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学会通信(過去の学会通信

このページは,2018年7月28日に最終更新されました。

※掲載論文については,こちらをご覧ください。


ニューズレターNo.121から

第35回総会の報告

2018年3月22日(木)、第35回日本オセアニア学会研究大会会場(沖縄美ら海水族館イベントホール)において、同学会総会が開催されました。議事は、以下の通りです。

審議事項

1.2017年度決算
・2017年度決算(2017年3月1日~2018年2月29日)について、倉田誠会計理事より説明があり、承認されました。
・会計監査は、柄木田康之会員、古澤拓郎会員によって行われました。
2.2017年度事業報告
下記の事業報告が審議され、承認されました。
  • People and Culture in Oceania vol.33の刊行(89 pp.:論文3本、通信1本、書評1本)
  • NEWSLETTER no.118、119、120の刊行(論文4本、報告2本、新刊紹介7本)
  • 研究例会の実施
    • 関東地区 2017年11月25日 東京医科大学 発表2本
    • 関西地区 2018年1月20日 同志社大学 発表2本
  • 40周年記念シンポ「ウミとシマの世界を見る眼―オセアニア研究のこれまで、いま、そして、これから」の実施
    2018年3月21日 沖縄県立博物館・美術館講堂
    (日本オセアニア学会創立40周年記念事業準備委員会長:棚橋訓会員)
  • 第35回研究大会・総会の実施
    2018年3月22-23日 海洋博公園内・美ら海水族館イベントホール
    (大会長:後藤明会員、小西潤子会員)
  • JCASA等の活動
  • 石川栄吉賞の選考(対象者なし)
  • 第17回日本オセアニア学会賞の選考と授与
3.2018年度事業計画
下記の事業計画が審議の結果、承認されました。
・People and Culture in Oceania vol.34の刊行
・NEWSLETTER no.121、122、123の刊行
・関西地区・関東地区研究例会の実施
・第36回研究大会・総会の実施
・JCASA等の活動
・石川栄吉賞の選考
・第18回日本オセアニア学会賞の募集
・評議員選挙の実施
4.2018年度予算案(別紙参照)
2018年度予算(2018年3月1日~2019年2月28日)について、倉田誠会計理事よ り説明があり承認されました。
5. 入退会に係る規定の変更について(「学会通信」欄参照)

報告事項

  1. >第17回日本オセアニア学会賞を早稲田大学の里見龍樹会員(受賞作品『「海に住まうこと」の民族誌―ソロモン諸島マライタ島北部における社会的動態と自然環境』)に授与するとの理事会決定が報告されました。なお、学会賞に対して、日本オセアニア交流協会より副賞をいただきました。学会賞選考委員会からの報告は、以下、別記事として掲載されております。
  2. 沖縄美ら島財団が賛助会員となることが報告されました。
  3. 第36回研究大会・総会は、首都大学東京の深山直子会員を大会長として開催予定であることが報告されました。

第17回日本オセアニア学会賞について

こちらをご覧ください。

第18回日本オセアニア学会賞選考要項

2018年度日本オセアニア学会賞選考委員会

  1. 本学会賞受賞資格者は本学会会員で、対象となる著書または論文の刊行時に原則として40歳未満とする。対象となる著書または論文は1編とし、2017年1月1日から2018年12月31日までに刊行されたものとする。なお、該当する著書または論文が複数の著者によるものの場合は、筆頭著者のものに限定する。
  2. 候補者の応募は自薦あるいは本学会員からの他薦による。他薦による場合は、他薦者は被推薦者(候補者)の了解を得ていることが望ましい。
  3. 自薦の場合は、選考対象となる著書または論文について、1部以上を日本オセアニア学会事務局宛に送付するものとする。送付に際し、連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)を明記するものとする。
  4. 他薦の場合は、推薦者の氏名と被推薦者(候補者)の氏名、被推薦者の連絡先(住所、FAX番号、E-mailアドレス)、および被推薦者の選考対象となる著書または論文名を明記する。雑誌論文の場合は、雑誌名、巻号、出版年を、著書の場合は著書名(分担執筆の場合は、担当章のタイトルと著書のタイトル、編者名)、出版社、出版年を明記する。この場合も、著書または論文をオセアニア学会事務局に送付することが望ま しいが、送付されていない場合でも受理する。なお、推薦理由が必要であると判断する場合は、200字以内の推薦文を添付してもよい。
  5. 応募期間は2018年11月1日から2019年1月15日まで(必着)とする。
  6. 送付先は下記とする。自薦の場合は、著書または論文を同封する必要があるので、 郵便ないしは宅配便で送付することし、他薦の場合は郵便以外にE-mailでも受け付けることとする。

    (日本オセアニア学会事務局)
    〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館
    丹羽典生研究室 宛て
    TEL 06-6876-2151(代)FAX 06-6878-7503(代)
    E-mail: secretary[アットマーク]jsos.net

  7. 事務局は自薦および他薦の書類を受領してから1週間以内に、受領した旨の連絡をし、受領書類を選考委員長へ郵送する。
  8. 2019年1月15日以降、選考委員会は厳格な審査を行い、その結果を本年度の本学会総会の開催前に理事会に報告する。

<注 記>

  1. 応募者はPCOに論文を掲載したことがあるか、掲載したことがない場合は、受賞後数年内にPCOへ投稿することが望まれます。
  2. 選考を円滑に進めるため、すでに刊行されている書籍または論文については、募集期間が始まり次第、速やかに、応募して下さるようお願いします。
  3. オセアニア地域に関わるあらゆる研究分野の作品が対象となっています。

日本オセアニア学会賞規定

第1条(目的)
日本オセアニア学会はオセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的とし、「日本オセアニア学会賞」を制定する。
第2条(資格)
日本オセアニア学会員であること。
第3条(対象)
オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした個人。但し、刊行時において原則として満40歳未満の者とする。
2 賞の授与は各年度1名とする。
第4条(選出方法)
賞の選考は理事会が委嘱した5名の日本オセアニア学会賞選考委員が行う。
2 以上の選考結果に基づき理事会が受賞者を決定する。
第5条(賞の授与)
賞の授与は日本オセアニア学会総会で行う。
第6条(賞状・報奨金)
受賞者には賞状ならびに日本オセアニア交流協会(学校法人園田学園)基金より副賞を贈呈する。
附則
この規定は平成13年4月1日より施行する。

【新刊紹介】

浅井優一『儀礼のセミオティクス:メラネシア・フィジーにおける神話/詩的テクストの言語人類学的研究』(三元社、2017年2月)
本書は、南太平洋のフィジー諸島ダワサム地域において、約30年ぶりに開催された最高首長の即位儀礼、およびその開催の是非を巡り地域を二分した政治的対立の顛末 を、植民地期に作成された古文書、即位儀礼で為された儀礼的発話、地域の古老たち が従事する神話の語り、政府による儀礼の映像記録など、2年に及ぶフィールドワークで得られた様々なテクストの記述・分析を通して審らかにしようと試みたモノグラ フです。以下では、本書が扱うフィジーでの事例を概略した上で、その主な論点を2点に絞り紹介したいと思います。オセアニア地域での研究に従事される皆様に是非と も一読して頂き、ご批判を頂ければ幸い至極に存じます。
フィジー諸島のダワサム地域では、28年間、最高首長が不在であった。その根底にあるのは、イギリス植民地政策下で作成された文書(『一般証言』および『氏族登録台帳』)が規定する各氏族の歴史と、神話の語りを通して伝えられる伝承の間の齟齬であ った。ダワサム地域の古老たちは、この両者の間に生じた齟齬を正そうと試みてきたが、氏族間や氏族内部での対立や歪められた歴史への確執から幾度となく断念されてきた。こうした状況下、当該地域の一氏族であるヴォニ氏族は、自らが首長を即位さ せる義務を負った集団であると主張し、2009年頃から最高首長の即位儀礼開催の画策に乗り出す。そうした画策の中で、彼らが出会ったデライ氏族による神話の語りと、 ヴォニ氏族が「文書以前」から受け継いできたとする神話、この両テクストに一貫した等価性が認められ、氏族の正統な来歴と系譜が解き明かされることになる。この両氏族の神話的邂逅が契機となり、長年放置されてきた即位儀礼が執り行われる機運が 広まった。デライ氏族の長老は、著者に対し、即位儀礼の開催の意義を次のように伝えている。「おまえは、祖先神が話す、とは何のことか知っているか? これは上から降りてきた啓示である、上にあるかつての村から、私たちが、その道に沿って進むために。」そして、フィジー政府の地方知事を交えた会議においても儀礼の開催が承認され、この啓示の通り、儀礼の過程は、神話の構図に沿う形で、植民地期の文書に反する仕方で実施された(2010年4月)。儀礼の一部始終は、フィジー言語文化研究所の役人によりビデオ映像として記録され、100分程度のDVDとしてアーカイヴ化された。
1 書誌情報http://www.sangensha.co.jp/allbooks/index/423.htm
以上の通り、本書は、A. M. ホカートの王権論やマーシャル・サーリンズによる構造歴史人類学の試み以来、オセアニア人類学の中心的な研究課題をなしてきたフィジー諸島における儀礼、神話、歴史といった事象を扱っており、その上で、本書は、言語人類学および記号論の視座から切り込んでいる。特に、レヴィ=ストロース構造人類学に理論的基盤を提供したローマン・ヤコブソンの詩的言語に纏わる洞察とチャールズ・パースの記号論を融合的に発展させた言語人類学者マイケル・シルヴァスティンの儀礼コミュニケーション理論を参照軸とし、フィジー語で書き起こしたテクスト(植民地政府の文字資料、古老による神話の語り、公的会議の談話記録、即位儀礼での定型的スピーチ、儀礼の映像記録など)を、その叙述形式や形態論的特徴から丹念 に記述することを通して、神話と歴史が儀礼を契機に生起し絡み合うことを詳らかにしている。そして、言語使用の綿密な考察を民族誌記述の中心に据えることを通して、 文化研究と言語研究の接合を可能にすると同時に、サーリンズの認識論、ニコラス・ トーマスの歴史人類学やポストコロニアリズム、さらにマリリン・ストラザーンのメラネシア人格論、およびそれを柱の一つにして拡がった存在論的人類学の連関を、ヤ コブソンやパースの記号論に依拠して体系的に捉え直している。
また本書は、19世紀フィジーの英領植民地期の公文書の記述形式と調査地域での古老が従事する神話的語りの叙述形式を比較対照し、前者が氏族集団の連合としての地域を、首長を頂点に据えて「階層的」に記述する形式(ハイポタクシス; hypotaxis)を 有するのに対し、後者は「並列的」に叙述する形式(パラタクシス; parataxis)をもつことを明らかにし、そうした神話記述のスタイルの相違が、社会秩序の生成に関する記号論的な変遷に基づくものであることを指摘している。さらに、政府の文書と土地の神話の齟齬に疑念を抱く氏族集団が、その齟齬を正そうと画策する中で、集団各々 が受け継いできた神話の断片に整合性を見出し、氏族の正統的な来歴と系譜を解き明かす様子、および古老たちが地域の原初の姿として理解した神話を象った即位儀礼が実行され、植民地期以降、文書が規定してきた社会秩序の覆しが図られる過程を、儀礼的発話や儀礼における時空間の構成に関する分析に基づいて詳らかにしている。以上を通して、本書は、ミクロな政治的対立に焦点を当て、それを通じて創出される現代フィジーのマクロな文化的秩序の史的変容を明らかにしながら、この両者を統合しうる理論的枠組みの提示を試みている。
(著者)
小林 誠『探求の民族誌――ポリネシア・ツバルの神話と首長制の「真実」をめぐって』(御茶の水書房、2018年1月)
「何が真実の伝統なのだろうか」。こう問うていたのは人類学者である私ではなく、「現地の人々」であった。2000年代に行ったツバル・ナヌメア環礁でのフィールドワークで私が気づいたのは、ナヌメアの人々は伝統をかたくなに守り続けていたわけでも、柔軟に実践していたわけでも、ましてやそれを創造していたわけでもないことであった。そうではなく、彼らは何が「真実」の伝統なのかを探し求めていたのである。 本書はそれをとらえるべく書かれた民族誌であり、伝統それ自体ではなく、伝統をめぐる彼らの探求を記述・分析することを目的としたものである。それによって、伝統をめぐる複数の真実を浮き彫りにするとともに、個々の真実が併存、対立、交渉する様態をも明らかにする。また、人類学者とナヌメアの人々の探求を同一地平上に位置付けて論じ、人類学者の営みそのものを相対化する。以下に構成を記す。
序章 神話と首長制をめぐる探求
第一部 ナヌメア
第1章 過去と現在
第2章 移動と島を越えた広がり
第二部 記録する――研究者の視点
第3章 研究されるツバル
第4章 ある人類学者のフィールドワーク
第三部 合意する――首都にて
第5章 神話の憲章作成
第6章 首長制の成文化
第四部 実践する――ナヌメアにて
第7章 調査を始めた元調査助手
第8章 首長になれない男の主張
終章 探求の「真実」
検討の中心となるのは、神話と首長制をめぐる西洋人研究者、首都フナフティ環礁在住のナヌメア人、ホームランドであるナヌメア環礁のナヌメア人によるそれぞれの 探求である。まず、序章では、神話と首長制を中心に伝統をめぐる既存の人類学的研究を再検討し、これまでの議論が伝統の可変性と操作性を強調していた点を指摘し、 土着の認識論・方法論を援用しながら、本書の核となる探求という鍵概念を提示する。
続く第一部では基礎的な情報をまとめる。第1章で、ナヌメアの歴史と現在の状況を概観し、第2章では、ナヌメア社会がホームランド以外の場所にいるナヌメア人によってディアスポラ的に編成されていることを示す。
第二部では外部の西洋人研究者による探求を扱い、その特徴を真実の記録と論じる。 第3章でツバルについての先行研究を簡潔に整理し、伝統を本質的に描く研究から、 その可変性と操作性を指摘する研究へと転換した背景を論じる。第4章では、ナヌメアにおける人類学的調査の草分けである人類学者キース・チェンバースのフィールド ワークおよび、彼が著した民族誌を詳細に検討し、彼の調査・研究が現地の人々との 関係性のなかでいかにかたちづくられてきたのかを明らかにする。
第三部では首都在住のナヌメア人による探求を検討し、その特徴を真実をめぐる合 意の形成にあると論じる。第5章で神話にまつわる「憲章」作成プロジェクトをとりあげ、首都在住のナヌメア人が多様なバリエーションの神話テクストを分析し、すべての人々が合意できるような真実の神話の提示を試みてきたことを明らかにする。第 6章では首長制の成文化をとりあげ、首長制の真実のかたちについてのとりあえずの 合意が形成された反面、それが遵守されなかった理由を明らかする。
第四部ではホームランドであるナヌメア在住のナヌメア人による探求について検討し、その特徴を日常的な実践と密接に繋がっていることにあると論じる。第7章でチェンバースの元調査助手で、神話と首長制について独自に探求した男性をとりあげる。彼がチェンバースの帰国後、いかに独自の調査を実施し、そして、いかにそこから得られた知見が真実であることを「証明」しようとしたのかを論じる。第8章では、首長になれないクランに属する男性を取り上げ、彼が伝承した神話と彼が実践した首長制を事例に、神話と首長制をめぐる真実の探求を日常的かつ具体的実践の中から描きだす。
終章では、それぞれの探求の連なりと断絶をまとめたうえで、真実をめぐる状況依存性、多元性を簡潔にまとめ、筆者自身の状況依存性についても自省的に捉え返す。 本書全体を通して、ナヌメアの人々がいかに確実な真実を見出そうしてきたのかと、それにもかかわらず真実が不確実なままにとどまってきた理由が現地の真実観を基に 明らかにされる。
(著者)
小野林太郎・長津一史・印東道子(編)『海民の移動誌――西太平洋のネットワーク社会』(昭和堂、2018年3月)
海域アジアやオセアニアには、海と密接に関わりながら暮らしてきた「海民」ともよべる人々、あるいは積極的なネットワーク形成を生活基盤とする社会が各地にみら れる。本書は、こうした西太平洋圏の海民に代表されるネットワーク社会の普遍性や 地域性を、その分布に関する時間と空間双方の面での比較を通じて、人類史的な視点 から論じる。このうち時間軸においては、私たち現生人類(ホモ・サピエンス)がこ の海域に登場してくる約5万年間の幅をもつ考古学的時間(実質的には約4000年前の 新石器時代以降に主眼をおく)と、約100年間の幅をもつ民族誌的時間の両軸からの 検討を試みた。
一方、本書が対象とする空間は、日本を含む東アジア、東南アジア、オセアニアの 3つの海域世界である。本書の構成も、これらの海域世界に対応する形で三部構成と し、これに序論・総論からなる一部を加え、計13本の論文と5本のコラムより構成した。さらに海域別の三部は、いずれも考古学的時間軸と民族誌的時間軸に基づき、各 海域におけるネットワーク社会の過去と現在が論じられる。紙面の関係もあるため、 ここでは各章とコラムのタイトル、および各執筆者のみ以下に紹介する。
(本書の目次・構成)
第1部 序論
第1章 海民の移動誌とその視座
(小野林太郎・長津一史・印東道子)
第2章 海のエスノ・ネットワーク論と海民―異文化交流の担い手は誰か
(秋道智彌)
第3章 マダガスカル島と海域アジアを結ぶネットワーク
(飯田卓)
第2部 東南アジアの海域世界
第4章 海域東南アジアの先史時代とネットワークの成立過程―「海民」の基層文化論
(田中和彦・小野林太郎)
第5章 耳飾が語る金属器時代東南アジアの海域ネットワーク
(深山絵実梨)
第6章 東南アジアにみる海民の移動とネットワーク―西セレベス海道に焦点をおいて
(長津一史)
第7章 〈踊り場〉のネットワーク―モーケンと仲買人の関係性に着目して
(鈴木佑記)
コラム1 海民の土器を追いかけて―南シナ海とタイ湾を貫いた鉄器時代のネットワーク
(山形眞理子)
コラム2 海産物の開発をめぐる同時代史―ナマコの事例から
(赤嶺淳)
第3部 東アジアの海域世界
第8章 海を渡り、島を移動して生きた最初期の「海民的」人びと―宮古・八重山諸島の先史時代からみた海域ネットワーク
(山極海嗣)
第9章 中世・近世期における八重山諸島とその島嶼間ネットワーク
(島袋綾野)
第10章 糸満漁民の移住とネットワークの動態
(玉城毅)
コラム3 海底遺跡が語る琉球王国時代―近代の海上ネットワーク
(片桐千亜紀)
コラム4 日本のシイラ利用からみる海と山のネットワーク
(橋村修)
第4部 オセアニアの海域世界
第11章 先史オセアニアの海域ネットワーク―オセアニアに進出したラピタ人と海民論
(小野林太郎)
第12章 オセアニアの島嶼間ネットワークとその形成過程
(印東道子)
第13章 ムシロガイ交易からみる地域―進行形のネットワーク記述に向けて
(深田淳太郎)
コラム5 海域ネットワークが生み出したリモートオセアニアの島嶼
(山口徹)
さて、こうしたネットワーク社会のメインアクターとして、本書では海民に注目す る。このうち日本における海民論は、これまで民俗学や歴史学の分野で展開されてき た。たとえば民俗学者の宮本常一は、海民の生業が「半農半漁」であることに注目し つつ、近世以降に瀬戸内海や九州沿海に暮らす家船民をより専業的漁民としての性格 が強い「海人」と指摘した(宮本1964,1992)。一方、歴史学の視点から海民研究を展開した網野善彦は海で暮らす「非農耕民」として、漁業から略奪といった海賊行為に いたる様々な生業を完全に分化させることなく担っていた人びとを「海民」と呼んだ。 またそうした海民的集団の出現期を縄文時代晩期頃まで遡る可能性を指摘している (網野1992,1998)。
これらの先行研究に従いつつ、私たちも海民の出現期として、農耕や家畜飼育が出 現したとされる新石器時代に注目した。考古・人類学的にも「半農半漁」的な生業形 態は新石器時代期以降に出現したと考えられている。また東南アジアやオセアニア海 域における新石器時代は、南中国の沿岸域から台湾辺りが起源地と推測される新石器集団の新たな移住により、4000~3300年前頃に始まったとする説が有力である。この年代は網野が日本における海民の出現期として注目した縄文晩期頃とほぼ一致する。 しかし、先行研究においては、先史時代にあたる新石器時代期にまで遡り、考古学的 成果も踏まえながら展開された海民研究はなく、本書がその初の試みとなった。
しかしその一方で、主に物質文化や出土した遺物からアプローチする考古学のみでは、先史時代における海民の社会や文化、その移動やネットワークの実態に迫るのは 至難の業で、限界もあった。本書ではこうした限界を補い、海民たちの移動やネット ワークの実態を鮮明かつ詳細に描き出す役割を民族誌的時間軸から論じた各章が担っている。もちろん、近世期以降の様々な経済・技術的変化や人口変動等の影響を受け る中で展開されてきた海民たちの移動やネットワーク社会が、数千年前の先史時代に おける「海民」と想定されるような人びとのそれと全く同一だったとは考えられない。この時代的差異は、今後どれだけデータが精緻化されたとしても、容易には乗り越えられない壁であろう。
それでも考古学的資料からおぼろげに浮かび上がってくる先史時代の「海民」の移動やネットワークの背後にある原理と、近世期以降のこの約100年間に各地で暮らしてきた海民と認識できる人々のそれに似ている部分は多々あることを本書では示すことができた。その共通性が文化的系譜や環境への適応による結果に基づくのか、といった議論は今後の課題である。このように新たな課題も少なくないが、それでも本書 は考古学・文化人類学・生態人類学・民俗学を軸とした学際的な海民研究の現在と未 来を示した論集として、新たな一歩を切り開けたのではないかと自負している。ぜひ一読して頂けると幸いである。
なお本書は、国立民族学博物館の共同研究「アジア・オセアニアにおける海域ネッ トワーク社会の人類史的研究――資源利用と物質文化の時空間比較」(代表:小野林太郎)において、本書の章・コラムを執筆したメンバーらによって約3年半にわたり検 討してきた研究成果ともなっている点を最後に付け加えておきたい。
【引用文献】
網野善彦 1992 『海と列島の中世』、日本エディタースクール出版部。
網野善彦 1998 『海民と日本社会』、新人物往来社。
宮本常一 1964 『海に生きる人びと』(日本民衆史 3)、未來社。
宮本常一 1992 『瀬戸内海の研究――島嶼の開発とその社会形成、海人の定住を中心に』、未來社。
(編者=小野林太郎)

学会通信

今後の研究大会の開催方針及び今年度の研究大会について

会長 山本真鳥

今年はもう東京は梅雨明けだそうで、暑い夏が既に始まっているようです。蒸し暑いさなかではありますが、会員の皆様におかれましては、ご清祥のことと存じ上げます。

さて、本年の学会創設40周年記念行事及び研究大会で沖縄においでの会員には、既にご承知いただいていると思いますが、今後の研究大会のあり方についてお知らせ申し上げます。

これまで、学会規則等で決められていたわけではないのですが、研究大会は温泉地で開催するという前例が積み重ねられてきました。この合宿型の研究大会は、我々のような小さな学会には、親睦を深めるという意味で多いに利がありました。ここで培 われたオセアニア研究者の仲間意識は並大抵のものではなく、強い絆で結ばれて今日に至っております。

その意味では大変残念なのですが、温泉地での開催は、主催をお願いする方に実は大変負担がかかります。これまで主催されてきた方々には深く重ねて感謝する次第ですが、そろそろ毎年この体制を維持するのは難しくなってきました。大きな要因は会員の減少で、ひところ300人を超えていた会員数が現在では200名近くになっております。会員数を増やす努力は今後も重ねて参りますが、それと並行して研究大会の負担を軽くするため、総会でご承認いただきましたように都市と温泉での隔年開催する方向で考えております。

以上の方針を考慮しまして、本年度の研究大会は以下の日程と場所で開催予定です。

日程:
2019年3月25日(月)~26日(火)
場所:
首都大学東京 南大沢キャンパス

首都大学東京の深山直子会員が、研究大会の会場と懇親会の場を用意してくださる予定です。ただし、宿泊は各自ご用意ください。次年度には、温泉地での開催ができるようただいま交渉を継続中です。

以上の方向性につき、ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

入退会方法の変更について

入会に関わる規定(日本オセアニア学会会則7条1)を、審議過程の効率化を図るため以下の形で変更する。変更する語句の箇所は、下線で示してある。

<現行>
第 7 条
前条各会員の入会手続きは次のように定める。
1. 通常会員として入会しようとする者は本会に申しで、評議員会の承認を得るものとする。
<改正案>
第 7 条
前条各会員の入会手続きは次のように定める。
1. 通常会員として入会しようとする者は本会に申しで、理事会の承認を得るものとする。

*退会については、「第9条 退会を希望する会員は、その旨を本会に申し出るものとする。」という規定がある。評議員会での承認は従前から必要とされていなかった。上記の変更にあわせて、理事会で退会の申し出があった旨報告することとする。

所属変更

寄贈図書

寄稿について

日本オセアニア学会ニューズレターでは、論文・報告・新刊紹介の寄稿を随時受け付けております。

その他、寄稿に関わるご相談は、下記までお問い合せください。

寄稿先/お問い合わせ先

編集委員  馬場 淳(理事)junbaba[アットマーク]wako.ac.jp




ニューズレターNo.120から

日本オセアニア学会創立40周年記念公開シンポジウム開催のお知らせ

こちらをご覧ください。

第35回 日本オセアニア学会研究大会・総会のお知らせ

こちらをご覧ください。

2017年度 日本オセアニア学会関西地区研究例会の報告

こちらをご覧ください。

【新刊紹介】

秋道智彌『魚と人の文明論』(臨川書店、2017年12月)
魚と人間とのかかわりから文明を論じる視点はこれまでなかった。文明論にはいくつもの学派や仮説がある。オセアニアは海の世界であり、海洋を含めた文明論があってもよかったが、島嶼世界でも陸地における研究が主流であった。海や魚を主題とする漁撈や航海術、海の神話などの研究があるとしても文明が論じられることはなかった。もっとも、日本では川勝平太の『文明の海洋史観』(1997)やフランスのアナール派の研究者であるF.ブローデルの『地中海』(2004)の研究がある。
本書は社会史、経済史ではなく、人類学の視点から魚と人間の関係性に注目して文明論を提唱したもので、以下のような構成になっている。
  • 序章 魚と人を語る―文明論の視点
  • 第1章 自然と象徴―魚類分類の多様性
  • 第2章 うま味と料理―魚食の文明論
  • 第3章 魚食のタブー論―大宗教から菜食主義まで
  • 第4章 有毒魚と有用魚―非食用の博物誌
  • 第5章 魚の王と王の魚―巨大魚と権威
  • 第6章 半魚人の世界―魚と神話
  • 第7章 魚と世界観―霊魂と身体
  • 終章 魚と人の文明論―統合知の地平
本書の章立てを見ると、魚類の分類学、魚食、規範としての魚食のタブー論、魚の有毒・有用性、王権と魚・魚の王、神話的な存在としての半魚人、霊魂と身体性をつなぐ世界観に至るまでが扱われ、統合知を構築する配慮がなされている。研究の視野の広がりからすると、自然と文化、物質性と精神性にまたがる諸課題を取り上げ、人類学から文明論を構築する枠組みが提示されている。
オセアニアは海の世界であると述べたが、本書では海水魚と人間とのかかわりのみならず、世界中の淡水魚にも目を向け、古代エジプト(ナイル川)、メソポタミア(ティグリス・ユーフラテス川)から、東南アジアのメコン川、ガンジス川、南米のアマゾン川、北米のミシシッピー川、日本の諸河川などに生息する淡水魚をも取り上げている。しかも、歴史と時代、地域を超えた問題に広く言及されている。海水魚、淡水魚の枠を超えて考察がなされている独自性を垣間見ることができる。
第6章の半魚人は架空の存在でありながら、それぞれの地域や社会における人びとの神話的な想像力の考察に有用な情報を提供している。人魚伝説や両義的な存在のもつ意味についての世界史的な考察は、幻想動物を生みだしてきた人間の知の在りようを考える重要な視座を提起している。オセアニア世界だけでなく、古代中国、古代エジプト、メソポタミア、インド、中世ヨーロッパ、古代から近世期の日本における半魚人の比較は、時代や地域を超えた汎世界的な広がりを知る楽しみを与えてくれる。
本書では、文明論を従来の経済史・制度史・政治史・生態史などの視点から取り上げたG.チャイルド、A.トインビー、C.クラックホーン、O.シュペングラー、S.P.ハンチントン、梅棹忠夫らとは異なり、魚と人の関係性に着目して考察したものである。海の領有、交易、海軍、交通などについての考察には多くの紙面をさいているわけではなく、文明論という書名から当てが外れたと考える読者がいるかもしれない。
しかし、ニシン、タラ、フカひれ、ナマコなどの交易について、世界史的な観点から論じられており、その背景にキリスト教世界における断食と魚の需要増加、中国における海鮮料理の趨勢、新大陸におけるサトウキビ産業と奴隷貿易、乾燥タラの利用など、魚に注目した歴史の再構成が随所に取り上げられており、世界を変えた魚として文明論を論じている。海の領有問題と文明論については、本書の筆者が『越境するコモンズ』に詳しく取り上げているので参照していただきたい。
最終章では、魚と人の関係についての包括的な議論として、魚と人間だけでなく、第3項としてカミないし超自然を設定し、それらの3極構造の中に新しい文明論を位置づけた点がもっとも注目される。自然物である魚、人間、超自然は言語分類、信仰、価値観、技術、図像などのさまざまな表象として具現化される。上記の3極モデルでは、魚と人を楕円形の2つの焦点として、楕円の軌跡上にカミの世界、半魚人、アニミズム・トーテミズムなどの多様な表象を位置づけることができる。
この発想の基盤にレヴィ=ストロースの後継者と目されるコレージュ・ド・フランスの人類学教授であるフィリプ・デスコラの提起した存在論(ontologies)にも通底する。デスコラの議論は従来、西洋にあった自然と文化の二元的枠組みを超えて、自然と文化の連続性を提起したものである。ここでは詳述しないが、最近刊行された『交錯する世界 自然と文化の脱構築-フィリップ・デスコラとの対話』で体系的に取り上げられている。
海や魚に興味をもち、オセアニア世界で研究を目指す若い人たちにぜひとも目を通していただければとおもう。
【参考文献】
秋道智彌
 2016『越境するコモンズ-資源共有の思想をまなぶ』臨川書店。
秋道智彌(編)
 2018『交錯する世界 自然と文化の脱構築-フィリップ・デスコラとの対話』京都大学学術出版会。
(著者)
後藤明『世界神話学入門』(講談社、2017 年 12 月)
今回、講談社現代新書として出版したこの本では、近年唱えられている世界神話学説に沿って、ホモ・サピエンスに伴う2つの神話群、ゴンドワナ型神話群とローラシア型神話群を紹介している。ギリシャやインドあるいは日本神話など、われわれがよく知っている神話は後者の方である。一方、前者はアフリカで20万年ほど前に進化した現生人類のホモ・サピエンスが最初にアフリカから出たときに語っていた人類最古とされる神話群である。
本書は以下のような構成となっている。
  • はじめに----なぜ世界中に似たような神話があるのか
  • 第1章 遺伝子と神話
  • 第2章 旧石器時代の文化
  • 第3章 人類最古の神話的思考---ゴンドワナ型神話群の特徴
  • 第4章 人類最古の物語---ローラシア型神話群
  • 第5章 世界神話学の中の日本神話
  • 第6章 日本列島最古の神話
  • 参照文献
  • おわりに
近年一つの有力な学説として提唱されているのが、ホモ・サピエンスがアフリカを出た後、アラビア半島からインド亜大陸の海岸部を通り、スンダランド(氷河期にあった東南アジア島嶼部を含む大陸)を通ってオーストラリアまで4万から5万年前に一気に移動したという説である。それは主に遺伝子の分析から主張されているが、ゴンドワナ型神話群はこの南回りルート移動経路によく一致した分布をしている。
南回りルートに対してヒマラヤの北を周る北ルートもそれほど遅くはないという証拠も出てきているが(海部陽介『日本人はどこからきたのか』等参照)、本書は世界神話学説にそって2大神話群の違いを私の意見も含めて紹介し、さらに地球規模の2大神話群の存在から日本神話の多様な成り立ちについて思考実験的に考察を進めてみた。
私がこの本を書く動機は2つあった。
その一つ目は、私は国立科学博物館が進める「三万年前の実証航海」プロジェクトに海洋人類学者として参加していることである。台湾付近から八重山に海をわたってきた最初の人類の移動手段を実証しようという試みである。ほとんどまともな石器のないこの地域で、旧石器時代に使用できた素材で船を作るという難題に挑戦した(後藤 2016)。
船の具体像は私が担当することになった。与那国島での最初の実験では、私が提唱した樽舞湿原産のヒメガマという植物を使った草舟の航海能力を実験した。このようなことをやりながら、最初に日本列島に渡ってきた人々はどのようにして見えない島を目指して船出したのか、そして彼らが語っていた神話について考えみようと思ったのだ。
もう一つの理由は古くからオセアニアの文化系統論のテーマであった所謂メラネシアとポリネシアの神話の違いであった。
『オセアニア神話』を著した人類学者のR.ディクソンはポリネシア神話の系譜の多様性を指摘している。彼によると、NZマオリ(さらにモリオリ)神話はもっともメラネシア、東部メラネシアの影響が強いという。またサモアにもその影響は見られ、クック諸島やハワイにも若干の影響が見られる。一方、ソシエテ諸島にはメラネシア的な要素がほとんど欠如しているのはなぜかという問いを発している(Dixon 1916: 92-99)。
彼の説明はメラネシアからの移住が最初サモアからニュージーランドにかけて起こり、それが中央ポリネシアにも若干影響しているとうものである。一方、インドネシアからニューギニアの北を通ってかなり直接的にハワイに移住があった。本来ハワイにはメラネシアの影響はなかったが若干それが見いだされるのは、サモアやクックからの後世の移住によってである、と述べている。
一方、文化圏論や伝播論を基軸とするドイツ系の学者は次のような文化層を提唱している(Nevermann et al. 1968: 63-64): (1). メネフネの時代:社会階層化は未発達で、生命力やタブーの規制に基礎を置く宗教観念。家族神や死者・精霊崇拝が基本で、シャーマンのような宗教専門家が中心。神話の神としてはメネフネ、マフイケ、女神ヒナなどの信仰が導入された; (2). 首長(Ariki)の時代:社会階層化のある集団の到来。貴族集団が存在し、神々としてはタネ、トゥそしてロンゴが持ち込まれる。新しい集団は既存の集団から神由来の集団として、区別される。祖先の国ハワイキ、死後の世界プロトゥなどの概念の導入。コレとポー(暗黒)の対立による哲学的な宇宙論(Cosmogomie)の成立。この首長の時代はさらに第2期、第3期と分けられ、それぞれ異なった集団が持ち込んだ神話や文化あるいは社会が重層化してポリネシア社会とその変異が生み出された。
ここでは上記の見解の是非を論ずることはしないが、私の関心は近年ではあまり真剣に考えられていないオセアニア島嶼部への多重移住説の可能性が捨てきれるかどうか、という点であった。率直に言って私にはポリネシアの神話がメラネシアの神話から発達してきたとはどうしても思えないからだ。
これが本書を著した2つ目の理由であった。とくにこの2つめの疑問に答えてくれる本として、M.ヴィッツェルの著作『世界神話の起源』(Witzel 2013)を読んだことが、自ら『世界神話学入門』という本を書いてみるきっかけであった。
さて私は本書の中で「日本人」という用語は注意深く避けた。この種の本を書くとき編集者からは日本との関係も触れてほしいと要望されるのが普通である。しかし私は本書の中で自然な文脈の中で使う以外は日本人という言葉を避けた。とくに「日本人の起源」、あるいは「日本人の最古の神話」という表現は避け「日本列島最古の神話」という言い方に終始した。つまり本書の目的のひとつが「今われわれが日本列島と呼称している島に最初に渡ってきたホモ・サピエンスが話していた神話」の推測であって、当時存在していない「日本人」最古の神話など推測できるわけがないからである。
また本書の最後の章でのべた、「人も動物も天体もかつて地上で一緒に暮らしていた」という「ゴンドワナ型神話」の意味する所であるが、それは「人間もかつて自然の一部だった、そしてその後、自然から文化(人間)が分離していった」、という思想を意味しているのはない。むしろ「かつてはすべてが文化だった、そして文化からやがて自然が分離していった」、ということを意味すると解釈すべきであると考えている。それとの関連で人間と動物が同じで変換可能だったという神話においても、人間は動物になるとき必ず動物の毛皮を着る(例:儀礼の踊りのときのシャーマン)、しかし動物は人間になるとき人間の皮を着ることはなく、必ず毛皮を脱ぐと人間だったということになる。この非対称性の意味することは? このようなことも問うてみたかった。
このような思想を当初はアニミズムのような表現でまとめようかと思った。しかし最近、怪しげな政治的な意図をもって唱えられる「縄文アニミズム論」のような考え方に連動することは避けようと考えた。ゴンドワナ型神話の共通の特徴、すなわち人間も動物も、天体も自然現象もともに暮らしていたという語りを、それら背後に「霊魂」のような共通の実体を想定してしまったのでは代わり映えしない話になってしまう。むしろ私は「人間的な系列と非‐人間的なそれとの諸関係に社会的な特徴を措定する存在論」(ヴィヴェイロス・デ・カストロ 2016 Kindle版No.1313-1314)、あるいは「自然の存在物に人間的な性向と社会的な属性を授ける」(デスコラ 2017: 32)と言った意味でのアニミズムを下敷きにしようと考えた。
最後に本書の執筆の間、「ゴンドワナ型」神話群の特徴のひとつは天体に関する神話であることを見いだし、「エージェンシーとしての天体」のような仮説を今後の研究課題としようと考えていたところ、本書の出版直後に某出版社から『天文の神話学』という新たな新書本の執筆を依頼された。現在準備中のこの本は、昨年上半期に出版した著作(後藤 2017)と下半期に出版した本書を、足して2で割ったような内容となるであろう。
【参照文献】
デスコラ、フィリップ
 2017 「自然の構築:象徴生態学と社会的実践」『現代思想2017臨時増刊号 人類学の時代』45(4):27-45.
Dixon, Roland
 1916 The Mythology of All Races: Oceania. Boston: Mareshall Jones.
後藤 明
 2016 「人類初期の舟技術:環太平洋地域を中心に」『岩波科学』87(9): 841-848.
 2017 『天文の考古学』、同成社。
Nevermann, H., E.A. Worms and H. Petri
 1968 Die Religionen der Südsee und Australiens. Stuttgart: W. Kohlhammer.
ヴィヴェイロス・デ・カストロ、エドゥアルド
 2016 「アメリカ大陸 先住民のパースペクティヴィズムと多自然主義」『現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集=人類学のゆくえ』(kindle版を引用)
Witzel, Michael
 2013 The Origin of World Mythologies. Oxford: Oxford University Press.
(著者)

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