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学会通信(過去の学会 通信

このページは,2021年3月8日に最終更新されました。

※掲載論文については,こちらをご覧ください。


ニューズレターNo.129から

第38回日本オセアニア学会研究大会・総会のお知らせ

第38回研究大会・総会事務局 黒崎岳大

第38回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回は、新型コロナ感染症対策の中で、研究大会・総会はオンライン(ZOOM)上で開催いたします。

【日時】
2021年3月18日(木)9:00~13:05、13:50~18:00
(理事会及び評議員会は、3月10日の10時から11時(理事会)、11時から12時(評議員会)にオンラインで開催予定)
※18 日(木)8:45 よりZOOM上に入室できるように設定します。

【会場】(ZOOM上で開催)
参加者宛には大会の前日までに抄録とともに、ZOOMのURLをメーリングリストで送付する予定です。

【研究大会・総会スケジュール】
3月18日(木)
08:45~    ZOOMへの入場開始
09:00~09:10 開会挨拶

09:10~10:25 一般発表:第1セッション・座長 倉光ミナ子(お茶の水女子大学)
09:10~09:35 A 石村智(東京文化財研究所):ポリネシアにおける社会階層化と人口・環境との関連
09:35~10:00 B 山本真鳥(法政大学):オセアニア植民地時代における非白人移住者(1)
10:00~10:25 C 矢野涼子(神戸大学大学院):明治・大正期日本がみたサモア諸島

10:30~11:45 一般発表:第2セッション・座長 小林誠(東京経済大学)
10:30~10:55 D 深山直子(東京都立大学):NZマオリによるラーフイの宣言――コロナ警戒下での先住的環境思想の「拡大」
10:55~11:20 E 大島崇彰(東京都立大学大学院):オセアニアの嗜好品カヴァを再考する――文化/物質の対立を超えた議論に向けて-
11:20~11:45 F 山口優輔(京都大学大学院):気候変動の影響を受ける小島嶼の暮らし――ソロモン諸島国テモツ州における事例研究

11:45~13:05 総会・学会賞表彰等
[休憩 13:05~13:50]

13:50~15:05 一般発表:第3セッション・座長 石村智(東京文化財研究所)
13:50~14:15 G 山口徹(慶應義塾大学):北部クック諸島プカプカ環礁の初期居住期を再考する
14:15~14:40 H 棚橋訓(お茶の水女子大学): 墓が拓く、墓が結ぶ――クック諸島プカプカ環礁のislandscape
14:40~15:05 I 島崎達也(慶應義塾大学大学院):マリアナ諸島における網代圧痕土器の諸問題

15:10~16:25 一般発表:第4セッション・座長 馬場淳(和光大学)
15:10~15:35 J 木村彩音(神戸大学大学院):出自を付与する――トレス海峡諸島民の伝統的養子縁組から
15:35~16:00 K 片岡真輝(アジア経済研究所/カンタベリー大学):フィジーにおける記憶の政治利用と集合的記憶が民族関係に及ぼす影響
16:00~16:25 L 丹羽典生(国立民族学博物館):埋葬形式の標準化――19世紀後半以降におけるフィジーの葬送の変容

16:30~17:50 ミニシンポジウム:海外研修航海から考える大学教育と人的交流の可能性:オセアニア地域訪問での事例を中心に
司会・モデレーター・黒崎岳大(東海大学)
報告(1)・千葉雅史(東海大学)
報告(2)・笹川昇(東海大学)
報告(3)・黒崎岳大
ディスカッサント:大江一平(東海大学)

【参加費】
有職者・無給者(大学院生、学生等)ともに無料

【参加の問い合わせ】
 参加および発表申込はすでに締め切っております。参加にご関心がある方は下記の事務局までお問い合わせください。


2020年度日本オセアニア学会関東地区研究例会の報告


関東地区研究例会幹事 里見龍樹
2020年度の関東地区例会を、Zoomを用いたオンライン形式で以下の通り開催した。

【日時】2021年2月21日(日) 14:00~17:30
【発表者】紺屋あかり会員(明治学院大学)、浅井優一会員(東京農工大学)
【コメンテーター】橋爪太作会員(早稲田大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)

【プログラム】
14:00~14:50 第1発表 紺屋あかり会員
「パラオにみることばの物象化と海の底の石」
14:50~15:10 コメンテーター2人によるコメント
15:10~15:40 質疑応答
15:50~16:40 第2発表 浅井優一会員
「外来王を巡るプラグマティクス:現代フィジーにおける神話の語りと儀礼の秩序」
16:40~17:00 コメンテーター2人によるコメント
17:00~17:30 質疑応答

本年度の関東地区例会は、オセアニア地域における言語の社会的生とでも呼ぶべき主題について先鋭的な研究を行っている会員2名を発表者に迎えて開催した。
 紺屋あかり会員は、パラオにおける詠唱などの言語実践を「ことばの物象化」という概念によって統一的にとらえ、植民地化以前/以後における「ことばの物象化」の歴史的変容と持続性について考察した。「ことばそれ自体」の存在性に迫ろうとする精妙で斬新な議論に対し、オセアニア各地の事例を念頭にいくつもの質問が寄せられた。
 浅井優一会員は、現代フィジーにおける土地、集団と文書の関係性を事例に、サーリンズからトーマスを経てストラザーンに至るオセアニア人類学の理論的展開を、ヤコブソンやシルヴァステインの言語理論を参照して大局的に把握しようとする議論を提示した。広範な理論的射程をもつこの議論に対し、人類学の理論的現状を踏まえて意見交換が行われた。
発表を受け、合計20名の参加者によって活発な討論が繰り広げられ、例会は盛況のうちに終わった。また、終了後にはオンラインでの懇親会も行われた。

2020年度日本オセアニア学会関西地区研究例会の報告

関西地区研究例会幹事 深川宏樹
 2020年度の関西地区研究例会を、以下のとおりオンラインにて開催した。

【日時】2021年1月9日(土)
【会場】オンライン開催(Webex Meetings)
【プログラム】
13:00〜14:00 発表者:土井冬樹(神戸大学)
「二文化主義の実践:ニュージーランド警察が踊る先住民マオリの踊り」
14:00〜14:15 コメンテーター: 深山直子(東京都立大学)
14:15〜15:00 全体での討論
15:15〜16:15 発表者:矢野涼子(神戸大学)
「第二次マウ運動におけるサモアの現地住民による嘆願——人々の多様性と統合・対外地域との結びつき」
16:15〜16:30 コメンテーター: 飯高伸五(高知県立大学)
16:30〜17:15 全体での討論

 本年度の関西地区例会は、個人発表2名、それにたいするコメンテーター2名で開催した。土井冬樹会員の個人発表では、人類学における「文化の盗用」をめぐる議論が理論的に整理され、そこからニュージーランド・マオリの文化保護と二分化主義の現状に対する批判的検討がなされた。そのうえで、現在のニュージーランドの警察学校で踊られるハカの先進的な事例の分析から、文化の排他的な所有権の主張ではなく、文化の神聖性と真正性の維持という観点から、マオリの人々が、警察によるハカの実践を許容していることが論じられた。土井会員の発表にたいして深山直子氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がおこなわれた。つぎに、矢野涼子会員の個人発表では、サモアにおける第二次マウ運動の事例が取り上げられ、運動における嘆願書を中心とする豊富な歴史資料から、サモアの現地住民(ネイティブ・混血・外国人永住者など)が誰に対し、いかなる目的や不平をもって運動に参加したのかが、主導者以外の多様な人々を含めた視点から、多角的に考察された。そこから、マウ運動において「現地住民」と一括されがちな人々の内的多様性とその統合の機制や、海外地域との結びつきが明らかにされ、さらにマウ運動とイギリス帝国の崩壊の動きとの関連性にまで議論は発展した。矢野会員の発表にたいして飯高伸五氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がおこなわれた。合計27名の参加者のもと、本例会は盛会のうちに終わった。

新刊紹介

梅﨑昌裕・風間計博(編)『オセアニアで学ぶ人類学』(昭和堂、2020年12月)

本書は、昭和堂の「〇〇で学ぶ文化人類学」シリーズの一冊であり、序章でも述べられているように、〇〇(地域名)を知ることと人類学を知ることがパラレルになるような相互構成的特徴をもつ。オセアニア地域ならびに人類学に関心のある一般読者を想定した本書は、同時にこの学問領域を学ぼうとする大学生向けの教科書でもある。
近年の文化人類学においては、個別地域から乖離した研究動向が見受けられる。一方、元来の人類学は、個別地域におけるフィールドワークと切り離せない知的営為であった。したがって、この学問は、歴史的に構築されてきた人々の生活を抜きにして成立しえなかった。本書は、そうした人類学の原点をあらためて見直す意識をもって編まれている。
他のシリーズと比較したとき、まず本書のタイトルが<文化人類学>ではなく、広く<人類学>と銘打っている点にお気づきだろう。実際、本書には、文化人類学だけではなく、自然人類学、生態人類学、考古学などの研究成果が盛り込まれている。これは、海洋世界であるオセアニアと、その特異な環境に生きる人間を総体的に理解しようという本書のコンセプトを反映したものである。また、各章の執筆者は、いずれも日本オセアニア学会という学際的なアカデミーで育った「現役の」研究者である。思い出話ではなく、オセアニアの調査地で収集したデータにもとづくフレッシュな論考を集めるように心がけた。
「はじめに」と「この本をおもしろく読むための方法――あとがきに代えて」を除くと、本書の構成は、以下のとおりになっている。

序章 オセアニアを知り、人類学を学ぶ
第1章 人類史(1)―発掘からよみとくオセアニア移住史と海洋適応
第2章 人類史(2)―ゲノムに刻まれたオセアニアにおける人類の歴史
第3章 環境―オセアニアにおける植物利用の民族学
第4章 生業―パプアニューギニアの「焼かない焼畑」
第5章 医療―パプアニューギニアではどのように治療が選ばれるのか
第6章 婚姻―夫と妻、そしてXがつむぐマヌスの結婚生活
第7章 家族・親族―人工の島々に住まうマライタ島の人々
第8章 政治―ポーンペイの首長制と民主主義
第9章 経済―贈与交換のニューギニア、あるいは人と物の溶け合うところ

第10章 宗教―メラネシアの世界観とキリスト教
第11章 芸術―オセアニアの芸術と工芸の交差点
第12章 身体―イレズミからみるポリネシア社会の歴史
第13章 先住民―ニュージーランド・マオリの政治と日常
第14章 植民地―ヨーロッパ諸社会による支配と先住民フィジー人の自律
第15章 観光―オセアニア・イメージの消費
第16章 文化遺産―ナンマトル遺跡の保全と活用
第17章 資源開発―パプアニューギニア高地の天然ガス
第18章 環境問題―ツバルの気候と社会の変化

 以上のように、縦軸として広義の人類学という専門分野を、横軸として個別テーマを交差させた本書がカバーする範囲は、幅広い。初学者を想定して人類学の古典的なテーマを踏襲しつつ、オセアニアが直面している現代的な問題を取り上げている。オセアニア地域ならびに人類学について少しでも関心をもつ読者に、本書を広く紹介していただけたら幸いである。
(編者)

学会通信


新入会員
奥田梨絵(神戸大学大学院国際協力研究科博士前期課程)
山口優輔(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士過程)

所属変更
大津留香織(台南応用科技大学デザイン学部漫画学科)

*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。


寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp



ニューズレターNo.128から

第5回石川榮吉賞受賞の言葉

印東道子

私が最も尊敬していた石川栄吉先生のお名前を冠した賞をいただけるのは正に夢のようであり、とても光栄です。石川先生が企画された一般向けの「南太平洋 研究講座」を受講したのが、私が「オセアニア」という研究分野と出会ったきっかけでした。1972年当時、東京女子大学の史学科2年生だった私にとって、 石川先生をはじめ、青柳真智子、石毛直道、牛島巌、島五郎、杉本尚次、藪内芳彦など、オセアニア研究の最前線で研究されていた多様な専門分野の諸先生方の お話を身近に聞くことができる夢のような1年でした。この講座をきっかけに、ミクロネシアのチュークでの発掘調査に参加したことでフィールドワークの魅力 にとりつかれ、考古学を中心としたオセアニア研究を続けることになりました。石川先生は正に私自身の進むべき道を見つけるきっかけをつくって下さった恩人 です。
 その後、私は1982年からニュージーランドのオタゴ大学大学院へ留学し、ヤップ島で行った土器技術に関する民族考古学調査をもとに学位論文を作成する 日々を送っていました。ほぼ完成したころに、石川先生から突然お手紙をいただき、帰国することになりました。石川先生は環太平洋文化研究を柱とした国際文 化学部を新設する北海道東海大学の専任教員として私を推薦して下さり、研究者としての道を拓いて下さったのです。
 1988年に札幌の北海道東海大学で教育・研究生活を始めてからは、学会活動を通して少しでも恩返しができればと思い、当時の学会誌Man and Culture in Oceania(大塚柳太郎編集長)の編集をお手伝いしましたが、学会誌の編集をいかにより良く進めるかなど、さまざまな点で勉強になることばかりでした。1994年から は編集長を任されましたが、補助金もなかった当時はすべて手弁当でした。まだインターネットは使えずに、海外の査読者との連絡は郵送で行うために時間が掛 かりました。文章の割付などは大変複雑なTeXを使って編集し、表のTeX作業は須田一弘さんに手伝っていただき、DTP印刷した版下を印刷所に送ってよ うやく編集終了でした。学会誌を海外からも注目される国際学術誌に育てたいと頑張った中で、もっとも貢献できたと自負しているのは、誌名をPeople and Culture in Oceaniaに変更することを提案し(Newsletter 58)、実行できたことです。
 オセアニア学会設立15周年および30周年には、それぞれ記念の論集刊行の際に編者としてお手伝いしましたが、確実にオセアニア学会の会員の層が厚くな り、石川先生が播いた種が結実しつつあることをひしひしと感じました。またその間、設立20周年に際しては「南太平洋のフロンティア」と題した国際シンポ ジウムの企画をお手伝いし、P. ベルウッド、P. カーチ、J. デヴィッドソンという一線級のオセアニア考古学者を招待することも出来ました。シンポジウムのすぐあとに行われた学会の研究大会にも参加した彼・彼女らが、通例の温泉での 学会を堪能していたことを今でも鮮明に記憶しています。
 石川先生はもういらっしゃいませんが、石川先生が創設された「日本オセアニア学会」が今後も益々発展し、素晴らしい学会に育つことを心から念じ続けてい ます。


第20回日本オセアニア学会賞選考要項


2020年度日本オセアニア学会賞選考委員会

1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2019年1月1日から 2020年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。

2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。

3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mail アドレス)を明記するものとする。

4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名 を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、 出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が 必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。

5. 応募期間は2020年11月1日から2021年1月15日まで(必着)とする。

6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けるこ ととする。

(日本オセアニア学会事務局)
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館 
丹羽典生研究室  宛て
TEL  06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net

7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。

8. 2021年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。

<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。

日本オセアニア学会賞規定


第 1 条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の
振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第 2 条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第 3 条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を
公にした個人。但し、刊行時において原則として満 40 歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度 1 名とする。
第 4 条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した 5 名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第 5 条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第 6 条(賞状等)
受賞者には賞状等を授与する
附則
この規定は平成 13 年 4 月 1 日より施行する。
本規定の改定は令和 2 年 7 月 31 日より施行する。


第38回日本オセアニア学会研究大会・総会のお知らせ

第38回研究大会・総会事務局 黒崎岳大

第38回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。今回は、新型コロナ感染症対策の中で、研究大会・総会はオンライン( ZOOM )上で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。参加および発表エントリーにつきましては、学会ホームページの参加フォームをご利 用の上、 2021年2月5日(金)までにお知らせください。

【日時】
    2021年3月18日(木) 10:00~12:40、13:10~18:00
    (理事会および評議会:研究大会日の1~2週間前に別途テレビ会議で開催予定)
    ※18日(木)9:30よりZOOM上に入室できるように設定します。
【会場】
    ZOOM上で開催:参加者宛には大会の前日までにZOOMのURLをメーリングリストで送付する予定です。
【研究大会・総会スケジュール】
    3月18日(木)
    10:00~10:10 会長挨拶
    10:10~12:40 一般発表
    13:10~14:30 総会・学会賞表彰等・学会賞受賞者講演
    15:00~18:00 一般発表
【参加費】
    有職者・無給者(大学院生、学生等)ともに無料
【参加・発表申し込み】
    参加フォームに沿って、参加・発表についてご記入ください 。発表される場合には、「発表題目」の記入が必要です。なおフォームをご利用いただけない場合は、ご氏名と連絡先を明記の上、メールで必要事項を大会・総会事務局にお知ら せください。発表時間は演題数にもよりますが、質疑応答を入れて20〜25分程度を予定しています。。


2020年度日本オセアニア学会関東地区研究例会のお知らせ

関東地区研究例会幹事 里見龍樹

今年度の関東地区例会では、オセアニア言語人類学の分野で精力的な研究を展開されている紺屋あかり会員と浅井優一会員をお迎えし、お二人のご研究の最新の 展開についてお話しいただきます。
今年度の関東地区例会は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、オンライン会議システムZoomを用いて開催いたします。日程と参加申し込みの方法 は下記の通りです。万障お繰り合わせの上ご参加くださいますようお願い申し上げます。

日時:2021年2月21日(日) 14:00~17:30
参加申し込み:2月19日(金)までに、参加ご希望の旨をjsos.kanto2020[at]gmail.comまでメールでご連絡ください([at] を@に変えてください)。当日までにZoomへの参加方法をお伝えします。

発表者:紺屋あかり会員(明治学院大学)、浅井優一会員(東京農工大学)
コメンテーター:橋爪太作会員(早稲田大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)

プログラム
14:00~14:50 第1発表 紺屋あかり会員
「パラオにみることばの物象化と海の底の石」(仮題)
14:50~15:10 コメンテーター2人によるコメント
15:10~15:40 質疑応答

休憩(10分)

15:50~16:40 第2発表 浅井優一会員
「外来王を巡るプラグマティクス:現代フィジーにおける神話の語りと儀礼の秩序」(仮題)
16:40~17:00 コメンテーター2人によるコメント
17:00~17:30 質疑応答

※プログラムに変更が生じる可能性があります。
※例会終了後、Zoom上で懇親会を行います。飲み物をご用意ください。

お問い合わせ:ryuju.satomi[at]waseda.jp([at]を@に変えてください)

2020年度日本オセアニア学会関西地区研究例会のお知らせ

関西地区研究例会幹事 深川宏樹

2020年度の関西地区例会を以下のとおり開催します。どうぞみなさまお誘い合わせのうえ、ご参加いただけますようよろしくお願いいたします。

◆日時:2021年1月9日(土)13:00~17:15
◆会場:オンライン開催(Webex Meetingsを使用)
*ご参加の方は、以下のメールアドレスより、ご参加の旨をお知らせくださいますようお願いいたします。メール返信にて、オンライン開催のアドレス等をお知 らせいたします。
 kansaireikai2020アットマークgmail.com (‟アットマーク”を"@"に変えて下さい)
*なお、ご参加の受付は、関西地区例会当日の1月9日(土)12時までとさせて頂きます。
◆プログラム
【発表1】
13:00~14:00 発表者:土井冬樹(神戸大学)
「二文化主義の実践――ニュージーランド警察が踊る先住民マオリの踊り」
14:00~14:15 コメンテーター: 深山直子(東京都立大学)
14:15~15:00 全体での討論
【発表2】
15:15~16:15 発表者:矢野涼子(神戸大学)
「第二次マウ運動におけるサモアの現地住民による嘆願――人々の多様性と統合・対外地域との結びつき」
16:15~16:30 コメンテーター: 飯高伸五(高知県立大学)
16:30~17:15 全体での討論

◆研究会終了後、オンラインで懇親会を開催します。こちらもぜひご参加ください。(ご参加の方は、お手元にお飲み物等をご用意ください)。

◆問い合わせ先
深川宏樹 hirokifukagawa13アットマークgmail.com
(‟アットマーク”を"@"に変えて下さい)

新刊紹介

【新刊紹介】
秋道智彌・印東道子(編)
『ヒトはなぜ海を越えたのか――オセアニア考古学の挑戦』
  (雄山閣、2020年3月)

海を越えたヒトの研究
 「人はなぜ海を越えたのか」と題する書を2020年3月に雄山閣から刊行した。本書の表題にある「渡海」の要因について、かつて小山修三は、大阪の国立 民族学博物館(以下、民博)で開催された「海人の世界」と題するシンポジウムで、渡海にはプッシュ要因とプル要因のある点を指摘した(小山 1998)。
戦争・食料不足・火山噴火・疫病の蔓延などは島外に脱出するプッシュ要因である。新天地のもつ様々な魅力や極楽浄土・不老不死の妙薬の探検などはプル要因 である。最近では、エルニーニョやENSOなどの気象変化による風向きの変化が移動を誘発したとする説がある(Anderson et al. 2006)。もちろん、ある地域や島から周囲に島が見える場合もあれば、見えなくとも海鳥の飛来、木の葉や木の実、流木、軽石などの漂流物によって、見えない海の向こうに 陸地を想定する場合もあったであろう。2つの要因論に加えて、嵐などで舟が流され、漂流(=ドリフト)の結果、新天地を発見・到達した場合もある。もちろ ん、途中で沈没、餓死などで命を落とした人びとも数知れない。海を越えることは危険を伴う反面、未知の世界を目指す冒険心と希望があったであろう。
渡海の動機付けの問題以上に、これまでに島と島、島とサンゴ礁をつなぐ「海の道」は目には見えないが、オセアニア中に張り巡らされている。もちろん、ハイ ウェイにも似た道や、暗礁と高い波で進入禁止となる地点が無数にある。風、波、魚、海鳥、クジラ、流木、木の実など、「海の道」にはさまざまな事象がとも なう。昼間と夜間でも、海の様子は異なるし、太陽、月、星なども「海の道」をたどる上で重要な標識となった。オセアニア中に拡散したオーストロネシア語族 の人びとの拡散の歴史を考古学、人類学、言語学、民族生物学などを重要な方法として紐解くことは、「海の道」を明らかにすることにほかならない。この作業 は魅力あるテーマであり、今後も継承されることはまちがいない。

本書の構成
 本書は戦後のオセアニア研究に従事してきた執筆者から構成されている。その道標となり、本書を刊行する大きな動機付けとなったのは、ハワイのビショップ 博物館に所属し、長年、オセアニア考古学のパイオニア的存在として偉大な業績を残したタテオ・シノト、つまり篠遠喜彦氏(1924~2017)がこの世を 去られたことであった(篠遠がポリネシア考古学に残した足跡がいかに大きかったかは P. Kirch(2018)に詳しく紹介されている)。2019年4月29日、京都の梅棹忠夫邸で開催されたシンポジウムにおいて、最後に編者の一人である秋道が、「篠遠先生 に捧げる書を出したい」と宣言したことに端を発する。
 執筆者は30代の若手から70代を越える研究者まで幅広い。分野も考古学を中心に、海洋人類学、自然人類学、言語学、民族植物学、カヌー研究、世界文化 遺産写真家など多彩な広がりをもっている。
 本書は5章からなる。第1章はポリネシアへの拡散モデル、第2章はオセアニアにおける移住史とそのモデル、第3章は航海とカヌー、第4章はポリネシアの 文化複合とアジアとのつながり、第5章はオセアニアの文化遺産と考古学の貢献にわけて論を展開した。各章は論文とコラムをあわせて3~5篇から構成されて いる。引用・参考とした論文・単行本にはオセアニア研究であることを踏まえれば、日本語のみならず英米・ドイツ・フランス語の引用が数多く含まれており、 それらを集積したものは、現在におけるオセアニア研究を展望する最新情報となった。
研究の時間軸は旧石器時代からオセアニアへの人類拡散を経て、現代における文化遺産の保全活動にいたるまで数万年間を対象としている。地域としては台湾か ら東南アジア、オセアニア全域におよび、世界でもっとも広い範囲に拡散したオーストロネシア語族の研究にふさわしく広大である。以下、考古学的な研究の エッセンスについて触れ、つぎに周辺の人類学、言語学、文化遺産学などの重要な知見について紹介したい。
 本書においてもっとも提起したいのは、「海の道」をたどった人びとの生きざまについて時代を超えて探ることである。「海の道」を考古学資料のみで復元す るのは簡単ではないが、異分野の研究を融合して移動の背景も理解することで、「海の道」への複合的なアプローチが可能になることを示したかった。以下で は、章ごとにその内容を紹介してゆく。

考古学からみたオセアニアの「海の道」
 ポリネシアへの人類の拡散の歴史については、言語や神話などから探られた時期もあるが、実際に過去のポリネシア人が食べたり使ったりした残滓や道具類を 掘り出して研究する考古学の説得力は強い。ハワイで途中下船したままポリネシア考古学にとりつかれ、一生を捧げることになったのが篠遠喜彦であった。第1 章では、ポリネシアにおける考古学研究の歴史を篠遠の貢献と共に見て行く(後藤明)。1950年代のハワイ考古学は、地上のマラエなどの石造構造物が主要 な研究対照となっていたが、年代測定法を取り入れ、出土する貝製の釣り針の型式が時間とともに変化する様子を初めて明らかにしたのが篠遠であった(丸山清志)。また、K.エモリーと共に提唱したポリネシア全域への拡散モデルは、ながらく考古学以外のポリネシア研究者にも「オーソドックス・シナリオ」として 広く使用されてきた(野嶋洋子)。
 第2章では、篠遠以降の拡散モデルが紹介されている。まず、ポリネシア人の祖集団と考えられる集団の存在が、メラネシアから西ポリネシアにかけて分布し たラピタ土器が発掘されて明らかになるにつれ、ポリネシアに拡散するまでの動きが明らかになってきた(石村智)。しかし、発掘件数が増えるにつれ、大量の 年代測定値が報告され、拡散年代も古くなる傾向にあった。中には本当に人間活動に伴われた年代なのかが疑われるような年代も含まれるようになっていた。そ のため、1993年に、それまで報告されていたオセアニアの先史遺跡の年代全てを見直す研究が行われ(Spriggs and Anderson 1993)、人間の移住年代が大幅に新しくなった島もあった。また、それに伴って、篠遠らが提唱していた人間の移動モデルも変更された(印東道子)。他方、オセアニアの人 びとが通過した東南アジア島嶼部は、島に居住するのに重要な動植物類を入手した地域であり、更新世代から人間が海を越えて移動していた(小野林太郎)。コ ラムでは、ヴァヌアツで見つかった縄文土器について紹介されている。これは、フランス人考古学者J・ガランジェが出版したヴァヌアツでの発掘報告書に、数 点の縄文土器の写真が含まれていたことから、本当に縄文土器が出土するのかどうか、篠遠が行った調査の様子とその顛末が、発掘参加者によって紹介されてい る(藍野裕之)。

モノ・言語・知識からさぐる「海の道」
 考古学の遺物や遺跡と文化遺産としての保存など以外に、カヌー・漁具・栽培作物・家畜などのモノ、各地域の言語、海を越える知識としての航海術に関する 考察やアジアとのつながりを第3章と第4章で展開した。
 まず、復元されたダブルカヌー「ホクレア」によるハワイからタヒチへの復元航海の実態(後藤明)やオセアニアに広く分布するアウトリガーカヌーの構造や 機能についての詳細な分析を記述した(須藤健一)。カヌー、帆、櫂などの操船にちなむ語彙について比較言語学的な考察を加え(菊澤律子)、釣り針に関して は更新世のものから各地で多様に分化した様子がコラムで紹介されている(小野林太郎)
 オセアニアの人々がアジア起源であることは知られており(片山一道)、同じくアジア起源のブタ・ニワトリ・イヌなどの家畜とタロイモ・ヤムイモ・バナナ パンノキなどの栽培植物の語彙については、民族植物学と比較言語学での蓄積がある(Barrau 1958, 1961)。サツマイモは中南米起源であり、オセアニア世界にもたらされた経緯はYenによる3極説がある(Yen 1974)。最近の知見については秋道がまとめている(秋道 2018)。さらに、海岸部に生育する可食可能な野生種子(カンラン・モモタマナ・ククイ・タイヘイヨウグル ミ・サガリバナ・ゴバンノアシ)のオセアニア祖語などについても今後、比較研究を進める可能性を示唆した(秋道智彌)。植物のみならず、アジアから持ち込 まれた植物類のオセアニアにおける移住史の議論では、「高い島」と「低い島」における居住地の選択が重要とされてきた。水の利用可能性とともにイモ類の栽 培技術(風間計博)、さらにポリネシアにおける汽水域やタロイモ畑での蓄養池(ロコ・イア)技術の開発(秋道 2016)など、王権と儀礼・供物の供給な ど、考察すべき課題がまだまだある。これら、動植物に関する遺伝研究も進んでおり、単に存在の有無を追うだけでは見えなかった島嶼間のコンタクトの状況 を、動植物の移動という視点から見ることが可能になってきている(印東道子)。また、石斧と貝斧という同じ機能を持った道具をとりあげることによって、分布が重なる島の存在を社会的背景と結びつける意義も紹介された(山極海嗣)。

 第5章では、オセアニアの文化遺産とその復元活動を早くから行っていた篠遠の活動を振り返り(林徹)、オセアニアで登録された世界文化遺産や、現在登録 を目指している暫定的な登録遺産も紹介された(石村智)。ハワイにおける脱植民地運動にはビショップ博物館の考古学調査が深くかかわっており、ホクレア号 の復元や、篠遠がタヒチで発掘したダブルカヌーなども多様な形で運動に影響を与えた(大林順子)。ポリネシア文化の特徴の一つに、マラエとよばれる石を敷 き詰めた神聖な空間があるが、それらの復元に篠遠がかかわっていた例としてクック諸島のラロトンガ島(山口徹)と、タヒチで実際に復元にかかわった様子 (飯田裕子)などがコラムで紹介されている。

 なお、本書の出版時期は、折しも、新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延が日本で発生する直前に当たった。日本は島国であり、今では空路・航路 を通じて海外から多くのヒトが入国する。オセアニア世界でコロナ禍の状況はどうであったのか。2020年3月、フランスのパリに滞在していたタヒチ人の女 性が帰国後、陽性が判明したのが最初の例であるが、その後、感染の拡大はヨーロッパ、米国、ブラジル、インドなどとくらべてわずかである。コロナ禍の影響 で、オセアニアへの観光客や外来の訪問者がいち早く徹底的に制限されたこと、島であることにより外界の影響から海によって隔離されていることが幸いした。 ただし、新型コロナウイルスにかぎらず、オセアニア世界では外界から疫病がもたらされた歴史は移住初期の時代からあった。
 これらの問題は今後のオセアニア研究でもぜひとも取り組むべき研究課題である。秋道は『疫病と海』と題する書の編集にあたっており、2021年3月に刊 行予定である(秋道・角南 印刷中)。

文献
秋道智彌 2016. 『越境するコモンズ――資源共有の思想をまなぶ』臨川書店。
秋道智彌 2018. 「海のエスノネットワーク論と海民――異文化交流の担い手は誰か」小野林太郎・長津一史・印東道子編『海民の移動誌』昭和堂、38-65頁。
秋道智彌・角南篤編 (印刷中) 『疫病と海』(海とヒトの関係学4)西日本出版社。
印東道子 2017. 『島に住む人類――オセアニアの楽園創世記』臨川書店。

小山修三 1998. 「石器時代の海人――山立て航海と推測航海」秋道智彌編『海人の世界』同文舘、21-46頁。
篠遠喜彦・荒俣宏 1994. 『楽園考古学』平凡社。
Anderson, A., J. Chappell, M. Gagan and R. Grove 2006. “Prehistoric maritime migration in the Pacific islands: A hypothesis of ENSO forcing.” The Holocene 16(1): 1-6.
Barrau, J. 1958. Subsistence Agriculture in Melanesia. Bernice P. Bishop Museum Bulletin 219. Bernice P. Bishop Museum Press.
―――― 1961. Subsistence Agriculture in Polynesia and Micronesia. Bernice P. Bishop Museum Bulletin 223. Bernice P. Bishop Museum Press.
Kirch, P. 2018. “Yoshihiko  H. Sinoto (1924-2017) and his contributions to Polynesian archaeology.” Asian Perspectives 57(2): 325-336.
Spriggs, M., and A. Anderson. 1993. “Late colonization of East Polynesia.” Antiquity 67 (255): 200-217.
Yen, Douglas 1974. The Sweet Potato in Oceania: An Essay in Ethnobotany. Bernice P. Bishop Museum Bulletin 236. Bernice P. Bishop Museum Press.
                                  (編者)

【新刊紹介】
Okamura, Toru & Kai, Masumi (Eds.)
Indigenous Language Acquisition, Maintenance, and Loss
and Current Language Policies
(IGI Global US、2020年8月)

本書は、世界の危機言語の現状を、フィールドワークをもとに記述するものである。第I部は欧米およびアフリカ、第II部はオーストラリアおよびオセアニ ア、第III部はアジアの危機言語を対象とした。本稿では特に第II部の研究論文を中心に紹介したい。分析に関しては、言語学的・社会言語学的視座から、 当該言語社会の姿を描くことを試みた。
本書の構成は、以下のとおり3部12章である。

序論
第I部 Americas, Europe, and Africa
第1章    How the Perceived Language Status of Brunca Resource Allocation in Costa
Rica: Policy vs. Reality
第2章    Critical Language Pedagogy in Scotland: The Case of Gaelic Medium
Education
第3章    Language Endangerment in Africa
第Ⅱ部 Australia and the Pacific
第4章  Australian Aboriginal Languages: Their Decline and Revitalisation
第5章   Preserving the Nauruan Language and Pidgin English in Nauru
第6章  Acquisition and Maintenance of the Indigenous Chamorro Language in the
 Youngest Generation in Guam
  第7章  A Discourse Analytic Approach to Practices of Hawaiian Language
 Revitalization in the Mass Media: Style, Bivalency, and Metapragmatic
 Commentary
  第8章  Persons and Address Terms in Melanesia: A Contrastive Study
第Ⅲ部 Asia
第9章  Selective Language Maintenance in Multilingual Malaysia
第10章  Language Shift and Maintenance in Uttarakhand, a Hilly State of India
第11章  The Origin and History of the Extinct Contact-Induced Language, Matagi
第12章  Raising Awareness of Language Minorities in Japan: Teaching About the Ainu,
Okinawans, and Nikkei-jin

本書全体のキーワードは、「言語保持」、「言語衰退」、「言語接触」、「言語政策」、「言語復興」の五つである。
オセアニア地域を研究対象とした言語学の研究は多岐にわたるが、とりわけ言語の消滅および保持の研究は有意義なものと考える。この地域は多様な言語的世界 を形成している。これらの地域では、多くの在来言語が危機に瀕している。その一方で新たに誕生する言語もある。これらの言語が危機に瀕する要因を考察する ことが本書の核心部分である。同時にそれは地球規模的な課題であり、早急にその解決のためのモデルを構築する必要がある。そのためにはまず、オセアニア地 域における言語の衰退に関するメカニズムを解明し、それが世界の他の地域で話されている危機言語の保持にも貢献する理論か検討する必要がある。
オーストラリアおよびオセアニア島嶼地域における危機言語について概観しているのは第Ⅱ部(第4章、第5章、第6章、第7章、第8章)である。まず、オー ストラリアの危機言語について、著者は長年のフィールドワークを基に、その実態を述べ、特にオーストラリア原住民語の能格という文法現象を、言語類型論的 に考察し、その文法現象が世界の他の地域にも散見されるとしながらも、それは日本語にはない特性で、大変貴重だとする。能格型格組織とは、他動詞の目的語 と自動詞の主語が同じ格で示され、他方、他動詞の主語が別の格で示される文法現象をいう。このような特性を有する言語を、著者はオーストラリアばかりでな く世界の財産として位置づけるべきとする。そのための正書法は、ヨーロッパ的なものでは決して実態を反映しないので、著者自ら具体的な提案をしている。
次にナウル共和国で話されている、ナウル語およびピジン英語に関する論考を取り上げたい。著者は、居住環境が崩れなければ、どんなに社会で排他されよう が、言語は衰退しないと主張している。そして、居住環境が崩れる社会があるとすれば、そこには必ず、当該言語話者に対して、政治的・経済的・社会的・制度 的な圧力が過去に存在したとする。
三つ目に、グアム島のチャモロ語に言及したい。著者は近年、チャモロ語の話者が減少していることを歴史的・社会的背景に触れながら、その実態を述べ、特に 若い世代で顕著な傾向が見られるとした。582名分のアンケート調査資料を集め、その結果、80. 4% がチャモロ語を「理解する」と回答したものの、実際にチャモロ語を「とても上手に話す」と回答した者は4.5%に過ぎなかったと報告した。チャモロ語を母語として獲得した 者は2.6%、「定期的にチャモロ語を使用している」と回答した者が9.8%しかいないことを明らかにした。当該言語社会は、チャモロ語から英語への言語 シフトが進行していると結論づけた。
四つ目に、ハワイ語の例を紹介する。著者は、ハワイ語ラジオ番組から、10の抜粋のやりとりを分析することで、危機言語としてのハワイ語を再活性化しよう という共同体の姿を報告した。こうした価値観を共有・再確認する場として当該番組が社会的に機能するとともに、共同体の結束を維持・強化していたと結論づけた。
五つ目に、メラネシア地域の諸言語を取り上げる。著者は、ニューギニアおよびバヌアツの六つの言語を対象に、人称代名詞と呼びかけ表現の文法的・社会言語 学的特徴を調査している。特に親族関係語彙と呼びかけ表現および人称代名詞の用法とその動詞屈折を研究対象としている。社会的関係とその文法特性の間にい くつか規則があることを明らかにしている。一方、クレオール語ではこうした抽象性が単純化されているとした。
第I部(第1章、第2章、第3章)では、コスタリカのブランカ語、スコットランドのゲール語、アフリカの諸言語の現状が、第Ⅲ部(第9章、第10章、第 11章、第12章)では、マレーシア、インド、日本の現状が報告されている。このうち、日本国内に関しては、マタギ語、アイヌ語、沖縄語、日系ブラジル人 のことばに触れている。
言語の衰退には様々なファクターが存在することが上記の報告と分析からわかるが、言語が衰退する過程に関するモデル提示について、新たな可能性を示すもの であると、本書は結論付けた。
(岡村徹)

学会通信


新入会員
酒井萌乃(神戸大学大学院保健学研究科博士後期課程)
天野紗緒里(名古屋大学大学院人文学研究科博士後期課程)

所属変更
河野正治(東京都立大学人文社会学部)


寄贈図書
梅﨑昌裕・風間計博(編) 『オセアニアで学ぶ人類学』昭和堂、2020年12月。

*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。


寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp



ニューズレターNo.127から

2020年度日本オセアニア学会臨時総会の開催について

日本オセアニア学会会長 柄木田康之

2019年度の日本オセアニア学会第37回研究大会・総会は、新型コロナウイルスの拡大防止の観点から、中止といたしました。理事会・評議員会で審議い たしまして、それに代わってオンラインでの臨時総会開催を決定しました。会員の集合する対面式ではなく、以下の手順で行います。

・臨時総会の期日を7月20日から7月31日といたします。
・期日が始まりましたら、通常会員向けのメーリングリストにて、臨時総会関係資料をお送りいたします。
・あわせて、日本オセアニア学会のホームページにて臨時総会のための窓口を開設して、みなさまのご意見を受け付けいたします。
・特段のご意見がなかった場合は、承認とさせていただきます。
・ご意見が出た場合は、理事会でお諮りしたうえで必要があれば対応を通常会員向けメーリングリストで配信するか、どのように対応したのか議事録に記載いた します。
・臨時総会では、石川榮吉賞及び日本オセアニア学会賞の授与式は開催いたしません。賞状等は会長や理事が受賞者にお渡し、その様子を学会ホームページにて お知らせします。

今回は、新型コロナ対策の関係で通常とは異なる開催方法となっております。みなさまのご協力を賜りたく、お願い申し上げる次第であります。

石川榮吉賞について


1) 受賞者: 印東道子 会員(国立民族学博物館・名誉教授)

2) 推薦理由
 印東道子氏は、1970年代よりミクロネシア・ヤップ諸島を中心に考古学的な調査を開始した。そのなかでは、とくにヤップにおける土器研究への進展に寄 与した。1990年代からはミクロネシア・ファイス島での発掘により、離島に位置するサンゴ島でも2000年間におよぶ豊かな生業や、海を越えた活発な交 易・接触があったことを実証した。これは、人類史の解明に対する大きな成果として特筆できる。またオセアニア全域に関する人類史や考古学的研究の成果を紹 介する多くの研究書・一般書の編集・刊行を通じて、日本におけるオセアニア研究の発展と裾野を広げることに大きく貢献した。代表作には、日本語で公刊され た書籍に限定しても、単著として『オセアニア-暮らしの考古学』(朝日新聞社、2002年)、『島に住む人類-オセアニアの楽園創世記』(臨川書店、 2017年)、編著として『人類の移動誌』(臨川書店、2013年)など多数ある。
 氏の本学会での活動としては、2013年から2015年にかけて1期2年間会長を務めたほか、理事・評議員などの役職を長年にわたって歴任した。ことに 国内外のオセアニア関係の学術誌の編集に長期にわたり関わることで、日本のオセアニア研究を世界に発信するとともに、編集担当理事を編集長(1994年か ら1998年)及び編集委員として(1991年から2001年、2009年から2013年)、長年務めることで日本オセアニア学会の機関誌を国際的なもの に高めることに一方ならぬ貢献を行った。
 以上のように、オセアニア研究の振興に多大なる寄与を果たしてきたこと、くわえて、長年にわたり日本オセアニア学会の発展に貢献してきたことから、印東 氏を石川榮吉賞受賞者として推薦することを決定した。

*授与式及び授賞スピーチは、通例、日本オセアニア学会総会にて開催されますが、2020年度臨時総会は新型コロナ感染症の拡大防止の観点から対面式で行 われません。それに伴い、授与式及び授賞スピーチも行いません。賞状等につきましては、事務局より別途お渡しさせていただきます。その際の写真等は、おっ てホームページ等に掲載することを検討しております。

第19回日本オセアニア学会賞について


1) 受賞者: 河野正治 会員
対象著作: 『権威と礼節――現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』風響社、2019年

2) 選考理由
 河野正治著『権威と礼節:現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』(単著、単行本、風響社)は、ミクロネシア地域のポーンペイ島社会 における首長制の現在に関して、人類学的な調査にもとづいた記述と分析を展開する力作である。ポスト植民地時代を生きる島民たちが、伝統的権威体制と近代 国家体制の関係をいかに作りだすのか、首長国と近代国家の諸水準において身分階層秩序を生きる実践知をいかに形成しつつあるのかに関して、説得力のある議 論を提示することに成功している。このことは相互行為を中心にして厚みのある記述と考察が重ねられた成果であり、著者の入念な観察と思考の産物である。現 代オセアニアの民族誌として、人類学のみならず関連諸分野に広く紹介されるべき著作である。

第19回(2019年度)日本オセアニア学会賞選考委員会

*授与式は、通例、日本オセアニア学会総会にて開催されますが、2020年度臨時総会は新型コロナ感染症の拡大防止の観点から対面式で行われません。それ に伴い、授与式も行いません。賞状及び副賞につきましては、事務局より別途お渡しさせていただきます。その際の写真等は、おってホームページ等に掲載する ことを検討しております。


第20回日本オセアニア学会賞選考要項


2020年度日本オセアニア学会賞選考委員会

1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2019年1月1日から 2020年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。

2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。

3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mail アドレス)を明記するものとする。

4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名 を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、 出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ましいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が 必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。

5. 応募期間は2020年11月1日から2021年1月15日まで(必着)とする。

6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けるこ ととする。

(日本オセアニア学会事務局)
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館 
丹羽典生研究室  宛て
TEL  06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net

7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。

8. 2021年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。

<注 記>
1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。

日本オセアニア学会賞規定

本規定は臨時総会にて審議中です。同賞の規定につきましては、臨時総会の終了後(2020年8月1日以降)に学会ホームページをご参照ください。


2020年度の研究大会・総会及び地区例会の告知

日本オセアニア学会会長 柄木田康之

2020年度の研究大会・総会及び地区例会につきましては、テレビ会議を利用した形での開催を検討しております。研究大会・総会は東海大学を幹事校として 黒崎岳大会員のもと、地区例会は各地区担当の理事や幹事のもと準備を進めております。詳細につきましては決まり次第、ホームページやメーリングリストにて ご連絡いたします。


学会通信


新入会員
相沢友紀(広島大学大学院国際協力研究科博士課程後期)
片岡真輝(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
谷口ジョイ(静岡理工科大学情報学部)

所属変更
石森大知(法政大学国際文化学部)
紺屋あかり(明治学院大学国際学部)
長島怜央(平安女学院大学国際観光学部)
行木 敬(関西国際大学現代社会学部)
根岸 洋(国際教養大学国際教養学部)
橋爪太作(早稲田大学人間科学学術院)
藤枝絢子(京都精華大学人文学部)

*新入会員の連絡先についてはsecretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。
*ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、secretary[アットマーク]jsos.netにご連絡下さい。


寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp



ニューズレターNo.126から

2019年度日本オセアニア学会関東地区研究例会の報告

関東地区研究例会幹事 里見龍樹

2019年度の関東地区例会を、以下の通り東京医科大学にて開催した。

【日時】2020年1月5日(日) 14:00~17:30
【場所】東京医科大学西新宿キャンパス
【発表者】橋爪太作会員(東京大学)、佐本英規会員(広島大学)
【コメンテーター】浅井優一会員(東京農工大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)

【プログラム】
14:00~14:50 第1発表 橋爪太作会員
「土地と自己をめぐるコスモポリティクス:ソロモン諸島マライタ島北部における木材伐採の現場から」
14:50~15:20 コメンテーター2人によるコメント
15:20~15:40 質疑応答
15:50~16:40 第2発表 佐本英規会員
「歓待としての共住:ソロモン諸島マライタ島南部におけるポスト・マーシナ・ルール時代の集落をめぐって」
16:40~17:10 コメンテーター2人によるコメント
17:10~17:30 質疑応答

本年度の関東地区例会は、いずれもソロモン諸島マライタ島を調査地とする若手会員2名を発表者に迎えて開催した。
 橋爪太作会員は、マライタ島北部のファタレカ地域から、商業的森林伐採によって内陸部の土地が新たに居住可能な空間として開かれる中で、土地所有関係や 集団的アイデンティティの再定義がなされている状況を報告した。橋爪会員の報告はまた、しばしば「存在論的転回」と呼ばれる、「自然/文化」の境界をめぐ る近年の人類学的議論に対して民族誌的な応答を試みるものでもあった。
また佐本英規会員は、20世紀の歴史的展開の中で複数の親族集団が混在することになったマライタ島南部アレアレの集落における共住の様態とそこにともなう 社会的緊張について考察した。この報告は同時に、メラネシア社会における来訪者や他者性の主題について問題提起するものでもあった。
発表を受け、合計23名の参加者によって活発な討論が繰り広げられ、例会は盛況のうちに終わった。

2019年度日本オセアニア学会関西地区研究例会の報告


関西地区研究例会幹事 深川宏樹

 2019年度の関西地区研究例会を、以下のとおり京都大学にて開催した。

【日時】2020年1月11日(土)
【会場】京都大学 吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1207教室
【プログラム】
14:30~15:00 発表者:前川真裕子(京都産業大学)
「土着の自然に関わること、植民地主義を考えること:ヨーロッパ系オーストラリア人たちの事例から」
15:00~15:15 コメンテーター:風間計博(京都大学)
15:15~16:00 全体での討論
16:15~17:15 発表者:深川宏樹(兵庫県立大学)
「死に至る言葉――ニューギニア高地の伝記的な生における諸物の因果と「言語身体」」
17:15~17:30 コメンテーター:藤井真一
(日本学術振興会特別研究員PD/国立民族学博物館)
17:30~18:15 全体での討論

 本年度の関西地区例会は、個人発表2名、それにたいするコメンテーター2名で開催した。前川真裕子会員の個人発表では、現在のオーストラリアで、ヨー ロッパ系オーストラリア人が「ネイティブ・プランツ」と呼称する植物を養苗・栽培する実践について説明がなされたうえで、いわゆる移民国家において、マ ジョリティにあたるホワイト・オーストラリアンがいかに国土の「土着の自然」との関係を結び直し、自らのナショナル・アイデンティティを(再)構築しよう と試みているかが論じられた。前川会員の発表にたいして風間計博氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がおこなわれた。つぎに深川宏樹会員の個 人発表では、パプアニューギニア高地において血縁者を死に至らしめるとされる、「死に際の言葉」の呪詛の事例が取り上げられ、人類学のサブスタンス研究の 理論枠組みを援用しながら、「言葉の物質性」という主題についてとりわけ在地の人間観・身体観との関連から議論がなされたうえで、ニューギニア高地の呪詛 の言葉をその身体的効果と諸個人の「伝記的な生」から捉える分析視角から、高地民たちが展開する社会生活と身体と言語の関係について民族誌的に考察され た。深川会員の発表にたいして藤井真一氏からのコメントがなされ、引き続き全体での討論がおこなわれた。合計12名の参加者のもと、本例会は盛会のうちに 終わった。

【新刊紹介】

石森大知・丹羽典生(編)『太平洋諸島の歴史を知るための60章――日本とのかかわり』(明石書店、2019年12月31日)
本書は、太平洋という海洋世界にある国と地域の歴史を扱うものである。とくに本書の副題にあるように、「日本とのかかわり」という視点から太平洋 諸島の歴史を知ることを目的としている。日本とのかかわりに軸足を置くとはいえ、本書の主題は太平洋の島々にある。従って、これまで日本(人)が太平 洋で行ってきたことを記述するだけではなく、そこで太平洋の人びとが果たしてきた役割を可能な限り引き出し、個々の歴史的な特色を活かせるよう工夫を 凝らしたつもりである。
日本とのかかわりを焦点に据えるに至った経緯について、まず指摘できるのは、日本人の一般読者に太平洋をより身近に感じてもらうためである。いうまで もなく日本も太平洋に浮かぶ島国の1つであり、太平洋の国や地域のなかには日本と歴史的に関係が深いところも多い。海浜型リゾートがその大部分を占め てきたが、観光地として日本人に比較的身近な存在となっている場所もある。実際、(本書がシリーズとして属する)明石書店のエリア・スタディーズにお いて太平洋に関する書籍は「ミクロネシア」「南太平洋」「ハワイ」「グァム・サイパン・マリアナ諸島」「ニュージーランド」など多数刊行されている が、それらのなかでも太平洋と日本とのつながりに触れた章は好評であったという。そこで太平洋の島々と日本の関係の歴史について包括的に扱う手軽な読 み物として、明石書店の編集者とも議論を重ねたうえで、本書の企画が持ち上がった。
本書は60の章を束ねる5つの部から構成されるが、各部はそれぞれ太平洋と日本とのかかわりを踏まえた時代区分から成る編年体の形式をとっている。各 部の構成は以下のとおりであり、本書全体を通して太平洋の通時的かつ包括的な理解が進むような構成となっている。なお、植民地時代とは、日本によるミ クロネシア統治の時期を念頭に置いて差し当たりの時代区分としている。

第Ⅰ部 植民地時代以前
第Ⅱ部 植民地時代を中心に
第Ⅲ部 太平洋戦争
第Ⅳ部 戦争の傷跡を乗り越えて
第Ⅴ部 新たな関係性の構築

こうして本書全体の構成をみてみると、植民地支配および太平洋戦争とかかわるテーマが多くを占めることにあらためて気がつく。もちろん本書の構成は編 者の発案によるものではあるが、やはり日本とのかかわりといえば帝国主義的拡大という側面がぬぐい難くあったことを示唆していよう。本書では、戦争の テーマを扱うにしても、太平洋の人びとが戦争をどのようにみていたのかという彼らの視点を取り入れて描こうとしている。いわゆる戦記物を期待されてい る読者には肩透かしとなるかもしれないが、戦争の舞台となった地域の人びとの視点にも配慮する近年の太平洋における戦争の研究の動向を紹介できるいい 機会ではないだろうかとも考えている。
一方、戦後の太平洋と日本の関係となると、その動向を1つにまとめることは難しい。第Ⅳ部「戦争の傷跡を乗り越えて」で具体的に紹介するように、戦争 観光(戦争遺物観光から戦争博物館まで)、慰霊活動、遺骨収集など、植民地支配や戦争に関するものが現在でもやはり見受けられる。とはいえ、太平洋と 日本の歴史はそこに留まるものではないだろう。第Ⅴ部「新たな関係性の構築」でまとめたように、政治、経済、文化のさまざまな局面において、そうした 過去の関係性に縛られるだけでない新たな交流や協力の関係を深めてきた。第Ⅴ部では、やや雑多ながら太平洋と日本がともに構築しようとするそうした新 しい関係について取り上げている。このような交流の積み重ねが、既存のイメージにとらわれない、新しい太平洋像の創造にもつながると思われるからであ る。
本書は、太平洋地域を扱う一般書である。ただし「太平洋」を主眼としながら日本を振り返るという、太平洋地域を重層的な意味の合わさる場として捉えて いる点がユニークといえるかもしれない。執筆者には数多くの本学会会員にも寄稿していただいているが、こうした点を積極的に取り上げていただいた。そ の結果、内容はバリエーションに富んだものとなり、オセアニア研究者の集まりである本学会会員にとっても何らかの新しい「発見」があることを期待して いる。加えて、もとより一般読者を想定する本書が太平洋諸島の歴史や文化に対する興味を喚起し、日本にとっての隣人、それも同じ島国である太平洋の国 や地域をより身近に感じるきっかけになれば望外の喜びである。
(この文章は、同書「はじめに」から抜粋・再構成のうえ、一部加筆しています。)

(編者)

学会通信


日本オセアニア学会第37回研究大会・総会の中止について


日本オセアニア学会会長
柄木田康之

標記のことについて、2月25日付けで内閣に設置されている新型コロナウイルス感染症対策本部から、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針が公表されま した。それを受け、日本オセアニア学会理事会においては、研究大会事務局とも協議の上、感染拡大防止の観点から、第37回研究大会・総会は中止とする方針 を決定いたしました。
 なお、総会に関しましては、時期を見て臨時総会の形で開催することを検討しております。詳細が決まりましたら、おってご連絡させていただきます。


新入会員

  小宮和泉(同志社大学グローバル地域文化学部)
      大島崇彰(首都大学東京大学院人文科学研究科社会人類学教室博士前期課程)

  *新入会員の連絡先についてはsecretary[ アットマーク ]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。

所属変更

  行木 敬 (関西国際大学現代社会学部)
  *ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、 secretary[ アットマーク ]jsos.netにご連絡下さい 。


寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp



ニューズレターNo.125から

以下の「第37回日本オセアニア学会研究大会・総会のお知らせ」はNo.125発行時点のものであり、2020/2/27にお知らせしたように中止の判 断がなされました。(2020/3/5追記)

第37回日本オセアニア学会研究大会・総会のお知らせ

第37回研究大会・総会事務局 深田淳太郎

第37回日本オセアニア学会研究大会・総会を下記の要領で開催いたします。会員の皆様の多数のご参加をお待ちしております。参加および発表エントリーにつ きましては、学会ホームページの参加申し込みフォーム(https://meeting.jsos.net/apply.html)をご利用の上、 2020年 1月31日(金)までにお知らせください。

◆日時
2020 年 3 月 18日(水)14:00 〜 19日(木)12:00 (予定)
(理事会 18日(水)11:00〜12:00、評議員会 18日(水)12:00〜13:00)
*一般参加者の方は 18日(水)12:30 より受付を開始いたします。

◆会場
鳥羽温泉郷 戸田屋
〒517-0011 三重県鳥羽市鳥羽1丁目24-26
TEL:0599-25-2500(代表)
Website: https://www.todaya.co.jp/

◆交通
◇自動車でお越しの場合(ホテルに無料駐車場があります)
伊勢自動車道「伊勢IC」から、伊勢二見鳥羽ライン(無料)を経て鳥羽市街

◇電車でお越しの場合
名古屋から鳥羽駅まで近鉄特急で約90分、JR快速みえで約100分
大阪から鳥羽駅まで近鉄特急で約120分
京都から鳥羽駅まで近鉄特急で約140分
鳥羽駅から会場までは徒歩3分

詳細はホテルウェブサイトよりご確認ください(https://www.todaya.co.jp/access/)
 
◆大会参加費
◇有給者(定年等の退職者及び学術振興会特別研究員等も含む)
19,000円(参加費・懇親会費・宿泊費込)

◇無給者(大学院生、学生等)
12,000 円(参加費・懇親会費・宿泊費込)

・大会のみ参加の場合の参加費は有給者6,000円、無給者4,000円となります。懇親会参加費や宿泊費は含まれません。
・大会参加費は当日に会場受付で徴収いたします。
・領収書を大会参加費と宿泊費と分けて発行する必要がある方は、その旨を参加申込フォームでお知らせください。
・申込期限を過ぎた場合、宿の手配ができない可能性があること、また、直前のキャンセルはキャンセル料を徴収することを予めご了承ください。
・宿泊は和室を複数人で相部屋使用していただく予定です。

◆参加・発表申し込み
研究大会に参加される方は、出張依頼書の有無、研究発表の可否、発表される場合には「発表題目」と「使用機器」について参加申込フォームにご記入くださ い。また、フォームをご利用いただけない場合は、ご氏名と連絡先を明記の上、メールで必要事項を大会・総会事務局にお知らせください。発表時間は演題数に もよりますが、質疑応答を入れて 20〜25 分程度を予定しています。


第37回研究大会・総会事務局
三重大学人文学部 深田淳太郎
〒514-8507 三重県津市栗真町屋町1577

第19回日本オセアニア学会賞選考要項

2019年度日本オセアニア学会賞選考委員会

  1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、 2018年1月1日から2019年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者 のものに限定する。
  2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
  3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、 FAX番号、E-mailアドレス)を明記するものとする。
  4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対 象となる著書または論文名を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書の タイトル、編者名)、出版社、出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ま しいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
  5. 応募期間は2019年11月1日から2020年1月15日まで(必着)とする。
  6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、 郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けることとする。

    (日本オセアニア学会事務局)
    〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
    丹羽典生研究室 宛て
    TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
    E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net

  7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
  8. 2020年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。

<注 記>

  1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
  2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
  3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。

日本オセアニア学会賞規定

第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満 の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状・報奨金)
受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。

2019年度日本オセアニア学会関東地区研究例会のお知らせ

関東地区研究例会幹事 里見龍樹

今年度の関東地区研究例会では、ソロモン諸島マライタ島を調査地とする若手研究者、橋爪太作会員と佐本英規会員をお迎えし、お二人のご研究の最新の展開に ついてお話しいただきます。
下記の日程で開催いたしますので、万障お繰り合わせの上、ご参集くださいますようお願い申し上げます。

日時:2020年1月5日(日) 14:00~17:30
場所:東京医科大学西新宿キャンパス(東京医科大学病院と同じ敷地)
教育研究棟(自主自学館)3F会議室B
最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線「西新宿駅」より徒歩3分

発表者:橋爪太作会員(東京大学)、佐本英規会員(広島大学)
コメンテーター:浅井優一会員(東京農工大学)、里見龍樹会員(早稲田大学)

プログラム
14:00~14:50 第1発表 橋爪太作会員
「土地と自己をめぐるコスモポリティクス:ソロモン諸島マライタ島北部における木材伐採の現場から」(仮題)
14:50~15:20 コメンテーター2人によるコメント
15:20~15:40 質疑応答

休憩(10分)

15:50~16:40 第2発表 佐本英規会員
「歓待としての共住:ソロモン諸島マライタ島南部におけるポスト・マーシナ・ルール時代の集落をめぐって」(仮題)
16:40~17:10 コメンテーター2人によるコメント
17:10~17:30 質疑応答

※例会終了後、懇親会を行います。

問い合わせ先:里見龍樹

2019年度日本オセアニア学会関西地区研究例会のお知らせ

関西地区研究例会幹事 深川宏樹

2019年度の関西地区例会を以下のとおり開催いたします。
どうぞみなさまお誘い合わせのうえ、ご参加いただけますようよろしくお願いいたします。
 
◆日時:2020年1月11日(土)14:00~18:15
◆会場:京都大学 吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1207教室
 
◆プログラム
【発表1】
14:00~15:00 発表者:前川真裕子(京都産業大学)
「土着の自然に関わること、植民地主義を考えること―ヨーロッパ系オーストラリア人たちの事例から(仮)」
15:00~15:15 コメンテーター:風間計博(京都大学)
15:15~16:00 全体での討論
 
【発表2】
16:15~17:15 発表者:深川宏樹(兵庫県立大学)
「死に至る言葉―ニューギニア高地の伝記的な生における諸物の因果と「言語身体」」
17:15~17:30 コメンテーター:藤井真一
(日本学術振興会特別研究員PD/国立民族学博物館)
17:30~18:15 全体での討論
 
◆研究会終了後、懇親会を開催します。こちらもぜひご参加ください。
 
◆問い合わせ先:深川宏樹

【新刊紹介】

四條真也『ハワイアン・プライド――今を生きるハワイ人の民族誌』(教友社、2019年8月)
本書は、オアフ島西岸ワイアナエ地域における先住ハワイ人専用の居住区「ハワイアン・ホームステッド」と、その周辺地域における先住ハワイ人社会 の動態を、フィールドワークをもとに記述するものである。分析に関しては、当該社会を語るうえで重要である集団的感情としての「エスニック・プライ ド」と、民族を規定する本質的要素としてハワイに移入された「血」という、2つの視点を用い、当該社会の姿を描くことを試みた。
本書の構成は、以下のとおり5部12章である。

第I部 序論
第1章  問題の所在
第2章  調査地概要
第Ⅱ部 伝統的社会システム
第3章  伝統社会-神話とカプ
第4章   土地の帰属-クック渡来以前からハワイ共和国時代まで
第Ⅲ部 先住ハワイ人社会と「血」
第5章  ハワイアン・ホームステッド-血の証明
第6章   ハワイアン・ホームステッドが生む格差と貧困  
第7章   伝統的慣習の現代性-ハワイの養子縁組ハーナイの現場から
第Ⅳ部 エスニック・プライドの諸相
第8章  「タウン」と「カントリー」-先住ハワイ社会の二重構造 
第9章  先住ハワイ人社会における男性性の創造-フラの現場から
第10章  ワイアナエ地区とイルカツアー-海とワイアナエと観光
第11章  地域と生きる-エスニック・プライドからコミュニティ・プライドへ
第Ⅴ部 結論 -先住ハワイ人社会とプライド

ハワイアン・ホームステッドとは、ハワイの西洋化が本格的になった19世紀以降、減少傾向にあった先住ハワイ人の人口回復と、生活環境を改善するた め、1920年代から設置が始まった先住ハワイ人専用の住宅区画である。しかし、この住宅区画には、先住ハワイ人なら誰でも住めるわけではなく、入居 希望者(世帯の代表者)は、「純粋な」先住ハワイ人の血を50%以上受け継いでいることを証明する必要がある。近年、先住ハワイ社会では高い「血の割 合」の保有者が減少する傾向にあるが、ハワイアン・ホームステッドに入居にともなう経済的メリット(例えば、年間1ドルの借地権や入居後数年の固定資 産税免除、割安の建売住宅価格など)を求め、今でも入居申し込みが後を絶たない。 
序論部(第1章、第2章)では、まず本書の基軸である「エスニック・プライド」の概念と「血」の概念について、それぞれの学術的背景を整理した。先住 ハワイ社会における「エスニック・プライド」に関しては、60年代の公民権運動後にアメリカ本土で広がった「エスニック・プライド運動」が、その淵源 であると位置づけた。アメリカ国内の民族的マイノリティが、国家による文化的承認を得ることを目的に展開したエスニック・プライド運動は、70年代に なると、ハワイにおける先住ハワイ人による主権回復、および伝統復古の運動として拡散することになる。エスニック・プライドの芽生えを機に、先住ハワ イ社会において、それまで否定的感情を土台としていた伝統文化が、肯定的感情を伴い想起され得る概念に置き換わるという、一つのパラダイム・シフトが 起ったと言える。
次に、現代ハワイ社会の「血」をめぐる状況について、西洋から移入された「系譜において血を重視する」考え方は、伝統的なハワイ社会の形を変える切っ 掛けとなった。そもそも、関係性を重視すること(例えば、養育関係で規定されるオヤコ関係など)で親族体系が成り立っていた伝統的ハワイ社会であった が、「血」を重視する親族観の導入により、先住ハワイ人の親族システムは、制度上、新たな形式に作り変えられることになる。 
第Ⅱ部(第3章、第4章)では、伝統社会における社会システムについて概観した。まず、伝統的ハワイ社会について、神話と伝統的社会体系(カプ)を起 点に、現代社会との関わりについて一つの見解を提示することを試みた。現代の先住ハワイ人社会と神話との関係については、70年代以降のハワイにおけ るエスニック・プライド運動の中でも、神話が象徴的に借用され求心的な役割を果たすなど、伝統社会を理解するための重要な要素であると言える。
また、伝統社会においては、カプと呼ばれる社会制度が重視された。男女共食の禁止など、生活全般に及ぶ様々な禁忌を規定したカプは、政治体系だけでは なく、系譜における神聖性(特に首長階級)を維持するための要素としても作用していた。しかし、宗教体系でもあったカプは、キリスト教の普及に伴い淘 汰され、現代のハワイ社会ではキリスト教が新たな宗教体系として広まった。
次に、土地の所有に関して、伝統制度においては、土地は首長によって統治されていた。しかし、西洋化が進み土地の個人所有という概念が持ち込まれる と、ハワイ王国も土地の私有化を認めるよう政策を転換せざるを得ない状況となる。これにより、多くの土地が白人の手に渡り、土地を失った先住ハワイ人 は都市部に流入することになる。
第Ⅲ部(第5章、第6章、第7章)では、現代のハワイアン・ホームステッドとその周辺における貧困問題など社会経済的問題と、伝統的概念の相関につい て、インタビュー資料を中心に考察を試みた。とくに、「血」の概念について、従来の研究では「血の割合」によってハワイ人社会が二分される状況が批判 的に論じられてきた。例えばハワイ人社会における貧困の要因として、血の割合による制度的格差を指摘する議論が注目される状況がある。こうした議論に 対して、著者が実施したインタビューからは、先住ハワイ社会のなかで、ホームステッドに入居するためにハワイ人の「血」を積極的に証明し、経済的安定 を志向する状況があることが明らかになった。 
こうして「血」の概念は、現代の先住ハワイ人社会に(肯定的にせよ否定的にせよ)定着したが、一方で、「血」を優先しない伝統的親族概念も、日常生活 のなかで維持されてきた状況にも本書では注目をした。ハーナイと呼ばれる伝統的な養取慣行が広く行われてきた先住ハワイ人社会では、今でも養子制度を ハーナイと呼び、「血」に規定されない伝統的な親族観念を体現する行為として位置づけられている。
第Ⅳ部(第8章、第9章、第10章、第11章)では、先住ハワイ人社会の、集団における肯定的感情としてのプライドの諸相を、社会的および文化的側面 に注目し、記述することを試みた。とくに、フラについては、西洋との接触以降、それまで中心的役割を果たしていた男性に代わり、女性によるエンターテ イメントとしての「イメージ」が普及した。しかし、ハワイで伝統文化への意識が高まりはじめる70年代以降は、男性によるフラの現代的文脈における再 興が試みられている。
さらに、ハワイにおける伝統文化や伝統的価値観を肯定的にとらえる感情「プライド」は、先住ハワイ人エスニシティの枠組みを超え、多文化・多民族的に 共有され得るものでもあると、本書では主張した。例えば、調査地域で実施されている観光用イルカ見学ツアーを対象に行った参与観察では、先住文化がツ アーの理念として肯定的に表象される。近年、観光活動が生態系に悪影響を与えているとする批判があるなかで、ある先住ハワイ人船長の取り組みは、イル カの「心理」を推測し、自然との調和を意識し、かつイルカと共に作業することで、環境への影響を最小限にとどめようとするものである。こうした、伝統 的ハワイ文化における肯定的感情を、観光客が共有する状況を、参与観察で確認することができた。さらに、調査をおこなったワイアナエ地区にある農園で は、自然との調和や助け合いといった伝統的な先住ハワイ文化に基づく価値観を活動の理念としつつも、多様な民族背景を持つ地域住民が活動に参加するこ とで、地域の紐帯を強めまた地域が抱える社会問題に取り組む機会を提供している。
ハワイアン・ホームステッドと、その周辺地域における参与観察から明らかになった先住ハワイ人のエスニック・プライドとは、民族の枠にとどまらず、多 様なエスニシティを超越する、包括的で柔軟な集団の枠組みの可能性を示すものであると、本書は結論付けた。
(著者)

学会通信


新入会員

  中野真備(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  *新入会員の連絡先についてはsecretary[ アットマーク ]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。

所属変更

  佐本英規(広島大学大学院総合科学研究科)
  *ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、 secretary[ アットマーク ]jsos.netにご連絡下さい 。

寄贈図書

  片山一道 『ポリネシア海道記――不思議をめぐる人類学の旅』臨川書店、2019年

 McGuire, Kelly R., Hildebrandt, William R., Young, D. Craig, Colligan, Kaely, Harold, Laura, At the vanishing point : environment and prehistoric land use in the Black Rock Desert. (Anthropological papers of the American Museum of Natural History, no.103)


寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp


ニューズレターNo.124から

第36回総会の報告

2019 年 3 月 25 日(月)、第 36 回日本オセアニア学会会場(首都大学東京南大沢キャンパス)において、同学会総会が開催されました。議事は、以下の通りです。

審議事項

1.2018年度決算
・2018 年度決算(2018 年 3 月 1 日~2019 年 2 月 29 日)について、倉田誠会計担当理事より報告があり、承認されました。
・補助金に関して、大会開催後に沖縄コンベンション・ビューローから学会に対して60,000 円の補助金(コンベンション貸切バス支援事業)があり、収入に計上されている旨が説明された。
・支出の部に関して、おおよそ例年通りであるが、PCO のページ数の増大に伴い若干の予算超過した旨説明された。
・昨年度は 40 周年記念事業として開催されたため研究大会の規模が大きくなり、研究大会の収支に 31,414 円の不足が発生した。そのため、沖縄コンベンション・ビューローから学会への補助金 60,000 円に加え、学会から不足分 31,414 円を補助し、研究大会補助として 91,414 を支出した。
・会計監査の柄木田康之会員と古澤拓郎会員により適正に処理されていることが確認された。
2.2018年度事業報告
下記の事業報告が審議され、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.34 の刊行(111pp.:論文 3 本、通信3本)
・NEWS LETTER no.121、122、123 の刊行(論文 1 本、報告 3 本、新刊紹介 7 本)
・研究例会の実施
   関東地区第 1 回:2018 年 11 月 25 日 お茶の水女子大学 発表 1 本
       第 2 回:2019 年 1 月 5 日 東京医科大学 発表 2 本
   関西地区 2018 年 1 月 20 日 同志社大学 発表 2 本
・第 36 回研究大会・総会の実施
 2019 年 3 月 25-26 日 首都大学東京 南大沢キャンパス(大会長:深山直子会員)・JCASA 等の活動
・石川栄吉賞の選考(対象者なし)
・第 18 回日本オセアニア学会賞の選考(該当作なし)
・評議員選挙の実施
3.2019年度事業計画
下記の事業計画が審議の結果、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.35 の刊行
・NEWS LETTER no.124、125、126 の刊行
・関西地区・関東地区研究例会の実施
・第 37 回研究大会・総会の実施
・JCASA 等の活動
・石川栄吉賞の選考
・第 19 回日本オセアニア学会賞の募集
4.2019年度予算案
2019 年度予算(2019 年 3 月 1 日~2020 年 2 月 29 日)について、倉田誠会計担当理
事より説明があり、承認された。
5. その他
  特に無し

報告事項


1.第 18 回日本オセアニア学会賞について、今年度は該当作なしという結果が出た旨報告された。学会賞選考委員会からの報告は、以下、別記事として掲載されております。
2.山本真鳥会長から今後会長が 1 期(2 年)、事務局が 2 期(4 年)で運営されていく可能性が高いことを考慮して、そうしたなかにおいても事務局の業務をより持続可能な形で継続していくために、2019 年度から会長補佐の設置することが説明された。当該の役職に具体的な業務を割り振ることはないが、メール審議等に陪席することで、長期的には事務局がより円滑に機能するこ とが期待されている。オセアニア学会の多様な会員の構成を念頭に置いて、会長と会長補佐のいずれかがそれぞれ文系分野・理系分野から選ばれることが望まし いことが確認された。理事に選出された会員から会長補佐を選出する際には役職に「会長補佐」を付加すること、評議員外の会員から選出する際には「幹事(会 長補佐)」とすると想定されている。またこの制度を設置するにあたり、会則の変更はさしあたり必要ないことが確認された。
3.PCO 掲載原稿を書籍等へ転載することを念頭に置いて、執筆要綱の文言を一部変更することについて報告された。
4.PCO の海外送付先の取り扱いについて、以下の説明が行われた。
    海外送付先(研究機関 32、個人 15)からの会費納入状況が極めて悪い。

第18回日本オセアニア学会賞について

こちらをご覧ください。

第19回日本オセアニア学会賞選考要項

2019年度日本オセアニア学会賞選考委員会

  1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、 2018年1月1日から2019年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者 のものに限定する。
  2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
  3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、 FAX番号、E-mailアドレス)を明記するものとする。
  4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対 象となる著書または論文名を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書の タイトル、編者名)、出版社、出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ま しいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
  5. 応募期間は2019年11月1日から2020年1月15日まで(必着)とする。
  6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、 郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けることとする。

    (日本オセアニア学会事務局)
    〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
    丹羽典生研究室 宛て
    TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
    E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net

  7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
  8. 2020年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。

<注 記>

  1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
  2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
  3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。

日本オセアニア学会賞規定

第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満 の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状・報奨金)
受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。

【新刊紹介】

松島泰勝『琉球 奪われた骨――遺骨に刻まれた植民地主義』(岩波書店、2018年10月)
 本書は、京都大学に対する琉球遺骨返還訴訟の原告団団長である松島泰勝が琉球人への遺骨に関する学知と植民地主義による暴力を問うものである。 戦前に起きた清野謙次ら研究者による遺骨の盗掘から話が始まるものの、本書の射程は現在の私たちにも及んでいる。そして、著者は「あとがき」で、京都 大学や本書で実名をあげている研究者、他の研究機関の研究者、形質人類学者からの意見や反論を待ちたいとし、閉ざされた扉を開ける鍵としての役割を、 本書が担ってくれることを希望すると述べる。
本書の構成は、以下である。

はじめに
序  章 帝国日本の骨-琉球、台湾、アイヌコタン
第一章 盗掘された琉球人遺骨-京都帝国大学の「犯罪」
第二章 学知の植民地主義-琉球人遺骨と大学・博物館の問題
第三章 アメリカと大英帝国旧植民地から-世界の先住民族による遺骨返還運動
第四章 アイヌの骨-学問の暴力への抵抗第五章 自己決定権としての遺骨返還
終  章 生死を超えた植民地支配あとがき

序章では、大日本帝国の帝国主義を背景に、清野謙次、金関丈夫、七三一部隊の石井四郎、鳥居龍蔵、足立文太郎等によってアイヌモシリ、琉球、台湾、 「満州」、中国、旧南洋群島等に住む人々が研究材料として扱われたことについてその非人道性や差別意識も含め詳細に実態を記し、批判する。
第一章では、第一尚氏時代の北山監守時代の貴族の墓の可能性が高い百按司墓(モモジャ、またはムムンジャナ)の遺骨を含む琉球人の遺骨の盗掘の状況が 明らかにされる。金関は警察、教育や行政機関の許可を得るものの、現地住民の同意を得てはおらず、遺骨を盗んだのだと批判する。そのような盗骨は帝国 大学の権威のもと行われ、当事者の人権や気持ちよりも「研究成果」を優先する学知による植民地主義だったと指弾する。金関が手に入れた百按司の遺骨 26 体分が京都大学に、33 体が台湾大学に保管されていると述べる。
第二章では、京都大学の遺骨実見を希望する著者への京都大学の対応について詳しく記し、それは植民地主義を絵に描いたような冷酷なものだと批判する。 続いて、沖縄島南部で見つかった港川人や石垣島東部で発掘された白保竿根田原洞穴人が琉球人ではなく、日本人の祖先としてメディアや博物館等で語られ る現状を問題視する。またその分析では遺骨の粉砕が行われ、祖先として供養したい琉球人の気持ちより研究が優先されていると指摘する。
第三章では、植民地主義のもとボアズ等人類学者によって先住民族の遺骨盗掘が行われたことが批判される。そして返還によって人類の歴史が研究できなく なるという遺骨返還に反対する人々の考えに対し、先住民族からすれば遺骨の収奪によって彼らの歴史が破壊されたと反論する。また、アメリカ、オースト ラリア、ニュージーランド、イギリスにおける先住民の遺骨返還が先住民の尊厳の保障とともに進められていることが紹介され、日本政府や京都大学の植民 地主義的対応を問題視する。遺骨返還運動は琉球人独立運動と連携しており、琉球人は国連で先住民族と認められており、先住民族の遺骨返還は国際法でも 保障されるようになったと主張する。
第四章では、アイヌの遺骨が盗掘された事実を指摘し、アイヌが北海道大学に対して行ってきた遺骨返還運動や、そこでも大学による冷酷な対応やアイヌの 尊厳を蔑ろにした実態があったことが語られる。アイヌの起源や成立を解き明かすことがアイヌの先住民族としての位置づけを強固にするという国立科学博 物館の篠田謙一の主張に対して、先住民族とは近代国家成立のなかで植民地支配をうけ、それが現在も続いている地域で生活している人々を指すのであって 研究成果によって確定するものではないと反論する。そして研究が行われないと先住民としての立場が否定されるとの主張は「学知による脅し」だと批判す る。加えて、「祭祀継承者」のみに返還する政府のアイヌ遺骨返還方針は、日本人の家制度に基づくもので新たな同化政策だと断じる。
第五章では、琉球を日本の一部とみなす「日琉同祖論」を論証しようとする形質人類学的研究が批判され、琉球は独自に琉球国という国を経営し、日本とは 異なる歴史を歩み、文化を築いてきたと主張する。だが、港川人は日本の研究者によって日本人の祖先とされ、さらにはその遺骨の沖縄への返還でも研究者 の意向で条件が付される経緯を問題視する。「遺骨を盗んだものが、返還するにあたり条件をつける傲慢さ」があり、研究者が絶対的な所有権をなぜ主張で きるのかと疑問を呈する。続いて琉球人遺骨返還では日琉同祖論が最大の障害となるとして、伊波普猶の思想から掘り起こし、現在の琉球での「琉球人は先 住民族ではない」という主張(豊見城市議会や石垣市議会の意見書や当時の沖縄県選出の衆議院議員宮崎政久の衆議院内閣委員会での質問等)にみる事実誤 認や間違いを指摘する。最後に研究者は人骨として研究対象とみなすが、琉球人にとっては人骨ではなく、遺骨として供養する信仰の対象だとする。
終章では、琉球人にとって骨は「骨神(フニシン)」と言われ、神が憑依していると信じられてきたが、研究者は遺骨として扱ってはおらず、そこに大きな 怒りが生まれるのだと述べる。琉球人を先住民族と認めてこなかった日本政府を問題視し、遺骨返還に対する京都大学の態度には、「絶対的な所有意識」や 研究者の琉球人の信仰等への敬意の欠如、琉球人を対話可能な対等な人間として扱わない琉球人差別があると批判する。最後に琉球人遺骨は、琉球人の自己 決定権、遺骨返還と再風葬という先住民族の権利、信教の自由という人権、アイデンティティの確立、そして琉球独立にとって大きな意味を有することに なったと述べる。
評者は台湾を研究しているだけに金関丈夫は知っていた。だが、どのように調査をしていたかは知らず、自分の不勉強さを痛感した。また、大学院時代、調 査被害や研究第一主義の問題を何度も聞かされた者としては、本書の主張には素直に頷けた。京都大学の対応については、別ルートで知っている事実もあ り、改めて人を見下した対応だと思い本書を読んだ。また、アイヌの遺骨返還で再度日本人の考え方が押し付けられているという指摘は、植民地主義の根深 さを感じさせた。
しかし、最も重要なことは、他人事のような上記の感想ではない。本書を読んでいる時に繰り返し襲ってきたのは、琉球人の遺骨に対する植民地主義や学知 の暴力を知り、「植民地であった台湾を研究し、大学という場に職を得ている自分に何ができるのか」という問いであった。人を対象とする研究をする私に は、読んでいて苦しかったというのが実感だ。本書には読んだ者に「勉強になったと」いう安易な感想を許さない、何か行動を迫る力強さがある。
このように書いたうえで、敢えて著者にひとつの質問とひとつのコメントをしたい。質問は、どのような目的、方法であれば、遺骨を研究対象にできるの か、である。骨を砕いて人類の歴史を探ることはどのような目的であれ絶対にすべきではないと考えるのだろうか。本書で追及された研究者が先に回答すべ きだと著者に言われそうだが、著者も形質人類学と専門は異なるが、研究の世界に身をおく一人であるだけに聞いてみたい。このような質問をするのは、著 者が本書を扉をあける鍵としたいと述べているからでもある。
次にコメントだが、牡丹社事件(1871 年 10 月に那覇から宮古島に向かった船に乗っていた琉球人が台風のため台湾南東部に漂着し、乗組員のうち 54 名が殺害された事件。大日本帝国の台湾出兵を招いた)について、43 頁で「地元の中国人が琉球人の遺骸を葬った…」と記す。「地元の中国人」とあるが、このような記述には慎重であるべきだ。埋葬した当時、中華人民共和国も中華民国もない。 したがって、中国人という表記は適切ではない。さらに言えば、埋葬に関わった者には、先住民族と姻戚関係がある者もいた。漢族と表記することさえため らう台湾先住民研究者もいる。現在、台湾に住む人々を中国人と考え、「中国人」と表記したのかもしれない。だが、評者自身、台湾に住む人を台湾人とす るか、中国人とするかは悩ましい問題である。中国人と呼称されることに、中国国民党の支配や中華人民共和国の「ひとつの中国」を受け入れる意味合いを 見出し、嫌悪する者も多数いる。彼らにとっては台湾は台湾であって、中国ではない(もちろん、中国人というアイデンティティを受け入れる者もいる)。 その声は、琉球は琉球であって、日本ではないという主張を連想させないだろうか。さらにいえば、港川人を日本人のルーツと称すことが問題であるよう に、当時の人々を中国人と呼称することには同じ問題がある。正直に言えば、台湾の記述については台湾の人々の多様な声に耳を傾けて欲しいと思うところ があった。本書の植民地主義や学知の暴力には大いに賛同するが、台湾研究者としてこの点は看過できず、一言申しておきたい。
最後に、台湾大学は 2019 年 3 月 20 日までに遺骨 63 体を沖縄側に返還し、遺骨は現在沖縄県立埋蔵文化財センターに保管されている。なお、沖縄県教育委員会は再風葬する考えはないという。
(紹介者:上水流久彦)

学会通信


新入会員

  江澤恭子(東京成徳大学国際学部国際学科)
  堀部三幸(上智大学大学院総合人間科学研究科後期博士課程)
  *新入会員の連絡先についてはsecretary[ アットマーク ]jsos.netにご連絡下さい。問題なければ紹介いたします。

所属変更

  栗田梨津子(神奈川大学外国語学部英語英文学科)
  *ご所属やメールアドレス変更、退会希望の場合は、 secretary[ アットマーク ]jsos.netにご連絡下さい 。

寄贈図書

  熊谷圭知『パプアニューギニアの「場所」の物語 動態地誌とフィールドワーク』九州大学出版会、 2019 年。

寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp





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