での開催は、主催をお願いする方に実は大変負担がかかります。これまで主催されてきた方々には深く重ねて感謝する次 第ですが、そろそろ毎年この体制を維持するのは難しくなってきました。大きな要因は会員の減少で、ひところ300人を超えていた会員数が現在では200名近く になっております。会員数を増やす努力は今後も重ねて参りますが、それと並行して研究大会の負担を軽くするため、総会でご承認いただきましたように都市と温泉 での隔年開催する方向で考えております。
以上の方針を考慮しまして、本年度の研究大会は以下の日程と場所で開催予定です。
首都大学東京の深山直子会員が、研究大会の会場と懇親会の場を用意してくださる予定です。ただし、宿泊は各自ご用意ください。次年度には、温泉地での開催が できるようただいま交渉を継続中です。
以上の方向性につき、ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
入会に関わる規定(日本オセアニア学会会則7条1)を、審議過程の効率化を図るため以下の形で変更する。変更する語句の箇所は、下線で示してある。
*退会については、「第9条 退会を希望する会員は、その旨を本会に申し出るものとする。」という規定がある。評議員会での承認は従前から必要とされていなかった。上記の変更にあわせて、理事会で退会 の申し出があった旨報告することとする。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 寄稿枚数:
- 論文:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 報告:400字詰め原稿用紙10枚程度(注釈、図表、写真、参照文献リスト等を含む)
- 新刊紹介:400字詰め原稿用紙5枚程度
その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。
寄稿先/お問い合わせ先
編集委員 馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
こちらを ご覧ください。
こ ちらをご覧ください。
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- 寄稿枚数:日本オセアニア学会HPをご確認ください。
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会長 山本真鳥
わが日本オセアニア学会は、学会誌のバックナンバーを、号数によって異なりますが、大量に抱えております。それらは、特定の倉庫を持たないために、過去・現 在の役員が自分の研究室等に保管してきましたが、それもそろそろ限界に達しておりまして、永久保存するごく一部を除き、廃棄の方向で考えております。
No.17以降は、電子化されており、現在、GeniiからJ-stageに移行中ですが、J-stageが正常に動き始めると、ウェブで論文を見ることは 可能です。そこで、No.17以降はウェブで見ていただくとして、No.16以前のものに関して、廃棄前に、皆様方のご希望に添って着払いにて配布し、残部を 廃棄する計画です。
No.1~No.16と、No.3別冊、モノグラフ2号について、ご入り用の方は、庶務担当理事に、ほしい号とご自分の住所・電話番号を明記の上、以下の期 日までにお申し込みください。この期日をもちまして会員からの募集は締め切り、残されたPCOは適宜処分させて頂きます。先着順にお送りしますが、もしご希望 の号が終了してしまった場合にはご容赦ください。
2018年1月より東洋文庫ミュージアム(東京都文京区)にて、本学会が後援いたします『ハワイと南の島々』展が開催されます。詳細な情報は下記に掲載いた します。観覧をご希望の方は本通信を印刷してミュージアム受付にてご提示いただき、日本オセアニア学会会員・関係者であることをお申し出ください。ご本人・同 伴者あわせて4名まで通常入場料半額にてご入場できます。なお、本展開催中の5月13日(日)14:00から同ミュージアムにて「19世紀のハワイ諸島 王国 の栄光と簒奪」(山本真鳥)と題した一般講演を行いますので、学生等にご紹介ください。
ハワイ日系移民渡航150周年『ハワイと南の島々』展
【趣旨】
本展では、ハワイ、タヒチ、イースター島、サモア、フィジー、ニューカレドニア、ニュージーランド、さらには伊豆・小笠原諸島や南西諸島も含めた「南の 島々」に関する様々な歴史秘話(先史時代の遺跡~20 世紀前半の日系移民の足跡)をたどるべく、東洋文庫所蔵の貴重書・絵画・古地図を初めて一挙に公開いたします。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。
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2017年3月26日(日)、第34回日本オセアニア学会研究大会会場(松江しんじ湖温泉夕景湖畔 すいてんかく)において、日本オセアニア学会研究総会が開催されました。総会の議事は、以下の通りです。
2017年5月27日(土)、神戸大学鶴甲第一キャンパス(M棟301)において、日本オセアニア学会臨時総会が開催されました。臨時総会の議事は、以下の 通りです。
第2条
本会は事務局を国立民族学博物館丹羽典生研究室(〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1)に置く。
pdfをご覧ください。
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記憶されることなく老人たちの頭のなかにある、過去に起こった出来事について私たちは話したい。鉛筆や紙はない。白人の歴史はこれまで語られて きたし、それは書物に記録されている。しかし、私たちの歴史は記録されない。私たちは絵画を通して歴史を語らなくてはならないのだ。
クリフォード・ブルックス(2007年)
(本書101ページ掲載)
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*2016年度をもって事務委託をしていました大学生協学会支援センター が終了します。これに伴い、ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合も、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- その他、国際会議やワープショップなどへの参加報告、現地報告なども受け付けます。分量については個別にご相談下さい。
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)<ngiraibekii[アットマーク]gmail.com>
(執筆希望の方はご一報ください)
2016年度日本オセアニア学会賞選考委員会
(日本オセアニア学会事務局) 〒424-8610 静岡県静岡市清水区折戸3-20-1 東海大学海洋学部小野林太郎研究室宛て TEL 054-334-0411 FAX 054-337-0216 E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
日本オセアニア学会賞規定はこちらのページに掲載していま す。
第34回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。ご出欠につきましては、下記 の申込用フォームをご利用の上、2017年2月5日(日)までにお知らせください。
第34回研究大会・総会事務局 島根大学法文学部 福井栄二郎 〒690-8504 島根県松江市西川津町1060 TEL:0852-32-6188 e-mail:fukui[アットマーク]soc.shimane-u.ac.jp
こちらをご覧ください。
こちらをご覧ください。
今年度は評議員選挙の年となり、2017年1月半ば頃までに被選挙人名簿と投票用紙をお送りします。2月初旬には開票作業を行う予定ですので、皆様のご 協力どうぞ宜しくお願いいたします。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されています。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- その他、国際会議やワープショップなどへの参加報告、現地報告なども受け付けます。分量については個別にご相談下さい。
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)<ngiraibekii[アットマーク]gmail.com>
(執筆希望の方はご一報ください)
2016年3月18日(金)、第33回日本オセアニア研究大会会場(マホロバ・マインズ三浦)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。総会 の議事は以下の通りです。
2016年度日本オセアニア学会賞選考委員会
(日本オセアニア学会事務局)
〒424-8610 静岡県静岡市清水区折戸3-20-1 東海大学海洋学部小野林太郎研究室宛て
TEL 054-334-0411 FAX 054-337-0216
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
本書は、吉岡政德先生のご退職を記念し、先生から教えを受けた研究者が中心となって編まれた文化人類学の論文集である。ただし、本書はよくある退職記念 論文集とは少し趣を異にしている。一般に恩師の退職や還暦、古希などを記念した論文集の出版にあたっては、弟子たちが恩師の与り知らないところで秘密裏に 進めるようである。この点からすれば、本書はつぎの二点において常道から外れているように思う。
一つ目として、本書の企画段階から吉岡先生(以下、敬称略)に深く関与していただいた点があげられる。そのさい、全体的な内容や構成だけではなく、少な からぬ執筆者に対して具体的な論文テーマが与えられ、「私の主張を批判するように」という注文まで付けられた。二つ目は、本書所収のすべての論文を受け、 吉岡からの応答が記された点である。そのなかで吉岡は、マリノフスキーが弟子たちに容赦なく議論を挑んだという話を引きながら、「大人げないと言えば大人 げないが、自分の考えを批判する弟子に、さらに反論を試みるマリノフスキーは、私にとって一つの理想だった」(本書360頁)と述べているが、自らも本書 においてそれを実践するのである。
吉岡がこれまでに取り組んできた研究テーマは多岐にわたるが、本書では、多配列の概念および思考方法を彼の人類学のエッセンスと位置付けている。吉岡の 研究に通底する学術的姿勢は、一貫してフィールドワークを重要視し、個別社会研究から比較研究を志向するものといえるが、そのために依拠した理論的な枠組 みが多配列と考えるからである。本書の各執筆者は、多配列の概念を直接的もしくは間接的に参照し、自らと吉岡の研究との結節点を探りながら、少々粗削りで も斬新な発想を捻り出すことに専念した。
本書は、三つの部を構成する一四の論文(うち七論文がオセアニアを対象とする)からなる。第一部から第三部を通して、各論文はその参照の仕方に濃淡があ るものの、多配列との関連で議論を展開している。第一部「多配列思考」では、多配列思考の系譜を批判的に検討するとともに、同概念の広がりと可能性につい て考察を行った。各論文は、人種、宗教、病気概念、コミュニティなどに関する位相を分析し、いわば吉岡が取り組んできた多配列思考の人類学を再考もしくは 発展的に継承することを目指した。
第二部「差異と類似の捉え方」は、多配列思考を念頭に置きながら、差異と類似について考察する論文からなる。各論文は、吉岡が展開した反・ポストコロニ アル人類学の議論に触発される形で、自文化と異文化、伝統と近代、マイノリティとマジョリティなどの二分法を考察対象とし、これらの差異と類似をいかに捉 えるかについて検討した。それはまた、単配列的な二元論を超克し、多配列思考の社会的現実に接近する試みでもある。
第三部「多声的リアリティへの接近」の各論文では、民族誌的権威やフィールドの多声性に留意しつつ、いかにして人類学的実践を遂行するのかを考察した。 なかでも特に吉岡が著した実験的民族誌を議論の出発点として、調査する側の見方の相対化、調査者と調査地、人類学者とインフォーマントとの関係性などの再 検討を迫るものである。
以上の後に、吉岡による論考「フィールドからの声と人類学的議論──各論を受けて」が続く。吉岡は、各論に対する応答を通して、比較研究をめぐるニーダ ムとレヴィ=ストロースの論争が、その後の人類学的な知のあり方を決定づけたとし、その結果、民族誌的事例の吟味よりも理論的に都合の良い解釈が優先され る今日の状況に警鐘を鳴らしている。これは、存在論的転換が叫ばれる現在の人類学的知の状況に対する吉岡からの応答、あるいは怒りと言っても過言ではな い。多配列思考を踏まえて民族誌的事実と向き合うことを提唱する本書が、人類学の視点から現実を捉えなおすための有効なアプローチとなり、その一助となる ならば、編者として望外の喜びである。(石森大知)
本書は、南太平洋の都市におけるフィールドワークに基づいた都市人類学的議論である。第1章から第8章までの構成となっているが、第1章では、本書全体 を貫く理論的立ち位置を明確にするために、都市社会学や都市人類学の成果を整理しつつ、都市とは何かという問題を考えている。議論の起点となるのは、社会 学者ルフェーブルの提起した「都市的なるもの」という概念である。それは、ルフェーブルが本来の都市の在り方として捉えたもので、そこでは、異質なモノが 異質なまま併存するという特質を見出すことができるという。こうした異質性が発現する場を彼はヘテロトピーと呼んでいるが、都市にみられるヘテロトピーと いう性質は、近代の浸透とともに同質的で画一化された場であるイゾトピーに侵食されていったという。例えば、細く曲がりくねってはいるが生き生きとした街 路が、都市計画などによってまっすぐな大通りに変更され、ごちゃごちゃとしていたが生活の息づかいが感じられた小さな家屋群は、きれいだが無機的なビルに 建て直されることは、まさしくイゾトピーがヘテロトピーを侵食していく事例だというのである。つまり、ヘテトロピーに満ちた「都市的なるもの」を侵食して いくイゾトピーとは、近代的な都市のイメージ、つまり「都市らしさ」ということになろう。
ところで、従来の都市社会学の議論では、都市は常に村落と対比される形で論じられてきた。この対比でしばしば用いられてきたのが、古典的な社会学的研究 の中でテンニースが提示した、ゲゼルシャフトとゲマインシャフトという概念である。ゲゼルシャフトとは、人為的、機械的、打算的な社会関係をさしており、 一般には都市にみられる社会関係として捉えられている。一方ゲマインシャフトというのは、地縁や血縁や友情などで結びついた自然発生的な社会関係を指す。 これは村落共同体、つまり村落における社会関係を示す概念として用いられてきた。しかし、南太平洋の都市は、これら社会学における議論にみられるように村 落と二分法的に対比されたものとして成立してはいない。「農耕する都市」は各地で見出され、村落共同体的な居住地が都市の中に作り出されている。都市の中 に村落が入り込んだような南太平洋の都市。第1章ではそれを社会学の常識に逆らって、「ゲマインシャフト都市」と名付けることを提案している。そして本書 では、この新たに命名されたゲマインシャフト都市の在り方を「都市的なもの」「都市らしさ」あるいはヘテロトピーとイゾトピー概念を使って論じようとして いる。
続く第2章では、南太平洋の二大都市であるパプアニューギニアの首都ポートモレスビーとフィジー共和国の首都スヴァ、そして、二都市と同じメラネシアに 位置するヴァヌアツ共和国の首都ポートヴィラをとりあげ、植民都市としての成立の過程を見ながら、近代都市の中におけるメラネシア的な都市生活のあり方を 考える。第3章は、第2章とは逆に、最も小さな首都であるツヴァルのフナフチをとりあげる。ツヴァル自体が、人口1万人程度の独立国家であり、首都フナフ チの人口は4000人程度に過ぎないが、他の島の村落とは別格の存在であり、そこにゲマインシャフト都市としての姿が見いだせる。続く第4章、第5章、第 6章は、ヴァヌアツの地方都市ルガンヴィルを舞台として、その成立の歴史、隆盛するカヴァ・バーからみた都市生活、都市におけるエスニシティの誕生を論じ ている。最後の2つの章、第7章と第8章では、ゲマインシャフト都市における共同体の在り方を、理論的に、そして具体的な事例を交えながら論じている。第 7章では、社会学でしばしば議論の対象となってきた公共圏や親密圏という概念を整理して批判的に検討した後、これらの概念が、南太平洋の人々の都市生活に おいて適用できるのかどうかについて論じる。第8章では、ゲマインシャフト都市と名付けた南太平洋の都市における共同体がどのような性質を持っているのか を考察し、第7章で検討した社会科学的な共同体概念への批判を踏まえ、それとは異なる共同体の在り方を提案している(筆者、本書「序」より抜粋、一部改 変)。
次回研究大会が2017年3月26~27日に島根県松江市内(詳細未定)で実施されることになりました。大会参加方法など詳細は次号のニューズレターお よび学会ウェブサイトでお知らせいたします(大会長:福井栄二郎)。
日本オセアニア学会の後援にて、以下の講演会が開催されます。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
・その他、国際会議やワープショップなどへの参加報告、現地報告なども受け付けます。分量については個別にご相談下さい。- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)<ngiraibekii[アットマーク]gmail.com>
(執筆希望の方はご一報ください)
第33回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。
本年度の関西地区例会は、「オセアニアと日本の戦後」と題して、個人発表二名、それに対するコメンテーター二名で開催した。深田会員の個人発表は、ソロ モン諸島ガダルカナル島で実施されている遺骨収容活動について、収容活動の現場における遺骨のモノとしての存在と、遺骨収集事業の成果として数えられる 「○柱の遺骨」のあいだの齟齬がどのように作られ、また埋められるのかについて論じた。また新井会員の個人発表は、グアムで実施されている太平洋戦争での 死者の慰霊、追悼行事の中で、現地のチャモロ人とアメリカそして日本の三者が様々な形で絡み合っている現在の状況について報告した。発表終了後、飯高会員 はパラオをはじめとする太平洋の他の地域との比較という観点から、また粟津賢太氏からは宗教学の観点からコメントがなされた。発表者とコメンテーターとの 議論が終わった後には、会場全体に議論を開き、寒波到来の中集まった計十名の参加者のあいだで活発な議論が交わされた。
(関西地区例会幹事:深田淳太郎)
本書は、著者がマダガスカル南西部の漁村でおこなったフィールド調査(主として博士研究としておこなったもの)が展開していくプロセスについて述べたも のである。フィールド調査の成果のほうは、すでに別の本として刊行されている(『海を生きる技術と知識の民族誌――マダガスカル漁撈社会の生態人類学』世 界思想社、2008年)。本書では、フィールドに入る準備や調査地探し、村人に受けいれられるまでの日常など、調査の初期段階をとくに詳しく記しており、 とりわけ初心者にとっての利便を意識して書かれている。
オセアニア学会員の読者にとっては、この「フィールドワーク選書」シリーズ全体の編纂に関わった印東道子や白川千尋の巻のほうが、本書よりも魅力的に映 るにちがいない(それぞれ、ミクロネシアとメラネシアが記述対象)。わたしはそれをあえて咎めず、両書の後に本書を手にとっていただくよう、会員諸氏にお 勧めしよう。マダガスカルがオーストロネシア語族言語の分布の西端に位置し、広い意味でのオセアニア研究の対象となることのほか、本書は以下の理由によ り、広くオセアニア学会員の議論の対象になると考えている。
冒頭で著者が述べるところによると、文化人類学と生態人類学はいずれも、「身をもって他者を知る学問」だという。本書に主張があるとするなら、この方法 によって人の暮らしを解き明かすことが学問たりうること、それ以外の主張は考えられまい。本書の叙述は徹頭徹尾、身をもって知るとはいかなることか、どの ようにそれをおこなうかという問いに貫かれており、それに沿って著者の体験が述べられている。
たとえば象徴的なのは、村に住みはじめた頃には金や薬や写真撮影をやたらにねだられたのに、住む時間が長くなるとその度合いが軽減していったというエピ ソードだろう。著者はこの事実をとりあげて、何かを要求することは、人間関係を築こうとする意思のあらわれなのだと説明する。この説明の是非について、読 者は著者の意見を受けいれるほかないが、少なくとも言えるのは、そのような理解がフィールドという世界への投企によってのみ導かれるということである。
研究者の存在が受けいれられることによって、研究者の立場や考えかたが変わり、人間関係のしくみも理解されていく。また、現地の事象についての理解が増 すにつれ、人間関係も深まっていく。このことは、さまざまなかたちで、大部分の読者が多かれ少なかれ感じていることではなかろうか。 以上のとおり本書は、広義のオセアニア研究の本としてのみならず、フィールドワーク論や研究方法論、場合によっては認識論としても読むことができる。時代的には20年も前 のことであり、現代のフィールド調査には当てはまらない点もなくはないが、だからこそ、古今にかかわらないフィールド調査の知恵というべき点も見えてく る。すでにフィールド調査の洗礼を終えられた研究者も、ぜひご一読いただきたい。(筆者)
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されています。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)
第33回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。ご出欠につきましては、下記 の申し込み用フォームをご利用の上、2016年1月31日(日)までにお知らせください。
2015年度の関東地区研究例会は、12月19日(土曜日)、和光大学にて行われました。
発表者・コメンテータを含む13名が参加した本例会は盛況のうちに終わりました。
(関東地区例会幹事:馬場淳)
本書は、先にNEWSLETTER 112号の新刊紹介コーナーで取り上げられた印東道子さんの『南太平洋のサンゴ島を掘る』と同じく、臨川書店のフィールドワーク選書の1冊である。
フィールドワークは、文化人類学に関わるさまざまな営為のなかでも中核的な位置を占めるものであり、なおかつもっとも刺激的で魅力的なものであろう。か つては欧米に比べると限られていたものの、近年では日本でもそれに関する入門書や解説書が次々と出版されるようになっている。そこではフィールドワークの ノウハウや個々の研究者の経験などが取り上げられていることが多い。その反面、一つの研究の始点から終点までのプロセスをフィールドワークに軸足を置きな がら描き出したもの、言い換えるならば、フィールドワークを介してフィールドで得られた知見が、いかにして最終的な研究成果へと形を成していったかを跡付 けているものは、意外と少ない。もとより文化人類学の研究の主たる成果物には民族誌があるが、そこでは研究成果のみがまとめられた形で提示される一方、 フィールドワークについては概略しか触れられておらず、その具体的なプロセスに関する詳細な記述はほとんどなかったり、あっても断片的であったりすること の方が一般的である。
そこで、前述の印東さん、国立民族学博物館(民博)で彼女と同僚の関雄二さん(アンデス考古学・文化人類学)、そして私の3人は、一般の読者に対して文 化人類学、および考古学のフィールドワークの魅力や、フィールドワークが研究成果とどのように結びついているのかといったことを広く知ってもらうことを意 図して、フィールドワーク選書というシリーズを立ち上げた。全20巻のこのシリーズでは、20人の研究者(私を除き全員民博所属)がそれぞれ1冊ずつ書き 下ろす形で、各自の行ったフィールドワークを詳細に取り上げている。
さて、本書では、かつての私の本『カストム・メレシン――オセアニア民間医療の人類学的研究』(風響社、2001年)で提示した研究成果が、どのような フィールドワークを経て形を成してきたかを描き出そうとした。『カストム・メレシン』は博士論文をもとにしているので、本書は言うならばそのメイキングの プロセスに焦点を当てたものと言える。
博士論文では、ヴァヌアツ・トンゴア島の人々が伝統医療と近代医療をどのような関係のもとに位置づけており、そうした認識はいかなる社会的背景のもとで 成立しているのかという問いをめぐって考察を行った。これらの問いは直接的には医療人類学における多元的医療論の議論と関係するものだが、従来の議論では 伝統医療と近代医療が相互補完関係にあり、互いに対処する病気の領域を異ならせながら並存しているとの指摘が一般的だった。しかし、博士論文では、トンゴ ア島民の例に関しても同じような側面が認められる一方で、それとは異なる側面、より具体的に言うと、伝統医療が近代医療の守備範囲を包摂して行くような側 面も無視できないことや、そうした側面が顕在化している背景には伝統医療をめぐるマスメディアの報道や政府の政策をはじめとして、ヴァヌアツ内外のさまざ まな社会的動向があることを指摘した。
以上のような結論に行き着くまでに、どのような調査プランを立て、いかにして情報収集を行ったのか。そもそも伝統医療と近代医療の関係に関する人々の認 識を研究テーマにしたり、ヴァヌアツやトンゴア島をフィールドワークの対象地に選んだりしたのはなぜなのか。私はトンゴアでフィールドワークを行う数年 前、ヴァヌアツに青年海外協力隊員として派遣され、マラリア対策に従事していた。上の二つの問いのうち、とくに後者はそのときの経験と深く関係している。 そのため本書では協力隊員として活動していた時期にまで溯り、そこを始点として先述の結論に行き着くまでを、現地での私の日常生活や人間関係の様子などに も触れながらクロノロジカルに描いた。この点で、本書はフィールドワークや伝統医療などに関心をもつ方々だけでなく、国際協力や感染症対策に携わっている 方々などにも読んでいただけるようなものになっているのではないかと思っている。(筆者)
はじめてソロモン諸島を訪れたのは、1987年4月29日のことである。青年海外協力隊員として現地に赴任した私は、飛行機のタラップを降りる時に感じ た熱帯の湿気を帯びた生暖かさに一瞬たじろいだことを今でも覚えている。東京にしか住んだことのなかった当時の私にとって、気候だけでなくはじめて見る南 の島の街はあまりにも小さく、道行く車や行き交う人々のゆったりした動きは異文化社会そのものであった。
それから20年以上が経過した。ソロモンの街の様子や村落の景観にそう大きな変化はない。しかしその間、ソロモンは独立国として経済成長や社会開発に邁 進するための国家開発計画を幾度となく策定し、それを援助国や国際機関の思惑とすり合わせ、他者への依存状態を維持しようとしてきた。そこでソロモン諸島 民がこだわったのは、自律性(自らが状況を律する)である。開発計画は自律性を備えた依存状態を維持するための交渉ツールであり、それを通じて外国からの 援助を期待し続けてきた。それは、産業振興を基盤にした「健全」とされる自立状態からは程遠い状況ではある。それでもソロモンは、あるいは、それだからこ そソロモン諸島は、経済成長を指向し、合理的な企業経営と労務管理システムを国内で一般化し、GDPの持続的上昇を果たさなければならないのであろうか。 そうでなければ「貧困」のラベルを背負い続けることになるのだろうか。本書は、1987年にはじめてソロモンを訪れて以来、現地の都市や村落の暮らしに身 を置くたびに繰り返し抱き続けてきたこれらの素朴な疑問に対する、私なりの一つの答えである。
何度目かのソロモン諸島でのフィールドワークを終え帰国の途についた際、途中飛行機の乗り継ぎのためオーストラリアのブリスベン国際空港に立ち寄った。 ソロモン諸島の首都ホニアラから2135キロメートル(飛行機で約2時間30分)の距離である。それまでソロモンの村で過ごし、電気もガスも水道もない暮 らしに慣れていた私にとって、わずか3時間弱で目にしたブリスベンの「近代的」光景は、はじめてソロモンに着いた時に感じた驚きをそのまま裏返したような 感情を抱かせた。ほんの数時間移動するだけで大きく異なる世界が現存している。一方は物やシステムが西洋近代的に洗練されているのに対し、他方はそれに類 する物や事が著しく「立ち遅れている」ように見えるのである。このギャップを本書では地域的近代や自律的依存という概念で埋め、「立ち遅れている」ように 見えるソロモンの姿を積極的に捉え直すことに努めた。地域的近代のありようは排除や同化(西洋近代化)の対象としてあるのではなく、同国の活力を促すもの として捉え返すべきものであり、そのように思考(指向)することでソロモンの明日も「開けてくる」のかもしれない。ソロモンを、オセアニアを眺めるには、 このような楽観主義(オプティミズム)が必要であると信じている。(筆者、本書「あとがき」より抜粋、一部改変)
*会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されています。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)
日本オセアニア学会
会長 山本真鳥
[会長印省略]
本年3月13日から14日にかけて、ヴァヌアツ共和国を南太平洋では史上最大規模のサイクロンが直撃しました。首都ポートヴィラや南部の島々を中心に、 多数の家屋が倒壊し、死傷者が出るなど、多くの方々が被災されております。そこで日本オセアニア学会では、3月20日より、会員メーリングリストおよび学 会ホームページを通じて復興支援の一助となるべく義捐金の募集をおこない、27名以上の方からご寄附をいただき、4月30日に締め切りました。また、募集 開始時において未決定であった義捐金の委託先は下記の通り決定し、全額を委託させていただきましたことをご報告いたします。
皆様のご協力に心より感謝申し上げます。
以上
2015年3月27日(金)、第32回日本オセアニア学会研究大会会場(田沢湖公民館)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。総会の議事 は以下の通りです。
第15期新役員について
・新評議員の互選により理事が選出され、その役割分担が以下のように決まりました。
庶務 | 小野林太郎 |
会計 | 石森大知 |
編集(PCO) | 栗田博之・古澤拓郎 |
編集(ニューズレター) | 飯高伸五 |
研究集会・情報化 | 中澤港 |
渉外・モノグラフ | 深山直子 |
・下記の新役員が選出されました。
会計監査 | 遠藤央・小谷真吾 |
幹事(庶務) | 馬場淳 |
幹事(会計) | 倉田誠 |
幹事(研究例会) | 深田淳太郎(関西地区) 馬場淳(関東地区) |
※発表順序は、暫定的であり、変更になることがあります。
※研究会終了後、鶴川駅周辺で懇親会を行います。
馬場 淳(和光大学)
メール:junbaba[アットマーク]wako.ac.jp
本書で紹介しているファイス島は、ミクロネシアのカロリン諸島西部に位置する隆起サンゴ島である。従来のオセアニア研究においてほとんど無名であった ファイス島であるが、筆者が行った3回の発掘調査の結果、ほぼ定説化していたオセアニアにおける居住の歴史や、島嶼居住に関する認識を再考せざるを得ない 重要な発見が相次いだ。
20メートルの海抜高度を持つファイス島は、周辺の環礁島での発掘に比べて深い堆積を調査できるという大きな利点をもつ。実際、1991年に行った第 一次調査では、3メートルを越す文化堆積が見つかり、多くの予想外の出土遺物に恵まれた。
たとえば、紀元後200年ごろから人間がファイスに居住しはじめたこと、居住初期から定期的にヤップ産の土器をファイスへ持ち込んでいたこと、土器以 外にも東南アジアのクマネズミを持ち込み、イヌ、ブタ、ニワトリというオセアニアの基本的な家畜セットをすべて持ち込んで飼育していたこと、紀元後 1000年ごろにはソロモン諸島で使われていた特徴的な形をしたトローリング用ルアー(真珠母貝製)が伝わっていたことなど、多くの島嶼間接触を示す遺物 が出土した。
ファイス島周辺には多くの環礁島が散在し、西方のヤップ島を頂点とするサウェイ交易網を歴史時代まで形成していたことはよく知られている。ファイス島 の考古資料は、その起源を考える上で重要な存在になるであろう。しかも、言語学研究から指摘され、考古学者もおおむね受け入れてきたミクロネシア中央部へ の人類の拡散ルートに関しても、見直しが必要かもしれない。言語に基づく従来の説では、ファイス島の人びとは東方から移住してきたとされていたが、もしそ うなら、ミクロネシア中東部の他の島々からも3種類の家畜が見つかってしかるべきである。しかし、ミクロネシア東部からはイヌ以外はニワトリでさえほとん ど見つかっていない。特に、ブタに関しては、ファイス島のブタがミクロネシアでは唯一、そして最古の証拠であり(年代不詳のラモトレックや、パラオの例を 除く)、継続的に飼育していた可能性も同位体分析を使って証明できたことは、小さなサンゴ島ではブタの継続飼育はできないとするC. Giovas(2006)の説を否定することになった。
さらに、ファイス出土のニワトリ骨からDNAを採取して行われた遺伝研究の結果、ラピタ集団が西部ポリネシアへ持ち込んだ初期のニワトリと同じ型であ ることがわかったことから、カロリン諸島内の小島であるファイス島が、一躍、オセアニア先史文化の解明作業において重要な資料を提供する存在になりつつあ る。
本書は、ファイス島における上記の発掘調査の始点から終点までを紹介したものである。そもそもなぜファイス島で調査を行ったかにはじまり、調査中に下 す様々な決断、予想外の出土遺物の多様な分析法の模索など、調査者の視点から記述されている。フィールドワーク選書シリーズ(臨川書店)の一冊として執筆 されたため、考古学的な記述は最小限に抑えてあるが、ファイス島の伝統文化に加え、上記のようなファイス島での発見の重要性が、専門外の読者にもわかりや すく理解できる構成になっている。考古学にあまりなじみがなくても、日本考古学とはひと味違ったオセアニア考古学の醍醐味に触れることができる。(筆者)
Giovas, C. (2006). No pig atoll: Island biogeography and the extirpation of a Polynesian domesticate. Asian Perspectives 45(1): 69-95.
1995年夏、私は初めて沖縄を訪問した。沖縄について知りたい、知らなければならないと、思っていた。なぜか?自分の属する日本という国がどんな国 か、知らなければならないと感じていたから。そしてそれは、アイヌや沖縄の人の目を通してこそ、見えてくるものだと考えていた。
最初の沖縄訪問で、市場(マチグワー)に惹かれた。そこには大和化を拒む、確固とした沖縄らしさがあった。市場に満ちている「沖縄らしさ」ってなんだろ う。それが最初の問いだった。
市場に売られているものを手掛かりに、沖縄の生活文化を学ぼうと思った。サンゴ礁の色とりどりの魚がならんでいる魚屋(イユヤー)を調査対象に決め、漁 師町糸満を調査地としてフィールドワークを始めたのは、1996年、23才の時のことだった。
魚売りのアンマー(お母さん)は、いかに魚を読み、魚を語ってきたのか。海人(ウミンチュ、ウミンチュー/漁師)は、広大な海に向き合い、いかに海を読 んで魚をとってきたのか。この問いに、地道に向き合った。
魚の方言名をひとつひとつおぼえることから始め、魚屋を手伝いながらアンマーと買い手のやりとりに耳を澄ませた。広大なイノー(礁池)が埋め立てられた ことによる海洋環境の変化を、海人の漁場開拓の変遷から追った。時化の日に海人のおじさんをつかまえては、海底地形や地質、天気、潮がどのように読めるか を教えてもらった。
このような調査を続ける中で、1990年代の糸満を考えるうえで重要な、いくつかの問題が見えてきた。①相対売りの衰退と魚食文化の変遷、②イノーの埋 め立てによる海洋環境の変化、そして③漁撈技術や天気予報の進歩による海との向き合い方の変化、である。研究の成果は博士論文にまとめたものの、本にはし ていなかった。
糸満での本格的な調査を終えてから約10年後の2010年、私は、日本復帰以来断続的に行われてきた大規模な埋め立てがほぼ完成し、町の姿がすっかり変 わった糸満を見ることになる。新しい埋立地に町の中心が移ったことで、海との暮らしの記憶が蓄積された「旧糸満」は活力を失い、漂白されたサンゴのように 乾いた印象を受けた。そして、漁業に従事する人の数も、私の調査した頃の約半数に減っていた。
ここに至って私は、気づいたのだった。私が見てきた糸満は、日本復帰以降の歴史的流れの中ではじめて理解できることを。
漁師町糸満が、母なるイノーを埋め立てるに至った背景には、沖縄振興策が深く関わっている。土木建築による開発は、その目的の一部に新漁港浚渫などの漁 業開発も組み込んではいたが、結果的には糸満漁業を衰退させた。日本復帰は、糸満を「海人の町」でなくしてしまうような出来事だったともいえる。
埋め立てが完成した糸満の姿は、日本復帰がいかに沖縄の暮らしを変容させ、そのアイデンティティをも脅かすものであるかを象徴しているように思えた。も しも糸満が、海とともに培ってきた暮らしの記憶を失うならば、日本による沖縄支配が完了してしまうとさえ、思った。その危機感から私は、博士論文をもとに 本書を書くことを決意した。
本書は、糸満の人びとの「海とともにある暮らしの記憶」をもとに、「糸満が糸満であるところのもの」、すなわち文化を問うものである。そして、大和の大 学院生であった私が、糸満の海人とアンマーから多くを教わった、その記録でもある。私に話を聞かせてくれた人たちは、自分たちの経験や知識が記録に残され ることを見込んで話してくれたと思う。その意味で、本書はよそ者の独り言では決してない。私と糸満の人との関わりの結果が本書である。(筆者)
グアムについて調べ始めて間もない2004年6月後半、現地調査中に何かの用でスーパーマーケットに入ると、入り口付近に陳列されていた白地のTシャ ツ――真ん中にひとつの星があり、そのなかに赤と青のグアムの旗と星条旗が合成されたデザインがプリントされたもの――に目を引かれた。「GUAM LIBERATION DAY」「1944」「2004」「60TH ANNIVERSARY」「60 years of liberty & prosperity」という文字や数字が使われている。第2次世界大戦において日本占領下のグアムに米軍が再上陸したのが1944年7月21日であり、 その後同日が解放記念日となった。毎年6月から8月にかけて同戦争に関連したさまざまな行事が開かれる。それに合わせて、スーパーマーケット等はセールを 行い、関連商品の販売を行うところもある。筆者が目にしたのは、解放60周年を記念した商品のひとつであった。だが、米軍による土地接収の問題などのアメ リカの不正義を訴えるチャモロ人の社会運動に関心を持って現地にやってきた筆者は、そのTシャツから受けるアメリカ愛国主義的な印象に若干戸惑った。 9.11後の「対テロ戦争」のさなかということもあり、空軍基地や海軍基地を抱える島のあちこちでそうした印象を受けた。
アメリカには太平洋やカリブ海に非編入領土という政治的地位の島々がある。グアムはアメリカの非編入領土のままであると同時に、国際連合における非自 治地域のまま、要するにアメリカの植民地のままである。だが当時、現地で調査を続けても、チャモロ・ナショナリズムもグアムの脱植民地化を求める運動も 1980年代や1990年代ほど盛り上がっていないように筆者は感じた。しかし2000年代後半には、沖縄からの海兵隊の移転を含む米軍増強への関心が地 元でも高まっていくなかで、徐々に脱植民地化やチャモロ・ナショナリズムへの関心も再燃していくのを目の当たりにした。その一方で、チャモロ・ナショナリ ズムに対する批判的な見解や運動、いわばバックラッシュについて考えることの重要性を認識するようになった。チャモロ人の土地権や自己決定権によって白人 等の非チャモロ人が差別やレイシズムの被害を受けるという逆差別の問題は早くから提起されていた。これには2000年の連邦最高裁のハワイ先住民局 (OHA)に関するライス判決も影響している。
なぜグアムはこのような状況にあるのか。本書は、冒頭に挙げたような戦争の記憶、歴史認識、アイデンティティに関する問題などに目を向けながらも、ア メリカの歴史的不正義と関連づけてチャモロ人の運動を捉え、アメリカ本土やハワイでも見られる「肌の色を区別しない」というカラーブラインド・イデオロ ギーのグアムでの広がりに着目している。グアムではそれがレイシズムというよりむしろ植民地主義としての効果を発揮しているのである。(筆者)
次回研究大会が2016年3月18~19日に実施されることになりました。会場については、神奈川県三浦市のマホロバマインズ (http://www.maholova-minds.com/)を予定しております。大会参加方法など詳細は次号のニューズレターおよび学会ウェブサ イトでお知らせいたします
(大会長:山本真鳥・倉田誠)。
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されています。
渡辺 文(著)『オセアニア芸術――レッド・ウェーヴの個と集合』京都大学学術出版会、2014年(京都大学学術出版会より寄贈)
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)
前号ニューズレターでお知らせいたしましたように、日本オセアニア学会研究大会・総会を以下のとおり開催いたします。
■第32回研究大会・総会事務局
夏原和美(日本赤十字秋田看護大学)
田所聖志(秋田大学)
連絡先住所:
〒010-8502 秋田県秋田市手形学園町1-1 秋田大学国際資源学部 田所聖志
Tel:018-889-3253(直通)
Fax:018-889-3012(代表)
■日時:2015年3月27日(金)14:00 ~ 28日(土)12:00(予定)
(新旧合同評議員会(予定): 27日11:00?14:00)
27日の 12:30 から受付、14:00 から研究大会を開始します。
研究大会終了は28日12:00です。
■会場:
●27日の研究大会:
田沢湖公民館(田沢湖総合開発センター)大集会室
〒014-1201 仙北市田沢湖生保内字宮ノ後27
Website:
http://www.city.semboku.akita.jp/facility_sys/tazawakosokai.html
●宿泊・28日の研究大会:
プラザホテル山麓荘
〒014-1201 秋田県仙北市田沢湖生保内駒ケ岳2-32
Tel: 0187-46-2131 Website: http://sanrokusou.com/
■大会参加費
・有職者(定年等の退職者及び学術振興会特別研究員等を含む) 18,000円(大会参加費3,000円、宿泊費15,000円)
・無給者(大学院生、学生等)12,000円(大会参加費2,000円、宿泊費10,000円)
○27日の宿泊費を含みます(27日夜以外の宿泊については各自でお申し込みください)。
○大会参加費は、当日会場でのみ徴収いたします。
○大会詳細については参加者に第二次サーキュラーにてお知らせいたします。
○領収書は、会費と宿泊費に分けて記載します。
*宿泊費と大会参加費の領収書を別に作成する必要のある方は、その旨をあらかじめお知らせ下さい。また、申し込み期限を過ぎました場合、宿の手配が出来
ない可能性があること、直前のキャンセルは、キャンセル料を徴収することを御了承下さい。ご不明な点があればメールにてお尋ねください。
■会場までのアクセス
●電車でお越しの場合
会場の最寄り駅であるJR田沢湖駅は、JR東京駅より新幹線で2時間49分(16,510円)、JR盛岡駅からは在来線で47分(760円)の場所にあり
ます。27日の研究大会の会場である田沢湖公民館へは、JR田沢湖駅より徒歩10分であり、タクシーもご利用できます。研究大会終了後、バスでプラザホテ
ル山麓荘に移動します(30分)。
●飛行機でお越しの場合
秋田空港より「乗合タクシー秋田エアポートライナー乳頭号(前日まで要予約制)」ご利用で約1時間40分。必ず「事前予約」をお願いいたします。(予約受
付 キングタクシー / 電話:018-867-7444 )
秋田エアポートライナーホームページ http://www.airportliner.net/
■積雪が予想されますので、しっかりした足回りでいらしてください。
■プラザホテル山麓荘には、乳頭温泉より5キロほどの場所にあり、乳頭温泉と同一源泉から引湯したお風呂がございます。学会終了後、乳頭温泉での宿泊を予
定されている方は、なるべく早く予約なさることをおすすめします。
乳頭温泉ホームページ:http://www.nyuto-onsenkyo.com/
■ホテル近隣に、たざわ湖スキー場があります。学会のある3月下旬はシーズン終盤であるもののまだ滑れます。スキーを楽しむご予定のある方は、スキー場の
ホームページよりゲレンデコンディションなどをご確認の上、ご計画なさってください。
たざわ湖スキー場ホームページ http://tazawako-ski.com/index.html
研究大会プログラム
3月27日(金)
12:30-14:00 受付開始
14:00-14:10 会長挨拶(および大会事務局より連絡)
〈第一セッション〉 座長:小谷真吾(千葉大学)
14:10-14:35 榊原真美(神戸大学)
心血管疾患に対する保健行動に影響を与える文化的要因
―ソロモン諸島首都におけるエスノグラフィー―
14:35-15:00 中原聖乃(中京大学)
放射能被害和解を阻むもの
―マーシャル諸島核実験被害地の事例―
15:00-15:25 山本真鳥(法政大学)
近くて遠い隣人たち
―ふたつのサモア社会―
15:25-15:35 コーヒーブレイク
〈第二セッション〉 座長:石村 智(奈良文化財研究所)
15:35-16:00 丹羽典生(国立民族学博物館)
消えた日本人移民
―19世紀フィジーにおける実験とその記録―
16:00-16:35 小野林太郎(東海大学)
古代香料交易期のモルッカ諸島における埋葬と物流
―モロタイ島アル・マナラ遺跡の発掘事例から―
16:35-17:00 総会
17:00-17:30 懇親会場・宿舎へ移動
19:00-21:00 懇親会
3月28日(土)
〈第三セッション〉座長:馬場 淳(首都大学東京)
9:00-9:35 前川真裕子(国立民族学博物館)
オーストラリアにおける冗談とレイシズム
9:35-10:05 槌谷智子(東京大学)
開発と土地所有法人の変遷
―パプアニューギニア、フォイの事例から―
10:05-10:30 竹川大介(北九州市立大学)
グローバル化する情報社会とローカルな島嶼社会の間で重奏するリアリティと人類学者の役割
―国際的環境保護団体と伝統的イルカ漁の葛藤事例から―
10:30-10:40 コーヒーブレイク
〈第四セッション〉座長:丹羽典生(国立民族学博物館)
10:40-11:10 小杉 世(大阪大学)
環境と芸術
―ヴァヌアツ・キリバスのコミュニティシアターとレミ・ポニファシオ(MAU)の舞台芸術―
11:10-11:35 佐本英規(筑波大学)
竹笛(アウ)はだれのものか
―ソロモン諸島アレアレにおける竹製パンパイプス・アウの多面性
と「所有」―
11:35-12:00 小西潤子(沖縄県立芸術大学)
パラオの歌心
―ウタホンとレコーディングをめぐって―
12:00 終了
中原聖乃(著)『放射能難民から生活圏再生へ――マーシャルからフクシマへの伝言』(法律文化社、2012年)
本書は、アメリカの核実験によるマーシャル諸島の放射能汚染と被ばくの問題に焦点を当て、研究者とともに一般読者をも対象としたものである。被ばく補償
金を得ながら進められる公共の復興に対し、生活者レベルの対応について考察した。
本書の第一の目的は、アメリカの核実験によって受けたロンゲラップ共同体の混乱を、アメリカとの関係のなかで考察することである。第二は、アメリカの支配
に抵抗する「被ばく共同体の力」を、原状回復や補償要求などをはじめとする加害責任の追及だけではなく、コミュニティを再建する共同体としての力を描き出
していくことである。これまで核実験被害に関する研究は、パワー・ポリティクスを背景として、加害者の責任を明らかにし、加害者による被害者の「文化的包
摂」を分析したものが多かったが、本書はそうした研究とは一線を画す。
本書は、平和研究、文化人類学という二つの学問領域にまたがる研究である。平和研究からすれば、文化人類学のような特定の価値判断を忌避するようなスタン
スは現実問題からの逃避と映り、文化人類学にとって平和研究はイデオロギー的と映る。本書は、平和研究のスタンスで、アメリカとマーシャル諸島に横たわる
権力格差を明らかにするとともに、文化人類学的アプローチで現地社会の生活文化をありのままに分析した。
本書は、第1章で安全保障の不平等性について、第2章でサンゴ礁世界の特徴について、第3章で放射能汚染の被害の実証について、第4章で核実験賠償請求に
ついて、第5章で帰還プロジェクトについて、第6章でふつうの人びとの動態について論じた。
1954年3月1日のアメリカによるブラボー水爆実験は、マーシャル諸島全土を放射能汚染させ、とりわけ、ロンゲラップ共同体は甚大な被害を受けた。被ば
く者は急性放射線障害、挽発性放射線障害を体験し、現在でも故郷を離れた避難生活を送っている。
現在進められている除染とインフラ整備を中心とした「再定住計画」においては、自給自足の暮らしはほとんど考慮されず、人びとの希望する故郷の生活とは全
く異なる「復興の形」が創られつつある。
人々は、ロンゲラップに集団帰還することに付随する放射能リスクを回避しようと、他の場所やメジャト島への残留を画策し、結果的に人々の居住地はマーシャ
ル諸島全土、およびアメリカ本土に拡散してしまっている。ただし、拡散してしまった居住地は親族ネットワークに従来からみられる日常的実践によってつなが
れ、ロンゲラップ人としてのアイデンティティは保持されている。
本書では、影響の不確実な放射能汚染に恣意的な安全基準値を設けたり、安全宣言を出したりする行政の政策に対して、人々の居住地の拡散とつながりを保持す
る文化を、放射能リスクをコントロールする有効なリスク回避手段として評価した。マーシャル諸島の被ばく地域の事例は、上からの復興ではなく、下からの復
興の事例として、3.11以降の日本においても重要な意味をもつ。福島原発事故の影響下にある方々に本書を読んでもらいたいと思っている。(著者)
オセアニア学会モノグラフシリーズについて
「The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph
Series」の第二巻として、会員である前川真裕子氏の著作『Reconsidering Orientalism/Occidentalism:
representations of a Japanese martial art in
Melbourne』が刊行されました。会員の皆様にお届けします(渉外、モノグラフ担当理事)。
上水流久彦(県立広島大学)
田中幸織(一般財団法人沖縄美ら島財団 総合研究センター[美ら島研究センター])
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター
オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されています。
江戸淳子(著)『ニューカレドニア カナク・アイデンティティの語り――ネーションの語り・共同体の語り・文化の語り』明石書店、2015年(著者より 寄贈)。
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)
2014年度日本オセアニア学会賞選考委員会
1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2013年1月1日から 2014年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mail アドレス)を明記するものとする。
4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名 を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、 出版年を明記する。この場合も、著書または論文を日本オセアニア学会事務局宛に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦 理由が必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は2014年11月1日から2015年1月15日まで(必着)とする。
6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けるこ ととする。
(日本オセアニア学会事務局)
〒424-8610 静岡県静岡市清水区折戸3-20-1 東海大学海洋学部 小野林太郎研究室 宛て
TEL 054-334-0411 FAX 054-337-0216
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員へ郵送する。
8. 2015年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
2.選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3.オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。
第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状・報奨金)
受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。
前号ニューズレターで日程をお知らせしていましたが、日本オセアニア学会研究大会・総会を以下の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお
待ちしています。
ご出欠につきましては、学会ホームページの申し込み用フォームをご利用のうえ、2015年1月31日(土)までにお申し込みください。
皆様と一緒に、フィールド調査の成果を勉強し、乳頭温泉のお湯につかり、雪を眺めながら、秋田のお酒をご一緒できることを楽しみにしております。
■第32回研究大会・総会事務局
夏原和美(日本赤十字秋田看護大学)
田所聖志(秋田大学)
連絡先住所:
〒010-8502 秋田県秋田市手形学園町1-1 秋田大学国際資源学部 田所聖志
Tel:018-889-3253(直通)
Fax:018-889-3012(代表)
■日時:2015年3月27日(金)14:00 ~ 28日(土)12:00(予定)
(新旧合同評議員会(予定): 27日11:00?14:00)
27日の 12:30 から受付、14:00 から研究大会を開始します。
研究大会終了は28日12:00です。
■会場:
●27日の研究大会:
田沢湖公民館(田沢湖総合開発センター)大集会室
〒014-1201 仙北市田沢湖生保内字宮ノ後27
Website:
http://www.city.semboku.akita.jp/facility_sys/tazawakosokai.html
●宿泊・28日の研究大会:
プラザホテル山麓荘
〒014-1201 秋田県仙北市田沢湖生保内駒ケ岳2-32
Tel: 0187-46-2131 Website: http://sanrokusou.com/
■大会参加費
・有職者(定年等の退職者及び学術振興会特別研究員等を含む) 18,000円(大会参加費3,000円、宿泊費15,000円)
・無給者(大学院生、学生等)12,000円(大会参加費2,000円、宿泊費10,000円)
○27日の宿泊費を含みます(27日夜以外の宿泊については各自でお申し込みください)。
○大会参加費は、当日会場でのみ徴収いたします。
○大会詳細については参加者に第二次サーキュラーにてお知らせいたします。
○領収書は、会費と宿泊費に分けて記載します。
■参加申し込み・発表申し込み
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについても、
フォームにご記入下さい。また、フォームのご利用が不可能な場合には、御氏名、連絡先を明記の上、FAXか郵便で、必要事項を大会・総会事務局にお知らせ
ください。
発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて20~25分程度を予定しています。発表は口頭発表を基本としますが、発表者多数の場合は、ポスター発
表をお願いしたり、時間の短縮をお願いする場合があります。最終的には、事務局で調整して発表時間をご連絡いたします。
研究大会参加申し込みフォーム: http://www.jsos.net/meeting2015.html
*宿泊費と大会参加費の領収書を別に作成する必要のある方は、その旨をあらかじめお知らせ下さい。また、申し込み期限を過ぎました場合、宿の手配が出来
ない可能性があること、直前のキャンセルは、キャンセル料を徴収することを御了承下さい。ご不明な点があればメールにてお尋ねください。
■会場までのアクセス
●電車でお越しの場合
会場の最寄り駅であるJR田沢湖駅は、JR東京駅より新幹線で2時間49分(16,510円)、JR盛岡駅からは在来線で47分(760円)の場所にあり
ます。27日の研究大会の会場である田沢湖公民館へは、JR田沢湖駅より徒歩10分であり、タクシーもご利用できます。研究大会終了後、バスでプラザホテ
ル山麓荘に移動します(30分)。
●飛行機でお越しの場合
秋田空港より「乗合タクシー秋田エアポートライナー乳頭号(前日まで要予約制)」ご利用で約1時間40分。必ず「事前予約」をお願いいたします。(予約受
付 キングタクシー / 電話:018-867-7444 )
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■積雪が予想されますので、しっかりした足回りでいらしてください。
■プラザホテル山麓荘には、乳頭温泉より5キロほどの場所にあり、乳頭温泉と同一源泉から引湯したお風呂がございます。学会終了後、乳頭温泉での宿泊を予
定されている方は、なるべく早く予約なさることをおすすめします。
乳頭温泉ホームページ:http://www.nyuto-onsenkyo.com/
■ホテル近隣に、たざわ湖スキー場があります。学会のある3月下旬はシーズン終盤であるもののまだ滑れます。スキーを楽しむご予定のある方は、スキー場の
ホームページよりゲレンデコンディションなどをご確認の上、ご計画なさってください。
たざわ湖スキー場ホームページ http://tazawako-ski.com/index.html
日時:2014年12月13日(土)13:00~18:00
場所:立教大学池袋キャンパス1号館1204教室
第一部:個人発表
発表者:佐本英規会員(筑波大学)
発表題目:「ソロモン諸島アレアレにおける竹製パンパイプスをめぐる交換関係の動態:演奏への「支払い」の不確かさを焦点に」
コメンテーター:諏訪淳一郎会員(弘前大学)
第二部:パネル発表
パネル題目:「オセアニアにおける「インターマリッジ」の現代的諸相:マジョリティとマイノリティの観点から」
第一発表者:市川哲(立教大学)
発表題目:「母系社会と父系社会における混血の立場:ニューアイルランド島およびフィジーにおける先住民と華人の通婚」
第二発表者:飯高伸五会員(高知県立大学)
発表題目:「母系的社会における「ハーフ」の潜在化と顕在化:ニッケイ・パラオ人の埋葬に注目して」
第三発表者:深山直子会員(東京経済大学)
発表題目:「ニュージーランド・マオリと「インターマリッジ」」
本年度の関東例会では個人発表1名、個人発表に対するコメンテーター1名、パネル発表3名で開催した。個人発表をした佐本会員は、ソロモン諸島での
フィールドワークに基づき、現地の竹製パンパイプスの演奏をめぐる交換関係の動態を、支払の不確かさという観点から論じた。コメンテーターの諏訪会員から
は自身のパプアニューギニアにおけるフィールドからの視点に基づいたコメントがなされた。続くパネル発表では、科学研究費プロジェクト「太平洋島嶼部にお
けるマイノリティと主流社会の共存に関する人類学的研究」(代表:風間計博会員、京都大学)の共同研究の一環として、オセアニア島嶼部における主流派とマ
イノリティとの関係を、通婚や混血、出自観といった観点から、パプアニューギニア、フィジー、パラオ、ニュージーランド・マオリといった異なる事例を比較
検討する発表がなされた。
(関東地区例会幹事 市川哲)
2014年11月15日(土)、国立民族学博物館において、2014年度日本オセアニア学会関西地区例会が開催された。今回の例会では来日中であったオ レゴン大学のフィッツパトリック氏にもご発表いただけることとなり、学会員2名を含む計3名による英語発表が行われた。発表に続いて、各コメンテーターに よるコメント、フロアからの質疑が寄せられ、活発な議論が展開された。発表者、発表題目、コメンテーターは下記の通りである。
発表者:Scott M. Fitzpatrick (University of Oregon)
発表題目:Life and Death at the Chelechol ra Orrak Rockshelter : 3000 Years
of Occupation in Palau, Micronesia
コメンテーター:印東道子(国立民族学博物館)
発表者:飯田晶子(東京大学)
発表題目: Environmental Impacts on the Babeldaob Island of Palau under
Japanese Administration
コメンテーター:遠藤央(京都文教大学)
発表者:石村智(奈良文化財研究所)
発表題目:Cultural Heritage under Threat of Negative Impact from Climate
Change: Cases in Tuvalu and Kiribati
コメンテーター:野嶋洋子(アジア太平洋無形文化遺産研究センター)
フィッツパトリック氏の発表では、パラオのオラック島における発掘調査から、そこで発見された今から3000?1700年前の埋葬人骨、また動物骨や
共伴した人工遺物についての報告がなされ、それらが示すパラオの人口と社会の変化についての考察が展開された。続いて飯田氏は、日本統治時代のパラオ、バ
ベルダオブ島の農地開拓とボーキサイト採掘などの開発によって、原生熱帯雨林の伐採や土壌浸食という、環境への長期的かつ重大な影響が生じた点を指摘し
た。また土地利用や植生に基づく詳細なデータから、伝統的集落の景観分析についての報告もあった。石村氏の発表では、ツバルとキリバスの事例から、気候変
化による負の影響は、土地や景観といった有形文化遺産だけでなく、伝統的農業や食物などの無形文化遺産にも及ぶことが報告され、こうした影響を総合的な見
地から考察することの必要性が指摘された。
コメントおよびディスカッションでは、考古学や都市工学など多様なアプローチから提示されたデータについて、より詳細な質疑が行われただけではなく、歴史
的、文化的視点からの分野横断的なコメントもなされ、包括的かつ濃密な議論を行うことができた。
(関西地区例会幹事 比嘉夏子)
大西秀之(著)『技術と身体の民族誌―フィリピン・ルソン島山地民社会に息づく 民俗工芸』(昭和堂、2014年)
あらためて論じるまでもなく、技術は、個々人の日常生活から国際社会の政策・動向に至るレベルまで、現代社会に多大な影響を及ぼしています。このため、
技術と社会の関係性は、アカデミズムのみならず一般社会のなかでも日常的なトピックとなっています。しかしながら、そのような一般社会の関心に対し、アカ
デミズムの側が十分な回答をしめしているか、と問われたならばいささか答えに窮せざるをえないのではないでしょうか。
以上の課題を考慮に入れ、本書では、人間が環境に直接的に働きかける技術的実践を対象とした民族誌的・人類学的研究が直面する困難や課題を踏まえつつ、そ
の新たな展開や可能性を追究しました。具体的には、フィリピン・ルソン島山地民社会の土器作りや機織りという民俗工芸を対象として、それらの実践を支える
技術の民族誌レベルでの理解を試みました。その結果、まず現地の人びとが行使している知識や技能が、容易には可視化や言語化しえない特徴を有していること
を指摘しました。くわえて、そうした技術が、近代の学校教育とは性格を異にする学習教授システムによって伝習されている社会背景を究明しました。
いっぽう、本書では、開発事業や近代化によって技術の実践や伝習が変容した結果、現地社会に及ぼされた影響の読み解きを試みました。その結果、ジェンダー
の変容という思わぬ影響を現地社会に及ぼしたことを明らかにしました。また、こうした状況下でも、現地の人びとが自らの技術を「資源」として、グローバ
ル・エコノミーに対しても強かに適応している姿を提示しました。
このような検討を踏まえた上で、本書では、近代テクノロジーのあり方を再考するなかから現代社会において技術研究を行う意義を検討しました。とくに、そこ
では、産業革命以降の近代テクノロジーが、社会の至る所でまったく個別に行われている技術的実践を連結することによって、ひとつの生産活動を行う巨大な社
会システムとして再構築し、個々人の労働を究極的にまで細分化された分業の網の目に配置したことを指摘しました。これに加え、技術の急速な進歩によって価
値観やライフスタイルが急激に変化するなか、技術が現代社会に及ぼしている影響は、経済危機や環境問題などと同じく民主主義の課題としなければならないこ
とを指摘しました。
本書は、近代社会の中核ではなく周辺に身を置いて、技術と社会の関係性の読み解いたものです。いうまでもなく、近代科学に基づくもののみが、人類にとって
の唯一の技術ではありません。そういった意味で、本書は、最先端技術に代表される「近代テクノロジー」や「科学技術」を相対化するような、技術と社会の関
係性をめぐる理解を民族誌フィールドから提示しようと格闘したものです。その試みの成否を含め、本書を御一読いただき、忌憚のない御批評をお寄せいただけ
れば幸いです。(文責:大西秀之)
田所聖志(著)『秩序の構造――ニューギニア山地民における人間関係の社会人類学』 (東京大学出版会、2014年)
本書は、パプアニューギニア周縁部のテワーダの人々がつくりだしている人間関係の秩序(リーダーシップ、年齢秩序、男女関係)を、「村の中」「村の
外」「儀礼の場」という3つの場に与えられた意味の違いに注目して考えた民族誌的研究です。構成は次の通りです。
序 章 秩序をめぐる規範と実践の乖離
第1章 テワーダの生活環境
第2章 「村の中」と「村の外」の対立は深いか
第3章 村の中――規範が実践されない場
第4章 村の外――規範と実践が一致する場
第5章 集団魚毒漁――規範が集団で実践される場
第6章 「村の中」と「村の外」における規範・実践・秩序
終 章 人間関係の秩序とメラネシアの村落空間
本書では、テワーダの人々が「私たちのやり方」として語る内容と、「村の中」において彼らが実際に行う振る舞いの間に大きな齟齬がある一方、「村の外」と
「儀礼の場」では両者の一致が見られる理由を、メラネシア研究の知見に引きつけて解釈しようと試みました。
調査を始めた頃、目にした行動の理由を逐一訊ねる私に対し、テワーダの人々は、「これが私たちのやり方である」という返答をしばしばしてきました。ヤーフ
ゲという語が、ここで「やり方」と訳した語であり、「正しい方法」「決まり事」とも訳せます。ヤーフゲは、たばこや檳榔のやり取り、食事の取り方、家屋内
外での振る舞い方、結婚相手の選び方、狩猟や漁撈の手法、畑作りや葬送の手順といったさまざまな事柄の説明に使われました。
そうした場面に遭遇する中で、ヤーフゲという語が、男性相互の関係と男女間の関係に関わる事柄に、とりわけよく使われることに気づきました。また同時に、
私にとって不思議だったのは、ヤーフゲとして語られる規範と矛盾する振る舞いを、人々が実際にはたくさん行っていることでした。なぜ、人々は規範と矛盾し
た振る舞いを行うのだろうか?
この疑問を解くことができると思ったのは、村から離れた川で行われた集団魚毒漁に参加したときでした。そこでは、ヤーフゲとして語られていた規範が、人々
によって矛盾なく見事に実践されているように思われたからです。このとき以来、私は、「村の中」と「村の外」での振る舞い方の違い、つまり規範と場との関
係について考えるようになりました。
本書は、以上のような疑問に答えを与えようとしてまとめました。焦点は、しばしばヤーフゲに言及されて説明がなされたリーダーシップ、年齢秩序、男女関係
の規範に絞りました。なお、第5章は、植物由来の魚毒を用いる集団漁労についての稀少な記録だと思います。規範と場の関係について考えたい方、ニューギニ
ア山地民や魚毒漁に関心ある方に読んでいただけたら嬉しいです。(文責:田所聖志)
新入会員
飯田晶子(東京大学大学院)
山極海嗣(琉球大学大学院)
Barbara B. Wavell(アメリカ合衆国)
所属変更
野嶋洋子(アジア太平洋無形文化遺産研究センター)
渡辺 文(立命館大学)
*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター
オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されています。
寄贈図書
渡辺 文『オセアニア芸術:レッド・ウェーブの個と集合』京都大学学術出版会、2014年(京都大学学術出版会より寄贈)
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
・寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
・枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
・問い合わせ先:
編集委員 飯高伸五(理事)
(執筆希望の方はご一報ください)
2014年3月21日(金)、第31回日本オセアニア研究大会会場(高知市国民宿舎桂浜荘)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。総会の 議事は以下の通りです。
1.2013年度決算(会計理事・会計監査)
*2013年度決算(2013年3月1日~2014年2月29日)について、石森大知理事より説明があり、承認されました。(別紙参照)
・会計監査は、須田一弘氏および山内太郎氏によって行われました。
2.2013年度事業報告
*下記2013年度事業報告が審議され、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.29の刊行(83pp.:論文3本、通信1本)
・日本オセアニア学会モノグラフシリーズ(JSOS Monograph Series)1号として、The Story of Raga-David
Tevimule's Ethnography on his own society, North Raga of Vanuatu- (by
Masanori Yoshioka)を刊行しました。
・NEWSLETTER no.106,107(紙媒体)の刊行(論文4本)
・NEWSLETTER no.108(電子版)の刊行(論文1本)
・研究例会の実施
関東地区 2013年12月8日 立教大学 発表1本
関西地区 2014年1月13日 京都大学 発表2本
・ニューズレター掲載論文の電子公開
・第31回研究大会・総会の実施
2014年3月21-22日 高知市国民宿舎桂浜(大会長:飯高伸五)
・日本学術会議等関連の活動
・第13回日本オセアニア学会賞について
深山直子氏(東京経済大学)
対象著作:現代マオリと「先住民の運動」-土地・海・都市そして環境
*日本オセアニア交流協会より副賞をいただきました。なお、学会賞選考委員会からの報告は、以下、別記事として掲載されております。
3.2014年度事業計画
*下記2014年度事業計画が審議の結果、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.30の刊行
・NEWSLETTER no.109、110、111の刊行
・関西地区・関東地区研究例会の実施
・評議員選挙の実施
・第32回研究大会・総会の実施
・第14回日本オセアニア学会賞の募集
・日本学術会議等関連の活動
4.2014年度予算(別紙参照)
*2014年度予算案(2014年3月1日~2015年2月28日)について、石森大知理事より説明があり、承認されました。
報告事項
1.第32回研究大会・総会は、日本赤十字秋田看護大学の夏原和美会員および秋田大学の田所聖志会員を大会長として開催予定であることが報告されました。
2. 2013年度よりニューズレターが電子化されることになりましたが、さらにニューズレターの名称変更や、オセアニア関連の日本語文献の書評といった新たな項目を設置すべき かについて検討が行われました。その結果、ニューズレターの掲載項目や内容については現状維持とし、名称変更に関しては事務局より案を検討・提出の上、次 回の総会にて再検討することになりました。
3.PCOについても、科学研究費による学会誌の出版助成枠がなくなり、国際情報発信力を強化する目的での助成のみが申請可能となっている現状や、 PCOへの投稿論文数が極めて少ない現状を踏まえ、海外発信力をさらに強化することでPCOの学会誌、専門誌としての価値を高め、投稿論文数の増加を図る 目的から、現状の電子化状況をさらに発展させる可能性について議論が行われました。その結果、事務局を中心とした電子化に関する検討班を作り、その可能性 と具体案についての検討を行っていくことになりました。
1) 第13回 日本オセアニア学会賞受賞者
深山 直子 氏
対象著作:『現代マオリと「先住民の運動」―土地・海・都市そして環境』(風響社 2012年2月刊行)
2)選考理由
深山直子著『現代マオリと「先住民の運動」―土地・海・都市そして環境』は、ニュージーランド・オークランド市および近郊の先住民マオリ・コミュニティで
の長期にわたる現地調査ならびにオークランド大学マオリ研究学部を拠点に実施した史料調査の成果に基づき、ニュージーランド・マオリの「先住民の運動」の
特質を歴史的かつ多元的に描き出そうとする野心的な試みである。従来のマオリ研究では、先住民族によって組織化された大規模な政治=社会=文化運動に偏っ
て議論の蓄積がなされてきたが、現代のニュージーランドには、こうした組織的な「先住民族運動」に与することができず、あるいは与することを積極的に拒否
しながら、個人ベースでさまざまな主張を発信するマオリの存在が顕在化してきている。
このような多様化する「先住民の運動」は現在土地のみならず、海(慣習的漁撈権、前浜および海底の慣習的所有権)や都市(都市マオリの先住権、マラエの創
設、環境保護意識)を巡っても展開されているが、それを歴史的文脈の中で分析・解釈しようとする本書の手法はきわめて手堅いものであり、その独創性は高く
評価される。マオリ固有の民俗概念を分析概念として用いるという終章に関しては、その適否を巡って議論の余地があろうが、本書の民族誌的価値は極めて高
く、先住民研究全般に対し多大なる貢献を果たすものと言えよう。
3) 第13回 日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 栗田博之
委員 稲岡 司
須田一弘
片岡 修
関根久雄
2014年度日本オセアニア学会賞選考委員会
1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2013年1月1日から 2014年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mail アドレス)を明記するものとする。
4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名 を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、 出版年を明記する。この場合も、著書または論文を日本オセアニア学会事務局宛に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦 理由が必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は2014年11月1日から2015年1月15日まで(必着)とする。
6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けるこ ととする。
(日本オセアニア学会事務局)
〒424-8610 静岡県静岡市清水区折戸3-20-1 東海大学海洋学部 小野林太郎研究室 宛て
TEL 054-334-0411 FAX 054-337-0216
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net
7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員へ郵送する。
8. 2015年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
2.選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3.オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。
第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状・報奨金)
受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。
日本オセアニア学会モノグラフシリーズについての申し合わせ
日本オセアニア学会理事会
2014年3 月21日
日本オセアニア学会は、学会員の研究成果の発表促進のため、The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph Series(以下、モノグラフシリーズ)を出版する。
1.モノグラフシリーズは不定期刊行物とし、随時原稿を募集する。著者および編者(以下、著(編)者)は過去2年間会費を納入している学会員とする。
2.著(編)者は、応募の際、図版を含め既に完成した原稿をモノグラフシリーズ担当理事に提出する。
3.応募があった場合、モノグラフシリーズ担当理事が審査委員会を招集する。審査委員会を構成する査読者は、学会員1名を含めた3名までとする。審査結果
を踏まえ、モノグラフシリーズ担当理事が出版の可否を決定する。
4.出版が認められた場合、著(編)者は入稿前の原稿修正、印刷業者とのやりとりなど、すべての編集・事務作業に責任を負う。著(編)者は印刷・学会との
やりとりにかかるすべての経費を負う。
5.刊行物について、著(編)者は学会が定める部数を学会に寄贈し、日本オセアニア学会は会員・寄贈先への配布を行う。原則として学会は配布にかかるすべ
ての経費を負う。配布時期・方法は学会が決定する。
6.原則として使用言語は英語とする。
7.装幀は B5版、横書きとする。
8.原則として出版は単年度1冊とする。
付則 本申し合わせの改正は 2014 年 3 月 21 日から施行する。
渡辺 文(著)『オセアニア芸術――レッド・ウェーヴの個と集合』
(京都大学学術出版会、2014年)
本書が対象とするのは、「民族芸術」の担い手とみなされてきたオセアニア島嶼域にありながら絵画「芸術」を追求する、境界領域における人びとの実践であ
る。本書の目的は、これらの実践が既存のアートワールドの指し示す個性(=芸術)と集団性(=民族芸術)という二項対立を超え、「集合性」というあらたな
次元を顕現させる姿を民族誌的記述をつうじて分析することにある。そして、絶えず変化をうみだしながらも、オセアニアらしさとの連続性を保ちつづけていく
集合性の在り方を明らかにする。構成は以下の通り:
第1章 芸術を人類学的に論じる
第2章 芸術、文化、ローカリティの共謀――オセアニアの現代芸術
第3章 芸術の家(ホーム・フォー・アーツ)――オセアニア・センターの生活
第4章 芸術家になるために――ライフ・ストーリー
第5章 反復される絵画――集合芸術のつくりかた
第6章 売れる絵と売れない絵――三つの市場と画家の葛藤
第7章 差異化される絵画――「自分の作品」のつくりかた
第8章 制作の場――描いているのは誰か?
第9章 オセアニアをさがして、再び
1章にて理論的視座を示したのち、2章では、オセアニア地域で芸術との接触が起こった歴史的背景を概観し、芸術が、文化やローカリティという価値領域と共
謀しながら発展した経緯を明らかにする。3章ではエペリ・ハウオファの提唱した「オセアニア」という概念を検討したのち、その理念を礎に設立されたオセア
ニア・センター(在スヴァ)の日常のなかで芸術の学びの過程が展開し、オセアニアらしさが定義され、共同性が獲得されていく姿を描く。4章では画家のライ
フ・ストーリーを紐解きながら、センターの家としての求心力や、芸術という行為の魅力が個人史の奥底にまで作用していることを論じる。
5章からは集合芸術と呼ばれる絵画作品群に光を当て、モチーフとスタイルという分析概念を用いながら作品群における共通項を導きだし、「オセアニアらし
さ」との関連を検証する。6章ではコレクター市場、土産物市場、デザイン市場という連続する3つの市場を明らかにし、それらの期待と交渉を繰りかえす画家
たちの葛藤を描く。そして7章では、彼らが葛藤をつうじて個々の「差異化されたスタイル」をうみだしている過程を追跡する。
8章では描く・見るという行為空間へ視点を転じ、画材-作品-身体の行為連関を論じる。そして9章にて、これらの行為連関とスタイル、オセアニア、集合性
という概念とを総合的に論じることによって、変化を常態とする終わりなき連続体としてのオセアニア芸術の全体像が示される。(著者)
新刊紹介について
オセアニア学会ニューズレターでは、オセアニア学に関わる単行本の書評、ご自身の新刊についての紹介文などを随時募集しております。掲載の可否について
は、当面ニューズレター担当理事の判断とさせていただくことをご了承ください(庶務担当理事)。
次回大会日程について
次回研究大会が2015年3月27~28日に実施されることになりました。会場については、秋田県仙北市田沢湖周辺を検討しております。大会参加方法など
詳細は次号のニューズレターでお知らせいたします(大会長:夏原和美・田所聖志)。
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されて
います。
青柳まちこ(立教大学名誉教授)
大島先生は今年2014年3月11日94歳で逝去された。先生は名古屋市で生物学者大島廣氏の長男として生まれた。ご両親ともクリスチャンで、お名前
の襄二はジョージ・ワシントンから来ているそうで、ずいぶん日本人離れしたご家庭だったようである。旅券申請など名前のローマ字表記の時、Georgeと
書くと、必ずJojiと直されるとやや不満げに話しておられたのを耳にしたことがある。福岡で少年時代を過ごし、第五高等学校から京都帝国大学文学部史学
科に進み地理学を専攻された。京大では学部は異なるが、梅棹忠夫先生と同期だそうである。
京都大学に提出された学位論文は『水産養殖業の地理学的研究』(東京大学出版会、1972年)で、以後一貫して先生は海とくに水産業、漁村などに深い関心
を寄せている。また一見ひ弱に見えるが、実は山男でもあり、関西学院大学山岳部の部長を務め、オセアニアとの最初の係わりも、1967年、68年、関西学
院大学パラワン島学術調査隊の隊長として学生5人を引率して参加されたことであろう。この時はパラワン島南部の山地に住む人々を主として調査し、その記録
が『幻のケン・エイ族』(毎日新聞社、1968年)として出版されている。
しかしオセアニアにおける本格的なフィールド調査は、文部省の科学研究費を得て実施した1970年代のトレス諸島調査ではないだろうか。これは1975年
から77年、79年と3回にわたって行われ、先生は文化変容、とくにキリスト教の受容に関心を寄せられたようである。大島襄二編『トレス海峡の人々―その
地理学的・民族学的研究―』(古今書院、1983年)は、トレス海峡の人々に関する日本語で出版された最もまとまった報告書ではないだろうか。
その後オーストラリア国立大学へ短期留学をされ、トレス海峡に近い北オーストラリアの調査も開始しているが、また87年にはカナダ東海岸ハリファックスの
大学に留学され、ニューファウンドランド漁村調査に携わった。
93年に関西ニュージーランド研究会(現ニュージーランド学会)を立ち上げ、以降はニュージーランド研究に軸足を移されたように見える。私自身が大島先生
と親しくお付き合いをするようになったのは、この学会の10周年記念事業として計画された『ニュージーランド百科事典』(春風社、2007年)の編集に参
加するようになってからである。会員100人前後の小さな学会の事業としては無謀とも思われる企画であったが、幸い2003年横浜の出版社春風社の好意で
出版が決定した。以降編集委員4人は毎月のように京都に集まり、泊りがけで作業に携わることとなった。当時大島先生は80代半ばを過ぎておられたが、朝か
ら夕方まで私たちと一緒に、精力的に活動されていた。とくにご自分の原稿に関しては、何度も何度も訂正をされていたことが印象に残っている。
大島先生は常に黒眼鏡をかけておられたが、それはカナダの氷河地帯調査中、何らかの菌が目に入り、失明して片目が義眼であったためである。もう一方の目も
緑内障だったそうで視野が極端に狭く、細かい活字を読むことは想像以上に大変な作業であったろう。この無理がたたったのか、晩年は白い杖に頼る視力障害者
になられたとのことである。
大島先生は多才な方であった。米寿を記念して出版された『五年目の霧―創作・随想・作曲―』(編集工房ノア、2008年)の中では、カナダ東海岸ハリ
ファックスの霧の海に消えた若い漁師と彼を待つ妻の物語が美しく描かれているし、後半には小学校時代から晩年までに作曲されたという童謡、讃美歌、校歌な
どが数曲、楽譜付きで収録されている。
また非常に謙虚な方で、はるかに年下の者に対しても、常に敬語を用い礼儀正しい対応をされていた。1974年には沖縄海洋博の文化資料収集責任者として、
多くの若い研究者を各地に資料収集のために派遣されたことも、特筆に値する。これが契機となってオセアニア研究を志した人々も多いであろう。
大島先生がオセアニア研究の発展のために尽くされた功績を感謝し、心からご冥福をお祈りしたい。
熊谷圭知(お茶の水女子大学)
塩田光喜さんは変わった人だった。人懐こい人だった。少年のような人だった。皆に驚かれ、時には迷惑がられながらも、愛されていた。
彼と初めて会ったのは、私が1年間のパプアニューギニア留学を終えて帰ってきた後、たぶん1981年のことだったと思う。当時都立大の院生だった斎藤尚文
さんたちが主催する研究会に呼ばれて話をした。笑顔を浮かべながら親しげに話しかけてきて、一言一言に目を輝かせながら、オーバーにリアクションする姿が
印象的だった。そしてその印象は、最後まで変わらなかった。
アジア経済研究所の研究会では、2回、4年間にわたって一緒に仕事をした。研究会はたいてい土曜日の午後に開催されたが、主宰者である彼が定刻に現われる
ことはほとんどなかった。1時間以上遅れてくることもふつうだった。それでも皆はいつものように待ち続け、やがて悪びれることなく、彼はいつもの笑顔で
やって来た。彼と意見は合わなかった(しかし気が合わなかったわけではない)。編集段階でどんなやり取りをしたか、よく覚えていない。今思えば、よく2冊
も共著で本を出せたと思うが*、アジア経済研究所の編集スタッフが優秀だったせいか、特段の支障は感じなかった。
調査中に、時たまポートモレスビーの街で彼とばったり出会うことがあった。アウトドア用のポケットがたくさん付いたベストに、重たそうなウェストポーチを
付け、汗を拭きながら現われた。たいてい村人を何人か付き従えていたから、いつも立ち話程度だった。
最後に会ったのは、昨年末、東京でのパプアニューギニア友の会の席上だった。「熊谷さん、わたしもうフィールドに行けなくなっちゃったんですよ」。心臓が
悪く、医者から止められているのだという。その時はその言葉をそれほど深刻には受け止めなかった。
亡くなる1週間ほど前、彼は研究所内で倒れた。病院に行き、主治医の診察も受けたという。しかし大切な出版打ち合わせに現われなかった彼を、不審に思った
職員が一人暮らしの自宅を訪ねて、彼の死が発見された。
突然の訃報が届いて4か月後、6月27日夕、東大駒場キャンパス内で、塩田光喜氏を「偲ぶ会」が催された。それは彼の人柄を反映した、特筆すべきものだっ
た。主宰したアジア経済研究所の同僚のほか、高校、大学時代の同窓生、畑中幸子さん、山本真鳥さん、内藤暁子さん、風間計博さんなどオセアニア研究者…、
40名近くが集まり、全員が一言ずつ塩田氏への言葉を語った。通常の、儀礼的な悲しみに溢れた会とはおよそ異なり、会場にはむしろ明るい空気が流れてい
た。高校・大学時代の同級生は、彼の頭の回転の早さや知識の豊富さを語った。大学院の入試で面接官を怒らせて不合格となったエピソードも紹介された。一緒
に仕事をした同僚や仲間たちは、彼のユニークな言動にいかに振り回されたかを、生き生きと仔細に語った。会場の片隅のテーブルには、モノクロの彼の小さな
写真が置かれていた。あまりに皆が「悪口」ばかり言うので、今にも彼が「わたしにも一言いわせてくださいよ…」と自ら現われそうだった。
私は、塩田さんが「永遠の少年」で、成熟しないことを自ら選び取った、ナルシストだったと言い、そのような人生を送れたのは、幸せだったのだろうと話し
た。パプアニューギニアというのは、誤解を恐れずに言えば、甘えを許す社会であり、またそれによって人を招き続けるフィールドでもある。パプアニューギニ
アというフィールドが彼を招き、そして彼自身がそれを引き寄せ、愛し続けた。それは塩田さんにとって何よりも幸せなことだったに違いない。
* 熊谷圭知・塩田光喜(編)
1994『マタンギ・パシフィカ―太平洋島嶼国の政治・社会変動』アジア経済研究所
2001『都市の誕生―太平洋島嶼諸国の都市化と社会変容』アジア経済研究所
馬場 淳(首都大学東京 客員研究員)
私が塩田光喜先生とはじめてお会いしたのは、大学院の先輩の誘いで、アジア経済研究所(以下、アジ研)が市ヶ谷から海浜幕張に移転する際の研究室整理
に伺ったときだった。二人一組で使う研究室は、薄い仕切り板を挟んで対照的だった。塩田先生の領域は、書籍やコピー類で埋め尽くされ、これまで見たことの
ない光景が広がっていた。当時はいかにも研究者らしい部屋だとの印象を抱いたものだが、それが先生の片づけられない性格によるものだということを知ったの
は後のことである。とにかくこの出会いをきっかけに、公私にわたる付き合いが始まった。いつしか先生は、私を「バビー」と呼ぶようになった。
塩田先生がアジ研所蔵の著書や論文を大量にコピーできるよう便宜を取り計らってくださったこともあり、大学院生の私は先生を頼りにアジ研通いをするように
なっていった。ときに、私は先生の論文執筆をお手伝いするバイトとして雇われたこともあった。先生はタイピングを苦手としていたから、その仕事はもっぱら
手書き原稿をタイプするというものだった。もっとも印象に残っているのは、原稿用紙換算で約1500枚にのぼる先生の主著『石斧と十字架』(彩流社、
2006年)をひたすら打ち込んだあの「過酷」な夏休みである。やがて先生は、私をアジ研の共同研究に呼んでくださり、新しい知的環境を与えてくださっ
た。そのほか、プライベートでのお付き合いもあった。食事はもちろんのこと、何度か塩田先生のお宅にお邪魔したこともある。何より電話で話した時間は計り
知れない。先生は、私の生活パターンを「学習」し、定刻に電話をかけてきた。家族の誰もが(会ったこともない)塩田先生に親近感を抱くようになったほど
だ。あまりの頻度に居留守を使ったこともあるが、電話に出ないと、留守電に先生の怒りのメッセージが残るのがオチだった。私の結婚パーティでは、大好きな
オペラを堂々と独唱してくださった。完全に自分の世界に入っていたが、先生の歌声はいつの間にか新宿の小粋なレストランをオペラハウスに変えてしまったの
だった。
塩田先生と交流のあった人なら、この種のエピソードを挙げることは容易いだろう。先生は、多くの人と親密な関係を築き、強烈な個性を臆面もなく発揮しなが
ら――ときにそれが裏目に出ることもあったようだが――交流してきた。だから、先生絡みのネタは尽きることがないのである。
普通なら、上述のエピソードを「思い出」に変えて、塩田先生を偲ぶところだが、ここではもう少し紙幅を頂き、塩田先生の研究者像をまとめてみようと思う。
■塩田先生は、文明史家だった。
パプアニューギニア研究者として知られる塩田先生のキャリアは、東京大学にて、パプアニューギニアの人間観についての卒業論文研究を行ったことからはじ
まった。アジ研に入所した後、1985年から1987年まで、南部高地州に暮らすインボング族を対象に人類学的フィールドワークを行った。その後は、ポー
トモレスビーで一攫千金を夢見るインボング族たちの調査を断続的に行っていた。先生は、これらの研究を「インボング人類学」と呼んでいた。
なお大学院については、面接時に教官らと激しく議論したことによって、その進学は潰えたと言われている。しかしアジ研は、文化人類学を専攻していた塩田先
生を、かなりの期待をもって迎えたという(アジ研関係者談)。その期待どおり、アジ研では、共同研究を精力的に組織し、着実に刺激的かつ独創的な成果を世
に出していった。
ここで、インボング人類学がより壮大な研究テーマの中に包摂されていることを指摘しておきたい。具体的にそのテーマとは、国家、宗教(キリスト教)、貨幣
経済(資本主義)の三本柱から成る文明論である。塩田先生の論考を読めば、たとえローカルな事象を取りあげているとしても、文明論を意識して書かれている
ことがわかるはずだ。遺作となった『太平洋文明航海記』(明石書店、2014年)は言うまでもないが、実はインボング人類学の代表作『石斧と十字架』も文
明論である。文明史家よろしく、先生の知識と関心は文化人類学を越えて、さまざまな分野に及んだ。今どき、文明論を声高に叫ぶ文化人類学者がいるだろう
か。先生の業績については後に詳細な検討がなされるだろうが、ここで強調しておきたいのは、私たちが稀有な研究者を失ったということである。
■塩田先生は、ユニークな表現者だった。
上記の研究活動は、独特の仕方で表現された。まずインボング族との会話は、方言(讃岐弁)で記されている。先生曰く、「俺にはインボング語が讃岐弁のよう
に聞こえるんだ」。その是非はともかく、この方法は著述に異化効果を及ぼしている。次に強調したいのは、文筆活動――ワープロではなく、手書き――が音楽
と不即不離だったこと。塩田先生は、常にCDプレーヤーでクラシックやオペラを聞きながら、モノを書いていた。先生曰く、「音楽を聞きながらでないと書け
ない」らしい。
これらが、独特な「作品」を生み出した背景にある。それを感得したいのならば、『石斧と十字架』を手にとってみればよい。この書物は、移調や転調に満ちて
おり、すこぶる演劇的・音楽的な「作品」であることがわかるはずだ。なお先生の論考は、このことから、通常のアカデミックなそれと趣を異にしている。それ
は、「俺のスタイルはアカデミズムに馴染まないのだ」「一般の人に読んでもらえるものを書きたい」と語っていたように、本人も重々自覚していたことであ
る。たとえそれが裏目に出たとしても、最期まで自分のスタイルを貫いたのだった。
■塩田先生は、ニューギニア高地人にたかられていた。
先生は、上記の研究を遂行するうえで、現地人の「たかり」を必然として受け止めていた。私は、研究室で、先生がインボング族の「たかり」に電話で応対して
いた光景を目撃したことがある。学費や冠婚葬祭などの儀礼的費用を送金するほか、さまざまなモノも段ボールに詰めて現地に送っていた。パソコンを買ってあ
げたとも言っていた。現地に行けば、インボング族の友人の生活を惜しみなく支援していた。これについて、先生は「ビッグマンの運命」と真面目に語ってい
た。実際、「たかり」に応じた先生は、逆に現地のインボング族をほしいままに動かし、調査に必要な便宜を享受していたのである。
■塩田先生は、大学で講義をしたことがあった。
アジ研所員という立場から大学の教壇に立つ先生の姿は想像しがたいものだが、先生は2年間、東京都立大学(現・首都大学東京)の非常勤講師として文化人類
学を講じたことがあった。これは、首都大学東京の伊藤眞先生の尽力によるものである。二人の交流は、伊藤先生の院生時代――当時、塩田先生は東京都立大学
社会人類学研究会にしばしば顔を出していた――から続いていた。伊藤先生の結婚式に際しては3次会まで付き合ったということから、二人の関係、そして縁を
大切にしていた塩田先生の人柄が伺えよう。伊藤先生は、一コマを使ってずっとギアツの『ジャワ人の宗教』を講じたと情熱的に語る塩田先生の笑顔を今でも覚
えている。私も塩田先生の講義を一度でいいから聴いてみたかったと思う。
以上、研究生活に焦点を当てて塩田先生の人物像を私なりに書き記してみた。やや長くなり、しかも部分的に酷い表現(暴露話)が含まれており、追悼文には
そぐわない内容かもしれないが、短い人生を全身全霊で研究に捧げた塩田先生の人柄を理解する一助となることを願ってのことだと理解していただきたい。「塩
田先生を書く」ことは、約15年にわたって公私共々お世話になり、生前十分に感謝の気持ちを伝えられなかった私が今できる/すべき恩返しなのである。感謝
の気持ちを込めて、ここに追悼の辞を捧げたい。
末筆ながら、塩田先生のご冥福を心よりお祈りいたします。
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
・寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
・枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
・問い合わせ先:
編集委員 飯高伸五(理事)
(執筆希望の方はご一報ください)
日時:2013年12月8日(日)13:30~
場所:立教大学池袋キャンパス1204号教室(本館一号館)
発表者:河野正治(筑波大学大学院)
発表題目:「現代ポーンペイの初物献上における時間性の社会的構成―土地の豊饒性に還元されない首長への貢納をめぐって―」
コメンテーター:柄木田康之(宇都宮大学)
本発表では、現代オセアニアの首長制のなかにあってなお、初物献上がミクロネシア連邦ポーンペイにおいて実践されているという事象を取り上げた。慣習の領
域だ
けで変わらずに続いているように見える初物献上だが、在地の暦に照らすと、本来の実施時期よりもかなり早い時期に行われている。発表者は、こうした暦と実際の
実施時期のズレに着目し、近代化による社会関係の再編のもとで社会活動を組織化するために、いかに暦の調整がなされるのかを見るという観点から初物献上の
実践 を検討した。その際、初物献上のクライマックスとされる礼の祭宴が、象徴的意味だけではなく物質的利害を持つ点に着目した。
発表者は、初物献上の暦と実施時期が異なる背景を明らかにするための事例を紹介した。第一に、ヤムイモの展示によって死者の名誉を示すために、村人の偶発
的な
死を契機として、ヤムイモの展示にかかわる礼の祭宴が緊急に実施されるという事例について、映像を交えながら紹介した。第二に、最高首長が自身の所属するキリ
スト教会の行事を成功させるために、演説をとおして初物献上の時期を調整し現金を獲得するという事例を紹介した。このようにつくられる初物献上の時間性
は、神
の代理としての首長を媒介として収穫に感謝し翌年の豊饒を祈念するという、土地を介した神・首長・人間の一元的な交換に還元できるものではない。むしろ、それ
は、慣習的な暦だけではなく、村人の死期や、キリスト教の行事、現金の必要性などによって左右されることを明らかにした。
コメントと質疑応答では、季節性だけではなく人間の一生も視野に入れて、初物献上の時期の変化と個人のライフコースの変化を両方見たほうがよいという指摘
や、
ヤムイモの展示について植民地以前にまで遡って検討するべきという指摘、初物献上の時期が他の出来事との関係でいかに調整されるのかではなく、慣習の領域に軸
足を置かずにむしろ様々な次元がどのように調整されるのかという枠組みで理解すべきという指摘がなされた。
(文責:河野正治)
2014年1月13日(月)、京都大学吉田南キャンパスにおいて、2013年度日本オセアニア学会関西地区例会が開催された。当日の参加者総数は20名
近く
にのぼり、盛況な会となった。今回は学会員2名による研究発表の後に、各コメンテーターからのコメント、フロアからの質疑が寄せられ、活発な議論が展開され
た。発表者、発表題目、コメンテーターは以下の通りである(所属は開催当時のもの)。
発表者:町聡志(岡山大学大学院・博士後期課程)
発表題目:「『土地の声』からSNSへ―ミクロネシア連邦ヤップ州における新たな言説空間の出現―」
コメンテーター:柄木田康之(宇都宮大学)
発表者:栗田梨津子(国立民族学博物館・外来研究員)
発表題目:「オーストラリア都市先住民のアイデンティティの変容-若者の生活体験に着目して」
コメンテーター:深山直子(東京経済大学)
町氏の発表では、ミクロネシア連邦ヤップ州で近年生じた、海外資本による大型観光開発計画についての、州政府、首長会議、地域住民の対応が報告された。
州政
府および首長会議による独断的な計画の推進に対して地域住民は不信感を強め、反対意思を表明するステッカーの拡散や、SNSを中心とするインターネット上での
情報共有を活発に行っていた。主として若い世代によって構成されるこれらの新たな言説空間の分析を通して、伝統的な合意形成を基盤とした「土地の声」とは
異な る回路による言説が生まれつつあることを町氏は指摘した。
栗田氏の発表では、オーストラリア、アデレードの都市アボリジニにおける、世代間のアボリジナリティの変容について、三世代にわたるライフストーリーに
基づ
く考察が行われた。事例から栗田氏は、白人主流社会への抵抗としての、第一、第二世代によるアイデンティティの政治とは対照的に、第三世代においては、アボリ
ジニ社会と白人主流社会の間で状況に応じた暫定的な位置取りがなされる点を指摘した。さらにそうしたアイデンティティ形成の実態に着目することで、白人主
流社 会への従属あるいは抵抗という従来の枠組みを乗り越える可能性が示唆された。
両者は一見その主題を異にするものの、変容下にある現代オセアニア社会のなかで、若い世代が自らの置かれた状況をいかに認識し、行為しているのかを参照
する
うえで重要な議論であった。また言説形成という論点についても、歴史性や階層性といった視座からのより詳細な分析によって、今後さらなる議論の発展が見込まれ
ることが、質疑応答において確認された。
なお今回は、科研費基盤研究(A)「太平洋島嶼部におけるマイノリティと主流社会の共存に関する人類学的研究」(研究代表者:風間計博)との共催であっ
たこ とを付記する。
(関西地区例会幹事 比嘉夏子)
前号ニューズレターでお知らせいたしましたように、日本オセアニア学会研究大会・総会を以下のとおり開催いたします。
日時:
2014年3月21日(金)13:30 ~ 22日(土)12:30(予定)
(理事会:21日(金)10:30~12:00、 評議員会:21日(金)12:00~13:00)
大会・総会・理事会・評議員会会場および宿泊・懇親会場:
高知市国民宿舎 桂浜荘
〒781-0262 高知市浦戸830-25
TEL:088-841-2201 FAX: 088-841-2249
URL:http://www.katsurahama.jp
有給者(定年等の退職者及び学術振興会特別研究員等を含む)15,000円。
無給者(大学院生、学生等)9,000円。
いずれも21日の宿泊費、夕食代・朝食代、懇親会費を含む
*桂浜荘に宿泊されない場合の大会参加費(夕食代・朝食代、懇親会費は含まれません):有給者、無休者ともに5000円。
送迎バス:
本数が限られていますが、以下の無料送迎バスを運行いたします。
1) 高知龍馬空港から桂浜荘まで(定員40名):
*11時50分ごろ発(参考:ANA1605便[伊丹⇒高知]11時高知着、JAL1487便[羽田⇒高知]:11時35分高知着)
*高知龍馬空港のバス乗り場近くで「桂浜荘」の表示があるバスに乗って下さい。空港連絡バスとは異なりますのでご注意下さい。
2) 高知駅から桂浜荘まで(定員27名):
*12時40分ごろ発(参考:南風5号[岡山⇒高知]12時28分高知着)
*JR高知駅南口(土佐電気鉄道「高知駅前駅」方面)を出て大通りまで進んで左折し、バス停「高知駅前」付近で「桂浜荘」の表示があるバスに乗って下さ
い。通 り向こうには日産レンタカーがみえます。次ページ地図の赤色の★マーク付近です。
公共交通:
高知まで
・鉄道(JR):JR岡山駅から特急南風号で約2時間40分(1本程度/時間)
・航空機:羽田空港(10便/日)、伊丹空港(6便/日)、福岡空港(3便/日)、名古屋小牧空港(1便/日)から直行便
高知駅から大会会場・宿泊場所まで
・高知県交通バスで約35分(610円):坂本龍馬記念館前下車約2分
・MY遊バスで約50分(1日券1000円、2日券1600円):坂本龍馬記念館前下車約2分
・高知駅からタクシーで約30分(3500円程度)
高知龍馬空港から大会会場・宿泊場所まで
・高知龍馬空港から空港連絡バスで「はりまや橋」まで約40分(700円)。乗り換え、南はりまや橋バス停から高知県交通バスで約30分(560円)
・高知龍馬空港からタクシーで約25分(3500円程度)
高知龍馬空港時刻表:http://www.kochiap.co.jp/index.html
高知県交通時刻表:http://www.kenkoutsu.net/
MY遊バス時刻表:http://www.attaka.or.jp/kanko/kotsu_mybus.php
空港連絡バス時刻表:http://www.kochiap.co.jp/access_bus.html
研究大会プログラム:
3月21日(金)
12:00 受付開始
13:20 会長挨拶(および大会事務局より連絡)
〈第一セッション〉座長:小谷真吾(千葉大学)
13:30 交易ネットワークの構造とその地域性
―パプアニューギニア東部ルイジアード諸島における研究から―
門馬一平(北九州市立大学大学院)
13:55 告白と呪い
―ニューギニア高地におけるキリスト教の実践と感情の民俗理論―
深川宏樹(京都大学)
14:20 パプアニューギニアの土地所有
槌谷智子(東京大学)
14:45 パプアニューギニア・ギデラの伝統医療
―30年間に変わったこと、変わらないこと―
中澤港(神戸大学)・萩原潤(宮城大学)・山内太郎(北海道大学)・山村凌大(北海道大学)・河辺俊雄(高崎経済大学)
15:10 コーヒーブレイク
〈第二セッション〉座長:深山直子(東京経済大学)
15:20 マオリアイデンティティのトランスナショナルな再創造
―シドニーのマオリコミュニティとマラエに注目して―
神山歩未(名古屋大学大学院)
15:45 パラオ現代歌謡の日本語と音楽にみるパラオ的表現
小西潤子(沖縄県立芸術大学)
16:10 ファインマットの旅
―サモアからトンガへ―
山本真鳥(法政大学)
16:35 コーヒーブレイク
16:45 総会
19:00 食事、宴会
3月22日(土)
〈第三セッション〉座長:小野林太郎(東海大学)
9:25 遺物・遺構の組み合わせからみたラッテ期遺跡分布の評価
―グアム島北部における水資源分布を踏まえて―
島崎達也(慶應義塾大学大学院)
9:50 変動する「汀」の環境史
―琉球弧に位置する石垣島のジオアーケオロジー調査から―
山口徹(慶應義塾大学)
10:15 コーヒーブレイク
〈第四セッション〉座長:柄木田康之(宇都宮大学)
10:25 外交儀礼における序列づけの実践
―ポーンペイ主催の歓迎式典にみる最高首長と賓客の出会い―
河野正治(筑波大学大学院)
10:50 放射能汚染からの生活圏再生における文化の役割
―マーシャル諸島核実験被災 地の事例を中心として―
中原聖乃(中京大学社会科学研究所)
11:15 辺縁からみるグローバル化
―フィジー・ヴァヌアツ移民の位置性と戦略―
丹羽典生(国立民族学博物館)
11:40 「民族紛争」と人びとの対応
―ソロモン諸島ガダルカナル島北東部の事例から―
藤井真一(大阪大学大学院)
12:05 終了
ご連絡・お問い合わせ
第31回研究大会・総会事務局
〒780-0982 高知県高知市永国寺町5-15
高知県立大学文化学部
飯高伸五
Tel:088-873-2156(代表) Fax:088-873-3934(代表)
e-mail:taikai31[アットマーク]jsos.net
黒崎岳大(著)
『マーシャル諸島の政治史―米軍基地・ビキニ環礁核実験・自由連合協定』(明石書店、2013年)
本書は、独立から現在までのマーシャル諸島の現代政治の変遷について、国内政治を担ってきた国会議員や地方政府首長たちが、国際政治と国内世論との間でどのよう
な政治選択を行ってきたかという視点に基づいて分析したものである。著者は2003~06年にかけて、マーシャル諸島でフィールドワークを実施してきた
が、本 書の
執筆に向けて、国内外の公文書等の一時資料の収集分析と共に、政治家をはじめとした様々な人々への聞き取り調査を行いながら、同国の政局の展開を動態的民族誌とし
て記述していくことに努めた。
本書は3部9章及び補論で構成されている。第Ⅰ部では、マーシャル諸島共和国の建国に至るプロローグとして、マーシャル諸島の伝統的文化や社会構造につ
い て、民
族誌的記述をもとに明らかにしていく。特に大航海時代以降、欧米列強や日本との接触が進む中で、それぞれの宗主国側の統治システムの影響を受けながら、マーシャル
人社会の伝統的社会構造がどのように変容していったか、その変遷に注目しながら記述した。第Ⅱ部では、第二次世界大戦後に国連信託統治領ミクロネシアの一
部と して
米国の施政下に置かれ、1970年代以後は独立を果たすために米国との間で自由連合協定を締結し、独立後は米国をはじめ様々な国際社会のドナーと関わりながら自立
に向けて歩んできたマーシャル諸島の近現代政治史について総論としてまとめた。その際、歴代の大統領たちが、米国をはじめとした国際社会の情勢と国内の大
衆世 論を
把握しながら、政権運営及び総選挙での戦いをいかに実施してきたのかについて、世論調査や選挙分析を利用しながら動態的民族誌として記述した。第Ⅲ部では、マー
シャル諸島共和国の近現代政治史における各論として、国内問題への対策を担っている国内中央及び地方行政の統治エリートたちの動向について記述した。具体
的に は、
(1)米国からの経済援助に依存する国家経済の政策をめぐる伝統的エリートと新興エリートとの対立関係、(2)クワジェリン環礁米軍基地の土地使用をめぐる交渉や
ビキニ環礁を中心とした核実験に対する補償問題など米国との外交関係に影響を受けながら政治を進めていく市長や地方議員などの統治エリートたちの取り組
み、 (3)
第二次世界大戦後に台頭し、国内政治の中心を担った新興エリート層の一翼を担ったマーシャル日系人社会と第二次世界大戦前の宗主国であった日本との関係について説明した。
本書はミクロネシアの小島嶼国の近現代政治史の詳細な記述に専心してきたが、論を進める中で、同国の独立までの歩みは、日本が第二次世界大戦以降に歩ん
でき た道
のりとオーバーラップするところが多いことに改めて気付かされた。米軍基地の土地使用交渉問題や核実験の被害補償問題などのテーマは、今日の日本の政治・社会問題
を考える上でも共有できる視点を示すことができたと考える。本書が、島嶼国の近現代政治史の流れを示すに留まらず、今日の日本の諸課題を考えていく上での
一助 とな れば幸いである(著者)。
オセアニア学会ニューズレターは今号から紙媒体での送付を終了し、学会メーリングリストを通じて頒布されます。スパム対策の観点から、新入会員のメールアドレスなどを掲載
しておりません。新入会員の連絡先などに関してはsecretary[アットマーク]jsos.netまでおたずね下さい。また、掲載論文と学会通信の一
部は 従来通り学会ウェブサイトに掲載されます(ニューズレター担当理事)。
日本オセアニア学会の後援にて、以下の公開研究会が開催されます。
発表題目:Tosiwo Nakayama, Macronesia, and Japan
発表者:David Hanlon (Department of History, University of Hawai`i at M?noa)
日時:2014年3月26日 14:00~16:30
場所:〒183-8534 東京都府中市朝日町 3-11-1
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 大会議室
URL:http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/about/access
言語:英語
主催:科学研究費補助金・基盤研究A「日本を含む外来権力の重層下で形成される歴史認識―台湾と旧南洋群島の人類学的比較」(研究代表者:三尾裕子)
後援:日本オセアニア学会
定員:50名程度
参加申込:不要。直接会場にお越し下さい
お問い合わせ先:〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・研究機関研究員・藤野陽平
電子メール:fujino[アットマーク]aa.tufs.ac.jp
プログラム概要
14:00 Opening Remark
: Mio Yuko (Tokyo University of Foreign Studies)
14:15 Tosiwo Nakayama, Macronesia, and Japan
: David Hanlon (University of Hawai`i at M?noa)
15:15 Break
15:30 Comments
: Greg Dvorak (Hitotsubashi University)
: Izumi Kobayashi (Osaka Gakuin University)
15:50 Open Discussion
16:30 Closing Remark
栗田梨津子(国立民族学博物館)
如法寺慶大(南山大学大学院)
橋爪太作(東京大学大学院)
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事)(執筆希望の方はご一報ください)
日時:2013年12月8日(日)13:30~
場所:立教大学池袋キャンパス1204号教室(本館一号館)
JR池袋駅からのアクセスおよびキャンパス内の地図 http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro
/direction/
http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/campusmap/
発表者:河野正治(筑波大学大学院)
発表題目:「現代ポーンペイの初物献上における時間性の社会的構成―土地の豊饒性に還元されない首長への貢納をめぐって―」
コメンテーター:柄木田康之(宇都宮大学)
発表内容:
ミクロネシア・ポーンペイ(旧ポナペ)は首長制社会として知られている。本発表では首長制の一部を構成するものとしての初物献上に焦点を当てる。ドイツ植
民地
行政によって首長の第一次土地権が否定された後もなお、土地の耕作者がその季節に初めて収穫した農作物を初物として首長に献上するという慣習的な実践が続けら
れている。初物献上の「慣習」(tiahk)は、パン果とヤムイモの成長と収穫のリズムにもとづく在地の暦に規定される。それは、雨期にほぼ対応する「パ
ン果
の季節」(rahk)と乾期にほぼ対応する「ヤムイモの季節」(isol)から成る。こうした在地の収穫暦にもとづいて初物献上が実施されるというのが「慣
習」による説明である。
ところが、発表者の調査によると、実際に行われる初物献上は、必ずしも在地の収穫暦にもとづく時宜では実施されず、毎年異なる。たとえば2012年の事
例に
おいて、ある首長国の最高首長に対して行われた礼の祭宴(初物献上のクライマックスとされる祭宴)は、在地の暦よりも半年も早い6月に行われている。初物献上
の時間性が、土地の豊饒性にもとづく時間性(農作物の成長と収穫のリズム)に必ずしも規定されないとすれば、その時間性とはいかなる関係から構成されてい
るの
か。本発表の目的はキリスト教や現金経済と首長制の関係、そして葬儀という偶発的な出来事との関係に焦点を当て、現代ポーンペイにおける初物献上の時間性が、
土地の豊饒性に還元されるのではなく、いかに様々な社会的関係から構成されているのかを明らかにする。
お問い合わせ
市川哲(立教大学観光学部助教)
(関東地区例会幹事 市川哲)
日時:2014年1月13日(月)13:30~
場所:京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1207教室
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_ys.htm
発表1
発表者:町 聡志(岡山大学大学院・博士後期課程)
発表題目:「『土地の声』からSNSへ―ミクロネシア連邦ヤップ州における新たな言説空間の出現―」
コメンテーター:柄木田康之(宇都宮大学)
発表2
発表者:栗田梨津子(国立民族学博物館・外来研究員)
発表題目:「オーストラリア都市先住民のアイデンティティの変容―若者の生活体験に着目して―」
コメンテーター:深山直子(東京経済大学)
※本年度の関西地区例会は、科研費基盤研究(A)「太平洋島嶼部におけるマイノリティと主流社会の共存に関する人類学的研究」(研究代表者:風間計博)と
の共 催です。
お問い合わせ
比嘉夏子(日本学術振興会特別研究員PD/国立民族学博物館)
(関西地区例会幹事 比嘉夏子)
前号ニューズレターで日程をお知らせしていましたが、日本オセアニア学会研究大会・総会を以下の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしていま す。ご出欠につきましては、学会ホームページの申し込み用フォームをご利用のうえ、2014年1月31日(金)までにお申し込みください。
日時:2014年3月21日(金)13:30 ~ 22日(土)12:30(予定)
(理事会:21日(金)10:30~12:00、 評議員会:21日(金)12:00~13:00)
大会・総会・理事会・評議員会会場および宿泊・懇親会場:
高知市国民宿舎 桂浜荘
〒781-0262 高知市浦戸830-25
TEL:088-841-2201 FAX: 088-841-2249
URL:http://www.katsurahama.jp
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについても、フォーム にご記入下さい。また、フォームのご利用が不可能な場合には、御氏名、連絡先を明記の上、FAXか郵便で、必要事項を大会・総会事務局にお知らせくださ い。発 表時 間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて20~25分程度を予定しています。
研究大会参加申し込みフォーム: http://www.jsos.net/meeting2014.html
参加費:
有給者(定年等の退職者及び学術振興会特別研究員等を含む) 18,000円(予定)。
無給者(大学院生、学生等) 11,000円(予定)。
いずれも21日の宿泊費、懇親会費を含む
*宿泊をご希望にならない(懇親会にも参加されない)、あるいは宿泊費と大会参加費の領収書を別に作成する必要のある方は、その旨をあらかじめお知らせ下さい。宿 泊なさらない場合の参加費は、7000円程度を予定しております。また、申し込み期限を過ぎました場合、宿の手配が出来ない可能性があること、直前のキャ ンセ ル は、キャンセル料を徴収することを御了承下さい。
《大会会場について》
大会会場・宿泊先は、長宗我部元親の城跡にあり、徒歩圏内には桂浜、県立坂本龍馬記念館、坂本龍馬像、桂浜水族館などがあります。展望風呂からは太平洋が一望でき ます。
交通:
高知まで
・鉄道(JR):JR岡山駅から特急南風号で約2時間40分(1本程度/時間)
・航空機:羽田空港(10便/日)、伊丹空港(6便/日)、福岡空港(3便/日)、名古屋小牧空港(1便/日)から直行便
高知駅から大会会場・宿泊場所まで
・高知県交通バスで約35分(610円):坂本龍馬記念館前下車約2分
・MY遊バスで約50分(1日券1000円、2日券1600円):坂本龍馬記念館前下車約2分
・高知駅からタクシーで約30分(3500円程度)
高知龍馬空港から大会会場・宿泊場所まで
・高知龍馬空港から空港連絡バスで「はりまや橋」まで約40分(700円)。乗り換え、南はりまや橋バス停から高知県交通バスで約30分(560円)
・高知龍馬空港からタクシーで約25分(3500円程度)
高知龍馬空港時刻表:http://www.kochiap.co.jp/index.html
高知県交通時刻表:http://www.kenkoutsu.net/
MY遊バス時刻表:http://www.attaka.or.jp/kanko/kotsu_mybus.php
空港連絡バス時刻表:http://www.kochiap.co.jp/access_bus.html
第31回研究大会・総会事務局
〒780-0982 高知県高知市永国寺町5-15
高知県立大学文化学部
飯高伸五
Tel:088-873-2156(代表) Fax:088-873-3934(代表)
2013年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 栗田博之
1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2012年1月1日から 2013年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会賞選考委員長(以下、選考委員長)宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住 所、FAX番号、E-mailアドレス)を明記するものとする。
4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名 を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、 出版 年を 明記する。この場合も、著書または論文を選考委員長に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が必要であると判断する場合 は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
5. 応募期間は2013年11月1日から2014年1月15日まで(必着)とする。
6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailかFaxでも受け 付けることとする。
(日本オセアニア学会賞選考委員長)栗田博之
〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1 東京外国語大学 大学院総合国際学研究院
Tel/Fax:042-330-5373
7. 選考委員長は、自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をする。
8. 2013年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。
<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、 掲載 したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿するこ とが 望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍ま たは 論文につ いては、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象と なっています。
丹羽典生・石森大知(編)
『現代オセアニアの〈紛争〉――脱植民地期以降のフィールドから』(昭和堂、2013年)
冷戦以降の第三世界における民族紛争の増加や、低強度紛争の出現など、従来とは異なる新たな紛争形態が出現している。本書はそうした問題認識を背景に、
オセ
アニアにおける政治的諸問題を扱っている。実際、植民地時代の政治闘争後の政治的に安定した時期を経て独立をはさみ、1990年代後半以降、暴動から民族対
立、クーデタまでのさまざまな政治的問題を目にすることができる。ところが、そうした現状の反面、既存の紛争研究の枠組みの問題もあり、オセアニアにおけ
る紛
争研究は進行途上にある。本書は、さまざまなレベルの政治的軋轢を広く<紛争>としてとらえ返すとともに、オセアニアの政治的諸問題に関する基礎的研究の不足
を補うことも志して書かれたものである。
本書では、脱植民地期以降という時代的限定を設けた上で、オセアニアの政治的問題を現在の状況に鑑みて明らかにすることに焦点をあてた。執筆者は、そう
した 意図にあわせて、2000年以降にフィールド調査を行っている方々を中心に選んだ。
扱っている地域と問題点は、メラネシアを中心に多岐にわたる。パプアニューギニアにおける諸問題、具体的には、首都ポートモレスビーの都市開発と部族抗
争
(岩本洋光)という都市部から、ニューギニア高地における部族間抗争の変容についてまで(深川宏樹)、また、オセアニア地域の紛争のなかではおそらく一番知ら
れているブーゲンヴィル紛争について、その現状と問題点にまで踏み込んで扱っている(宮澤優子)。
ついで、同じメラネシアでも島嶼部の、ソロモン諸島、フィジーという2000年あたりに特に政治的問題の起きた地域について、それぞれ、「民族紛争」
(石森
大知)、クーデタの連鎖(丹羽典生)という視点から扱っている。両地域とは若干毛色は異なっているが、やはり島嶼部において、独立と先住をめぐって流血の事態
となったニューカレドニアについて、これまでの出来事の経緯と現代の動向について、その過程の中心に位置したチバウに焦点を当てることで整理している(尾
立要 子)。
また、本書ではメラネシア以外に、ミクロネシア・ポリネシアにおける諸問題も取り上げている。パラオにおける自由連合協定をめぐる対立と社会不安(三田
貴)、またトンガ王国の首都暴動と「民主化」への流れ(比嘉夏子)、そして最後に、フランス領ポリネシアにおける核実験への抗議暴動と独立運動までを扱っ
てい る(桑原牧子)。
本書を通じて、オセアニアにおける<紛争>の問題をすべてカバーしたと主張するつもりは毛頭ないが、現代オセアニアの政治的諸問題の現代的動向の一側面を
呈示
することができていればと考えている。また本書をもとに、小規模な国家がひしめくオセアニアという場所での<紛争>を考えることで、他地域での問題を再考する
よすがになれば幸いである。(文責:丹羽典生)
第30回総会でご報告いたしましたように、オセアニア学会ニューズレターは経費節減の必要性から近々電子化されます。これに伴って冊子の郵送は廃止され、来年 度は試験的に学会メーリングリストによって会員への配付を行う予定です。現在学会メーリングリストをご利用でない会員におかれましては、早めに学会メーリ ング リストへの登録を進めて頂きますようよろしくお願いいたします。ニューズレターの電子化について、ご不明な点がございましたら、下記までご連絡下さい(ニュー ズレター担当理事)。
〒780-0982 高知県高知市永国寺町5-15
高知県立大学文化学部
飯高伸五(ニューズレター担当理事)
Tel:088-873-2156(代表) Fax:088-873-3934(代表)
学会メーリングリストに登録を希望される場合は、下記までご連絡下さい。
〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町1-33
千葉大学文学部行動科学科
小谷真吾(情報化担当理事)
Tel&Fax: 043-290-2298(直通)
e-mail:secretary@jsos.net
「The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph
Series」の第一巻として、会員である吉岡政博ケ瓩涼・遏彝he Story of Raga: David Tevimule’s
Ethnography on His Own Society, North Raga of
Vanuatu』が刊行されました。記念すべき初巻として、会員の皆様にお届けします(渉外・モノグラフ担当理事)。
新入会員
小杉 世(大阪大学大学院)
町 聡志(岡山大学大学院)
牧野章子((株)緑政計画研究所)
所属変更
長戸結未(京都産業大学)
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されて いま す。
2013年2月8日(金)、京都大学稲盛財団記念館にて2012年度日本オセアニア学会関西地区例会が開催されました。2名の研究発表が行われ、活発な
議論 が行わ れました。発表者、発表題目、コメンテーターは以下の通りです(所属は当時のもの)。
2013年2月8日(金)、京都大学稲盛財団記念館にて2012年度日本オセアニア学会関西地区例会が開催されました。2名の研究発表が行われ、活発な議
論が 行わ れました。発表者、発表題目、コメンテーターは以下の通りです(所属は当時のもの)。
発表者:藤井真一(大阪大学大学院人間科学研究科・博士後期課程)
発表題目:紛争を(やり)過ごす方法―ソロモン諸島ガダルカナル島北東部の人びとが経験した「エスニック・テンション」
コメンテーター:古澤拓郎(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
発表者:比嘉夏子(京都大学大学院人間・環境学研究科)
発表題目:贈与と貨幣のタンジビリティ―トンガにおける経済実践
コメンテーター:早川真悠(大阪大学グローバルコラボレーションセンター招へい研究員)
藤井真一氏の発表では、2011年に実施された現地調査に基づいて、ソロモン諸島におけるエスニック・テンションとその後の社会不安に対するガダルカナ
ル島 北東
部の人々の対応が報告された。エスニック・テンションの政治的および歴史的背景、マライタ島出身者とその他の地域に暮らすソロモン諸島民との間の土地紛争など、対
立の構図を提示したうえで、発表者はガダルカナル島北東部の生業に関する民族誌データをもとに、「紛争に翻弄される悲惨な避難民」という既存のイメージを
再検 討す
る必要性を説いた。また、人々がイサタンブ解放運動などの武装勢力に対して貝貨を贈与しながら回避するなど、「紛争をやり過ごす」柔軟な戦略をとっていることが報
告された。質疑応答では、エスニック・テンションに至る歴史的背景を植民地期までさかのぼって検討する必要性、ガダルカナル島北東部の生態学環境を再検討
する 必要 性などが指摘された。
比嘉夏子氏の発表は、京都大学大学院人間・環境学研究科に提出された博士論文『相互行為から生成する経済―トンガ王国村落における贈与とふるまいの民族
誌』 の一
部に基づいて行われた。本発表では、トンガにおける献金行事や寄付行事の事例から、「近代貨幣」が価値尺度として用いられるだけでなく、相互行為としての贈与実践
のなかに取り込まれていることが報告された。寄付集めの行事コニセティでは、伝統的な踊りを踊る身体に貨幣を貼る行為ファカパレが行われるが、この行為に
は社 会的
承認と経済的援助との双方の役割が認められるという。質疑応答では、タパなどの伝統的な贈与財が売買されるという現象が補足的に説明された。その他、贈与と市場経
済の関係、メソジスト教会の経済的戦略などに関する議論が行われた。
(関西地区例会幹事[当時] 飯高伸五)
2013年3月23日(土)、第30回日本オセアニア研究大会会場(日光総合会館)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。総会の議事は以 下の 通りです。
2013年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 栗田博之
オセアニア学会ニューズレターでは、オセアニア学に関わる単行本の書評、ご自身の新刊についての紹介文などを随時募集しております。掲載の可否について は、 当面ニューズレター担当理事の判断とさせていただくことをご了承ください(庶務担当理事)。
次回研究大会が2014年3月21日~22日に高知市内で実施されることになりました。会場、大会参加方法などは次号のニューズレターでお知らせいたし ます (大会長:飯高伸五)。
新入会員
前田建一郎(洗足学園音楽大学)
Dominik Schieder(一橋大学)
紺屋あかり(京都大学大学院)
前澤祐子(バイロイト大学/ドイツ)
平野智佳子(神戸大学大学院)
所属変更
小西潤子(沖縄県立芸術大学)
山下孝雄(東北電力株式会社)
三田 牧(神戸学院大学人文学部)
紙村 徹(神戸市看護大学看護学部を退職)
*ご所属やメールアドレスに変更がある場合は、事務局(大学生協学会支援センター オセアニア学会係)までご一報ください。連絡先は裏表紙に記載されて いま す。
去る2012年12月22日(土)、東京大学本郷キャンパスにて、下記のプログラムのとおり2012年度の関東地区研究例会が開催されました。
前田氏は、白人人類学者によるニュージーランド先住民マオリの口頭伝承の収集および記録の過程におけるマオリ自身の関与を明らかにした後で、それが チャタ ム諸島民の慣習漁業権をめぐる裁判にどのような影響を及ぼしたのかについて発表をおこなった。深山氏によるコメントの後、発表全体の内容構成のほか、マオリの 中でのチャタム諸島民の位置づけ、人類学者(および人類学的研究の成果)と現地社会の関わり合い、本質主義と政治的正しさなどをめぐって熱心な議論が交わ され た。
つぎに小林氏は、先島諸島の先史時代における資源利用形態をテーマに発表をおこない、マングローブの存在しない隆起サンゴ礁島でも出土するマングロー ブ産 貝類・シレナシジミの分析をとおして、水陸問わず多様な資源を組み合わせる生業戦略の重要性を明らかにした。名島氏によるコメントの後、調査の方法論に関する 質問にはじまり、貝類資源利用の様相とシレナシジミの生態、生業と移住の因果関係およびその背景としての社会的条件の設定などをめぐって活発に議論がおこ なわ れた。
参加者は12名と決して多いとはいえないが、各発表テーマに精通するコメンテーターによる的確な補足的解説およびコメント・質問の後、フロアーからも 途切 れることなく多くの質問が出され、またそれを受けて発表者からは真剣な応答がなされるなど、定められた時間を超えるほどの白熱した議論が交わされた。(文責: 石森大知)
前号のNEWSLETTERでもお伝えしましたとおり、日本オセアニア学会第30回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回はミニシンポジ ウム 「旧南洋群島と台湾における日本イメージの形成~植民地支配に関わるモノを通じて」が企画され、全部で18題の演題が予定されております。オセアニア研究の発 展を期し、活発な意見交換がなされることを願っております。ご不明点などありましたら大会事務局までお問い合わせ下さい。春の日光にてお会いできること楽 しみ にしております。
日本オセアニア学会の後援にて、一般公開シンポジウム『暮らしの中のサンゴ礁――サンゴと人がひらく南島の人類誌――』が開催されます。
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事) s-iitaka[atmark]bc4.so-net.ne.jp
(メールアドレスの[atmark]は半角の@です。執筆希望の方はご一報ください)
日本オセアニア学会研究大会・総会を以下の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしています。
ご出欠につきましては、学会ホームページの申し込み用フォームをご利用のうえ、2012年12月28日(金)までにお知らせください。宿 泊先 との関係で例年より締め切りが早くなっているのでご注意ください。
2012年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 吉岡政徳
(日本オセアニア学会賞選考委員長)吉岡 政徳 〒657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲1-2-1 神戸大学大学院国際文化学研究科 Fax:078-803-7430 e-mail:yoshioka[atmark]tiger.kobe-u.ac.jp
馬場 淳 著
『結婚と扶養の民族誌――現代パプアニューギニアの伝統とジェンダー』
(彩流社、2012年)
現代パプアニューギニア諸社会の生活世界は、19世紀後半の植民地化から1975年の独立を経て、持続可能な経済社会を模索するマクロな過程と連動した 地域 社会固有の近現代史によって成型されている。本書の目的は、著者が1999年以来、断続的に人類学的調査を行ってきたマヌス州マヌス島・クルティ社会を対象 に、そうした生活世界における結婚と扶養の多相的かつ逆説的な諸相をカストム(ピジン語で伝統的慣習を意味する)とジェンダーの視点から記述・分析するこ とで ある。本書は、理論的問題を扱う2つの章(第1章・終章)と、クルティ社会の民族誌となる7つの章(第2章~第8章)で構成される。民族誌記述のうち、第4・ 5章は結婚、第7・8章は扶養の問題について取りあげ、第6章はそれら結婚と扶養の問題領域をつなぐ役割を果たす。そして第2・3章では、これらの経験的 位相 を記述・分析していく上での歴史的・社会的脈絡化を図る。 結婚と扶養という二つのテーマは、本書のなかでシークエンスとして描かれる。こんにち、結婚生活やパートナー関係はすこぶる不安定であり、子どもをもちなが らも男女が離別してしまう――結果として「シングルマザー」の産出――という事態は、クルティ社会でしばしば見られる光景である。これが、離別後のパート ナー の生活や子どもの扶養に注目する問題意識となっている。かくして著者は、人々の日常的な実践や語りにもとづいて、これら一連のプロセスを明らかにする。結婚と いう行為そのものがひどく議論の余地のある、複雑かつ多義的なプロセスであることや結婚をめぐる国家法と慣習的実践のズレは、後続する「シングルマザー」 や近 代型裁判に関する議論と連結する。また扶養については、在地の生を支える慣習的実践と近代型裁判(扶養費請求訴訟)それぞれの実態と接合が具体的な事例を通し て論じられる。なお社会文化的文脈を踏まえた扶養費請求訴訟に関する議論は、脆弱国家パプアニューギニアにおける国家法のあり方、ひいてはクルティ社会が 具現 する「近代」のあり方を如実に浮き彫りにする。
理論的には、本書は、カストム論とジェンダー研究を接合させる試みである。歴史的にも、文脈的(結婚と扶養をめぐる現象)にも、カストムは多様かつダイ ナ ミックに客体化されている。一方で、本書は、原理的・肯定的・否定的という三つの軸を設定することで、カストムの多様な客体化に一定の輪郭を与え、そのダイナ ミズムを示す。他方で、本書は、ジェンダーの政治学――男性と女性がときに協同し、ときに衝突しながら(結婚と扶養の)現象を創造・成型する諸実践――が いか にカストムの多様な客体化に関わっているのかを例証し、ジェンダーがカストムの発明や再生産を捕捉するうえでの重要な分析枠組みであることを強調・提示する。 (著者)
日本オセアニア学会は、以下の国際シンポジウムを後援いたします。
国立民族学博物館主催国際シンポジウム
「グローバル化における紛争と宗教的社会運動-オセアニアにおける共生の技法」
- 日時:
- 平成25年1月26日(土)10時~17時10分
- 国立民族学博物館第4セミナー室 (70名)
- http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/news/corp/20130126
- お問い合わせ:
- 丹羽典生(国立民族学博物館)
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 飯高伸五(理事) s-iitaka[atmark]bc4.so-net.ne.jp
(メールアドレスの[atmark]は半角の@です。執筆希望の方はご一報ください)
2012年3月24日(土)、第29回日本オセアニア学会研究大会会場(倉敷市芸文館)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。総会の議事 は以 下の通りです。
第11回日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 吉岡 政徳
委員 後藤 明
窪田 幸子
中澤 港
風間 計博
2012年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 吉岡政徳
以下,新所属のみ掲載します。
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)
2011年12月10日、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科川端キャンパスにて、2011年度日本オセアニア学会関西地区例会を開催した。 今回 の例会には10名が参加し、2名の研究発表が行われた。発表題目、発表者などは以下の通りである:
紺屋あかり氏の発表では、最新のフィールドワークのデータから、ベラウ(パラオ)のチャント(古典歌謡)の継承をめぐる人々の実践を、単なる「伝統文化 の継 承」としてだけでなく、言語芸術が生み出される場として捉え直す試みがなされた。継承形態が多様化する都市部の事例と、親族関係に基づいた継承形態が維持され る村落部の事例との双方から、人々が社会関係の変化に対応しながらチャント継承の場を再形成していく様子が提示された。コメンテーターの遠藤央氏からは、 ベラ ウにおいて文字化されない知識がもつ権力性、学校教育を通じた文字習得の影響、「伝統文化の継承」のために近年行われるようになった知識の文字化の影響などが 指摘された。その後、古典歌謡を継承ないし文字化する意図・目的、ベラウの古典歌謡の定義およびジャンルの区分、技能の伝承と知識の伝承の区分などに関す る質 疑応答がなされた。
渡辺文氏の発表では、フィジーのオセアニア・センター(Oceania Center for Arts and Culture)における絵画作品群(レッド・ウェーブ・アート)の制作現場を事例として、民族芸術の担い手たちは、グローバルな市場の要請や芸術生産の制度によって一方 的にコントロールされているわけではなく、芸術活動の行為遂行性、すなわち芸術家としての身体感覚を動員した人間とモノとの相互作用を通じて、諸制度の制 約を 換骨奪胎するような創造性を発揮していることが報告された。コメンテーターの丹羽典生氏からは、芸術研究からみたオセアニア芸術の位置づけ、芸術をめぐる諸制 度のとらえ方とその定義、芸術作品と作者との関係性、芸術の個性を生み出す要因などに関する指摘がなされた。その後、フロアからの質疑をふまえて、レッ ド・ ウェーブ・アートにおいて人とモノとの関係性が特に重要視されている理由、エペリ・ハウオファをとりまくオセアニアの芸術家の動向などが議論された。
(関西地区例会幹事:飯高伸五)
2012年1月28日(土)、東京大学本郷キャンパスにて、下記のプログラムのとおり2011年度の関東地区研究例会が開催された。
まず里見氏が、マライタ島の海上居住者による伝統的葬制(トロラエア)を取り上げ、男性と女性の事例を比較検討しつつ、頭蓋骨の移送と埋葬地のネット ワーク について報告した。石森のコメントの後、ラウの伝統的信仰、移住と葬制の関係性、居住様式と女性の埋葬のあり方などについて議論がなされた。
つぎに四條氏が、西欧社会との接触後のハワイに、法律を媒体として持ち込まれた血統の概念がどのようにハワイ社会に影響を及ぼしているのかについて報告 し た。深山氏がコメントした後、現代ハワイにおける親族観の捉え方、そしてハワイ人の土地利用形態の変容などをめぐって議論がおこなわれた。
参加者は11名と小規模ではあったが、フィールドワークを終えたばかりの若手研究者の報告に対して、フロアのほぼ全員が質疑応答をおこない、発表者との 間で 白熱した議論が交わされる研究例会となった。
(関東地区例会幹事:石森大知)
前号のNEWSLETTERでもお伝えしましたとおり、日本オセアニア学会第29回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回は20題を超える 演題 が予定されております。オセアニア研究の発展を期し、活発な意見交換がなされることを願っております。ご不明点などありましたら大会事務局までお問い合わせ下 さい。春たけなわの倉敷にてお会いできること楽しみにしております。
交通の便は以下の通りです:
・電車……山陽新幹線(下り)を利用する場合は、岡山駅で在来線の山陽線か伯備線に乗り換えて倉敷駅へ行くのが便利です。(岡山駅からの所要 時間 約15分)
・飛行機……岡山空港からJR倉敷駅北口へのバスが出ています。(所要時間約35分)
時刻表は岡山空港HP http://www.okayama-airport.org/ をご覧ください。
・自動車……山陽自動車道倉敷ICから。(所要時間約20分)
増野高司
国立民族学博物館 外来研究員
藤井真一
大阪大学大学院
根岸洋
青森県教育庁文化財保護課
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)
日本オセアニア学会第29回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。会員の皆様の多数ご参加をお待ちしております。
2011年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 吉岡政徳
(日本オセアニア学会賞選考委員長)吉岡 政徳
〒657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲 1-2-1
神戸大学大学院国際文化学研究科
Fax:078-803-7430
ソロモン諸島にクリスチャン・フェローシップ教(CFC)という、驚くべき教会がある。CFCは「生ける神」として信仰される宗教的指導者を頂に置 き、太 平洋では比肩すべき存在がないほどの規模と持続力を誇るなど、同地域の近代史のなかで燦然たる異彩を放つ。本書で試みるのは、この「生ける神」が創造し、そし て信徒たちに受容されてきた生活様式や行動規範に注目しつつ、CFCの全体像に迫ることである。
CFCを創始したのは、ニュージョージア島出身の現地人説教師、サイラス・エトである。エトは、聖霊憑依とともに神の啓示を受け、あらゆる側面で西洋 人の 干渉を受けない自立的な生活、すなわち「新しい生活」の実現を目指して運動を開始する。やがてエトらは、聖霊の解釈をめぐって主流派メソジスト教会と対立し、 妨害を受けつつも、1966年にCFCとして分離・独立を果たす。その過程でエトは三位一体の位格に並ぶ存在として神格化され、それ以降、CFCのすべて の事 象はこの「生ける神」を中心に展開してきた。
本書の目的は、CFCの歴史的な形成過程の把握とともに、「生ける神」によって創造され信徒たちに営まれる共同生活の現代的動向、およびその背景にあ る世 界観を明らかにすることにある。本書は、序章と終章に挟まれた3部(9章)から構成される。まず第Ⅰ部「運動から教会へ」では、エトの運動が聖霊憑依による宗 教的熱狂にはじまり、やがてエトの神格化がなされ、メソジスト教会から独立を果たす過程を考察する。第Ⅱ部「パラダイスに暮らす」では、エトの意匠で建設 され た本拠地・パラダイス村の事例を扱い、CFC信徒が営む日常生活の実態を明らかにする。そして第Ⅲ部「聖霊の働きと生ける神」では、各種の教会儀礼(主日礼 拝、洗礼式、結婚式、葬式)、「生ける神」の位置づけ、信仰に関する語りなどの事例をとおして、CFCの世界観の包括的な理解を試みる。
従来の研究において、太平洋の諸運動は概してカーゴカルトかプロト・ナショナリズムに振り分けられ、CFCは前者として扱われてきた。しかし、著者が 終章 で提示する新たな分析枠組みに基づけば、CFCは従来の位置づけには該当しない。CFCは構造レベルの技術的行為という点で前者とは異なるし、単線的発展論= 近代化論に依拠する後者に類するわけでもない。「生ける神」が創造した時空間の統制、運動形態の階層的組織化、生活様式の体系的知識化などの事例に注目す れ ば、それらは既存のメラネシア的秩序とは相容れず、モダニティの一端を示すものと解釈される。こうした考察に基づき、CFCは、宗教的領域の技術的な改革をと おして権利や自治の獲得を目指す近代的な「新しい改革運動」と位置づけられるのである。(著者)
本書は、東南アジア島嶼部やオセアニアに代表される海域世界を対象とした地域研究として書かれた研究書である。これまでの地域研究では、国家を単位と して 対象とする研究が主流であった。こうした風潮に対し、本書では「海域」という単位でも地域研究の対象となりうることを、考古学や民族学、歴史学的なアプローチ を積極的に採用することで総合的に検討する。 より具体的には、東南アジアに位置するセレベス海とそれを取り囲むスール諸島からミンダナオ島南岸、ボルネ オ島 北東部沿岸、サンギヘ・タラウド諸島とスラウェシ北岸からなる海域世界を、その歴史・文化的特性より「セレベス海域」と定義したうえで、この海域における過去 から現在に至る人々の生活と文化の移り変わりを、漁撈活動を中心とする海産資源の利用にみられる変化を軸に検証を試みていく。
このような本書の意義は大きく三つある。その一つは、セレベス海域をはじめとするこの海域世界に人類(の痕跡)が登場してから現代まで、という長期的 で人 類史的な視点からの地域研究となっている点にある。この視点を踏まえることで、本書は従来の研究で超えることが難しかった「東南アジア」や「オセアニア」とい う枠組みを取り外し、隣接する「海域世界」として「オセアニア」世界と「東南アジア」世界とを比較・検討することを可能にする。同じく「海域世界」の一つ とし て「東南アジア」を再検討することで、改めて東南アジア海域世界を解体し、その地域像に迫るという、よりマクロで長期的な「海域」の視点から論じることに成功 した。
いっぽう本書のもう一つの意義は、おもに東南アジア島嶼部を対象とした先行研究で指摘されてきた「フロンティア」や「移動分散型社会」といった文化・ 社会 的要素が、「セレベス海域」ではオーストロネシア語族と推測される新たな人々の移動や植民により、約3500年前頃に始まる新石器時代期に形成された可能性 を、旧石器時代から植民地時代にいたる多様な先史遺跡群の発掘調査と、そこで出土した魚骨や貝類等の自然遺物や土器や石器、貝製品等の人工遺物を対象とし た考 古学的な分析より明らかにしたところにある。
また研究方法においては、これまで地域研究を行う上での主な研究法とはあまり見なされてこなかった考古学を積極的に援用し、この分野で発展し、「現 在」に もアプローチできる民族考古学の手法から地域研究の実践が可能であることを証明した点も、その意義の一つである。 この成果がもっとも顕著に示される本書の後半部では、セレベス海域を含む東南アジア海域に広く居住するサマやバジャウと呼ばれる海民の漁撈活動や資源利用に関する現在が紹 介され、同時にこれらの民族学的な情報が、文字記録のない先史時代における人々の漁撈活動や生業戦略を検討する際にも有効な情報となりうる可能性を垣間見 るこ とができよう。
このほかに本書の魅力としてあげられるのが、海域世界の自然や海と共に生きる人々の漁撈や生活風景を写した豊富な写真群であり、各章の前後にはカラー 写真 によって紹介された内容紹介のページや、本書のテーマとは少し異なる視点から海域世界を描写したコラムも挿入されている。東南アジアからオセアニア地域を対象 とした地域研究や人類学を行う研究者や学生の方々には、ぜひ一読してもらいたい作品である。(著者)
本号より、ニューズレターに「新案紹介」コーナーを設けることになりました。会員の皆様には、オセアニア学にかかわる単行本の書評・ご自身の新刊につ いて の紹介文など、オセアニア学についての情報を投稿してくださるようお願いいたします。なお、掲載の可否については、当面、ニューズレター担当理事の判断とさせ ていただくことをご了承ください(庶務担当理事)。
三田 牧
日本学術振興会特別研究員
秦 玲子
京都大学大学院
山田 真美
お茶の水女子大学大学院
倉田 誠
神戸学院大学地域研究センター
片岡 修
関西外国語大学
夏原 和美
日本赤十字秋田看護大学大学院
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)
モノグラフシリーズ旧担当理事・柄木田康之
モノグラフシリーズの応募状況に鑑み,2011年3月21日に開催された理事会において,原稿は年一回ではなく随時募集するよう申し合わせが改正されま し た。以下に改正された申し合わせを掲載します。下線は改正部です。
日本オセアニア学会モノグラフシリーズについての申し合わせ
日本オセアニア学会理事会
2011年 3月 21日
日本オセアニア学会は、学会員の研究成果の発表促進のため、The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph Series(以下、モノグラフシリーズ)を出版する。
- モノグラフシリーズは不定期刊行物とし、随時原稿を募集する。著者および編者(以下、著(編)者)は過去2年間会費を納入して いる 学会員とする。
- 著(編)者は、応募の際、図版を含め既に完成した原稿をモノグラフシリーズ編集担当理事に提出する。
- 応募があった場合、モノグラフシリーズ編集担当理事が審査委員会を招集する。審査委員会を構成する査読者は、学会員1名を含めた3名までとす る。 審査結果を踏まえ、モノグラフシリーズ編集担当理事が出版の可否を決定する。
- 出版が認められた場合、著(編)者は入稿前の原稿整理、校正などすべての編集作業に責任を負う。
- 編集事務(印刷業者との原稿の受け渡し等)は、モノグラフシリーズ編集担当理事が責任をもっておこなう。
- 刊行は原則として次の日程で行う。原稿の応募,査読審査(応募後2カ月間),原稿修正(査読後1カ月間),入稿(査読受理後),出版
- 装幀は、A5版、横書きとする。
- 刊行物の配布は著(編者)が行う。著(編者)は一定数の刊行物を日本オセアニア学会が定める機関に寄贈するものとする。
付則 本申し合わせの改正は2011年3月21日から施行する。
2011年3月21日(月)、第28回日本オセアニア学会研究大会会場(東京大学本郷キャンパス)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。 第 28回大会・総会は、当初、千葉県・館山市での開催が予定されていましたが、震災の影響により代替地での開催となりました。総会の議事は以下の通りです。
2011年3月21日の日本オセアニア学会総会において、片山一道氏(京都大学名誉教授)に石川榮吉賞が授与されました。授賞理由は、以下の通りです。
授賞理由:
片山一道氏は、1980年に仏領ポリネシア、ツアモツ諸島のレアオ島でポリネシア人を対象とする現地調査を開始した。それ以来、古人骨調査と生体調査を 基軸 にした定点調査を通じて、ポリネシア人身体特徴のユニークさの本質と理由を解明する独特の研究活動を続けてきた。1989年からは先史ポリネシア人の拡散に関 する広域調査を主導し、ポリネシアを中心とする南太平洋でのフィールドワークは、クック諸島をはじめ合計11か国におよんでいる。
特にラピタに関する研究では、形質人類学的側面から活発な講演・執筆活動を行い、日本におけるラピタ文化の知名度を上げ、日本におけるオセアニア学を普 及さ せるために大いに貢献してきた。
学会活動については、その揺籃期の頃から評議員や理事などを歴任して学会活動を支えるとともに、2003年から2007年にかけて2期4年間、会長を勤 める ことで、その発展に寄与した。
以上のように、オセアニア研究の振興に多大なる寄与を果たしたこと、くわえて、長年にわたり日本オセアニア学会の発展に貢献してきたことから、片山氏を 石川 榮吉賞受賞者として推薦する。
石川榮吉賞選考委員会
片山 一道
このたび石川榮吉賞を受賞する恩典に浴しましたことにつき、日本オセアニア学会の皆さま方に心から御礼申し上げます。石川先生の御芳名をいただいた賞を 授け られるなど、ともかく私には、夢でも見るような話ですから、ことのほか嬉しく思っているような次第です。また、天にまします石川先生には、あらためて謝恩の意 を表したいと存じます。それでもなお、先生の恩義に感謝する私の念は十分ではなく、百万遍の言葉でもたりないでしょう。
はじめてポリネシアの島を訪れ、そこで人類学の現地調査に参加する機会に恵まれたのは、齢おそく、すでに30歳代のなかば近くになっていました。 1980年 のこと、フレンチ・ポリネシアのレアオ環礁でした。今から考えても、よくも行くことができた、と思うほどに遠い世界でした。そのうえ、このうえないような貧し い小さな離島でした。それまでに抱いていたポリネシア世界に対する憧れのイメージは儚くも消え失せてしまい、ピンからキリまで何から何までもが無駄にでき ない ような無いものづくしの現地生活は、ともかくカルチャーショックではありました。でも、ある意味、人類学のフィールドとしては理想的な場所だったのかもしれま せん。よくもまあ人間という動物、こんな島にまで渡り来て、わざわざ生業を成り立たせているものよのう、と。そんな驚嘆を肌で感じることができたからで す。そ の思いこそが、今日にいたる私のポリネシア人研究の原点となったのかもしれません。
そんな頃に座右の書となったのが石川先生の御高著です。先生の「南太平洋の民族学」(1978、角川選書)、「南太平洋」(1979、角川書店)、「南 太平 洋物語」(1984、力富書房)などは、テランギ・ヒロアの「南太平洋のバイキング」やR. サッグスの「ポリネシアの島文明」やP. ホートンの「最初の ニュージーランド人」などとともに、当時の私にはバイブルがごときでした。また、どんどんポリネシア研究の深みにはまる契機となったのが、先生との邂逅で あ り、ビールのごとく溢れる貴重なる御経験談でした。洒脱で矍鑠とした乗せ上手の先生の語り口は、遅れてきた者をノリノリに乗せていく気流のようでした。
こんなわけですから、このたびいただいた石川榮吉賞の表彰状は、私の大切にすべき存在証明のようなものです。レアオ環礁の調査で始まった左腎臓のいくつ かの 結石、ポリネシアの島々で暮らしつつ次々と歯をなくしてきた上下顎、マンガイア島のサンゴ礁で怪我したときにできた右手第5中手骨の遠位端周辺の傷跡などとと もに、長らく私がポリネシア研究に血道をあげてきたことを示す証となるわけです。これからの生涯の誇りなのです。
第10回日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 山本 真鳥
稲岡 司
大角 翠
棚橋 訓
山口 徹
2011年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 吉岡政徳
<注 記>
日本オセアニア学会賞規定
- 第1条(目的)
- 日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
- 第2条(資格)
- 日本オセアニア学会員であること。
- 第3条(対象)
- オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満 の者 とする。
- 2 賞の授与は各年度1名とする。
- 第4条(選出方法)
- 賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
- 2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
- 第5条(賞の授与)
- 賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
- 第6条(賞状・報奨金)
- 受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
- 附則
- この規定は平成13年4月1日より施行する。
山本宗立
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター
深山直子
東京経済大学コミュニケーション学部
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)
オセアニア研究に船出する機会をつくってくださった私の恩師、石川榮吉先生の偉業を記念した本賞の受賞にあたり、オセアニア学会のみなさまに心から感 謝も うしあげます。
石川先生に初めてお会いしたのは、私が東京都立大学(現首都大学東京)の修士生で、先生(立教大学教授)が私の出身大学・埼玉大学に非常勤講師に来て いた 1970年です。石川先生のメラネシアの村落共同体の講義を聞き、もっとフィールドワークの話をしてほしいと思ったのを記憶しています。
1972年春に石川先生は都立大に赴任され、私のミクロネシア調査が実現しました。それは、1975年に開催された沖縄海洋博覧会の政府出展館、「海 洋文 化館」に展示する物質文化を1年程度の調査によって収集するプロジェクトでした。全国から15名の大学院生がその計画に参加しました。都立大では大学紛争直後 で沖縄復帰記念の博覧会に対する議論をしましたが、海外フィールドワークが困難であった当時、私は「節操もなく」参加を希望しました。その収集団の責任者 が梅 棹忠夫、委員が大島襄二、石川榮吉らの先生で、参加者は私のほか、吉岡政徳、船曳建夫、小林繁樹、大谷裕文さんら現オセアニア学会員でした。
第一次オイルショックで海洋博予算が縮減し、計画は5ヶ月ほどの収集調査になりましたが、私たちが収集したモノは75年7月から半年間、広大な海を表 現し た海洋文化館に展示され500万人の観客の目を楽しませました。(その海洋文化館は、現在、後藤明会員(南山大学)さんをリーダーとする委員会によって改修計 画が進められています。)その後、石川先生には、創設間もない国立民族学博物館の助手に推薦してもらい、その後もオセアニア研究への情熱、オセアニア学の 発 展、若手研究者の養成など、いろいろな石川構想を酒の場でお聞きするのが楽しみでした。
近年私を研究者に育ててくださった恩師と相次いで死別しています。石川榮吉先生のほか、埼玉大学で文化人類学ことはじめの手ほどきをうけた友枝啓泰先 生、 そしてみんぱくで研究者魂を叩き込んでくださった梅棹忠夫先生です。この石川榮吉賞の受賞を機に恩師のご遺志を生かすことの責任を改めて痛感しております。
日本オセアニア学会の会員のみなさまのご研究のいっそうのご進展と学会のさらなる発展を期待します。
去る2010年12月11日(土)に東京大学本郷キャンパスにて、2010年度の関東地区研究例会が開催された。
まず早稲田大学の北原卓也氏が、「トンガ王国における企業と文化―日系ノニジュース生産工場の事例から」という演題で、工場とトンガ社会が相互に及ぼ す影 響について報告を行った。首都大学東京の小林誠氏がコメントをした後に、ノニの文化的位置付けの変化や親族構造と企業組織との関係等について議論が行われた。
次に筑波大学の深川宏樹氏が、「集団関係と血の交渉―ニューギニア高地における母方親族への贈与」という演題で、葬儀の際に死者の父方クランにおいて 母方 親族への贈与をめぐり展開される交渉について報告を行った。東京大学の田所聖志氏がコメントをした後に、その交渉をサブスタンス論に関連付けて解釈する有効性 と限界等について議論が行われた。
参加者は15名程度と小規模であったが、若手会員の熱心な報告をもとに、ほぼ全員が意見した刺激的な研究例会であった。(文責:深山直子)
日本オセアニア学会
第13期評議員選挙管理委員会
委員長 須田一弘
日本オセアニア学会第13期評議員選挙の開票が、評議員選出規則に則り、2011年2月7日(月)に東京大学本郷キャンパスにおいて行われました。
その結果、下記の方々が当選されましたので、ご報告致します。
記
稲岡 司 | 印東 道子 | 梅崎 昌裕 | 遠藤 央 | 小谷 真吾 |
風間 計博 | 窪田 幸子 | 後藤 明 | 須田 一弘 | 関根 久雄 |
棚橋 訓 | 内藤 暁子 | 中澤 港 | 山内 太郎 | 山本 真鳥 |
前号のNEWSLETTERでもお伝えしましたとおり、日本オセアニア学会第28回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回、一般演題の発 表に 加えて、「オセアニア考古学の最前線と可能性」と題しましたミニシンポジウムを企画しております。考古学関連分野はもちろん、全てのオセアニア研究の発展を期 し、活発な意見交換がなされることを願っております。ご不明点などありましたら大会事務局までお問い合わせ下さい。春たけなわの館山にてお会いできること 楽し みにしております。
ミニシンポジウム:『オセアニア考古学の最前線と可能性』 (オーガナイザー:印東道子・小野林太郎) |
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13:00-13:20 | 片岡修(片岡修・山野ケン陽次郎・Richard K. Olmo連名) グアム島ハプト遺跡の重要性 |
13:20-13:40 | 小林竜太 サンゴ礁発達の地域差をふまえた石垣島先史遺跡分布の評価 ―リモートセンシングによるサンゴ礁発達の推定を通して― |
13:40-14:00 | 小野林太郎 西ポリネシアの環礁島における植民と海の資源利用:トケラウ・アタフ環礁の事例から |
14:00-14:20 | 印東道子(印東道子・A. Storey連名) ファイス島のニワトリ:出土骨のDNA分析が示す人類移動 |
14:20-14:30 | 休憩 |
14:30-14:50 | 原本知実(原本知実・石村智・片岡修連名) 文化遺産国際協力コンソーシアムによるナン・マドール遺跡調査と将来の展望 |
14:50-15:10 | 石村智 フィジーにおけるESDプログラムの開発 |
15:10-15:40 | 討論 |
15:40-15:50 | 休憩 |
一般演題 | |
15:50-16:15 | 荒木晴香 移動、分散するツバル人家族の生活戦略 |
16:15-16:40 | 小林誠 チーフになった元調査助手 ―ツバル・ナヌメア環礁における民族誌と伝承の「正しさ」をめぐる一考察 |
16:40-17:05 | 里見龍樹 カストムの景観としての人工島:ソロモン諸島マライタ島北部の「海の民」ラウ/アシにおける文化変容と歴史意識 |
17:05-17:30 | 前川真裕子 日本を巡る他者表象 ― オーストラリアの剣道道場を事例として |
17:30-18:00 | 特別講演 |
9:00-9:30 | 総会 |
一般演題 | |
9:30-9:55 | 江戸淳子 ニューカレドニアにみる先住民カナクの慣習法的身分 |
9:55-10:20 | 大角翠 ニューカレドニアの言語の存在動詞と fwi(ティンリン語)の浮動性 |
10:20-10:45 | 紺屋あかり 現代ベラウにおける口伝形態 ―ベラウ詠唱文化、歌詞伝承の事例から― |
10:45-10:55 | 休憩 |
10:55-11:20 | 塚原高広 パプアニューギニア東セピック州村落のヘルスボランティア活動状況(続報) |
11:20-11:45 | 中澤港 ソロモン諸島の健康転換モデル |
11:45-12:10 | 安高雄治(*高は![]() マダガスカルの自然保護区内における森林伐採:ベザ・マハファリ特別保護区の事例から |
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)
日本オセアニア学会第12期理事会は、第2回石川榮吉賞の受賞候補者として須藤健一氏(国立民族学博物館)を推薦し、その受賞が評議員会で決定されまし た。 それを受けて、第27回日本オセアニア学会研究大会において、須藤健一氏には賞状が贈呈されました。以下に受賞理由を掲載します。なお、須藤健一氏には、「石 川榮吉賞を受賞して」と題したお言葉を、次号のニューズレターにお寄せいただく予定です。
須藤健一氏は、1974年以来、ミクロネシア連邦のチューク州・ヤップ州を中心としたミクロネシア地域において、また、1988年からはトンガ王国を中 心と したポリネシア地域において調査に従事し、オセアニアにおける文化人類学的フィールドワークを主導してきた。また、様々な著書、編著書、論文を通して、日本に おけるオセアニア学の確立に大きく貢献してきた。
学会活動で言えば、須藤氏は、日本オセアニア学会創立当初から評議員、理事などの活動を通して学会を支え、1999年から2003年にかけて2期4年間 会長 を勤めた。会長就任直前の1999年には創立20周年記念国際シンポジウム「南太平洋のフロンティア」の実行委員としてシンポジウムの成功に貢献し、会長退任 直前の2003年には、創立25周年記念国際シンポジウム「太平洋の21世紀-新たな文化とアイデンティティの創成」を主催し、日本オセアニア学会のプレ ゼン スを国内外に示した。
以上のように、オセアニア研究の振興に多大なる寄与を果たしてきたこと、くわえて、長年にわたり日本オセアニア学会の発展に貢献してきたことから、須藤 氏を 石川榮吉賞受賞者として推薦することを決定した。
2010年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 山本真鳥
日本オセアニア学会賞の候補者を募集しています。該当する著書・論文のあるかたは、ご応募ください。
関東地区例会を以下の要領で開催いたします。会員の皆様のご参加をお待ちしています。
関西地区例会を以下の要領で開催いたします。会員の皆様のご参加をお待ちしています。
日本オセアニア学会第28回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。会員の皆様の多数ご参加をお待ちしております。
館山は、千葉県南房総の先端に位置し、黒潮の影響を受け、冬でも花が咲く温暖な気候と変化に富んだ海岸線、緑あふれる野山、新鮮な海の幸・山の幸に恵ま れた 自然豊かなまちでございます。ホテル目の前の館山湾(北条海岸)は、天気の良い日には、水平線の向こうに富士山も望めます。千葉県は、伊勢海老の漁獲量が全国 一、そしてこの地域では良質のアワビも獲れます。懇親会では、美味しい新鮮な海の幸を食べていただけるように手配しております。
会員の皆様方には、ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。
本研究大会・総会につきましては、次号ニューズレターにて改めてお知らせする予定です。
〒263-8522千葉市稲毛区弥生町1-33 千葉大学文学部
小谷真吾
Tel&Fax:043-290-2298
2010年10月7日に、吉岡会長の招集により、メール理事会が開催されました。国立情報学研究所の学協会情報発信サービスが、平成23年度末に停止さ れる ことへの対応として、学会ホームページを管理するサーバーをjsos.netというオセアニア学会のドメインネームサービスを提供している会社の運用するもの に移行することという議題について審議が行われ、承認されました。
庶務担当理事 梅崎昌裕
Kagiya, Akiko (2010) Female Culture in Raijua: Ilats and everlasting Witch-Worship in Eastern Indonesia. Japan Publications 0(鍵屋明子氏より寄贈)
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)
日本オセアニア学会では次の要領で2010年度刊行のモノグラフシリーズの公募を行います。会員の皆様にはふるって応募ください。
日本オセアニア学会理事会
2008年3月27日
日本オセアニア学会は、学会員の研究成果の発表促進のため、The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph Series(以下、モノグラフシリーズ)を出版する。
2009年3月18日(木)、第27回日本オセアニア学会研究大会会場(犬山市・名鉄犬山ホテル)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。 総会 の議事は以下の通りです。
第9回日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 山本 真鳥
稲岡 司
菊澤 律子
棚橋 訓
山口 徹
2010年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 山本真鳥
第27回総会にて、来年度の総会にむけて会費を値上げする方向で検討することが吉岡会長より提案され、承認されました。その理由としては、現在の会費 (通常 会員4,000円)が、同様の規模の学会に比較しても低く抑えられていること、また、近年、学会活動が多方面にわたるようになったことで、収入を支出が上回る 状況が続いていること、さらに、今後の学会の発展をみすえ、新しい事業を展開するための経済的な基盤を整える必要があることなどが挙げられました。また、 値上 げ後の会費については、あらたに学生会員という区分を設け、通常会員6,000円、学生会員5,000円をたたき台として検討することが提案され、承認されま した。
なお、会費の値上げは総会での審議事項となるため、2011年度会費(会計年度2011年3月~2012年2月)については、第28回の総会終了後に徴 収を 開始いたします。2010年度会費(会計年度2010年3月~2011年2月)については、これまで通り(通常会員4,000円)徴収いたします。
庶務担当理事 梅崎昌裕
日本オセアニア学会第27回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。
<第27回研究大会・総会事務局> 〒466-8673 名古屋市昭和区山里町18 南山大学人文学部人類文化学科 後藤 明 電話 052 - 832 - 3111(内 3181) Fax 052 - 832 - 3159
11:00 - 12:00 | 理事会 |
12:00 - 13:00 | 評議員会 |
12:00 | (受付開始) |
13:00 - 13:10 | 会長挨拶と事務連絡 |
研究発表 | |
13:10 - 13:30 | 川崎 和也 「家屋から個室へ:アボリジニ、ティウィのキョウダイの住み方の現状をめぐって」 |
13:30 - 13:50 | 高橋 玲 「南アジア系ディアスポラの文化とアイデンティティー:インド系フィジー人を中心に」(仮) |
13:50 - 14:10 | 石村 智 「オセアニアにおける文化的景観」 |
14:10 - 14:20 | (休憩) |
14:20 - 14:40 | 山本 真鳥 「ニュージーランド在住太平洋諸島出身アーティストのアート活動」 |
14:40 - 15:00 | 荒木 晴香 「ツバル・ニウタオ島のチーフ制度に見る『伝統文化』の復興」 |
15:00 - 15:20 | 江戸 淳子 「カナク口承の遺産:チバウ文化センターのプロジェクトから」 |
15:20 - 15:40 | 宮里 孝生 「多文化共生時代における民族展示の意味:野外民族博物館 リトルワールドの模索」 |
15:40 - 15:50 | (休憩) |
15:50 - 16:10 | 飯高 伸五 「アンガウル島における燐鉱採掘と太平洋戦争の記憶」 |
16:10 - 16:30 | 里見 龍樹 「現代メラネシアの海上居住民における移住/歴史/社会性:ソロモン諸島マライタ島北部のラウの事例から」(仮) |
16:30 - 16:50 | 立山 博邦 「ドゥクドゥク・マスク(ニューブリテン島)収集に関する歴史的考察」(仮) |
16:50 - 17:10 | 中澤 港 「エスニックテンション後のガダルカナル島民の塩分摂取・肥満・血圧の変化」 |
17:15 - 18:15 | 総会 |
9:00 - 9:30 | 石川榮吉賞授賞式と受賞者講演 |
9:30 - 9:50 | 塚原 高広 「パプアニューギニア東セピック州におけるヘルスボランティアの導入」 |
9:50 - 10:10 | 馬場 淳 「パプアニューギニアにおける法主体の誕生:福祉事務所での対話過程と権力作用」 |
10:10 - 10:30 | 新本 万里子 「月経小屋の消滅と高床式家屋の出現:パプアニューギニア、アベラム社会の性と『家族』」 |
10:30 - 10:50 | 深川 宏樹 「友好関係を修復する調停と報復手段としての村落裁判:ニューギニア高地エンガ州における争いの事例から」 |
10:50 | 終了 |
11:00 | リトルワールワールド・エクスカーション出発 |
2009年1月12日に、吉岡会長の招集により、メール理事会が開催されました。
日本オセアニア学会が2009年12月から2011年11月の地域研究学会連絡協議会の幹事学会となることを議題に審議が行われ、承認されました。
2010年1月30日に国立民族学博物館にて、日本オセアニア学会関西地区例会を開催しました。発表者と発表のタイトル、コメンテータは以下の通りで す。
[関西地区例会担当幹事:丹羽典生]
(2009年度にご連絡いただいた所属変更をまとめて掲載しております)
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬 (幹事)(執筆希望の方はご一報ください)
日本オセアニア学会第27回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについ て、申し込み用フォームにご記入下さい。申し込み用フォームがご利用にな れない方 は、電話またははがきにてお申し込みください。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて例年20~25分程度です。
大会参加・宿泊申し込みは1月31日、発表は1月15日が締め切りです。
また、名鉄犬山ホテルに宿泊をご希望にならない(懇親会にも参加されない)方は、その旨をお知らせ下さい。その場合、大会参加費は、8,000円を予 定し ております。
なお、学会の前後に南山大学人類学博物館および収蔵資料(埼玉県鶴ヶ島市にあるオセアニアコレクションの一部を収蔵予定)をごらんになりたい方は、下 記ア ドレスまでメールでお問い合わせください。できる限り対応させていただきます。
本研究大会・総会の詳細につきましては、NEWSLETTER次号にてお知らせする予定です。
<第27回研究大会・総会事務局> 〒466-8673 名古屋市昭和区山里町18 南山大学人文学部人類文化学科 後藤 明 電話 052-832-3111(内 3181)/Fax 052-832-3159
日本オセアニア学会2009年度関西地区例会を以下の要領で開催いたします。会員の皆様のご参加をお待ちしています。
(関西地区例会幹事: 丹羽典生)
2009年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 山本真鳥
(日本オセアニア学会賞選考委員長)山本真鳥
〒194-0298 東京都町田市相原4342 法政大学経済学部
FAX 042-783-2552
日本オセアニア学会賞規定
- 第1条(目的)
- 日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
- 第2条(資格)
- 日本オセアニア学会員であること。
- 第3条(対象)
- オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満 の者 とする。
- 2 賞の授与は各年度1名とする。
- 第4条(選出方法)
- 賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
- 2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
- 第5条(賞の授与)
- 賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
- 第6条(賞状・報奨金)
- 受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
- 附則
- この規定は平成13年4月1日より施行する。
(日本オセアニア学会庶務担当理事 梅zア昌裕)
2009年7月25日に慶應義塾大学三田キャンパスにて、日本オセアニア学会関東地区例会を開催しました。地区例会は「ツバルとサンゴ礁―人間共生系 研究 の最前線―分析と解釈をめぐる対話」と題したシンポジウムとして行われ、サンゴ環礁世界においてのサンゴ礁と人間社会の共生をめぐる諸問題について議論が行わ れました。発表者と発表のタイトル、コメンテータは以下の通りです。
(関東地区例会担当幹事:深山直子)
大東文化大学・第1回太平洋諸島シンポジウム(2009年7月11日)を後援しました。
神山歩未
名古屋大学大学院文学研究科
吉村健司
総合研究大学院大学文化科学研究科
松本和子
東京大学大学院総合文化研究科
立山博邦
立命館アジア太平洋大学
Language and Linguistics in Oceania Vol. 1 (April, 2009)(帝塚山学院大学岡村徹氏より寄贈)
論文の寄稿について
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
- 寄稿資格:日本オセアニア学会員に限ります。
- 枚数:400字詰め原稿用紙30枚程度(注釈、図表、参照文献リスト等を含む)
- 問い合わせ先:編集委員 内藤暁子(理事)
行木敬(幹事)
(執筆希望の方はご一報ください)
2009年3月20日(木)、第26回日本オセアニア学会研究大会会場(別府市・ホテルニューツルタ)において、日本オセアニア学会総会が開催されまし た。 総会の議事は以下の通りです。
庶務 | 梅崎昌裕 |
会計 | 竹川大介 |
編集(PCO) | 印東道子・白川千尋 |
編集(NL) | 内藤暁子 |
研究集会・情報化 | 中澤 港 |
モノグラフ | 柄木田康之 |
会計監査 | 栗田博之・江戸淳子 |
幹事(NL) | 行木敬 |
幹事(PCO) | 丹羽典生 |
幹事(研究例会) | 深山直子(関東地区) 丹羽典生(関西地区) |
2008年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 片山一道
委 員 斉藤尚文
高坂宏一
多賀谷昭
豊田由貴夫
2009年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 山本真鳥
日本オセアニア学会では次の要領で2008年度刊行のモノグラフシリーズの公募を行います。会員皆様にはふるって応募ください。
日本オセアニア学会理事会
2008年3月27日
日本オセアニア学会は、学会員の研究成果の発表促進のため、The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph Series(以下、モノグラフシリーズ)を出版する。
日本オセアニア学会庶務担当理事 梅崎昌裕
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宮内泰介
(Australian National University より寄贈)
(南山大学大学院人間文化研究科人類学研究室より寄贈)
(第17回AASSREC 隔年総会組織委員会委員長・伊藤達雄氏より寄贈)
日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文の寄稿を随時受け付けています。
前号のNEWSLETTERでもお伝えしましたとおり、日本オセアニア学会第26回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。
13:00 | 会長挨拶(+連絡事項等) | |
13:15 | オルタナティブを模索する―バヌアツ共和国フツナ島におけるJICA草の根事業の中間報告― | 木下靖子(JICA草の根支援プロジェクト) |
13:40 | 地域資源としてのウツボ―フィリピン・マクタン島のウツボ筌漁を事例に― | 辻 貴志(総合地球環境学研究所) |
14:05 | オセアニアでColocasiaタロの連作が少ない理由をめぐって | 中野和敬 |
14:30 | 休憩(10分) | |
14:40 | メラネシアにおけるポスト・ラピタ段階の設定とその意義 | 根岸 洋(東京大学) |
15:05 | オセアニアにおけるユネスコ世界遺産の動向 | 石村 智(奈良文化財研究所) |
15:30 | 時を越えるカヌー―沖縄海洋文化館収蔵 タヒチ型ダブルカヌー30年ぶりの調査から― | 後藤 明(南山大学) |
15:55 | 休憩(5分) | |
16:00 | 特別講演 日本におけるオセアニア学の誕生―沖縄海洋博覧会、国立民族学博物館、オセアニア学― | 大島襄二 |
17:00 | 総会 |
09:00 | パプアニューギニアにおける資源開発とエスニック・アイデンティティーの相互作用―ガルフ州における石油試掘の事例から― | 田所聖志(東京大学) |
09:25 | 文化共同体のパラダイムの中で、ポピュラー・カルチャーは如何に位置づけられるか―ニューカレドニアのカナク・ポップミュージッ クか らの一考察― | 江戸淳子(杏林大学) |
09:50 | ツバル離島の饗宴からみた親族ネットワーク | 荒木晴香(広島大学) |
10:15 | パラオにおける慰霊塔の人類学的研究に向けて | 飯高伸五(日本学術振興会) |
10:40 | 休憩(10分) | |
10:50 | 近代化と正統性の変化 | 高橋 玲(関西大学) |
11:15 | パプアニューギニア村落における小児の発熱に対する保護者の対応 | 塚原高広(東京女子医科大学) |
11:40 | ガダルカナル島首都近郊村落で進行中の再近代化による健康影響 | 中澤 港(群馬大学) |
12:05 | 終了 |
第26回研究大会・総会事務局: 〒802-8577 北九州市小倉南区北方4丁目2-1 北九州市立大学文学部 竹川 大介 TEL& FAX: 093-964-4167
第12期評議員選挙について
日本オセアニア学会
第12期評議員選挙管理委員会
委員長 内藤暁子
委 員 桑原牧子
古澤拓郎
山口 徹
風間計博
日本オセアニア学会第12期評議員選挙の開票が、評議員選出規則に則り、2009年2月11日(水)に東京大学本郷キャンパスにおいて行われました。
その結果、下記の方々が当選されましたので、ご報告致します。
記
日本オセアニア学会第12回評議員当選者 (得票上位15名:50音順・敬称略) 稲岡 司 印東道子 梅崎昌裕 柄木田康之 斉藤尚文 白川千尋 須藤健一 関根久雄 竹川大介 棚橋 訓 内藤暁子 中澤 港 橋本和也 山本真鳥 吉岡政徳
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山野博哉 国立環境研究所 地球環境研究センター
城戸俊一郎 東京都立大大学院
21st Pacific Science Congress Proceedings June 12-June 18, 2007, Okinawa, Japan,第21回太平洋学術会議事務局より寄贈
「Global COE Program 生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」(2009年2月)京都大学東南アジア研究所より寄贈
日本オセアニア学会第26回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。ご出欠につきましては、学会ホームページ(URL:http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/meeting2009.html) の申し込み用フォームをご利用のうえ、2009年1月30日(金)までにお知らせ下さい。
また、申し込み用フォームのご利用が不可能な場合には、本ニューズレターに同封の返信用ハガキ(お手数ですが切手をお貼り下さい)をご利用下さい。多数 の会 員の皆様のご参加をお待ちしております。
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについて、申し込み用フォーム(もしくは返信用ハガキ)にご記入下さい。また、ホテルニューツル タへ の宿泊をご希望にならない(懇親会にも参加されない)方はその旨をお知らせ下さい。その場合、大会参加費は7,000円を予定しております。発表時間は演題数 にもよりますが、質疑応答を入れて例年20~25分程度です。
本研究大会・総会の詳細につきましては、NEWSLETTER次号にてお知らせする予定です。
前号でもお知らせしました通り、今年度の日本オセアニア学会賞の公募が2008年11月1日より始まっております。締め切りは2009年1月15日(必 着) です。
自薦・他薦、研究分野を問いませんので、ふるってご応募下さい。
2008年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 片山一道
委 員 斉藤尚文
高坂宏一
多賀谷昭
豊田由貴夫
(日本オセアニア学会賞選考委員長)片山一道
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
京都大学大学院 理学研究科 動物学教室 自然人類学研究室
FAX: 075-753-4083
来る2009年1月24日(土)、東京大学本郷キャンパスにおいて、「最新のオセアニア文化研究:ハワイとヴァヌアツ」と題して、本年度第2回日本オセ アニ ア学会関東地区研究例会を開催致します。皆様のご参加をお待ちしております。
来る2009年1月31日(土)、国立民族学博物館において、日本オセアニア学会関西地区研究例会を開催致します。皆様のご参加をお待ちしております。
日本オセアニア学会理事 豊田由貴夫
関東地区研究例会幹事 古澤拓郎
下記の通り、関東地区研究例会が立教大学アジア地域研究所との共催により開催されましたので報告します。
太平洋史、特にパプアニューギニアを中心とする太平洋諸国とオーストラリアの関係史が専門。著書は、Papua New Guinea: Black, Unity or Black Chaos, Black, White and Gold: Goldmining in Papua New Guinea 1878-1930, Taim Bilong Masta: The Australian Involvement with Papua New Guineaなど、多数。
次期評議員選挙を2009年1月から2月にかけて実施する予定です。年明けに事務局から投票用紙を送付致しますので、ご面倒かと思いますが、投票方宜し くお 願いします。
webではメールアドレスは掲載しません
宇和川 蓉子:神戸大学大学院 国際文化学研究科
Elena Gregoria Chai Chin Fern:東京外国語大学大学院 アジア・アフリカ言語文化研究科
福井栄二郎:(新)島根大学法文学部(旧)日本学術振興会特別研究員・国立民族学博物館
江戸淳子:杏林大学外国語学部
古澤拓郎:東京大学国際連携本部
『人類学で世界をみる―医療・生活・政治・経済―』春日直樹(編)ミネルヴァ書房 2008年
『南山考人』第36号 南山大学大学院 人間文化研究科人類学研究室 2008年
Archaeological Survey in the High Llanos and Andean Piedmont of Barinas, Venezuela, Redmond, E.M. and Spencer, C.S., American Museum of Natural History, 2007
2008年3月27日(木)、第25回日本オセアニア学会研究大会会場(淡路市・岩屋健康福祉センター)において、日本オセアニア学会総会が開催され まし た。総会(議長:須田一弘氏)の議事は以下の通りです。
2007年度日本オセアニア学会賞選考委員会
選考委員 片山一道(委員長)
斉藤尚文
高坂宏一
多賀谷昭
豊田由貴夫
対象著作となった『先住民の知識人類学:ニュージーランド=マオリの知と社会に関するエスノグラフィ 』(単著、単行本、世界思想社)は、ニュージーランドでの長期フィールドワークに基づく意欲的な出版物であり、同地の先住ポリネシア人であるマオリの人たち自身の手による 「マオリ学」の構築・受容の過程を、先住民族運動の動向とニュージーランドの歴史・政治・社会に照らして精緻に分析した第一級の民族誌であると評 価で きる。マオリの知識構築過程に関する実証分析を独自の視点から新規性を十分に発揮して成し遂げた卓抜なる研究成果と言えよう。オセアニアの地域研究に とどまらず、文化人類学、社会人類学、民族誌学、知識人類学、知識社会学などの方面、あるいは広く人類学全般に多大なる貢献を果たすものと考えら れ る。
2008年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 片山一道
委 員 斉藤尚文
高坂宏一
多賀谷昭
豊田由貴夫
(日本オセアニア学会賞選考委員長)片山一道
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
京都大学大学院 理学研究科 動物学教室 自然人類学研究室
FAX: 075-753-4083
日本オセアニア学会では次の要領で2008年度刊行のモノグラフシリーズの公募を行います。会員皆様にはふるって応募ください。
1. | 公募期間: | 2008年8月1日~9月30日 |
2. | 提出物: | カメラ・レディー原稿,モノグラフ・タイトル,著者氏名,所属,連絡先(住所,メール・アドレス等)を含む送り状 |
3. | 提出先: | モノグラフシリーズ担当理事 〒321-8505 宇都宮市峰町350 宇都宮大学国際学部 柄木田研究室 (e-mail: karakita[atmark]cc.utsunomiya-u.ac.jp) |
4. | 印刷費: | 刊行されるモノグラフシリーズの印刷費は著者が負担する。 費用の概算はPCO体裁のA5版150頁冊子350-400部で50万円。 ただしモノグラフシリーズとしての表紙等の費用は学会が負担する |
5. | 著作権: | モノグラフシリーズの形式的著作権は日本オセアニア学会に帰属する。 |
6. | 配布: | 刊行物の会員への配布(250-300部)は日本オセアニア学会が行う。その他の配布先への配布と残部の管理は著者が行う。 |
日本オセアニア学会理事会
2008年3月27日
日本オセアニア学会は、学会員の研究成果の発表促進のため、The Japanese Society for Oceanic Studies Monograph Series(以下、モノグラフシリーズ)を出版する。
(以下メールアドレスは非掲載とします)
宇和川蓉子:神戸大学大学院・国際文化学研究科 文化相関専攻
関根弘和:筑波大学大学院・人間総合科学研究科 ヒューマン・ケア科学専攻
滝川加乃:有限会社 兎屋
大西秀之:(旧)総合地球環境学研究所→(新)同志社女子大学現代社会学部社会システム学科
丹羽典生:(旧)日本学術振興会 特別研究員PD→(新)国立民族学博物館研究戦略センター
野中健一:(旧)地球環境研究所→(新)立教大学文学部
橋本裕之:(旧)千葉大学文学部日本文化学科→(新)盛岡大学文学部日本文学科
前号のニューズレターでもお伝え致しましたが、日本オセアニア学会第25回研究大会・総会を下記の要領で開催致します。
- 大磯号57号:「JR新神戸駅」発 10:15(三宮BT 10:30)
- -「淡路夢舞台前」着 11:14
- 大磯号59号:「JR新神戸駅」発 11:15(三宮BT 11:30)-「淡路夢舞台前」着 12:14
(上記以外の時刻についてはhttp://www.honshi-bus.co.jp/jikoku.htmを ご参照下さい)
予約TEL: 0799-24-3866、0799-62-1816
10:00~11:00 | 理事会 |
11:00~12:00 | 評議員会 |
12:00 | 受付開始 |
13:00 | 会長挨拶(+連絡事項等) | |
13:15 | 住民主体の自然保護運動が土地問題を引き起こす -パプアニューギニア・アンデップ社会の事例から- | 武田淳(滋賀県立大学人間文化研究科) |
13:45 | 月経小屋の消滅 -パプアニューギニア・アベラム社会の居住空間の分析から- | 新本万里子(広島大学大学院社会科学研究科) |
14:15 | ソロモン諸島ガダルカナル島首都近郊において橋と道路の再開通はQOLをどう変えたか | 中澤港(群馬大学大学院医学系研究科) |
14:45 | コーヒーブレーク | |
15:00 | オセアニア環礁の景観史 -マーシャル諸島マジュロ環礁のジオアーケオロジー調査から- | 山口徹(慶應義塾大学) |
15:30 | サモアにおける考古学教育とパブリック・アーケオロジー | 石村智、S・バーンズ、T・アサウア、C・サンド(奈良文化財研究所他) |
16:00 | ポリネシア人の大きな足とその機能的意味 | 権田絵里(京都大学大学院理学研究科) |
16:30 | オセアニア航海カヌーの現代的意義 -2007年ホクレア号日本航海や沖縄海洋文化館のカヌー資料などにふれて- | 後藤明(南山大学) |
17:00 | 総会 | |
18:00 | 宿泊・懇親会会場へ移動(送迎マイクロバス・ワゴン車または徒歩) |
8:30~ | 大会会場へ移動(送迎マイクロバス・ワゴン車または徒歩) | |
9:00 | 「場」の慣習行動に見られる相同性 | 高橋玲(大阪市立大学大学院) |
9:30 | デジタルアーカイブからツールへ -人類学調査・展示・教育におけるコンピューターのより積極的な利用- | 行木敬(龍谷大学社会学部) |
10:00 | ニューカレドニアにみる歴史的闘争の場としての文化顕示 -メラネシア2000フェステイバル- | 江戸淳子(杏林大学) |
10:30 | コーヒーブレーク | |
10:45 | リタイアリーの海外移住に関する文化人類学 -北マリアナ諸島の場合-(仮) | 遠藤央(京都文教大学人間学部) |
11:15 | マーシャル諸島の芸能と欧米文化 | 小西潤子(静岡大学) |
11:45 | 日本統治下ミクロネシアの二重経済再考 -パラオ人の就労経験の分析から- | 飯高伸五(東京都立大学大学院) |
12:15 | 終了 |
第25回研究大会・総会事務局: 〒669-1337 兵庫県三田市学園2-1 関西学院大学総合政策学部 安高 雄治 (注:高はweb表示のために変えました) TEL& FAX: 079-565-8156 日本オセアニア学会30周年記念出版に関する経過報告
第24回総会において議決・承認されました30周年記念出版の実現に向けて、吉岡政徳(注:web表示のため字体を変えてあります)会長から編集委員 の人 選と依頼がおこなわれ、第1回の編集委員会を2007年6月3日、日本文化人類学会第41回研究大会終了後に開催し、具体的な作業が開始されました。企画案に 沿って、7月に原稿テーマの公募をおこない、多数の応募をいただいたことを感謝いたします。
片山一道前会長の推薦により、京都大学学術出版会と交渉をおこないました。論集のかたちでの2巻本あるいは1巻本という企画案を提出しましたが、昨今 のき びしい出版事情をかんがみ、出版会の理事会からは、読者層をひろげるために論集よりは事典の企画は考えられないかという提案もあり、何回かやりとりをおこない ました。
最終的に、オセアニア関係の本がまだ京都大学学術出版会から出版されていないという事情もあり、いくつかの条件つきで論集の出版をひきうけてもらうこと にな りました。その条件とは、①学会からの出版助成金、②ばらばらの論文が集まったかたちの論集にはしないで、編集委員会の責任で統一すること、③読者層をひろげ る努力を学会としておこなうこと、④学会として販売への努力をおこなうこと、⑤将来的にオセアニア事典出版の検討をすること、などです。
現在、公募に応じた方以外にも必要に応じて執筆依頼をおこない、4月の原稿締め切りにむけて編集作業をすすめています。以上の事情を斟酌いただき、よ ろし く原稿執筆へのご協力をお願いいたします。2008年度内に刊行するため、締め切り期日の厳守はもちろん、校正等のスケジュールがきびしくなることもご了解い ただき、今後ともご協力をよろしくお願いいたします。
日本オセアニア学会30周年記念出版 編集委員会 (印東道子、梅崎昌裕、遠藤央、風間計博、菊 沢律 子、窪田幸子、中澤港)
去る2007年12月9日(日)、京都文教大学において、日本オセアニア学会関西地区例会が開催されました。発表者および題目は下記の通りです。
関西地区例会幹事: 福井栄二郎(日本学術振興会)
(以下メールアドレスは非掲載とします)
倉光ミナ子:天理大学国際文化学部
夏原和美:福岡県立大学(所属は変更無し)
『NEWSLETTER グローバルCOEプログラム 生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点』創刊号(2007年11月)京都大学東南アジア研究所より寄贈
2007年11月1日(木)より、今年度の日本オセアニア学会賞の募集が始まっております。既に刊行されている作品については、審査の手続きを円滑に 進め るためにも、早めにご応募下さいますようお願い申し上げます。
自薦、他薦どちらでも結構です。また、論文、著書の別も問いません。
2007年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 片山一道
委 員 斉藤尚文
高坂宏一
多賀谷昭
豊田由貴夫
(日本オセアニア学会賞選考委員長)片山一道 〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院 理学研究科 動物学教室 自然人類学研究室 FAX: 075-753-4083
日本オセアニア学会第25回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。ご出欠につきましては、学会URL(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/meeting2008.html) の申し込み用フォームをご利用のうえ、2008年1月18日(金)までにお知らせ下さい。また、申し込み用フォームのご利用が不可能な場合には、本ニュー ズレ ターに同封の返信用ハガキ(お手数ですが切手をお貼り下さい)をご利用下さい。多数の会員の皆様のご参加をお待ちしております。
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについて、 申し 込み用フォーム(もしくは返信用ハガキ)にご記入下さい。また、淡海荘への宿泊をご希望にならない(懇親会にも参加されない)方はその旨をお知らせ下さい。そ の場合、大会参加費は7,000円を予定しております。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて例年20~25分程度です。
本研究大会・総会の詳細につきましては、NEWSLETTER次号にてお知らせする予定です。
来る12月22日(土)、日本オセアニア学会関東地区例会を開催いたします。 今年度は「オセアニアへの移住・適応そして現在」と題しまして、考古学と人類遺伝学の若手研究者お二人をお招きします。学会員のみなさまのご参加をお待ちしており ます。 開催日時: 2007年12月22日(土)13:00-17:00 報告1:根岸洋(東京大学大学院人文社会系研究科・博士課程) 「土器作り民族誌と考古学~ラピタ文化複合後のパプア・ニューギニア~」 コメント:山口徹(慶應義塾大学文学部) 報告2:木村亮介(東海大学医学部) 「オセアニア集団における遺伝子流動と自然選択」 コメント:中澤港(群馬大学大学院医学系研究科) 場所: 東京大学(本郷キャンパス)医学部教育研究棟13階第7セミナー室 http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_02_09_j.html 東京メトロ丸の内線/都営大江戸線の「本郷三丁目」から徒歩5分。 当日は周辺に案内掲示を出しますので、それに従って会場にお越しください。 連絡先: 関東地区例会幹事 古澤拓郎 東京大学国際連携本部第25回研究大会・総会事務局: 〒669-1337 兵庫県三田市学園2-1 関西学院大学総合政策学部 安高 雄治 TEL& FAX: 079-565-8156
2007年度 関東地区例会開催のお知らせ
後藤 明(南山大学人文学部人類文化学科)(アドレスはwebには掲載しません)
2007年3月20日(火)、第24回日本オセアニア学会研究大会会場(静岡市清水区三保園ホテル)において、日本オセアニア学会総会が実施されました。総 会(議長:梅崎昌裕氏)の議事は以下の通りです。
総会報告記事に記したとおり、大塚柳太郎氏に石川榮吉賞が授与されました。
日本オセアニア学会理事会
大塚柳太郎氏の研究活動としては、1967年以来、パプアニューギニア(当初はオーストラリア領)において、また、1990年代からはインドネシア、ソロモ ン諸島国、トンガ王国などで、多くの人間集団を対象とする人類生態学の調査研究を主導して刮目すべき成果を挙げてきた。
大塚氏の学会活動としては、日本オセアニア学会設立の一翼を担い、1987年には日本オセアニア学会、Indo-Pacific Prehistory Association及び国立民族学博物館が共催した国際会議‘Isolation and Development in the Pacific’の事務局長を務め、さらには日本オセアニア学会の機関誌である‘Man and Culture in Oceania (現People and Culture in Oceania)’の発刊準備に尽力したのちに第1巻(1985年)から第10巻(1994年)まで同誌の編集委員長の任に当たるとともに、1993年から1999年まで 日本オセアニア学会の会長の役職を果たした。
以上のように、オセアニア地域研究の振興に多大なる寄与を果たしてきたこと、くわえて、長年にわたり日本オセアニア学会の発展に貢献してきたことが、大塚氏 を石川榮吉賞に推薦する理由である。
大塚柳太郎(国立環境研究所)
私が心より敬愛する故石川榮吉先生のお名前を冠した賞を受賞する栄誉を授かり、石川先生にはもちろん会員の皆様に深く感謝いたします。
私が石川先生と最初に親しくお話しする機会を得たのは、1984年秋と記憶しています。二人で盃を交わしながら、すっかり先生のペースに引き込まれていった ようです。日本のオセアニア研究を発展させるには、自然科学と人文社会科学の研究者が集まる組織をつくる、日本人研究者の活動を国際的に発信する英文学術誌を 発行する、ということが主題でした。石川先生の巧みな話術と雰囲気に酔わされ、英文誌の刊行は私が責任をもつという羽目になってしまいました。People and Culture in Oceaniaの前身Man and Culture in Oceaniaの第1号は1985年に刊行されたのです。
私自身は理学部生物学科人類学課程を卒業しましたが、大半の時間を医学部人類生態学教室で過ごしました。主たる調査対象はパプアニューギニアの諸集団で、最 初に訪れたのは西部州に住むギデラという2000人ほどからなる言語族です。それは今から40年前、私が大学院の修士課程にはいった1967年のことでした。 その後、ギデラの社会には10回以上滞在し、行動・栄養・人口・健康などにかんする研究を行いました。最初は単独で調査をしたのですが、徐々にギデラの人びと 全体(生態学で個体群といいます)の適応に関心をもち、1980年代からは多くの仲間との共同研究に移行しました。その後、私自身のさらなる関心の広がり、一 方で学生をはじめとする若いメンバーからの刺激を受け、パプアニューギニアの多くの集団、さらにはソロモン諸島、東インドネシアのスンバ島、トンガ王国などで も調査を行う機会を得たのは幸運でした。
思い起こしますと、共同研究者はもちろんですが、石川先生をはじめとするオセアニア学会会員諸兄姉との付き合いのなかで、楽しく充実した研究者生活を送れた と改めて感謝する次第です。学会のますますの発展を心より祈念しています。
1945年1月10日生まれ 1967年3月 東京大学理学部生物学科人類学課程卒業 1970年3月 同 大学大学院理学系研究科人類学専門課程修士課程修了 1970年4月 東京大学医学部助手 1981年9月 同 助教授 1992年4月 同 教授 1997年4月 東京大学大学院医学系研究科教授 2005年4月 国立環境研究所理事長 1980年3月 理学博士(東京大学)
2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 口蔵幸雄
委 員 稲岡 司
春日直樹
片岡 修
柄木田康之
2006年度オセアニア学会賞選考委員会として、下記の業績を第6回オセアニア学会賞に推薦いたします。
諏訪氏の著書『ローカル歌謡の人類学:パプアニューギニア都市周辺村落における現代音楽の聴取と民衆意識』ではロコル歌謡の歴史,演奏者の社会関係,演奏作 曲の習得,他ジャンルの音楽との関係,野外コンサートと聴衆,歌詞の言語とモチーフが,マダン市周辺村落の社会文化的コンテクスにそって丹念に分析されてお り,パプアニューギニアの大衆音楽の優れた民族誌となっている。また、諏訪氏の著作は,パプアニューギニアの儀礼における音楽の役割に関する先行研究を発展さ せ,音楽の聴取がもたらす経験やアイデンティティ形成に踏み込んだ優れた研究であると評価できる。またオセアニアの大衆音楽の研究としても先駆的研究として評 価しうる。
以上の点から上記の業績をオセアニア学会賞にふさわしい研究として推薦する。
* 総会報告の通り,日本オセアニア学会選考委員会からの推薦を受け,理事会において諏訪氏の受賞が決定され,評議員会において承認されました。
2007年度日本オセアニア学会賞選考委員会より、第7回日本オセアニア学会賞選考要項が発表されましたので、お知らせいたします。昨年度から募集期間が 変更された点にご注意下さい。積極的な応募をお待ちしています。(「注記」を参照のこと。)
2007年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 片山一道
委 員 斉藤尚文
高坂宏一
多賀谷昭
豊田由貴夫
(日本オセアニア学会賞選考委員長)片山一道 〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院 理学研究科 動物学教室 自然人類学研究室 FAX: 075-753-4083
昨今、著作物等の電子公開化が進み、日本オセアニア学会においても規定を制定する必要が生じました。そのため、下記の規約が理事会において決定され、評議員 会・総会において承認されました。
先の総会において、本学会30周年記念事業の準備を進めるために、記念出版委員会の設立が認められました。それを受けて下記の通り、記念出版委員会構成員が 理事会において承認されました。そして、第1回記念出版委員会が2007年6月3日に名古屋で開催され、編集方針等について話し合いがもたれました。記念出版 委員会による原稿募集が、2007年7月中に行われる予定です。学会メーリングリスト及びホームページにて募集要項をお知らせしますので、会員の皆様のご協力 をお願い致します。
印東道子氏 梅崎昌裕氏 遠藤央氏 風間計博氏 菊澤律子氏 窪田幸子氏 中澤港氏
日本オセアニア学会会長 吉岡政徳(注:web表示のため字体を変えてあります)
本年4月2日午前7時39分頃にソロモン諸島西部で発生したM8クラスの地震とそれに伴う津波によって、現地では多くの方々が被災されました。そこで日本オ セアニア学会では、4月9日より、会員メーリングリストおよび学会ホームページを通じて復興支援の一助となるべく義捐金の募集をおこない、26名以上の方から ご寄附をいただき、5月1日に締め切りました。それについて下記の通りご報告いたします。
皆様のご協力に心より感謝申し上げます。
なお、ソロモン諸島復興支援会より、下記の文面による礼状が学会事務局に届いております。
日本オセアニア学会 御中
この度は、ソロモン諸島沖地震の復興支援にご支援を賜り、
誠にありがとうございます。約5,400名の方が家を失うなど未曾有の大災害ではありますが、
皆さまのご厚意は、地震・津波の被害を受けた
地域住民の方々のために役立たせて頂きます。ソロモン諸島との繋がりを持つ青年海外協力隊員等の個人・団体、
同国で活動するNGOが連携し、現地のネットワークを
活かしながら、中長期的に直接支援を行ってまいります。活動状況は随時下記ホームページにてご案内しておりますので、
ご高覧いただければ幸甚です今後とも皆さまのご支援を宜しくお願い申し上げます。
※ ソロモン諸島復興支援会ホームページ
http://www.sus-crew.com/平成19年5月18日
ソロモン諸島 復興支援会
スタッフ一同
東京 | 09:06 | 静岡 | 10:08 |
10:06 | 11:08 | ||
11:06 | 12:08 |
新大阪 | 08:19 | 静岡 | 10:05 |
9:19 | 11:05 | ||
10:19 | 12:05 |
ご不明な点、博物館見学の申し込みは、大会事務局までご連絡ください。
〒424‐8610 静岡市清水区折戸3‐20‐1 東海大学 海洋学部 海洋文明学科 川崎 一平 TEL:054‐337‐0157 FAX:054‐337‐0216
日本オセアニア学会 第24回研究大会 プログラム
- <大会1日目> 2007年3月20日(火)
- 10:00-11:00 新評議員会
- 11:00-12:00 新旧合同理事会
- 12:00-13:00 新旧合同評議員会
- 12:30 受付開始
- <一般発表>
- セッション1
- 13:30 「サモア植民地時代の統治と人種カテゴリー:その2」
- 山本 真鳥 (法政大)
- 13:45 「国勢調査における先住民の分類方式―ハワイ、ニュージーランド、オーストラリア―」
- 青柳 まちこ
- 14:00 「都市におけるティーンエージ・マオリのアイデンティティに関する試論」
- 深山 直子(東京都立大)
- 14:15 「ニューカレドニアにみる社会主義の系譜―何故、カナク社会主義が出現したか」
- 江戸 淳子 (杏林大)
- セッション2
- 14:30 「パプアニューギニア大学とのマラリア研究プロジェクト」
- 塚原 高広 (筑波メディカルセンター病院)
- 14:45 「ソロモン諸島におけるソーシャル・キャピタル評価:社会疫学の効用と限界」
- 中澤 港 (群馬大)
- 15:00 「子どもの体格と発育は何を語るのか―ソロモン諸島3集団の事例」
- 山内 太郎 (東京大)
- 15:15-30 コーヒーブレイク
- セッション3
- 15:30 「ソロモン諸島ロヴィアナ・ラグーン住民の生活における小珊瑚島の機能」
- 古澤 拓郎 (東京大)
- 15:45 「サンゴ礁海域の先史漁撈と漁撈戦略:ボルネオ島東岸の事例から」
- 小野 林太郎(日本学術振興会)
- 16:00 「環境をめぐる制度と社会的実践―フィリピンの海域資源管理の事例から」
- 関 恒樹 (広島大)
- セッション4
- 16:15 「パプアニューギニア、ニューアイルランド島の『混血華人』」
- 市川 哲(国立民族学博物館)
- 16:30 「パプアニューギニア・トーライ社会における貝貨の数え方と払い方」
- 深田 淳太郎 (一橋大)
- 16:45 「社会変容と家族―パプアニューギニア・アベラム社会の事例から―」
- 新本 万里子 (広島大)
- 17:00 「ヤップ離島出身者の在外アソシエーション」
- 柄木田康之 (宇都宮大)
- 17:15 コーヒーブレイク
- 17:30 総 会
- 19:00 三保園ホテル・懇親会会場
- <大会2日目> 2007年3月21日(水)
- <一般発表>
- セッション5
- 8:45 「日本統治下パラオ、ガラスマオ村落における鉱山開発の記憶」
- 飯高伸五 (東京都立大)
- 9:00 「戦没者遺骨収集と人類学・考古学:パラオの事例」
- 石村 智 (奈良文化財研究所)
- 9:15 「オーストラリアのポスト・コロニアル状況とマルティカルチュラル・オリエンタリズム」
- 前川真裕子 (神戸大)
- 9:30 「オーストロネシア世界における近年のカヌー文化ルネッサンスについて」
- 後藤 明 (同志社女子大)
- 9:45 石川榮吉賞 特別記念講演
- 10:00 コーヒーブレイク
- 《フォーラム》 「現代オセアニアにおける政治的混乱と都市暴動」
- 10:15 「趣旨説明」
- 石森 大知(日本学術振興会)
- 「民族主義か多民族共生か-フィジーにおける2006年12月のクーデタの特質について」
- 丹羽 典生(日本学術振興会)
- 「『民族紛争』が意味するもの―ガダルカナル危機に関する一考察」
- 石森 大知(日本学術振興会)
- 「トンガにおける民主化運動と暴動の背景」
- 比嘉 夏子(日本学術振興会)
- 「オセアニア諸国における暴動と中国系住民」
- 市川 哲(国立民族学博物館)
- <コメンテーター: 須藤健一(神戸大)、関根久雄(筑波大)>
- 12:00 終了
- 終了後、昼食(大会1日目に注文受付)
第11回評議員選挙について
日本オセアニア学会
第11回評議員選挙管理委員会
委員長 山口 轍
委 員 風間計博
関根久雄
中村純子
山内太郎
日本オセアニア学会第11回評議員選挙の開票が、評議員選出規則に則り、2007年2月12日(月)に東京大学本郷キャンパスにおいて行われました。その結 果、下記の方々が当選されましたので、ご報告致します。
記
日本オセアニア学会第11回評議員当選者
(得票上位15名:50音順)
秋道智彌氏 遠藤 央氏
大塚柳太郎氏 風間計博氏
片山一道氏 柄木田康之氏
川崎一平氏 菊澤律子氏
窪田幸子氏 白川千尋氏
須藤健一氏 豊田由貴夫氏
橋本和也氏 山内太郎氏
山口 徹氏
根岸 洋
日本学術振興会特別研究員DC・東京大学人文社会研究科(考古学)
E-mail: (web版では非掲載です)
山田博之(アドレスはweb版では非掲載です)
NEWSLETTER 86号34ページ、2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会の委員名が抜けおりましたので、訂正致します。正しくは以下の5名です。
2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 口蔵幸雄
委 員 稲岡 司
春日直樹
片岡 修
柄木田康之
2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会より選考要項について、再度お知らせいたします。募集期間が変更され、11月1日より既に公募を開始していま す。
積極的な応募をお待ちしています。(「注記」を参照)
口蔵幸雄(日本オセアニア学会賞選考委員長) 〒501-1193 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学地域科学部 FAX: 058-293-3118
<注 記>
2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 口蔵幸雄
委 員 稲岡 司
春日直樹
日本オセアニア学会第24回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。ご出欠につきましては、学 会ウェブサイトの申し込み用フォームを御利用のうえ、2007年1月19日(金)までにお知らせください。 また、申し込み用フォームのご利用が不 可能な場合には、本ニューズレターに同封の返信用ハガキ(お手数ですが切手をお貼りください)をご利用ください。多数の会員の皆様のご参加をお待ちしておりま す。
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについて、申し込み用フォーム(もしくは返信用ハガキ)にご記入下さい。また、三保園ホテルへの宿泊 をご希望にならない(懇親会にも参加されない)方はその旨をお知らせ下さい。その場合、大会参加費は7,000円を予定しております。発表時間は演題数にもよ りますが、質疑応答を入れて例年20分~25分程度です。
旧清水市にある三保は、風光明媚な地として知られています。会場近くには、自然遊歩道が整備されており富士山の眺めは最高です。また清水は、マグロや駿河 湾でとれた新鮮な魚介類も豊富なところです。例年3月下旬ごろから「桜えび」漁も解禁になります。懇親会では、美味しい新鮮な魚を食べていただけるように手配 しております。
会員の皆様方には、ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。
本研究大会・総会の詳細につきましては、NEWSLETTER次号にてお知らせする予定です。
西谷真希子:首都大学東京 大学院人文科学研究科 社会行動学専攻 社会人類学分野
Junichi Hirose:在パラオ日本国大使館
橋本和也
山本真鳥
第85号に掲載したメールアドレス変更欄のお名前が間違っていました。下記の通り、訂正致します。また、新アドレスも併せてお知らせ致します(web版には 非掲載)。
(正)森本利恵 (誤)森本理恵
2006年3月20日(月),第23回日本オセアニア学会研究大会会場(ラフォーレ倶楽部・那須)において,日本オセアニア学会総会が実施されました。総会 (議長;遠藤央氏)の議事は以下の通りです。
2005年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 口蔵幸雄
委員 稲岡 司
春日直樹
片岡 修
柄木田康之
2005年度日本オセアニア学会賞選考委員会は,本学会員からの自薦・他薦による学術刊行物を厳正に審査した結果,以下の刊行物を第5回日本オセアニア学会 賞の候補として理事会に推薦した。
<選考理由>
本書の対象は、タヒチを中心とした太平洋地域における伝統的な入れ墨(tattoo)である。本書は、植民地政府およびキリスト教宣教師による入れ墨の禁止 という歴史的変遷の検討に加え、今日の復活・流行現象について、社会・文化的意味を詳細に考察したものである。また本書は、歴史資料を吟味したうえで、長期現 地調査によって収集した一次資料を詳細に分析した総合的研究である。入れ墨に焦点を当てながらも、太平洋地域における西欧諸国との接触による伝統文化の変容, および現代の伝統文化復興運動を射程に収めて考察した斬新できわめて学術的価値の高い研究と評価できる。
当委員会は、本刊行物を第5回日本オセアニア学会賞に十分値することを全員一致で確認した。
なお、対象となる刊行物および著者について「日本オセアニア学会賞規定」第2条,第3条1項を満たしていることを確認した。
日本オセアニア学会理事会は審議の結果、2005年度日本オセアニア学会賞選考委員会の推薦を受けた桑原牧子氏の作品を第5回日本オセアニア学会賞授賞該当 作品として決定し、日本オセアニア学会評議員会において報告し了承を得た。
第23回総会において、石川榮吉賞が制定されました。石川榮吉賞の規定は以下の通りです。尚、第6条にある「石川榮吉基金」には、石川先生御遺族からのご寄 付(30万円)が含まれています。
2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会より選考要項が発表されましたので、お知らせいたします。
募集期間が従来とは変更された点にご注意下さい。積極的な応募をお待ちしています。(「注記」を参照のこと。)
2006年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 口蔵幸雄
委員 稲岡 司
春日直樹
片岡 修
柄木田康之
(※)web版では本文は掲載しません。
(※)web版では本文は掲載しません。
前号のニューズレターでもお伝えいたしましたが、日本オセアニア学会第23回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。
(※)web版では本文は掲載しません。
日本オセアニア学会第23回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。ご出欠につきましては、学 会webサイトの申し込み用フォームを御利用のうえ、2006年1月13日(金)までにお知らせください。 また、申し込み用フォームのご利用が不 可能な場合には、本ニューズレターに同封の返信用ハガキ(お手数ですが切手をお貼りください)をご利用ください。多数の会員の皆様のご参加をお待ちしておりま す。
なお、今回は石川記念シンポジウムを予定しております。
研究大会に参加される方は、出張依頼書を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについて、申し込み用フォーム(もしくは返信用ハガキ)にご記入下 さい。
また、ラフォーレ倶楽部・那須への宿泊をご希望にならない(懇親会にも参加されない)方はその旨をお知らせ下さい。その場合、大会参加費は7,000円を予 定しております。
発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて例年20分程度です。本研究大会・総会の詳細につきましては、NEWSLETTER次号にてお知らせする 予定です。
2005年度日本オセアニア学会賞選考委員会より選考要項が発表されましたので、お知らせいたします。
口蔵幸雄(日本オセアニア学会賞選考委員長) 〒501-1193 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学地域科学部 FAX: 058-293-3118 E-mail: kuchiku@cc.gifu-u.ac.jp
平成17年度関西地区例会を以下のように開催致します。奮ってご参加ください。
2005年3月21日(月),第22回日本オセアニア学会研究大会会場(伊達市歴史の杜カルチャーセンターあけぼの)において,日本オセアニア学会総会が実 施されました。総会(議長:河辺俊雄氏)の議事は以下の通りです。
庶務 | 風間計博氏 |
会計 | 関根久雄氏 |
編集(PCO) | 棚橋訓氏・菊澤律子氏 |
編集(NL) | 窪田幸子氏 |
情報化 | 中澤港氏 |
会計監査 | 河辺俊雄氏・斎藤尚文氏 |
幹事(渉外) | 山本真鳥氏 |
幹事(NL) | 白川千尋氏 |
幹事(研究会) | 小谷真吾氏(関東地区)・石村 智氏(関西地区) |
去る3月27日に御逝去された石川榮吉先生の奥様,石川民惠様より,お香典のなかから30万円の貴重な御寄付を賜りました。石川先生の御逝去を悼みますと ともに、奥様の御厚意に対し,この場を借りて深謝致します。なお,御寄付の使途については,先生の御遺志に沿うべく,現在理事会において案を練っております。
個人情報に関する取り扱いが厳しくなってきた昨今の状況を踏まえて,当日本オセアニア学会NEWSLETTERに掲載する会員個人情報に関して,理事会に おいて下記のように決定しましたのでお知らせ致します。
1) 新入会員について: 氏名・所属・専門分野を掲載する
2) 所属変更について: 氏名・所属を掲載する
3) 住所等変更について: 掲載せず
メールアドレスに関しては,1)多くの方がすでにHP等で公開なさっていること,2)学会の規模からして,公開してもさほど大きな問題にはならないと予想 されることから原則として,新入会員・所属変更等の紹介において掲載することに致します。ご了解下さい。
第23回研究大会および総会は,2006年3月19日(日)~20日(月),ラフォーレ倶楽部・那須(http://www.laforet.co.jp/lfhotels/nas/index.html) での開催を予定しています。詳細および申し込み方法は,次号のNEWSLETTERにてお知らせいたします。
本文はwebには非掲載です。
2005年3月20日(日)~21日(月)
受付は20日12:00から、研究大会は13:10から始めます。研究大会の終了予定は21日13:00です。なお、18~19日に同じ場所で開催される生 態人類学会から続けて参加される方、前日から伊達市にいらっしゃる方には伊達市内のシティホテルを1泊6,000円程度で手配いたします。部屋数に限りがござ いますので、お早めに大会事務局(須田一弘)までご連絡ください。大会は伊達市教育委員会との共催で行い、運営は市民ボランティアの皆様にお手伝いいただくこ とになりました。
前回のご案内では有給者19,000円、無給者12,000円とお知らせしましたが、伊達市教育委員会との共催という形をとることにより、会場使用料が無料 となりましたため、各区分とも1,000円ずつ値下げし、有給者18,000円、無給者(院生・学生)11,000円に変更させていただきます。なお、宿泊費 を除いた大会参加費の領収書が必要な方は、前もって大会事務局(須田一弘)までご連絡ください。なお、事前の連絡なくキャンセルされた場合は、宿泊先より請求 されたキャンセル料を請求させていただきます。
会場の「伊達市歴史の杜カルチャーセンターあけぼの」は、伊達紋別駅から徒歩およそ15分の位置(8.会場周辺略図参照)にあります。タクシーは 700~800円で利用できますが、路線バスは運行しておりません。伊達紋別駅に行く方法は、以下の通りです。
上の1と2の場合の時刻表が以下の6.に、3の場合の時刻表が7.に載せてあります。
スーパー北斗10号は伊達紋別駅に停まらないので、一駅先の洞爺駅で下車し、洞爺駅で函館から札幌へ向かうスーパー北斗7号に乗り換えて伊達紋別駅へ。料金 がどうなるかは分かりません。
(※)2005年3月4日,事務局からの連絡により修正しました。一日目の時刻が変わっていますのでご 注意ください。
- 第10回評議員選挙管理委員会
- 委員長
- 梅崎昌裕
- 委員
- 風間計博
- 柄木田康之
- 菊澤律子
- 関根久雄
日本オセアニア学会第10回評議員選挙の開票が、評議員選出規則にのっとり、2月12日に東京医科歯科大学において行われました。その結果、下記の方々が当 選されましたので、ご報告いたします。
記 日本オセアニア学会第10期評議員当選者 (得票数上位15名:五十音順) 印東道子氏 遠藤 央氏 風間計博氏 春日直樹氏 片山一道氏 菊澤律子氏 窪田幸子氏 熊谷圭知氏 栗田博之氏 関根久雄氏 棚橋 訓氏 豊田由貴夫氏 中澤 港氏 山本真鳥氏 吉岡政徳氏
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2004年度日本オセアニア学会賞選考委員会より選考要項が発表されましたので、お知らせいたします。
須藤健一(日本オセアニア学会賞選考委員長) 〒657-8501 神戸市灘区鶴甲1-2-1 神戸大学国際文化学部
- 委員長
- 須藤健一
- 委員
- 印東道子
- 遠藤 央
- 河辺俊雄
- 多賀谷昭
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第22回研究大会・総会のご案内ページができまし た。たいていのブラウザであれば,フォームから申し込みができますので,ご利用ください。
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2004年3月22日,日本オセアニア学会第21回研究大会会場(嬉野温泉和多屋別荘)において,日本オセアニア学会総会が開催されました。総会(議長:江 戸淳子氏)の議事は以下の通りです。
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第22回研究大会および総会は、2005年3月20日~21日、「だて歴史の杜カルチャーセンター」(北海道伊達市)と洞爺湖温泉で開催を予定しています。 詳細および申し込み方法はNEWSLETTER次号に掲載いたします。
2004年度関東地区研究例会は、2004年11月27日(土)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で開催を計画しています。発表題目は未定で すが、発表者はDr. Robin Hemley(英文学・インディアナ大学)と、Dr. Lawrence A. Reid(言語学・ハワイ大学名誉教授)の予定です。詳細は別途お知らせいたします。
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日本オセアニア学会第21回研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。御出欠につきましては、学会の申 し込み用フォームを御利用のうえ、2004年1月16日(金)までにお知らせください。また、フォームが利 用できない場合には、ニューズレターに 同封の返信用ハガキを御利用ください。多数の会員の皆様の御参加をお待ちしております。
交通の便は、以下の1)が便利です。
研究大会に参加される方は、出張依頼状を希望されるかどうか、研究発表をされるかどうか、発表される場合には発表題目と使用される機器類などについて、申し込 み用フォーム(もしくは返信用ハガキ)にご記入ください。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて例年20~25分程度です。なお、大 会2日目に、シンポジウム「南太平洋の商品価値-開発と経済的自立への道」(仮題)を考えております。
嬉野温泉は「日本三大美人の湯」として知られ、弱アルカリのお湯はつるつるして肌にとても優しく、湯上がり後も大変気持ちよく過ごせます。なかでも和多屋別 荘は源泉93度のお湯を水で薄めることなく冷却し、温泉の効能が損なわれないようにしている、嬉野でも屈指の温泉旅館です。内風呂ばかりでなく川のほとりにも 石で囲った浴場があり、本当に温泉を楽しむことができます。この機会に是非一度ご利用ください。
本研究大会・総会に関するより詳しい点につきましては、NEWSLETTER次号にてお知らせする予定です。
2003年度日本オセアニア学会賞選考委員会より選考要項が発表されましたので、お知らせいたします。
須藤健一(日本オセアニア学会賞選考委員長)
〒657-8501 神戸市灘区鶴甲1-2-1 神戸大学国際文化学部
FAX: 078-803-7509
2003年度日本オセアニア学会賞選考委員会
委員長 須藤健一
委員 印東道子
遠藤 央
河辺俊雄
多賀谷昭
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NEWSLETTER第76号の20頁を以下のように訂正くださるようお願いいたします(web版も2003年12月2日に訂正しました)。
支出の部の表の「印刷費/小計」・「予算額」の項
(誤)「(933,260)」→(正)「(762,600)」
(本文はwebには非掲載です)
同名のシンポジウムは、「太平洋の21世紀―新たな文化とアイデンティティの創成―」(The Pacific in the 21st Century―Formation of New Culture and Identity―)というタイトルの下、2003年3月21日金曜日午後13時から17時までの間、神戸国際会議場にて行われた。基調講演のエペリ・ハウオファ教授 (Prof. Epeli Hau’ofa、南太平洋大学 University of the South Pacific)が、航空システムの混乱により到着が遅れたため、やや変則ながら先にパネルディスカッションを行い、そのあとに到着したハウオファ教授の講演を続け、10 分間の休憩を挟んで活発な討論が行われた。
パネルディスカッションの先頭は、ラルフ・レゲンヴァヌ氏(Mr. Ralph Regenvanu、ヴァヌアツ文化センター Vanuatu Cultural Centre)で、彼は「ヴァヌアツにおけるカスタムの変貌(The Changing Face of Custom in Vanuatu)」と題した発表を行った。この発表の趣旨は以下の通り。ヴァヌアツは人口約20万人。その90%は土着の人々であり、50%が18歳以下を占める。伝統的 文化すなわち「カストム」は現在のヴァヌアツで社会活動を行う者によって、さまざまに解釈されている。国の「開発」の過程において、メディアなどの論争の場で 「カストム」に関連した論点は数多くある。これらの争点をディスコースと見なし、それらがいかに構成されているかを見ることによって、伝統文化すなわち「カス トム」の概念がいかに使われ、凌ぎあっているかを知ることができる。植民地時代にはミッショナリーや植民地政府によって遅れており唾棄すべきものと考えられて いた伝統文化は、独立とともに一転してメラネシア的価値を表すものとして、独立国家のシンボルともなった。しかし、首長会議の主張、土地所有問題、メラネシア 社会主義の称揚などの過程を経て、今日、政府は「カストム」の概念をあまり使わないようになった。とはいえ若者対象の調査では、若者の多くが「カストム」をポ ジティヴにとらえていることがわかっている。「カストム」は親族、土地、言語、儀礼といった概念を総合するものとされ、社会秩序、生活の基盤を与えるために伝 統的知識の教育が必要であると考えられている。一方、リベラルな人々にとって、「カストム」は人権と相反する部分を持っている。例えば女性の権利を抑圧すると いう意見がある。さらにまた、首長にとってのカスタムの重視は、それに則ってより強力な政治権力を要求するものとなっているのである。
次の演者フランチェスカ・クビロ氏(Ms. Franchesca Cubillo、オーストラリア国立博物館 National Museum of Australia)の発表テーマは「多様な声:オーストラリア公立博物館のアボリジニ文化表象(Too Many Voices: The Representation of Australian Aboriginal Culture within State and National Museums within Australia)」で、趣旨は次の通り。ここで対比するのは、1800年代の半ばよりアボリジニの物質文化を幅広く収集し展示してきたアデレードにある南オーストラリ ア州立博物館と、連邦政府によって1980年に設立され、2001年に開館したばかりのオーストラリア国立博物館である。前者は設立が古く、地域的にも南部、 中部、北部テリトリー、西部キンバリー地域、北クイーンズランド等の広い範囲を対象とする古い収集品を所有し、物質文化を中心として、地域的な違いがわかるよ うな展示が行われている。それに対して、国立博物館は設立が新しく、収集品も新しい。アボリジニ・アートの研究は多くコレクションも充実しているが、民族誌的 な収集品は少ない。またトーレス海峡諸島民も専用の部屋が設けられている。国立博物館では、アボリジニのキュレターを何人も重用し、独自のコンセプトで展示の 構成を行わせている。文字のない文化をありのままに表象するということは難しいが、精神生活など、多様な表象をもつ諸文化の相同性と多様性を伝えることを旨と している。
パネリストの最後は、ライナス・デギミリナ博士(Dr. Linus Digim’Rina)で、パプアニューギニア大学(University of Papua New Guinea)に所属する。彼の発表は、「伝統にもとづく食料保障:樹木と知恵を移植する(Food Security through Traditions: Replanting Trees and Wise Practices)」というものだった。彼の故郷、マリノフスキーで有名なトロブリアンド諸島も今世紀の初め頃から漸次変容してきた。第二次大戦後にとりわけ人口が増加 したし、市場経済の浸透も著しい。独立や自立といった思考も人々の頭の中に入ってきている。近年生じた2回の災害は人々の間に存在様式や将来について啓蒙的な 結果をもたらすこととなった。1992年のサイクロンと1997年のエル・ニーニョである。祖先の英知を受けて、さまざまな果実樹(マンゴー、パンノキ、ココ ナッツ・ツリーなど)を植えることを試みている。こうした事業は最近行われていなかったが、祖先の行いに倣って事業を推進することで食料確保を図っている。恒 常的にこれらの樹木を植え、植え替えを行っていくことが重要である。これらの事業は、島の人々にとって誇りともなり、自然保護の役割も果たす成果をあげてい る。
パネリストの発表が終わったあたりでハウオファ教授が到着して、ようやく基調講演が行われた。エペリ・ハウオファ教授の「現代オセアニア芸術:新しい地域文 化様式の展開(Contemporary Oceanic Arts: The Development of New Regional Cultural Configurations)」と題する基調講演は以下の通り。南太平洋大学オセアニア芸術文化センターは、オセアニアの歴史や伝統のなかからわいてくるイ ンスピレーションや現在の文化環境から生まれる創作を援助している。この試みの主要な目的は、オセアニアの人々の民族的・国家的多様性を超克する、真にオセア ニア的な芸術を生み出すことである。これらすべてを束ねていく力は人々の共有する先祖伝来の遺産である太平洋にある。顕著かつ自律的な芸術のアイデンティティ は、オセアニア的尺度、つまりオセアニアの人々の歴史的業績に基づく基準を必ずや生み出すはずである。自律的な文化アイデンティティは、自立精神を通じてのみ 生まれる。その精神の中で、現在の環境において使うことができる資源を使って、他者にほとんど依存しない、音や動作といった形式の新しい世界を創造するのであ る。現在、オセアニア芸術文化センターは、アーティストが創作に打ち込むためのファンドの提供や、アーティストの作品のプロモーションを行っている。できるだ けオープンなスペースとして、誰でも参加できるような体制にしているためか、次第に参加者が増えており、創作交流の場として活用されるようになってきた。教授 は、センターで創造されているさまざまな芸術作品や芸術活動を、パワーポイントの画像や、新作のCDアルバムを使って紹介した。
10分間の休憩を挟み、残り時間が1時間を切っていたが、質疑応答をクロスしながら行うことで、パネルとフロアを横断・縦断する議論を行った。フロアからの 発言や質問は以下の通り。「言語はアイデンティティの中心ともいえるものだが、現地語や口頭伝承がグローバリゼーションの前に失われつつあるなかで、保存する 努力が必要ではないだろうか?」「ヴァヌアツ文化センターやオーストラリアの博物館について多くの議論がなされたが、個別の活動で他のセンターや博物館に比較 してユニークな活動は何か?」「PNGの場合『カストム』がヴァヌアツに比べて、国民的なディスコースとして使われていないのはどうしてか?」「ハンディクラ フト・ショップで売っている土産品とオセアニア・センターの作品との違いは何か?」「環太平洋地域の都市の、太平洋諸島からの移民の中には、ポップカルチャー や芸術の分野などで独自の活動をしている人たちがいるが、そうした活動とオセアニア・センターの活動とは重なり合うものがあるのではないか?」こうした質問に 対してパネリストの回答があり、パネリストたちの間でも議論が行われた。
この間の議論から明らかにされたことは、およそ以下のことであるだろう。この4人の中で、民族や国家の分断を超えたオセアニアの連帯を作り出す芸術活動を支 援するハウオファ教授が最もラディカルな活動を行っているといえよう。しかし、その他のパネリストたちも文化をかつてのように実在する「伝統文化」ととらえて いるのではなく、ディスコースとしての文化の政治性や文化の多元性という、今日のわれわれの文化のとらえ方に共通の認識をもっているといってよい。さまざまな ディスコースを仕分けしつつ文化センターが若い人々に勧めるべき文化プログラムのあり方を考えるレゲンヴァヌ氏、文化財を資源として考え、その中でいかにアボ リジニを表現するか、ということを考えるクビロ氏、祖先の英知を復活することで、食料確保のみならず文化やアイデンティティの回復をはかる活動を行うデギミリ ナ博士という風に、それぞれに資源としての文化や伝統の活用を考えている点が興味深かった。「アイデンティティの創成」というテーマはともすれば、伝統の創 造=捏造といったきわどい議論へと流れがちであるが、今回は文化を観察する人々ではなく、文化を実践する人々を招待してのシンポジウムであったことが、大きく プラスに働いたといえよう。このあと、オセアニア学会研究大会の懇親会へと会場を移し、さらに雑談を重ねながら、深夜に至るまで議論に花を咲かせることができ た。
基調講演のためにハウオファ教授が持参された、オセアニア芸術文化センターの新作CD“Wasawasa”(Sailaga Tora制作)がありました。あとで問い合わせをしたところ、センターを通じて購入可能とのことです。希望者は8月末までに、山本までメールで連絡先住所とと もに注文してください。F$30.00プラス送料でおそらく2500円程度だと思いますが、若干割引があるかもしれないし、正確な金額はわからないので、現品 到着後にいただきます。
NEWSLETTER No. 74の拙稿「ファファフィネテーラーを追っかけろ!」の1頁、Turnerの引用における「Gay young men」の訳語と解釈に関して、法政大学の山本真鳥先生からご教示をいただきました。その結果、この記述が「ファファフィネ(fa’afafine)」 を指しているという妥当性はなくなりました。これは、私自身の19世紀末における英語への知識が不十分であったこと、同時期のサモアにおける記録にあたってい ないこと、また同時期に他のポリネシア地域では「第3のジェンダー」に関する記録があることから、この当時のサモアに「第3のジェンダー」が存在したと推測し たものに過ぎないとして、ここに訂正いたしたく存じます。このような大切なご指摘をいただきましたことに関して、山本先生には改めて深く御礼申し上げます。
2003年3月22日(土),日本オセアニア学会第20回研究大会会場(有馬温泉ねぎや「陵楓閣」)において日本オセアニア学会総会(議長:須田一弘氏)が 開催されました。総会の議事は次の通りです。
庶務 | 関根久雄氏 |
会計 | 柄木田康之氏 |
編集(PCO) | 大塚柳太郎氏・棚橋訓氏 |
編集・情報化 | 中澤港氏 |
編集(NL) | 白川千尋氏 |
研究会 | 栗田博之氏 |
会計監査 | 稲岡司氏・窪田幸子氏 |
幹事(モノグラフ・シリーズ) | 林勲男氏 |
幹事(NL) | 風間計博氏・行木敬氏 |
幹事(研究会) | 梅崎昌裕氏・遠藤央氏・菊澤律子氏 |
第18回総会で学会に帰属することが確認されているPCO掲載論文の著作権の,PCO電子化にともなう管理運用を,理事会に一任することが承認されました。
(webからは削除しました)
※web版では所属と領域のみ掲載します。
※web版では掲載しません。
※web版では新所属名のみ掲載します。
日本オセアニア学会ウェブサイトは,創設以来,仮の設置場所として東京大学医学部人類生態学教室のサーバーに間借りして運営しておりましたが,既に総会でも お知らせしました通りの事情により,国立情報学研究所の学会ホームヴィレッジに移転することとなり,2003年5月27日に移転が完了いたしました。今後, トップページのURLは,http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/と なりますので,よろしくお願い申し上げます。
なお,学会ウェブサイトについて,何かお気づきの点がありましたら,情報化担当理事の中澤まで,お知らせいただければ幸いです。
NEWSLETTER No. 75,20頁を以下のように訂正くださるようお願いいたします。
日本オセアニア学会第20回研究大会・総会、および日本オセアニア学会25周年記念国際シンポジウムを、下記の要領で開催します。会員の皆様方のご参加をお 待ちしております。参加ご希望の方は、2003(平成15)年2月14日(金)までにお申し込みくださいま すよう、お願いします。
また、一般的なブラウザをお使いであれば,電子メールアドレスをおもちの方は日本オセアニア学会ホームページ (http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/)からもお申し込みいただけます(→申 し込みのページ)ので、ご利用ください。
25周年国際シンポジウムの案内
「太平洋の21世紀-新たな文化とアイデンティティの創生-」(仮題) 基調講演 Epeli Hau'ofa(南太平洋大学,フィジー) シンポジウム コーディネーター 山本真鳥(法政大学) パネリスト Epeli Hau'ofa(南太平洋大学) Ralph Regenvanu(ヴァヌアツ文化センター) Linus Digim'Rina(パプアニューギニア大学) Franchesca Cubillo(オーストラリア国立博物館) 総合司会 吉岡政徳(神戸大学)シンポジウムのねらいは,オセアニアの現地で文化の研究と企画・立案に従事している研究者の視点から21世紀の太平洋における国家と地域,伝統と文化な どの新たな展開について発言してもらい,われわれと議論することにあります。
国際シンポジウムと研究大会に参加される方は、出張依頼書、研究発表の希望の有無、発表希望者は、使用される機器類等について返信用はがきにご記入くださ い。なお、研究発表は、3月22日(土)の総会(9:00~10:30)後に行い,5件程度を予定しております。本大会に関する照会は,下記事務局にお願いし ます。
研究大会事務局: 神戸大学国際文化学部吉岡研究室 〒657-8501 神戸市灘区鶴甲1-2-1 Tel・FAX: 078-803-7430
日本オセアニア学会第19回研究大会・総会を、下記の要領で開催します。会員の皆様方のご参加をお待ちしております。参加ご希望の方は、2002(平 成14)年1月20日(日)までにお申し込みくださいますよう、お願いします。
なお、経費節減のため、E-mail/FAXをお使いの方には、葉書を同封する代わりに学会事務局から直接ご連絡を差し上げますので、E-mail/FAX でご回答下さい。
また、一般的なブラウザをお使いであれば,電子メールアドレスをおもちの方は日本オセアニア学会ホームページ (http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsos/)からもお申し込みいただけます(→申 し込みのページ)ので、ご利用ください。
第19回研究大会・総会
- 期間:
- 3月22日(金)午後1:30~23日(土)昼頃の予定
- 大会・総会会場:
- 筑波大学第3学群棟(初日)/筑波山ホテル青木屋(2日目)
- 懇親会・宿泊 :
- 筑波山ホテル青木屋(〒300-4352 つくば市筑波753-1 Tel: 0298-66-0311)
- 参加費:
- 15,000円前後(22日の宿泊費・懇親会費込み。学生の方はこれよりも低料金にします)。確定料金は次号のニューズレターでご案内します。
なお、会場や交通手段、発表題目などに関する詳しい情報は、次号ニューズレターでご紹介しますが、別途ホームページも立ち上げておりますので、そちらも ご参照ください(適宜アップデートする予定です)。アドレスは、http://member.social.tsukuba.ac.jp/sekine/Oceania/で す。
研究大会に参加される方は、出張依頼状を希望されるかどうか、研究発表されるかどうか、発表される場合には、発表題目、OHP・スライド等をお使いにな るかどうか、ご記入下さい。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて20分程度の見込みです。
なお、2日目に、シンポジウム「ソロモン諸島の地域社会における開発の生物学的及び社会文化的影響」(研究代表者:大塚柳太郎[東京大学]、パネラー: 須藤健一[神戸大学]、山内太郎[東京大学]、田中求[東京大学・院]、古澤拓郎[東京大学・院])をおこなう予定です。
1. 研究大会 (参加 不参加 ) 2. 22日筑波山ホテル青木屋に(泊まる 泊まらない ) 3. 出張依頼状 (必要 不必要 ) 4. 研究発表 (発表する 発表しない) 題目: スライド (使用する 使用しない) OHP (使用する 使用しない) 氏 名: 所 属: 連絡先:
大会事務局:〒305-8571 つくば市天王台1-1-1 風間計博(筑波大学歴史・人類学系) 関根久雄(筑波大学社会科学系) 返 送 先:〒305-8571 つくば市天王台1-1-1 筑波大学社会科学系 関根久雄 Tel/Fax: 0298-53-7443(直通)
下記にあります企画で、日本オセアニア学会関西地区例会を開催いたします。学会員のみなさまのご参加をお待ちしております。
- ● 開催日程:
- 12月1日(土)、13:30~17:00
- ● 会場:
- 国立民族学博物館2階、第3セミナー室
なお当日は、国立民族学博物館通用口にて、日本オセアニア学会関西地区例会参加の旨を告げて2階までお越し下さい。
- ● 担当者:
- 関西地区例会幹事 田口理恵、行木敬
- 研究会担当理事 秋道智彌
- ● テーマ
- ● フィールドワークにおける使途不明金 ●
- 村の中のある種の人々に、人情ではなく「義務」で渡さねばならないオミヤゲ。必要以上に頼りになる現地政府のAさんが、必要以上に要求してく る袖の下。「開発」「援助」という外来語を振りかざし、「タバコが必要だ」「ビールを援助してくれ」と詰め寄る村人達――。
- フィールドワークにおけるこの種の出費は、調査地で暮らしていく上で避けられないものであるが、しかし資金を提供してくれたファンドの会計報告 書などには書きようのない出費でもある。どうしてそんな出費が必要になるのか、なぜ断れないのか、それを説明するには、調査地の文化と歴史、そして “私”と彼らの人間関係を一から説明するほかない。ただし、この種の出費に煩わされた経験は、飲み会のネタにされこそすれ、説明する努力も議論も十分 になされてきたとは言い難い。そこで、この種の出費に絡んだ調査地での日々の奮闘とともに、それがなぜ必要なのかという調査地社会の文脈について一か ら説明してもらう機会を設けたいと考え、今回の例会を企画した。
- 会計報告書上は「使途不明金」にもなりうるこの種の出費を取り上げるのは、その背景にある調査地固有の文化と歴史が、人類学で扱えるトピックで あり、また扱わねばならないトピックでもあるからだ。そこで本例会では、「使途不明金」というタイトルの下に、調査地における研究者個人と人々の間で の、日常生活レベルの経済的な相互行為を考えていきたい。
- この経済的な交渉は、“私”と彼らの間での、ローカライズされた資本主義同士の差異が最も際立つ最前線とも言えるだろう。フィールドワークにお ける「使途不明金」には、資本主義経済を異なる形で生きてきた個々人が、様々な欲望や期待、戦略、感情とともに、ひそかに、しかし激しくぶつかり続け る、些細にして広大なドラマがあるのだ。
- 本例会では、ニューギニアでのドラマを話の糸口とし、「使途不明金」にまつわる具体的例を検討していきたい。世界システムを煮詰めたような舞台 で繰り広げられる濃厚な相互行為を、いかに扱うかという方法上の問題も含めて多角的に検討することで、資本主義の文化的側面についての比較研究を目指 す。
- ● 個別発表
- 行木敬(総合研究大学院大学)
- 「わかちあいをわかちあえるか?―ニューギニア高地・オクサプミンの調査から」
- 川崎一平(人間環境大学人間環境学部)
- 「セピックのフィールドから」
- ● コメンテーター
- 吉田集而(国立民族学博物館)、太田至(京都大学)、春日直樹(大阪大学)他
日本オセアニア学会第18回研究大会・総会を下記の要領で開催致します。多数の会員の皆様のご参加をお待ちしております。2001年1月19日 (金)までに、研究大会事務局までご出欠をお知らせ下さい。
適当な懇親会場が他になく、費用がかさんで申し訳ありませんが、景色と料理は折り紙付きです。なお、経費節減のため、E-mail/FAXをお使いの方に は、葉書を同封する代わりに学会事務局から直接ご連絡を差し上げますので、E-mail/FAXでご返送下さい。
一般的なブラウザをお使いであれば,電子メールアドレスをお持ちの方はこちらのフォームからも申 し込みできますので,ご利用ください。
3月26日(月)13:00 ~ 27日(火)13:00の予定 会 場: 長野県看護大学 〒 399-4117 駒ヶ根市赤穂1694 TEL&FAX (0265) 81-5133 JR飯田線駒ヶ根駅より徒歩約15分 中央高速道駒ヶ根ICより車で約5分 新宿・横浜・名古屋・大阪から駒ヶ根まで高速バスがあります。 予約センター (03) 5376-2222, (03) 3743-0022, (052) 582-0489, (06) 6866-3147 (ただし、大阪と横浜は1日2便のみです。) 宿泊・ 懇親会:ホテル二人静(ふたりしずか) 〒399-41駒ヶ根市赤穂4-161(駒ヶ根高原) TEL (0265)81-8181 参加費:19,000円 (学生12,000円)の予定 (26日の宿泊費・懇親会費込み)
研究大会に参加される方は、出張依頼状を希望されるかどうか、研究発表されるかどうか、発表される場合には、発表題目、OHP・スライド等をお使いになるか どうか、ご記入下さい。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて20分から25分程度の見込みです。
1. 研究大会 (参加 不参加 ) 2. 26日ホテル二人静宿泊 (泊まる 泊まらない ) 3. 出張依頼状 (必要 不必要 ) 4. 研究発表 (発表する 発表しない) 題目: スライド (使用する 使用しない) OHP (使用する 使用しない) 氏 名: 所 属: 連絡先:
オセアニア学会関西地区例会を下記の通り開催いたします。ふるってご参加くださいますようにお願いいたします。
Ka Lahui Hawai'iは、ハワイ人の主権運動組織の中でももっとも大規模な組織の一つであり、 アメリカ合衆国およびハワイ州によるハワイおよびハワイ人の植民地支配と厳しく対峙しつつ、政策としてはアメリカ合衆国の枠内で、nation-within-a- nationの方式による主権と自治の実現を目標としています。Gora氏はこのKa Lahui Hawai'iの副知事(行政部門のNo.2)であり、国連のWorking Group for Indigenous Populationsなど、国際的な場にKa Lahui Hawai'iを代表して参加してきました。
なお、国立民族博物館に入館の際には、職員通用口からお入りください。そこに守衛室がありますが、警備員の方に入館の目的をお伝えください。
去る3月、国立サモア大学で日本人を対象とした第1回夏期講座が実施されました。参加者から好評のため、第2回が第1回と同じ時期で開催されることになりま したのでご案内いたします。
国際協力、環境、ポリネシア文化に興味のある方は、下記ホームページにアクセスして下さい。
原 晃 Hara Akira
※ WEB版では所属と領域のみ掲載します。
梅津弘幸 UMETSU Hiroyuki 〒 874-8577 大分県別府市十文字原 1-1 立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部 メラネシア・オーストラリア・ニュージーランド/国際関係論 Michael P. Alpers AUSTRALIA Ron Crocombe COOK ISLANDS Pamela Stewart Department of Anthropology 3HO1 Forbes Quad University of Pittsburgh Pittsburgh, PA 15260 U.S.A.
※ WEB版では非掲載とします。
日本学術会議より、日本学術会議第17期太平洋学術研究連絡委員会地域学研究専門委員会作成の報告書「地域学の推進の必要性についての提言」が届いておりま す。関心のおありの方は、事務局までお問い合わせ下さい。
日本オセアニア学会の第17回研究大会ならびに総会を下記の要領で開催致します。
第17回の研究大会が、3月22日、23日の両日、広島県廿日市市のア ルカディア・ビレッジで開催されます。一日目に6人の研究発表と、二日目に「オセアニア研究の市場価値」というシンポジウムを予定しています。申 し込みがお済みでないかたは、急ぎ、大会準備事務局までお知らせ下さい。
アルカディア・ビレッジまでは、JR山陽本線の廿日市駅からホテルの無料バスがでています(時刻表をご参照ください)。今回のオセアニア学会のために 12:30分廿日市駅発の臨時バスを用意していただいております。ご利用下さい。会場は、駅からバスで25分ほど山にはいったところにあります。バスをご利用 にならない場合、タクシーになりますが、3000円弱かかると思います。山の中の小さな施設ですが、一応露天風呂もあります。廿日市は宮島に近く、おかえりに は宮島観光も楽しんでいただけると思います。それでは当日、会場でお目にかかりますのを楽しみにしております。
大会準備事務局: 窪田幸子 〒739-0046東広島市鏡山1-7-1 広島大学総合科学部 電話 0824-24-6370 FAX 0824-24-0753
※ WEB版では所属と領域のみ掲載します。
市川哲 ICHIKAWA Tetsu 〒 171-8501 東京都豊島区西池袋 3-34-1 立教大学大学院 メラネシア・マレーシア/文化人類学 北尾陽之介 KITAO Yohnosuke 〒 661-0012 兵庫県尼崎市南塚口町 1-24-16 日本オセアニア交流協会 オセアニア全般/国際交流論 森仁志 MORI Satoshi 〒 171-8501 東京都豊島区西池袋 3-34-1 立教大学大学院 ポリネシア/文化人類学
※ WEB版では非掲載とします。
日本オセアニア学会の第17回研究大会を下記の要領で開催致します。多数の会員の皆様のご参加をお待ちしております。同封の葉書にて、ご出欠を明 年1月20日(木)までに研究大会事務局にお知らせ下さい。尚、経費削減のため、E-mail/FAX をお使いの方に葉書を同封する代わりに、学会事務局から直接ご連絡を差し上げますので、お手数ですがE-mail/FAX でご返送下さい。
日 程:3月22日(水)・23日(木) 会 場:アルカディア・ビレッジ 〒 738-0031 広島県廿日市市原 2210 tel.0829-38-2221, fax. 0829-38-2907 JR山陽本線廿日市駅より無料送迎バスあり 参加費:16,000円 (学生 9,000円)の予定(22日の宿泊費・懇親会費込み)
研究大会に参加される方は、出張依頼状を希望されるかどうか、研究発表されるかどうか、発表される場合には、発表題目、OHP・スライド等をお使いになるか どうか、ご記入下さい。
1. 研究大会 (参加 不参加 ) 2. 22日アルカディア・ビレッジ宿泊(泊まる 泊まらない) 3. 出張依頼状 (必要 不必要 ) 4. 研究発表 (発表する 発表しない) 題目: スライド (使用する 使用しない) OHP (使用する 使用しない) 氏 名: 所 属: 連絡先: 返送先:〒 739-8521 広島県東広島市鏡山 1-7-1 広島大学総合科学部 窪田幸子 tel. 0824-24-6370 (直通) fax. 0824-24-0753 (学科共通)
※ 長いので,参照の便宜を考え,WEBでは別ページにしました。ご了承ください。
1999年2月18日、東京外国語大学で、第7回評議員選挙の開票を行いました。その結果、下記の15名の方々(五十音順)が選出されましたので、御報告致 します。
選挙管理委員長 中山和芳
印東道子氏 | 遠藤 央氏 |
春日直樹氏 | 口蔵幸雄氏 |
窪田幸子氏 | 熊谷圭知氏 |
栗田博之氏 | 合田 濤氏 |
斉藤尚文氏 | 棚橋 訓氏 |
中山和芳氏 | 橋本和也氏 |
山本真鳥氏 | 吉岡政徳氏 |
吉田集而氏 |
1999年3月14日、日本オセアニア学会第16回研究大会会場(大仁ホテル)において、日本オセアニア学会総会が開催されました。総会(議長:柄木田康之 氏)の議事は次の通りです。
・下記の新会長が承認されました。 |
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会長 | 須藤健一氏 |
・評議員の互選により理事が選出され、その役割分担が下記のように決まりました。 |
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庶務 | 棚橋訓氏 |
会計 | 栗田博之氏 |
編集(MCO) | 印東道子氏・山本真鳥氏 |
編集(NL) | 遠藤央氏 |
渉外・研究例会 | 熊谷圭知氏・橋本和也氏 |
・下記の新役員が承認されました。 |
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会計監査 | 青柳真智子氏・多賀谷昭氏 |
監事(研究例会) | 石田慎一郎氏・白川千尋氏 |
監事(MCO) | 梅崎昌裕氏 ・中澤港氏 |
監事(NL) | 大橋亜由美氏・林勲男氏 |
幹事(HP) | 中澤港氏 |
※ WEBでは内容は省略します。1998年度決算と1999年度予算が承認されました。
・Man and Culture in Oceaniaの誌名をPeople and Culture in Oceaniaに変更することが承認されました。
・小石秀夫氏を名誉会員に推薦することが承認されました
※ WEB版では所属と領域のみ掲載します。
足立浩一 ADACHI Hirokazu 〒 729-0292 広島県福山市学園町1番地三蔵 福山大学経済学部国際経済学科・講師 オーストラリア・インドネシア/経済学 石森大知 ISHIMORI Daichi 〒 657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲 1-2-1 神戸大学大学院総合人間科学研究科 メラネシア/文化人類学 江渕一公 EBUCHI Kazuhiro 〒 261-8586 千葉県千葉市美浜区若葉 2-11 放送大学教養学部 ポリネシア・ミクロネシア・オーストラリア/文化人類学 川村千鶴子 KAWAMURA Chizuko 〒 161-0036 東京都新宿区上落合 1-1-15-522 多文化教育研究所 ポリネシア/文化人類学・言語習得学 倉田誠 KURATA Makoto 〒 657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲 1-2-1 神戸大学大学院総合人間科学研究科 ポリネシア・台湾/社会人類学・人文地理学 権田絵里 GONDA Eri ポリネシア/考古学 則竹賢 NORITAKE Masaru 〒 565-0871 大阪府吹田市山田丘 1-2 大阪大学大学院人間科学研究科 ミクロネシア/文化人類学・社会人類学 的野記子 MATONO Noriko 〒 657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲 1-2-1 神戸大学大学院総合人間科学研究科 オーストラリア・インドネシア/文化人類学 森本利恵 MORIMOTO Rie 〒 565-8511 大阪府吹田市千里万博公園 10-1 総合研究大学院大学文化科学研究科 ポリネシア/文化人類学 Koji Lum 〒 106-8569 東京都港区南麻布 4-6-7 統計数理研究所
※ WEB版では非掲載とします。
日本学術会議はホームページ上に「日本学術会議だより」を掲載して行く事になりました。URLは以下の通りですので、関心のおありの方はご覧になって下さ い。
文部省学術国際局より「科学研究費補助金(基盤研究等)に係る交付業務の日本学術振興会への移管について」という通知が届いております。また、同じく日本学 術振興会より「日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究等)取り扱い要領について」という通知が届いております。関心のおありの方はご連絡下さい。尚、文部 省科学研究費(国際学術研究)の日本学術振興会への事務移管に関しては、日本オセアニア学会会長名で、日本学術振興会に対し、次のような要望書を提出しており ますので、ご参照下さい。
平成11年6月14日
文部省学術国際局研究助成課
課長 磯田文雄殿
日本オセアニア学会会長
須藤健一
平成11年度から、科学研究費補助金の国際学術研究の交付業務が日本学術振興会に移管されることにより、科学研究費の申請・採択通知、交付金の運用規則など に、若干の変更ないし改正が加えられることにつき、われわれ日本オセアニア学会は大きな関心を持っております。
日本オセアニア学会の会員の多くは,これまでに科学研究費補助金(国際学術研究)の交付を受け、アジア太平洋地域で長期のフィールドワークを実施し、大きな 成果を上げてきております。日本オセアニア学会は、人類学、生態学、文化人類学、先史考古学、政治学、経済学、医学などを専門とする研究者で組織された全国的 学会です(内外学会員、約280名)。
平成12年度科学研究費補助金の公募をひかえ、文部省及ぴ日本学術振興会の関係部門で、「国際学術研究」の「基盤研究」への統合化にともなう実施細則等の検 討を進めておられることと推察しております.この機会に、日本オセアニア学会会員から寄せられている従来の「国際学術研究」の実施内容と、今後のそれとの差異 についての疑問点と要望を下記に期しますのて、ご検討いただけれぱ幸甚に存ずるところです。
申請時期11月、内定通知翌年4月、「国際学術研究」の期間4年ということで推移するようですが、最初の年を予備調査に当てれば、海外での調査実施にさほど 不都合は生じないと思われます。しかし、大学によっては、次年度の授業・業務分担を前年度末の教授会等にて決定することになっており、遅くとも内定通知の時期 を2月中旬までにして頂ければ、この問題は解決されます。内定通知時期の繰り上げをお願いします。
「基盤研究」においては、海外調査に要する旅費に一定枠(例えば総額の40%以下)を設けていますが.「国際学術研究」の海外調査研究にはその枠を適用せ ず.従来どおり0~100%の予算枠の中で認めて頂きたい。本学会員の海外での調査研究においては、調査地に長期間住み込み、参与観察をはじめ現地の人々から の情報収集、標本採集や発掘作業等を行うために、科研費総額のほとんどを海外旅費に向ける必要があるからです。
従来の「国際学術研究」の研究組織においては、外国の研究機関に所属する研究者を「研究分担者」として位置づけ、外国人分担者の研究諸費は研究代表者(研究 機関)の責任において運用してきておりましたが、今後外国人研究者は「研究協力者」の地位扱いにするとの変更がなされると聞いております。この変更は内外の研 究者が、同等の調査研究条件のもとに研究プロジェクトを推進する上で、外国人研究者に多大なる「不信感」を与えることになり、国際学術交流のあり方に障害を来 すことになります。昨年までの文部省の管轄下にあった「国際学術研究」のもとでは、外国人研究者を「研究分担者」として組み込めたものが、日本学術振興会への 移管、つまり「基盤研究」ヘの統合にともなって「研究協力者」に「格下げする」という理由が理解できません。科研経費使用の規定の変更があるからでしょうか。 なにとぞ、従来の「国際学術研究」の外国人「研究分担者」の対応と同様の方策をお願いします。
「国際学術研究」が「基盤研究」に一本化されることにより、「設備備品費」の請求が可能になり、また調査期間が拡張されるなど、「国際学術研究」の実施にお いては今までより以上に柔軟に研究を遂行できるようになりました。しかし反面、「国際学術研究」は平成10年度で「廃止」され、上記で要望しましたような不都 合も生じてきております。「基盤研究」への統合後も、従来の「国際学術研究」の運用を継続できる形態、たとえば「基盤研究」A~Cのカテゴリーとは別枠での 「基盤研究」への位置づけをお願いする次第です。
前号のニューズレターでお知らせ致しましたように、日本オセアニア学会の創立20周年記念シンポジウムが3月13日(土)、新宿の東京年金基金センター・ セブンシティで開催されます。プログラムは下記の通りですので、皆様ふるってご参加下さい。尚、一般公開のシンポジウムとなりますので、会員以外で関心をお持 ちの方にも是非ご周知下さいますようお願い申し上げます。
日本オセアニア学会20周年記
念シンポジウム 『南太平洋のフロンティア』 Frontiers of Human Settlement in the South Pacific |
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日時: | 平成11年3月13日(土)13:30~17:30 | |
会場: | ![]() (新宿駅西口より徒歩15分) 〒160-0023 東京都新宿区西新宿 4-34-1 tel. 03-3376-5101(代表) fax. 03-3376-0118 |
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プログラム: | 総合司会 | 青柳まちこ(茨城キリスト教大学) |
13:30~13:40 | 開会の辞 Opening Address 大塚柳太郎(東京大学) |
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13:40~14:00 | 印東道子(北海道東海大学) 「南太平洋のフロンティアライン」 Introduction to the South Pacific Frontiers |
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14:00~14:40 | Peter Bellwood(オーストラリア国立大学) 「太平洋のヒト:移住史をめぐる論争」 Understanding the Human Colonization of the Pacific |
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15:00~15:40 | Patrick Kirch(カリフォルニア大学) 「ラピタ文化:オセアニア人の拡がり」 Lapita and the Expansion of the Oceanic-Speaking Peoples |
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15:40~16:20 | Janet Davidson(ニュージーランド博物館) 「最後のフロンティア:ニュージーランドへの移住」 The Last Frontier of Human Settlement: The Prehistory of New Zealand |
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16:40~17:20 | 総合討論 Discussion | |
17:20~17:30 | 閉会の辞 Closing Address 須藤健一(神戸大学) |
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シンポジウムは日本語と英語で行われ、同時通訳がつきます 参加費は無料です |
シンポジウム事務局:〒114-8580 東京都北区西ヶ原 4-51-21
東京外国語大学外国語学部栗田研究室
tel. & fax. 03-5974-3539
前々号のニューズレターでは、シンポジウムの講演者の一人として篠遠喜彦博士を予定していましたが、諸般の事情により博士の来日が困難になったため、本学 会会員であり、東南アジアからオセアニアにかけた広い地域の考古学研究の第一人者であるオーストラリア国立大学教授 Peter Bellwood 博士に講演して頂く事になりました。
前号のニューズレターや電子メール等でお知らせ致しましたように、上記シンポジウムに続いて、第16回研究大会を3月14日(日)、15日(月)の両日、 静岡県大仁温泉大仁ホテルにて開催致します。すでに50名ほどの方々から参加の申込みを頂きましたが、まだ部屋には余裕があります。天気が良ければ富士山を一 望できる高台の素晴らしいロケーションにある宿です。
今回の大会では、オセアニア学会の20周年を記念して、オセアニア地域研究のパイオニア研究者の方々にご報告頂く「オセアニア学の可能性と課題」と題した ミニ・シンポジウムも予定しております。長年の経験をふまえた興味深いお話が伺えるものと期待しております。
まだ申込みがお済みでない方は、至急研究大会事務局(お茶の水女子大学)まで、参加のご連絡をいただきたく存じます。
多くの方々のご参加を心からお待ち申し上げております。
第16回研究大会 | |
日時: | 3月14日(日)・15日(月) |
会場: | 大仁(おおひと)ホテル 〒 410-2322 静岡県田方郡大仁町吉田 1178 tel. 0558-76-1111 & fax. 0558-76-1860 |
研究大会事務局: | 〒112-8610 東京都文京区大塚 2-1-1 お茶の水女子大学文教育学部地理学教室 熊谷 圭知 tel. 03-5978-5191 (直通) fax. 03-5978-5185 (地理学教室) |
会場へは、新幹線三島駅より伊豆箱根鉄道に乗り換え25分、大仁駅下車、タクシーで3分(約610円)で着きます。ご参考のために、午後1時30分開始の 研究大会に間に合う三島駅発伊豆箱根鉄道および新幹線からの乗り継ぎ時刻をあげておきます。尚、大仁駅到着が12時02分までの方はホテルの送迎バスをご利用 になれるよう、手配を予定しております。
(東京方面からお越しの場合) こだま 453号 東京発 10:31 三島着 11:37/伊豆箱根鉄道三島発 11:44 特急踊り子 103号 東京発 10:00 大仁着 12:02(乗り継ぎなし) (関西方面からの場合) ひかり 152号 新大阪発 8:33 三島着 10:56/伊豆箱根鉄道三島発 11:00 こだま 460号 名古屋発 9:55 三島着 11:48/伊豆箱根鉄道三島発 11:54 こだま 404号 名古屋発10:14 三島着 12:10/伊豆箱根鉄道三島発 12:13
研究大会のプログラムは、以下の通りです。
3月14日(日) | |
12:30~13:30 | 受付 |
13:30~16:10 | 一般発表 |
相原淳一(仙台市博物館学芸員)・中野拓大(國學院大学博士課程) 「中部ヴァヌアツ・エファテ諸島の考古学的調査(速報)」 Archaeological survey in Efate, Central Vanuatu |
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岡嶋格( 東横学園女子短期大学) 「モツタプ遺跡と南部クック諸島考古学遺跡の炭素測定年代」 Radiocarbon dates of Motu Tapu site and some Southern Cock Island archaeological sites |
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安高雄治(東京大学大学院人類生態学教室) 「パプアニューギニア・バロパ島嶼部住民におけるマラリア」 The Community-based Malaria study among Balopa Islanders in Papua New Guinea |
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金子明(東京女子医学大学国際環境・熱帯医学教室) 「バヌアツにおけるマラリア対策に関わる遺伝的多様性」 Genetic polymorphism in relation to malaria control in Vanuatu |
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Koji Lum(統計数理研究所) Geneflow and Isolation with the Pacific |
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諏訪淳一郎(筑波大学大学院) 「パプアニューギニアにおけるポピュラー歌謡と文化認知」 Papua New Guinean Popular Songs and Cultural Cognition |
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16:30~17:30 | 総会 |
18:00~ | 懇親会 |
3月15日(月) | |
9:00~12:30 | シンポジウム『オセアニア学の可能性と課題』 |
司会:大塚柳太郎 | |
石川榮吉 「地域研究としてのオセアニア学」 |
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大島襄二 「海の学問としてのオセアニア学」 |
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──── 休憩 ──── | |
小石秀夫 「パプアニューギニア東部高地の20年」 |
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近森正 「忘れ得ぬ人々―文化動態の考古学的研究から―」 |
長岡拓也 (在外) Department of Anthropology University of Auckland Private Bag 92019 Auckland NEW ZEALAND 考古学・オセアニア全般 馬場淳 〒 192-0364 東京都八王子市南大沢 1-1 東京都立大学人文学部社会人類学研究室 社会人類学・メラネシア
WEB版では非掲載とします
61号の原晃氏からの短信にもあります通り、現在サモア国立大学では、学生の交流、教員の交流、文化・研究活動の協力等を含めた協力関係を結ぶ日本の大 学・研究機関をさがしているそうです。特に、文部省の奨学金、客員教授招聘、JICAの研修スキーム等を利用した学生や教員の日本での研修先をさがしており (既に、立命館大学、神戸学院大学、長野看護大学、お茶の水女子大学とは交渉中だそうです)、また、都道府県や大学等で外国からの学生や研究者の奨学金を用意 しているところの情報を提供して欲しいとの事です。また、サモアに行かれる予定のある会員の方には、是非とも大学の講堂での特別講義や教員との意見交換を行っ て欲しいそうです(お礼は大学の食堂での豪華昼食(?)だそうです)。この件にご関心がおありの方は、直接原晃氏までお問い合わせ下さい。原晃氏の連絡先は次 の通りです。
National University of Samoa P.O.Box 5768, Apia, SAMOA tel. +685-22-139 ex. 111 fax. +685-20-938
また、原晃氏は今年の5月に一時帰国しますので、その折りに詳細を協議する事が出来るとの事です。
外務省主催の「グローバル・ユース・エクスチェンジ・プログラム」の募集案内が事務局の方に届いています。ご関心がおありの方は事務局までご連絡下さい。
来年3月に開催予定の第16回総会において、いよいよ学会誌の誌名変更を行いたいと思います。理事会で検討した結果、現誌名との継続性を重視するという事 から、新誌名として People and Culture in Oceania を提案する予定です。この新誌名案に関して御意見がございましたら、事前に事務局までお寄せ頂ければ幸いです。
メール・アドレスをお持ちの方には既にメールで連絡を差し上げましたが、日本オセアニア学会では学会ホームページを暫定開設致しました。URLは以下の通 りです。
東京大学人類生態学教室のご厚意で、現在同教室のサーバ上にホームページを置かせて頂いており、同教室所属の会員中澤港さんに管理をお願いしています。
会員の方々には一度ご覧になって頂き、改良すべき点・リンクの情報など、ご意見・ご要望を私宛あるいは中澤さん宛にお寄せ頂ければ幸いです。しかる後に、 暫定版から公式版へと移行させたいと考えております。
〒 980-0862 宮城県仙台市青葉区川内三の丸跡 仙台市博物館・学芸員 メラネシア・考古学
日本オセアニア学会の創立20周年記念シンポジウムと第16回研究大会を下記の要領で開催致します。多数の会員の皆様のご参加をお待ちしております。ご出欠 を下記フォームにて明年1月15日(金)までに研究大会事務局にお知らせ下さい。
20周年記念シンポジウム『南 太平洋のフロンティア』 | |
日 程: | 3月13日(土)午後1時半より |
会 場: | 東京年金基金センター・セブンシティ 〒 160-0023 東京都新宿区西新宿 4-34-1 tel. 03-3376-5101 (代表), fax. 03-3375-0118 |
参加費:無料 |
第16回研究大会 | |
日 程: | 3月14日(日)・15日(月) |
会 場: | 大仁(おおひと)ホテル 〒 410-2322 静岡県田方郡大仁町吉田 1178 tel.0558-76-1111, fax. 0558-76-1860 新幹線三島駅より伊豆箱根鉄道に乗り換え25分、大仁駅下車 タクシーで3分[約 610円] |
参加費: | 18,000円 (学生 12,000円)の予定(14日の宿泊費・懇親会費込み) ※宿泊でツインルームのシングル・ユースのご希望があれば部屋数に余裕がある範囲でお受けしますので、その旨あらかじめお知らせ下さい。その場 合、参加費は 3,000円程度高くなります。 |
20周年記念シンポジウムと第16回研究大会は連続した日程で開催されますが、どちらか一方にのみ参加するという事も可能です。また、連続して参加される 場合、13日夜に大仁ホテルに宿泊して頂いても結構です(その場合の料金[夕食なし、一泊朝食付き]は、ツインルームをお一人で使用の場合 10,650円、お二人で使用の場合 8,340円[いずれも税込み]となります。三島発の伊豆箱根鉄道の最終便は三島発 23:13 ですので、東京発22:07[最終の1本前]のこだま号に乗って頂ければ間に合います)。
研究大会に参加される方は、出張依頼状を希望されるかどうか、研究発表されるかどうか(発表される場合には、発表題目[必ず英文題目も併記して下さい]、 OHP・スライド等をお使いになるかどうかもご記入下さい)、小シンポジウムを企画されるかどうか(企画される場合には、代表者と発表者、及び小シンポジウム のタイトル、各発表者の発表題目もご記入下さい)をご記入下さい。
尚、今回の研究大会では日本オセアニア学会創立20周年を記念する催しとして、オセアニア学のパイオニアの方々にお話頂く学会主催の小シンポジウム『オセ アニア学の可能性と課題』を予定しています。
1. 20周年記念シンポジウム (参加 不参加 ) 2. 第16回研究大会 (参加 不参加 ) 3. 14日大仁ホテル宿泊 (泊まる 泊まらない) シングル・ユース (希望する 希望しない) 4. 13日大仁ホテル宿泊 (泊まる 泊まらない) ツイン・ユース (希望する 希望しない) 同宿者のお名前: 5. 出張依頼状 (必要 不必要 ) 6. 研究発表 (発表する 発表しない) 題目(和文): 題目(英文): スライド (使用する 使用しない) OHP (使用する 使用しない) 氏 名: 所 属: 連絡先: 返送先:〒112-8610 東京都文京区大塚 2-1-1 お茶の水女子大学文教育学部地理学教室 熊谷 圭知 fax. 03-5978-5185
最近のブラウザならこちらのフォームからも申し込みできます。
前号のニューズレターでは、シンポジウムの講演者の一人として Jack Golson 博士を予定していましたが、諸般の事情により博士の来日が困難になったため、本学会会員であり、ラピタ研究の第一人者であるカリフォルニア大学バークレー校教授 Patrick V. Kirch 博士に講演して頂く事になりました。
尚、シンポジウム・研究大会のプログラム等の詳細に関しては、次号のニューズレターでご案内致します。
第15回総会の議を受けて、次回の第16回の総会にて、学会誌の新名称を提案したいと思います。つきましては、この件に関して御意見・御質問等がございまし たら、事務局までお寄せ下さい。特に、良い誌名(印東道子氏からの私案がニューズレター No. 59 に掲載されています)のアイデアがおありでしたら、積極的にお寄せ頂ければ幸いです。また、現在理事会では和文学会誌の創刊の可能性を検討しております。この点に関して も、御意見をお寄せ頂ければ幸いです。
第15回総会の議を受けて、今年度の事業として会員名簿を発行する事になりました。つきましては、アンケート用紙を同封致しますので、住所等の変更の有無に 関わらず、事務局まで御返送頂ければ幸いです。アンケート用紙には現在事務局が把握しているデータが記載されていますので、必要な部分を訂正して御返送下さ い。特に、本年2月より郵便番号が7桁化されましたので、その部分のチェックをお願い致します。また、名簿の方に記載されては困るという部分がございました ら、その旨アンケート用紙にお書き添え下さい。尚、E-mail または FAX をお使いの方には、同封のアンケート用紙の他に、E-mail または FAX で同じ内容のアンケートを送らせて頂きます。その場合には、E-mail またはFAX で御返事頂くだけで結構です。また、E-mail でアンケートが来なかった方でも、既にE-mail をお使いの方は、E-mail で御返答頂くだけで結構です。E-mail を使って頂ければ、多大なる労力の節約になりますので、出来る限り御協力下さい。御協力の程、宜しくお願い致します。
第15回総会の議を受けて、今年度の事業として学会20周年記念国際シンポジウムを行う事になりましたが、その概要が決まりましたので、ここに御報告致しま す。尚、一般公開の講演会が中心となりますが、引き続き第16回日本オセアニア学会研究大会が開催される予定です。
◆パプアニューギニア研究所の音楽部門長であるドン・ナイルズ(Don Niles)氏が訪日し、現在客員教授として広島大学に滞在しています(1998年11月まで)。パプアニューギニアに関する事であれば何でも相談に乗って下さるという事 ですので、関心のある方は直接ナイルズ氏までお問い合わせ下さい。ナイルズ氏の連絡先は次の通りです。
〒 739-0014 広島県東広島市西条昭和町 4-21-701
tel. 0824-21-5885
◆日本学術会議事務局より、『平成10年度における学術研究団体の学術研究集会等開催予定一覧』が届いております。御関心のある方は事務局まで御一報下さ い。
◆日本サンゴ礁学会より入会案内が届いております。御関心のある方は日本サンゴ礁学会事務局に直接お問い合せ下さい。
〒 113 東京都文京区本郷 7-3-1
東京大学理学系地理
茅根創
fax. 03-3814-6358